格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜   作:tetois

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第三十三話 カラメルピース

 

 とんだハプニングがあったものの、無事にダンジョン内へ来た。出発点は百一階層。百階層より上部――ここからは敵も以前よりか歯応えが増すという。八十階層から出現したボムスライムなどの新たな敵は攻略者の中で百より先に行くことのできる者かを図る試練として扱われている。

 

 その事実を初めて知った時の俺はというと新しい敵にワクワクを隠しきれず、身体を動かさないと落ちつかない気分だった。そして今日、ダンジョンに入ってからというもの、跳ねたりジャブを打ったりしていた。

 

 ――それに今日は撮れ高があるかもしれない。

 

 待機所の男の一言。見慣れないモンスターがいる。俺は男の発言以外に情報を持っていない。だからこそ、そのモンスターがどういう姿か、能力は何があるかなどの予想をついしてしまう。

 

 ――もしデュラハンなら……、もしスライムなら……、もしオークなら……!

 

 何度も戦闘シチュエーションを重ねる。俺は期待していた。この先に待つモノを。一人のチャレンジャーとして。

 

 

「……よし!」

 

 身体のストレッチを終え、配信サイトを開く。ステージ開始。

 

「皆さんこんぷりん!復帰いたしましたプリンティスです!」

 

「前回は事故により申し訳ありません。あの後は解決できました。無事です」

 

 まずは謝罪。

 

 "心配しました!"

 "きたあああああ!"

 "復帰おめ"

 "大丈夫でしたか"

 "いやな、事件だった"

 

 配信が始まる頃の同接者数は二千五百。まあまずまずといったところだろうか。それにコメ欄を眺めていると。

 

 "あの戦いヤバかった"

 "来たわね正義の脳筋魔法少女"

 "初見ですハゲから"

 

 キラー事件の影響でやってきた初見視聴者も大勢いた。まだこのような注目をされることは慣れていないし、むしろ精々する。

 

 ただもうやることは決まっている。――さらにプリン沼に引きずり込めばいい。俺が釣り人なら彼らは餌に釣られた魚なのだ。彼らを二度と海に戻れなくしてやる。そのために新しいポーズも用意しておいた。俺は右手を右目付近に持っていき――。

 

「カラメルピース!キラッ」

 

 3秒で考えたポーズをとりあえず見せた。新しい要素。

 

 "いきなりどしたw"

 "新しい挨拶唐突で草"

 "嬉しそう"

 "ハゲの煽りかな"

 "草"

 

 謝罪からの少しだけ暗い雰囲気を晴らし、そして自身を吹っ切れさせるための合言葉。それがカラメルピースだった。 

 

 

 

 

 ★

 

 百一階層から始まったダンジョン配信。初のモンスターと遭遇する。最初に出会ったモンスターは子供オークの群れだった。

 

 だが……ただのオークではない。あきたんの仇。エヴォラドオークの群れ。

 

 "エヴォラド!?"

 "百からはやばいんだよ"

 "十、二十体くらいいないか?"

 "プリンこの量は……"

 

 子供とは言えボス格のモンスターの群れ。如何に百階層からのダンジョンが別次元かを示していた。

 

 オークがこちらに気づく。小柄ながら威圧的な足音をダンジョン内に響かせ、自身が作ったであろう不揃いなこん棒を持って突撃してくる。

 

「うわお!?何時ぞやの!……前菜としては十分に満足できそうですね」

 

 "前菜?"

 "いやまて"

 "※平常運転"

 "いつもの"

 

 正面から迎え撃つ。一体をアッパーブローで、その後も肘打ち、回し蹴り、ラリアットと一体ずつ撃破していく。あきたんの時に成人のエヴォラドはワンパンしている。困るほどではない。

 

 だが、一体だけ沈めきれなかったエヴォラドオークの子供がいた。そのオークのこん棒には他と異なり、一際巨大で、淡い輝く。そして顔や右腕には焼痕のような朱色の痣がある。

 

「もしかして……皆さんこれレア種!レア種ですよ!」

 

 モンスターにはレア種が存在する。レア種は他とは異なる一際目立つ特徴を持ち、通常の同種より高い実力を持つ。

 目の前にいるエヴォラドオークは子供とは言えども、測るにかつて撃破した成人のそれより強い。

 

 ――もしも成人になればさらなる成長を期待出来るのではないかと、つい思う。少し勿体なさを感じてしまった。

 

 

「レア種さん!勝負です!」

 

 その声が開戦の合図となった。レア種はこん棒をバットを振るかのように横に薙ぐ。成る程、レア種は戦い方すら異なるらしい。普通のエヴォラドオークは縦振りしかしらない。

 

 俺はレア種の横薙ぎを避けるべく脚に力を込め、飛び上がり、上部を潜り抜けようとする。

 

 が、レア種は突然動きを静止し、縦振りへと戦略を変化させた。……髪を掠めた。

 

 レア種との戦いはワンパンでは済みそうにない。成人ならばどれだけ強かったのだろうと、俺は妄想し、身体を微細に震えさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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