格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜   作:tetois

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第十話 ロケットビー

 

 ダンジョンの転移装置を二人で使い、八階層へ来た。代わり映えのしない景色がまたもや目に映る。

 

「そういえばさ、その右腕大丈夫?」

 

 あきたんは俺の包帯で巻いた右腕を指差し、疑問を発した。

 

「良かったら回復魔法で治療してあげよっか?もみもみってすれば一瞬だよ?」 

 

「いやこのくらい大丈夫。いつも通りなんとかなります」

 

 俺は腕を勢い良く振り回し、あきたんの抱いている不安を払拭した。するとあきたんが安堵したような表情を浮かべる。

 

「うん!心配なさそうだね!……そういえば純次もこんな風に包帯巻いて何日もへっちゃらな顔で試合してたっけ……」

 

「――まるでホンモノみたいだねっ!」

 

「あはは……リスペクトってやつです……」

 

 純粋に憧れを追求している純次ファンだと思って接している彼女に俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。あきたんの何気ない発言全てが時限爆弾みたいに感じ、いつまでも緊張感が抜けない感覚を覚えた。

 

 

「プリンティスさん巣あったよ!」

 

「あれですね?」

 

 

 暫く探索していると今回のパンケーキの材料を持つモンスター、ロケットビーの巣が姿を現した。巣はダンジョン内の倒壊しかかっている柱の上部に位置していた。

 

 ――ロケットビー。赤子の頭程のサイズを誇る蜂で胴体がまるで赤白のロケットのような身体を成していることから名付けられたモンスターだ。ロケットと付く名に恥じぬ程の速度で縄張りを襲ってくる侵入者を針で刺す。

 

 

 攻撃方法と群体を成して動くのはダンジョン外の蜂と同様だが実力は別格だ。

 

 ロケットビーの巣を占拠し、蜂蜜を入手するのが目的。当然ながら群体と女王の戦いが待っている。

 

 

「あ、せっかくだし作戦も考えてみる?私実は始めて誰かとダンジョン攻略するの。プリンティスさんは?」

 

「始めてです」

 

「奇遇だね!嬉しいっ」

 

 

 俺の返答にあきたんは少し距離を詰め、ニコッと笑い掛けた。その笑みはダンジョンの柱の松明で照らされているからか一層明るく感じられた。

 

 一方で俺の方も少しワクワクしていた。別に俺は縛りをかけているから基本一人で攻略しているだけで共同で誰かとやること自体は苦ではない。むしろ、ロケットビーとの対決であきたんはどんな戦い方をするのかというのが楽しみであった。

 

 

「作戦は……私がタンクを務めるのであきたんは魔法で攻撃してください!」

 

 

「了解!じゃあロケットビーの巣占領作戦スタートしよ!」

 

 

 その宣誓とともに俺は最前線を突き進む。目の前にある巣に近づけば近づく程一層大きく見える。最初は石ころくらいだった巣が気付けばミラーボールくらいのサイズに変貌していた。

 

 

 そして敵の襲来に気づいたか巣から群体を成したロケットビーが俺達を迎え撃つ。10体程のロケットビーは俺の周りを包囲し逃げ道を封じようとする。

 

 

 ――最初の針。一匹の蜂が突き刺す。

 

 俺は身体を傾かせ回避し、逆に蜂の胴体部分を身体全体で掴み、空から地面へ叩き付けた。掴んだ蜂をもう一匹の蜂に投げ飛ばしノックアウトさせる。

 

 

 一方、あきたんは手の中に火花のような何かを作っていた。それを握りつぶし、手のひらを開けるとそれは野球ボールくらいの火球へと変貌していた。

 

 

 火の玉はあきたんが蜂へと指を指すとゆっくりと動き始める。紅球とあきたんに気づいたのか残党の蜂は俺の方を離れ、襲撃する。

 

 

 紅玉の速度が上がる。それに呼応するかのように蜂があきたんに猛スピードで向かう。その時だった。紅は7つに突如分裂し、蜂に直ぐ様ホーミングした。

 

 

 そして7つのロケットは撃ち落とされる。その時、あきたんがいかにもこちらをみてほしそうに手をピンと上げ、アピールしながら声を上げた。

 

「プリンさん!フィニッシュいくね!」

 

 あきたんはポケットからマスク取り出し、頭に被り始める。全体は黒く組成され、瞳の部分はシルバーで縁取り、頬には紫色で禍々しい火を象った模様がデザインされている。俺はそのマスクに見覚えがあり、ついノリと勢いで叫んだ。

 

「――それはっ!純次がデビューして、3ヶ月しか被らなかったやつじゃないですか!」

 

「分かってる――!そうそう……!ドマイナーなやつ!」

 

 あきたんはマスクをパンパンと両手で叩きながら歓喜の表情を見せる。

 

 ――黒歴史なんて言えない……。ダサくて……。

 

 俺は懐かしみと物言えぬ恥ずかしさをしみじみ感じているのを尻目にあきたんは技を出す気満々な様子で撃ち落とされた蜂の一匹に視点を合わせていた。

 

 次の瞬間、あきたんは手を大きく広げ、後ろに仰け反り、ダンジョン全体に響くほどの咆哮を上げ、突進した。

 

 ――あの技は……カイザーパニッシュ。右腕を敵に突きだし、人体の胸部に衝撃を与えるラリアット技。

 

 まだルーキーだった頃の俺を一段上に導いたフィニッシュ技を再現する気だ!

 

 一気に彼女は蜂に風を切る様な速度で直進し、腕を蜂に近づけようとした。しかしその時――

 

「うわっ……!」

 

 技は失敗し、落ちてきた蜂と一緒にスキーボードのように地面を滑る結果となった。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 俺は心配になって、あきたんの下へ駆け寄る。

 

「いやあ……上手くいかないね!真似すればって強くなれるかなって思ったんだけどね……」

 

 あきたんはマスクを取り、笑みを浮かべ自嘲した。

 

 ――ほんとに好きなんだな。

 

「あ、巣から新しいの来たよ!」

 

 異変に気づいたか、さらなる蜂が巣から飛び出す。数は大凡十五匹。あきたんの情報によると一巣の生息数は約十五から三十。少々多めを引き当てたらしい。

 

 蜂が目の前に来るやいなや俺は地面を馬のように片足で蹴り上げ、宙に浮かぶ。天と地が逆転するような感覚を覚えながら蜂の一匹に狙いを定め踵で踏み潰した。

 

 

――2針目。前方と後方四匹同時に突き刺しにやってくる。俺は踏み潰した蜂を後方に勢い良く投げ飛ばし、二匹を墜落させた。

 

 前方の一匹のロケットビーの針は俺の腕に直撃した。少し嫌な冷たさと鋭さが腕に伝わる。

 

 ――だがジャガーには敵わない。腕に突き刺した状態で蜂を盾にし、他の群体を殲滅した。

 

 そしてそのまま俺はあきたんに目線を送りながら巣に向かってダンクシュートをするかの如く大きく飛び上がる。

 

 ――見てな。

 

 

「どりゃあああああ!」

 

 

 巣を地面に両手で抱え込み、自らの身体を巻き込んだバックドロップをお見舞いした。巣は衝撃に耐えかねてぱっくりと割れ、中にいた四匹の蜂と女王は衝撃から外へ出ていってしまった。

 

 

 一方のあきたんもその間即座に魔法で残り七匹の群体を焼き払いながら――

 

「――うわーお!バックドロップだあ!」

 

 と声をあげていた。

 

 

 ロケットビーの蜂蜜採りミッションは目標達成だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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