格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜   作:tetois

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第三十九話 ライの自宅へ

 

 

 早朝朝十時。ウルフのドラゴン討伐作戦実行の日。俺はライのアパートに来ていた。やつにはどうも任務に対しての意欲が欠けている部分がある。今回のドラゴン討伐作戦に関しては俺がメッセージをしても適当な返事しか返ってこなくなった。

 

 頼んでいたドラゴン出没地についても報告がない。

 

 だからこそ、討伐作戦のこの日に俺が直接来ることで無理やり任務に関わらせるようにする。プリンへの嫌がらせ、これはウルフとして最特記事項であり、必ずやらなければいけないことである。後輩に対して如何に必要かを俺は分からせる必要がある。

 

 アパート202号室がライの部屋。その前に立ち、腹に力を込める。

 

「ライ!出陣するぞ!」

 

 俺の叫びに部屋からは何の反応も示さなかった。ライはよく居留守を使う。以前から手でノックをしようがインターフォンを押そうが出ないことがあった。奴は朝弱いだの昼寝してただの緩くいつもの調子で決まって言うが正直疑いしかない。

 

「だろうな!出ないだろうな!」

 

 毎回出ない時にはどうするのか。簡単だ。部屋に出ざるを得ない状況にすればいい。ここはアパート。借り物だ。

 

 まず初めにしたのは鍵のかけられた玄関の引き戸のハンドル――それを持ち何度も力任せに前後に揺らした。揺らす度に何度も玄関からはギシギシとした音が鳴り響く。

 

「早く出てこい!玄関ドアを弁償するようになってもしらんぞ!」

 

 鍵を壊す勢いで音を何度も鳴らす。されど状況は変わらず。ライから返事が来ることはなかった。

 

「ハッハッハ!強情だなライ!」

 

 今回はライも余程行きたくないらしい。いつも通りならばこの時点で出るがここまで抵抗するとは思ってもいなかった。ライが予想に反して抵抗することに俺は予定が押しているのにも関わらず面白さを感じ、笑った。

 

 嗜虐心が刺激させられる。意地でもこちらのフィールドに引きずり込んでやる。ドアの鍵脅しが駄目ならば。……これはどうだ。

 

 俺は玄関に対して自身の頭を押し当て頭突きした。瞬間、先程とは段違いの――まるで地震が起きたのではないかと錯覚させるような地響きが鳴り響く。

 

「ライよ!居留守をこのまま使うならば俺が騒音問題を起こし、退去させてやる!」

 

 俺の頭はその辺の岩より固い。そんなのがドアに衝突するとなるとライの部屋だけでなく、その両隣の入居者の元にまで音が響くのだ。近所付き合いにおいて騒音とはトラブルの元。要因が俺であろうとも必ずライにも矛先が向く。そして次第にうわさが広がり、詰みとなるというわけだ。

 

「ええ――!困るだろうそれは!だから出ろぉ!」

 

 そこからの俺は加速し続けるだけだった。ただひたむきに何度も頭を玄関にどついた。破壊衝動に身を任せた身体には痛みなど存在せず、恍惚に惚けた。ライへの執着と加虐心。それが俺の発動機になっていた。

 

 

 だが幾度繰り返そうとライは出ない。そろそろ次の手段を――。頭突きしながら考えを巡らしている時、背中に針を刺すような気配を感じた。

 

 

「あんたうちの家になにしとん」

 

 

 何事か振り向くとそこには右手にレジ袋をぶら下げ、豹柄の派手な服に身を包み、厚い化粧をしたババアがいた。いくら化粧を塗りたくろうが肌にはハリがなく、シワも隠しきれていない。若々しいオーラなど微塵もなく、若作りに精を出しているだけのババアが俺に怒気を持って睨見つけていた。

 

「ああ?生き遅れは向こうに行ってろ!それとも――」

 

 俺は追い払おうと発言した瞬間、顔に熱い衝撃を感じた。鼻からは血がたれ、床に朱い水滴が落ちる。

 

「あんまおばちゃん舐めたらあかんで?……いてもうたろか?ほんまに」

 

 目の前のババアは右ストレートをかましていた。

 

 ――腹が立つ。

 

「――ババア。俺を侮辱したな?」

 

 睨みつけた瞳。床に付着した俺の高潔な血。それだけで死に値する。

 

 俺は右、左足でステップを踏み、空にジャブを切り、準備運動をする。

 

 瞬間、ババアの懐に入り、アッパーをかます。

 

「か……」

 

 怯んでいる間に俺はババアの服を掴み、202の玄関ドアに力強く押し当てる。

 

「ゴミは掃除しねえとなあ!」

 

 左手で死なない程度に首を絞め、右手と足でババアの腹に攻撃を仕掛ける。ババアは悲鳴を上げようとするが気管支が狭まっているために十分な声を出せない。

 

 肉体を殴りつける音が玄関に伝わり、部屋に反響していく。目の前にいるそれは打楽器へと成り果てていた。 

 

「……か、ふ……」

 

「はっはっ……!」

 

 顔面に目掛けて、後方から勢い良く頭を振り上げる。一発目から鼻骨が折れる音がする。

 

 そこから二発目、三発目。自分の存在が如何に尊大かを目の前のそれに刻みつける。

 

「ライ!玄関を空けろぉ!祭りだぞ!!!空けなければあ!このババアの死体をここに遺棄してやる!」

 

 二つの頭の衝撃が乗り、玄関から前とは比較にならない程の音が響いた。

 

 そして数え切れない程の試行を繰り返した頃、異変が起きた。

 

「うお――」

 

 前へ身体ごとバランスを崩しそうになる。

 

 がギリギリで耐えた。目の前の引き戸は型から外れ、上部が橋のようにリビングに掛けられていた。

 ババアはというと俺の足元に血溜まりとなって倒れ込んでいた。

 

 

「――ライ!」

 

 足元にいたババアを部屋に蹴り飛ばし、中へと向かう。が、部屋の様子がまるで違う。机に置かれた鏡と化粧水、リップ、金色のネックレスが掛けられたクローゼット。

 

「……本当にババアの?――まさか!」

 

 俺は急いでアパートの階段を駆け降り、自転車バイク置き場に無言で迫る。

 

「あいつッ!」

 

 ライは俺の追跡を絶つべく、ナイショでアパートを引き払っていた。――許さん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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