格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜   作:tetois

2 / 63
第二話 純次

 

「帝王の名を言ってみろ!」

 

「純次ィ!」

 

「キャアアア!純次大好き――!」

 

「そうだこの俺こそ……チャンピオンだ!」

 

 かつてこの俺……石坪純次はプロレス世界チャンピオンだった。悪役レスラーとして輝き、帝王の異名を持った……自分で言うのもなんだがスターだった。

 

 だが俺は3年前プロレスラーを引退した。そこに求める物……、圧倒的強者がいなかったからだ。俺が格闘技の世界へ足を踏み込んだのはただ一つの単純な理由。溢れ出るこの戦闘欲求を満たす為だった。

 

 最初は良かった。何故なら自分はルーキーで上にさらなる強者が待ち構えている……ゆわばそのワクワク感があったからだ。

 試合がある度にこんな技を使っていただ、とんでもない強さだっただを周りに伝えてはさらなる強さを求めて無我夢中に修行していた。

 

 だが……ある時俺は天井へと辿り着いてしまった。そうチャンピオンになったのだ。勿論頂点に立ってからの目標もあった。十年はベルトを離さないという意地。その意地を元に格闘技を継続した。

 しかし、4年防衛戦を続け俺は次第に疑問を持った。あのルーキーの頃の様な刺激は無いのかと。そうワクワクもなくただ同じ事を繰り返し続ける生活に嫌気が差したのである。極みへと辿り着いた故の孤独感と新鮮さもなくただチャレンジャーを蹂躙し続ける普遍感……それを脱するためにプロレスを辞めた。

 

 

 次に俺が行ったのはサバンナでのサバイバル。命を掛けた生活ならば刺激になるのでは……?そう思い、単身で荒れ果てた地へと降り立ち、ライオンやトラ、ジャガーのいる場所でのサバイバルを開始した。

 だが困った事にそれでも駄目だった。何ならまだプロレスラー時代にいたライバルの方が強く感じる程に軟弱で直ぐに叩き潰してしまった。

 ある時はジャガーの肉を使って1人焚き火で焼肉をしたくらいである。

 

 

 そうしてサバンナでの3年間のサバイバルをした後に日本に帰国した。3年間ぶりに帰国した日本。そこであるブームを目にする。そう……ダンジョン攻略配信者ブームである。どうやら俺がいない内に日本では地殻変動が起こり様々なダンジョンなる物が構築されたらしい。

 

 それを始めて知ったのは帰国中の飛行機で放送されたラジオからだった。その後興味が湧き、有名動画サイトで配信を目にする。そこに映っていたのは未だかつて見たことが無い生物。そして空想の世界にしか無いと考えていた魔法や武器で応戦する配信者。その光景を観た時のあの感覚が忘れられない。どこか暗闇の中にいた心に陽が差した様な感覚が。

 

 配信を全て見終わった後、すぐにでもダンジョンに飛び込みたい、かつてない強敵と闘いたい気持ちになり、無職でもあった俺は配信の道に一直線に駆け出していった。

 

 しかし、この道には問題があった。それは素顔を見せずに配信をする事である。俺自身この道はプロレスラーの頃の知名度に頼らずに極めたいという思いがあり、尚且つマスコミから詮索されるのもうんざりだった為、顔を隠す必要が生じた。初期は般若面とハゲカツラを付けるという変人としか思えない格好で配信していたが、こんな穴だらけの変装ではいつかバレてしまう。それに加えて声を出せないので配信として致命的であった。

 

 この悩みを解決する手段を検索し出会ったのがバーチャル配信者。中は普通の人だが、外見を2次元キャラにして活動している者である。全体の外見をこの様に出来れば、そして声のトーンをキャラに合わせれば良い。そう考えた。

 そしてそれを実現する魔法が存在した。それが変装魔法である。人の中身以外のあらゆる要素を操作して自由自在に変化できる魔法。それを覚えた事でバミ肉配信者ロリっ子聖魔法少女プリンティスが誕生し、今に至るのである!

 

 

 因みに……何故今卵かけご飯を食べる程に貧乏になっているかというとサバンナでサバイバルしていた頃に信頼していた秘書が金を横領し、オンラインカジノに全額突っ込んだからだ。裁判も行い、相手に支払いを請求したが、自身の財産もカジノに投資していたらしく借金も抱えていた為、月の返済額はスズメの涙程度で生活が成り立たないレベルだ。

 

 という訳で時を戻そう。配信者を助けたところからだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「う……うーん……ここは?」

 

「あ!目を覚ました!もうダンジョンの外。安心して下さい」

 

「あ、ありがとう……。あの名前は?ぜ、是非助けて貰った礼を……!は、配信者だったら宣伝しますし……」

 

「ただのしがない魔法少女ですよ。別に忘れて頂いて結構です。それじゃあお体に気をつけて」

 

「ちょっと……」

 

 そうして俺は今日の活動を終えた。視聴者は一人もいなかったが一人の命を救えたからまあいいだろう。

 

 ……今日の夜ご飯がスーパーのもやし39円だけなのが嫌ではあるが……。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。