格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜 作:tetois
それぞれの持場で次の機会を狙う。どちらも一触即発の状況だった。
俺は右肩の損傷を軽くするべく破れかかった左腕付近の衣装を完全に破らせ、包帯のように応急処置をとった。
"えっっ"
"サービスシーンはこちら"
"いかがわしいゲームだろこれ"
"(本人はガチ)"
"にしてもやばいなこれ二重の意味で"
"サキュバスにはガチで感謝"
コメント欄はというと良くも悪くもいつも通りだった。ある意味俺はこの雰囲気が好きではあるのだが。
「…………ドラゴンさん強いです」
「でも勝つのは私です」
とにもかくにもヒットアンドアウェイの試行だ。何度も繰り返し、着実にダメージを増やさねば。
俺は前に躙り寄り、加速した。龍は遂に吠えた。咆哮とともに鋭く発達した爪が迫る。
回し蹴り。前脚の先端が割れ、血が噴き出す。
爪と言えども、横の力には弱い。
だが龍の爪は完全に意味をなさなかったという訳では無い。人とは違う鋼にも似た硬さ。足に痺れがつたい、バランスを崩す。
両者ダメージを受ける中。去れど前の敵を滅することを選択した。俺はさらに前進し、龍は残った左の爪、そして尾のコンビネーションで抵抗した。
スライディング。体を地面に滑らせ、どちらも回避し、再び懐へ。視線は龍の足元一直線だった。
"アクション映画か?"
"さっきから動きヤバい"
"スタントマンか何かで?"
"注 魔法なしです"
先程の部位は爪への反撃で相当くらっている。次に狙うべきは胸元。
ローキック。足が龍の身体に一瞬埋まり、龍が悲鳴を上げる。
「プリン百パンチ!」
拳の連撃攻撃。十、二十。このまま止め処なく、続けるはずだった。
異変。熱された鉄を触っているかのような感覚。
「……!?」
身体が勝手に反応し、後図さりした。
見上げた瞬間、視界に映っていたのは白銀の煌めきがさらに増し、息を吸い込む動作をしていた龍の姿だった。
ブレスを準備しているのは容易に想像できる。だが今までとは様子があまりにも異なりすぎている。瓦礫の残骸が浮き出し、龍の異常だとも言える呼気が目に映る。
本来獰猛で凶暴とも見える行動。だがその龍はそれ以外にも神々しさを持っていた。
その姿を見た瞬間、直感が告げる。
――やばい。
急いで倒れた柱の下に隠れた。
【ヴギャアカアアァ!!!】
咆哮とともに地面に着弾する白銀のブレス。視界が白銀に染まる。
★
龍が放った銀色の一撃。それは死の香り佇むダンジョンを更に地獄に変貌させる一撃だった。ダンジョン内そこらかしこにあった小さな瓦礫は殆ど焼き払われている。 目の前にある隠れ蓑とした柱も例外でなく、三分の一が熱により溶けていた。
身体はボロボロ。包帯代わりの破いた服は誰の目から見ても明らかな程、紅い液体が多量に滲み、膝や腹部は火で炙られた。
息は荒い。身体の動きのキレも悪い。再び攻撃を仕掛けようと前に踏み出すがその行為だけでも動きが勝手に一瞬止まってしまう。
――次に連撃を撃たなければ厳しいかもしれない。
身体に響くアラートを無理やり抑え込み、前進する。
戦いを辞めない俺に対し龍は突進した。身体を羽ばたかせ、風を纏うスクリュー攻撃。
俺は早くケリをつけるために手段を選ばなかった。もうどうなってもいい。その覚悟で正面から龍に素手で止めた。
接触した瞬間、右肩から血がさらに噴き出し、強風が身体を切り刻む。地面に髪の毛と服の断片が次々と落ちる。それらは紅色に変貌しつつあった。
「……っ!だああっ!」
気合で無理やり身体のリミットを解放した。限界を超え、右回転している龍を止め、左回りに反転させることで無力化させた。
完全に攻撃が相殺され、バランスを崩す龍。それに対して俺は懐に潜り込み、血塗れの状態で鱗を破壊すべく正拳突きを繰り出し、右蹴りで地面へと弾き飛ばした。
"うおおおお!?"
"火事場の馬鹿力てやつ?"
"ワンチャン?"
"頑張れえええ!"
――やれる。
火が残るダンジョンの中を走り、
……にちかづく。前脚にはちゃくじつにはいっている。このままちかづいて――。
――あっ。
かってにすべてがとまった。あたまもからだも。
めのまえがあかい。みえない。なにもかも。ひがもえるおとがとぎれとぎれに――。
「これで……です……」
みんなにとどいている?
あとすこし。ぜんしん。
それだけ。
ぜ……しん。
……しん。
たたかう
かつ
かってみせる