格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜   作:tetois

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第二十話 終わり

 

 

「キラー……」

 

 キラーを見つめたカイからは呆れに近い声が発された。まるでこの後キラーが何をしようとするか分かっているかのように。そのカイに気を取られることなく、キラーは俺に話しかける。

 

「犯罪者くん!これは人質というモノだ。俺の言うことを素直に聞いてもらおうじゃないか」

 

「望みはなんですか?」

 

 俺は憎たらしいキラーの顔に一発入れてやりたい程に怒りの炎が心中に渦巻いていた。その表情を見てキラーは更に調子に乗る。

 

「ふははっ……簡単なことさ。ダンジョンを出ていってもらうのはもちろん言うまでもないが、君には反省してもらいたくてな!このカメラに向けて私がハッキングしましたと白状するだけでいいんだ」

 

 キラーが要求したのはハッキングを自らの罪であると公表すること。犯罪者にはとことん地の底を味わわせ、社会的地位を無くす。それがキラーのやり方だった。

 

「もしも断ればそうだなあ……こいつを壊すかもしれないなあ」

 

 スマホを壊されるのはまずい。そもそも今でさえ生活はギリギリ。しかも、アカウントのバックアップはあのスマホだけだ。あれを壊されたら終わりだ。そしてキラーのことだ。ダンジョンにも戻させる気はないだろう。ダンジョン配信者の道も格闘家としての道も全て閉鎖させられる。

 

「キラー……!そもそもウルフに他人の人生をぶち壊す権利がどこにあるというの!私たちがやるべきなのはあくまでダンジョンの治安維持であって配信者を消すことじゃあ――」

 

 

 カイの反発にキラーは返事しなかった。そのかわりにカイの顔面にパンチを繰り出した。

 

「くっ……」

 

 カイはすんでの所で防御する。が鼻から血が垂れていた。

 

「だ――か――ら――甘いって言ってんだろうが!殺すぞ!これだから力だけ持ったクソアマはカスなんだよ!」

 

 キラーが繰り出す暴言にカイはこれ以上近づけずにいた。黙り込む様子のカイを見て、またニカッと笑い、キラーが喋りかける。

 

「さあ犯罪者くんよ!実は時間は有限なんだよ!自ら配信人生を終了させ、罪を償うか?それとも冤罪と訴えてスマホを壊されるか?好きな方法を選びな!」

 

 キラーからは乱暴にマイクを投げられる。こんな二択選べるわけがない。冤罪を認めスマホを取り戻す選択肢。これは自殺行為だ。かと言ってキラーにスマホを壊されても困る。

 

 ――強引にやつからスマホを取り上げようか?

 

 一瞬殺意にも似た感情が湧き出し始める。その瞬間キラーがイタズラそうに発した。

 

「あ!もう時間ギレ!」

 

 ――パリン!

 

 キラーの拳はスマホの画面全体を完全に貫き通していた。そしてキラーは足元に残骸を投げ捨て、全てを壊すと言わんばかりに踏み潰していた。

 

 瞳に無残な情景が映る。瞳孔が開き、目の前が紅に染まる。

 

 ――配信は終わりだ。

 

 

 

 

「あっ……」

 

 気づけば身体が動いていた。俺の拳はキラーの脇腹を捕らえめり込んでいた。

 

「くっ……ついに本性を現したか?」

 

 キラーは攻撃を受けながらも余裕そうに語った。キラーには黄色いオーラが広がっていた。

 

「今のが本気ならばとんだ期待外れだな。ふははっ」

 

 ――期待外れ?

 

 俺の顔が微小に歪んだのを見てキラーは調子に乗る。

 

「悪いが犯罪者くん。この世には自分より強いものがいるのはザラなんだ。今の一撃。赤子が触っているかのように弱かったぞ!」

 

 

 キラーは完全に勝ち誇ったような様子で俺に言う。あの一撃ならば余裕だと、所詮自分には到底及ばないんだと自負していた。 

 

 ――いいじゃん。

 

 キラーには一つ誤算があった。俺が顔を歪ませた理由。キラーに攻撃が通じなかったから?むしろ逆だ。まだ実力を出していいんだとそういう許可を本人のお墨付きで頂いたからだ。

 

 俺が見るに向こうはバフ魔法で身体強化を図っている格闘タイプ。ある程度やってもまあ死なないだろう。配信外だし問題もない。  

 

 俺は自然に不敵な笑みを浮かべる。

 

「なんだ?ハッタリか?まあいまからお前はハッタリすらできない身体にされるんだがなあ!」

 

 キラーは俺に向かって全速力で動く。俺はキラーを構えを取り、待ち構える。

 

 キラーが最初にターゲットにしたのは喉仏だった。手刀で俺の喉仏に突き刺さる。

 

「……どっ」

 

 キラーはニヤッと笑い、その後靭帯、胸の中心、腹部と次々に連続の突きをお見舞いした。キラーの戦闘スタイル。それは人の無事など考えていない。完全に人の身体を壊す、再起不能にさせるためだけの、自分の満足を満たす為だけの物だった。

 

 

「ふははっ……さっきの笑顔はっ!どこにいった!」

 

 地面に倒れた俺を見ても、キラーは攻撃を止めない。馬乗りになって何度も何度もパンチを繰り返すだけだ。

 

「かはっ……はっ……」

 

 俺は魔法少女の姿には似合わずキラーの攻撃が当たるたびに大量の唾液を吐いていた。その唾液の一部がキラーに掛かり、さらなるヒートアップを引き起こす。

 

「きたねえな……。ああ?」

 

 キラーは倒れかかる俺に全体重を乗せて踏みつけた。そして長い魔法少女の髪を強引に掴み、顔を地面に引きずる。あまりの一方的な試合にキラーは満足げな表情を浮かべ、狂喜していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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