格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜 作:tetois
俺は配信の為に再びダンジョンへ赴いた。しかし、ダンジョンに向かっている時にいつもと違うことが起きた。
「すみません!プリンティスさんですか!?」
「サイン下さい!」
「俺大ファンなんです!」
俺はダンジョン待機所付近の駅辺りから多くの人に囲まれ、サインや握手、写真を求める人が大殺到する事態に陥っていた。普段俺はプリンの姿になってダンジョンまで行っていたが、このようなことは始めてだった。
二十人くらいに囲まれ、俺はファンの来訪に喜ぶ一方で何かしら対策を取らねばまずいという思いを抱いた。
「はいはい!あちらで伺います!」
俺はなるべく目立たない街の少し外れに誘導し、一人一人の要望を早くこなしていた。
「あっちにいるよ!」
「生プリンだ!」
二十人の対応が終わった後にも情報を聞きつけた者が雪崩のように来ていた。これ以上は引くのが安牌だと判断し――
「あ!私今からモンスター退治にいくんです!またね――!」
追いかけていたファンに投げキッスを飛ばし、全速力で撒いた。
異変は他にも起きていた。待機所のダンジョン攻略、配信者の反応だ。
「――見ろよ……あいつは!」
「あのデュラ骨殺しの――」
「魔法なしらしいぜ……」
俺の周囲でざわめきが聞こえ、視線が集まる。こんな経験は配信者になっては始めてだ。これ程の注目を集める理由……それは彼等が発する言葉にヒントがあった。
「最強ルーキーの――」
「管理局公認――」
あの管理局のセツナというもののブログ。それが影響していた。配信の準備をしながらも以前のバズる前の配信を見てみると全て再生数は十万超え。コメントも体感あきたんファンからのコメントの二倍程ブログ関係のものだった。
――この時俺は公式の影響がどれほどかを思い知った。
★
俺はダンジョンにあの後来て、バズってから二度目の配信の準備をしていた。一度目からは少し期間が空いているものの、今朝見た通り、管理局のブログというものはどうも影響力が絶大らしい。新規の参入も予測できる。以前来てくれた人にも新規さんにも応えなければなるまい。
それはそれとして気になることもあった。それは俺に対する視線だ。何となくだが誰かが俺をずっと監視しているような感覚を覚える。しかもどうやらそれはファンや待機所の人々が向けた視線とはまた違う。どこか刺々しさがあり、決して良い視線ではないということを勘が告げている。
――何かは心当たりはないが一応警戒しておくにこしたことはない。
その一抹の不安を残しながら配信を開始した。
「皆はろはろプリン!プリンティスです!今回はダンジョンを五十一階層から七十五階層攻略していきます!雑談もありますのでドシドシ質問くださいね!」
質問コーナーは実はアドリブだ。これは俺の作戦でもある。注目したのは同接数3500。バズってから一回目の配信の時よりも明らかに上がっている。前回3000で配信が終わったことを考えると最低500は新規。俺をウワサで聞いた者だと想定可能だ。
さらにまだバズって二回目。一回目に来た者もプリンを正確に把握できないと想定される。となると質問コーナーを実施すれば距離も縮むと考えたわけだ。
質問コーナーをするとなると次々と質問がコメ欄を通して飛んでくる。そしてそれはダンジョンのモンスターも同様に。
"魔法なしなのってガチですか?"
「はっ!そうですね……!拳のみの戦闘がこだわりなので、ちょちょい……。包帯巻いているのも魔法縛りでしてます!」
"片手だけで対応してて草"
"新参みてるか?プリンワールドはこれやで"
"骨馬もあながちまちがいじゃなさそう"
"ゴブリンの顔裏拳で破壊されてんだけど"
こうして視聴者との雑談は続き、階層は二階下、五十三階層へと来ていた。雑談をしながら和やかな雰囲気がコメ欄と俺に漂っていた。
「私が休日に何をやっているかですか!ありがとうございます!そうですね、最近はパンケーキを作りましたね。そうそうシロップもこだわり持って選択して――」
次々と質問に答える中、ダンジョンに響く一人の声が配信を別の方向へと変化させた。
「くくっ……私は待っていた……。そう静寂の闇の中で待っていたのだ……」
両腕周りに包帯を巻き、片目に眼帯、黒を基調とした服にマントを羽織っている。髪は肩くらいに伸びており眼帯の方に掛かっている女性がいた。齢は凡そ16ともいうべきか?
「くくく……影から様子を伺っていたがやはりどうも私たちは引かれ合うらしいな……。そうだろう?闇世界より出でし叛逆者よ!」
"誰だ?"
"なんか来た"
"乱入!?"
「我が字はダークネスエンペラー。貴様に決闘を申し込みに来た!」
五十三階層。ライブも始まってから少ししか経っていないというのに早速のアクシデントが起きた。
――なお、刺々しさを残した視点の正体は未だ不明だ。