格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜   作:tetois

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第二七話 ジャンボボムスライム

 

 来たと思った。

 

 心焦がれたボムスライムの親玉。縦幅は2メートルを超え、横幅は俺のボロアパート部屋の半分を包み込む程に大きい。ジャンボボムスライム。それに爆破耐性なしの丸腰状態で立ち向かう。普通のダンジョン配信者には自殺志願者のする行動に見えるだろう。だが俺はそれが、命を賭けたサバイバルこそが大好きなのだ。しかも今回は配信なし。自由に闘う事ができる。

 

 俺の頭にカイとの戦いがフラッシュバックする。全身が氷に包まれ、感覚が消え、凍傷が蝕む中、攻略する。あの感覚と似たものをきっと、このボスは与えてくれる。俺は充実感を感じながら拳を力強く握りしめた。

 

 目の前のスライムを正面から殴る。馴染みのあるムニュっとした感覚が拳に伝わる。普通のボムスライムならばこの後入念に身をとらわれないように気を遣いながら壁や地面に当て、何度も衝撃ダメージを与えられれば、倒すことが出来る。

 

 だがスライムと言えどもこいつはボスキャラ。そこまで甘くはない。拳で後ろの壁に吹き飛ばし衝撃を与えた瞬間、ジャンボボムスライムの半身が割れた。剣で一刀両断されたかのように線が入り、ぱっくりと二つの液体へ変化した。

 

 そしてその液体状のモノは直ぐ様二体のボムスライムに変貌し、交差するかの如く、俺の両腕を狙うまいと直線上に飛びかかる。

 

 俺は近くの柱に誘き寄せた後、わざと両腕に二体を纏わせた。二体のスライムは両腕どころか胸元すら包みこみ、チッチッと身体の内部から鈍い鼓動が響く。柱に自分の身体ごと突進させ、衝撃を与える。

 

 柱は胸元だけで倒壊し、スライムが身体から離れる。

 

 ――ぱっくり。

 二体が四体になる。

 

 四体に対し俺は倒壊した柱をチョップで割り、それを持ち上げ、スライムを一網打尽に薙ぎ払い、柱を飛ばした。

 

 ――ぱっくり。

 四体が八体へ。

 

 衝撃ダメージと分裂のいたちごっこ合戦。衝撃、分裂。衝撃、分裂。何度も何度も繰り返す。このジャンボボムスライムの本懐は分裂にある。こちらが幾らダメージを与えようが分裂出来ない程小さくなるまでは異常な体力を削り落とす事はできない。そしてボムスライムの軍勢を率いて爆破特攻することにより、確実にダメージを蓄積させ、生命を刈り取るのだ。

 

 気づけばジャンボボムスライムだったモノは五十体のボムスライムになり、俺を取り囲むように陣取っていた。振り回した得物はここまで分裂させるまでに爆破され、使い物にならなくなっていた。

 

 "キュウキュ!"

 "キュカー"

 "キュキュキュキュ!"

 

 三体のボムスライムが俺に襲い掛かり始める。三体ならばまだ対処できる。俺は空へ飛び上がり、集合したボムスライムを踏み潰した。下にいたスライムは分裂しない。相手も分裂限界が来ている。

 

 ――その時目の前に閃光が走る。

 

 腕で急いでガードしたが、袖は破れ、右手は微量な血を流れる。焦げ臭さが嗅覚を襲い、焼けたような痛みがある。

 

 爆破による霧が晴れ、取り囲んだボムスライムを観察すると、その内の七体が大砲の様な形をとっていた。

 

 ……三体のボムスライムはブラフだった。遠距離で身体に取り付く事なく、確実にダメージを与える陣営を相手は既に整えていた。

 

 まさにモンスター界の特攻屋。同志が幾ら消えようとも目の前の敵を滅するだけに行動する。彼らにはモンスターでありながらも目的を遂行するために向かう意志と、大和魂があった。

 

 だからこそ、俺は気に入ったのだ。その自身の身を焦がす闘い方に。

 

 大砲の向きと高さが変わる。今度は大凡左腹部を狙っているかのようだった。そんな俺に集中させないように今度は五体。ボムスライムが液体状になり突進してくる。

 

 一方で大砲からはドカンと鳴る音が二回。二玉射出された。俺は突進してくるスライム五体をまず引きつけ、身体をクルンと回転させながら地を這い動く。五体もホーミング弾の如く追跡。

 

 大砲から発射された玉は何もいない空間で爆破する。だがすぐに一玉補充される。

 

 ――多数対一の鬼ごっこ。

 

 だが俺はある事に気がついた。大砲以外のスライムはただ追尾する思考だけで動いている事。つまり迂回などで逃げ道を無くすという思考は特攻部隊にはない。

 

 そして一直線に特攻部隊は行動する。ここに勝機があった。大砲弾とホーミング弾から挟み撃ちされた時、俺は大砲弾に背を向け、五体のスライムをまとめて拳で回転をつけて大砲弾の方向へ投げ飛ばしたのだ。

 

 

 ボムスライムの特性――仲間と接触すると防衛本能から爆破ができない状態に陥る。それを利用し、一気に六体ダウンさせた。その隙に俺は大砲へ向かい、右ストレートで迫った。玉が目の前に迫ろうが関係ない。

 

 玉が右腕目掛けて爆破する。二の腕は焼け、拳には甲にとどまらない焼跡が出来るが俺は止まらない。そのまま大砲をぶっ壊した。

 

 そして円状に囲んでいた残りの部隊を直線上に吹き飛ばした。ボムスライムは消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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