格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜   作:tetois

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第三十一話 漆黒の糸

 

 復帰配信は予想以上に早そうだ。彼女と分かれた後、どんな方針でやるかは明確であったので、トントン拍子だった。アカウントログインが面倒くさかったが。

 

 考えは固まった。あきたんの時と同じだ。伸び方に完全に納得出来たわけではないし、俺としてはイマイチなのは変わらない。ただ、ファンのために少し頑張りたくなっただけだ。

 

 ★

 

 数日後、あきたんの貸し出しスマホを持ち、俺はダンジョン待機所へと来ていた。だが、そこはいつもとは違い、配信者や冒険者が多く集まり、騒々しい様子だった。彼らの声から察するに決して良い方向ではないように思われ、普段より待機所は相当狭く感じられる。

 

 俺は何の騒ぎか把握していない。全員共通の話題で持ちきりで、誰が来ようが気づかない様子だ。ともかく待機所にいる誰かに聞くのが早いと決める。

 

 ――一番声をかけやすいのは……。

 

 そう周りを見渡すと背中をとんとんと突かれた感覚が生じた。後ろを振り替えると見覚えのある眼帯が視界に入った。

 

「またもや相見えるとは……。闇の契約者プリンティス。そして私の同志よ」

 

 こいつが来るとは……彼女にまた配信を邪魔されると考えると胃が痛い。だがまだ始まる前。以前のようにもう一度注意すると声を上げようとする。

 

「――この騒ぎが何か。それを知りたいのだろう。理解するぞくくっ……」

 

 が先に手を打ったのはダークネスエンペラーの方だった。疑問を見通しているかのように答えるエンペラーについでに聞くことにした。

 

「その通りです。あと動画は――」

 

「動画?分からない。それはともかく本題に移るぞ」

 

 時間が勿体ないと言わんばかりに本題へ移った。

 

「闇の住民によれば!これは滅びの前兆だ。そう。ハルマゲドンは既に始動している。世界終末シナリオステージ2.5と言ったところか。この地は終末を回避しまいと祈る無力なホモ・サピエンスが――」

 

「ストップ!ストップ!」

 

 相変わらず訳がわからない。そもそもカイの氷魔法の影響はあの時受けているというのに一切彼女は懲りてないらしい。とは言え、重症患者にストレートで言って分かるだろうか。

 

「何か問題でも?」

 

「世界終末シナリオ……?その中身は――」

 

「何!?存じない……。ならば同志として……。我々が住まわせてある闇の魔獣。それが疼いているのだ……。どうだ感じるだろう……?」

 

 そう言い、ダークネスエンペラーは俺の頬に包帯の巻いた右手を強く押し当てた。

 頼むから分かるように教えて欲しい。切実に心中で願っている。

 

「困惑しているな。理解するぞ」

 

 ――こっちは何も理解できてないんだよ!

 

「つまり……闇の儀式に捧げるべき上質が闇へと繋がる道に存在する――。……なっ」

 

 

 俺は付き合いきれないと感じ、ダークネスエンペラーが語っている内に別の人の元へ足音を抑え、駆け寄ろうとした。

 

「すみませんそこの――」

 

 声を挙げる。

 だが……ダークネスエンペラーからは逃げられない。待機所という人が集まる閉所空間が災いし、回り込まれてしまった。

 

「以前は逃したがもう我々は運命共同体だ。二度と離れることはない。さあ!私を見ろ!そして私だけのモノになれ!」

 

「……アタマおかしいのか!闇闇闇闇言ってる厨二病ポエマー!」

 

 手を広げ、俺にしつこくアピールする彼女につい素で突っ込んでしまう。

 

「あ……いやあのごめんなさい。本音が……」

 

「闇エネルギー……!貴重な……!」

 

 どこからか漆黒の本を取り出し、それを開き、俺の周りをクルクルと周回するダークネスエンペラー。当然周囲からも変な目がくる。

 

 "なんだあいつら"

 "今大変な時期に"

 "騒がしくすんなよ"

 

 

「おいおい……。ダンジョンに入らないなら帰れ!漫才やってんじゃねえよ!」

 

 気の立った男が俺の前に立ち、注意する。髪に剃り込みがあり、右手にタトゥーを入れ、如何にも裏の方のような風貌だった。

 

「すみません!今から離れますんで!」

 

「そうか。それより気をつけろ。見慣れない巨大なモンスターがいるらしい。……何人も死傷者が――」

 

「その騒ぎで集まっているんですね?」

 

「ああ。じゃあとっとと行きやがれ」

 

 見慣れないモンスター……?ダークネスエンペラーが言ってる意味不明な事柄はこれを指していたのか。

 

 ――燃えてきた。

 

 復帰配信でそれに会えたならば。どれだけ好都合だろうか。ボムスライムに続き、刺激が続く。だからこそダンジョンは辞められない。

 

「で……そいつは仲間か?」

 

「……いえ。知らないです」

 

「なっ!?」

 

 すまないダークネスエンペラー。配信の邪魔をまたされたら困る。

 

「ならば俺が追い出そう」

 

 男は闇エネルギー回収中のダークネスエンペラーのマントを軽々しくひょいと掴み、俺の元から離してくれた。

 

「離せ!不敬なホモ・サピエンス!プリンティスよ!忘れるな我々は漆黒の糸でいつでも結ばれているということを!」

 

 負け惜しみのような言葉を聞きながら俺はダンジョン内へと向かった。

 

 

 "プリンティス!!?"

 "確かによく見たらあいつ"

 "プリンじゃ――"

 

 待機所の者も気付き始めている最中だったため、丁度良いタイミングだった。復帰配信だついに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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