格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜   作:tetois

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第四十六話 彼女からは逃げられない

 

 いつもの俺ならば、有無も言わせずに断りをいれただろう。

 

 だが。

 

「分かりました。構いませんよ」

 

 断らなかった。必要がないから。もしも杞憂に終わったとしても別に構わない。

 

 ただ俺の予想からすると――彼女は見てみたいとそう願っている筈だから。

 

「くくっ……良かったな。だが小娘よ。私の許可がまだ降りていない」

 

 ダークネスエンペラーが立ち上がり乱入し、一瞥した。また俺と同類だからみたいなことを――

 

「私とプリンティスは二人で一人の契約者だからな」

 

 案の定言った。

 

 言った瞬間の彼女はあきたんに対し鼻を鳴らし嘲笑していた。その笑みには謎の自信と優越感を秘めていた。

 

「……なんか腹立つ」

 

「きゃん!」

 

 あきたんは今までのこともあってかついに苛立ちを隠しきれぬ様子でお腹に肘打ちを炸裂させた。ダークネスエンペラーは厨二的な声のヴェールを脱がされ、年相応の女性らしい悲鳴を上げた。

 

「……こ、小娘……。邪眼で焼き払ってやろうか……?何時までも寛大だと思うな。本来は貴様の存在なぞ異物な存在だということを忘れるな……」

 

 お腹を抑え、悶絶しながら声を震わせ怒りをあらわにする。目には俺にも分かるほどの闘志が含まれ、抑えきれぬ殺意が部屋を包む。

 

「ちょっとストップ!やめてください!あきたんやりすぎですよそれは」

 

「あっ――」

 

 しまったという様子でダークネスエンペラーに駆け寄り、痛みを和らげようと身体をさすり。

 

「ごめんね、つい」

 

 と謝罪した。

 

「……ふふ。私のお許しは高く付くぞ?」

 

 ダークネスエンペラーは声のヴェールは脱ぐことあれどもキャラから脱却することは決してせず、余裕の雰囲気を漂わせている。

 

 そして俺の目に視点を合わせ、距離を急接近させ、右腕に頬を密着させ、発言した。

 

「やはり私の同志か……。感じろ……。私は今……喜びに打ち震え、貴様のために魔獣を顕現させ……儀式を執り行うつもりだ……。どうだ分かるか……?」

 

 何度も腕で頬がむぎゅと押される。ダークネスエンペラーは期待の眼差しを俺に向けていた。これが貴様に送る最大限の祝福もとい呪いであるとそう言いたげであった。確かにそこに一人の少女の姿が瞳に映った。

 

 

「……わ、わかりまふぇん。ちょ……きついです……」

 

「分からないか……?ならもう少し感知出来るようにきつく押し当ててやろう……」

 

 

 唇が左側に歪む程にさらに力強く押し当てられる。

 

 ――少しあきたんの気持ちが分かる。うっとおしい。彼女は気でも触れているんではないかと本気で思う。

 

 俺は彼女の期待の眼差しをものの見事に裏切った。

 

 ちなみにあきたんはというと理解不能な光景にただ絶句しているようだった。

 

 ★

 

 結局、ダークネスエンペラーも修行についてくることとなった。というか連れて行かざるを得ない。ダークネスエンペラーは執念深い。最初に配信に出会ってからというものの、俺を同志に思い込んだ、ただそれだけでダンジョン内を追いかけ回し、カイの氷結魔法にも決して屈しない精神力の持ち主だ。

 

 そして俺への執着心は今回も発揮された。あきたんにすら痛みを与えられない程、あきたんの肘打ちに悲鳴を上げる程の弱さ。にも関わらず彼女は一般攻略者にとって魔境とも言われる百階層以降のダンジョンに侵入し、ドラゴンの近くに赴き、俺の耳をいつからか知らないが噛んでいた。

 

 闇の魔獣を飼っている厨二病仲間である、ただそれだけで自らの命を危険に晒し、俺を捕まえにくる。ある意味とんでもない人物だろう。

 

 こんなやつが今から同志が修行すると知った時、ご執心になるのは火を見るより明らかだ。

 

 大魔王からは逃げられないならぬ、ダークネスエンペラーからは逃げられない。

 

「ふふふ……くくっ……」

 

 連れて行くとなるやいなやダークネスエンペラーは救護室の窓を眺めながらずっと小さく笑い声を上げている。

 

 ――どれだけ嬉しいんだ?

 

 一人で怪しげな笑みを浮かべる彼女から一瞬で目をそらした。

 

「ところでプリン、修行って何するの?」

 

 あきたんが疑問を上げる。そういえばどこで修行するかということもメニューも何も決めていない。

 

「まだ実は決めてないんですよねえ」

 

 そう言って俺はドラゴンとの戦いを思い返した。敗因は一体なにか。

 

 第一に挙げられるのはブレスだろう。身体のキレが悪くなり、炎症の持続的な痛みで体力を奪った要因だ。最悪、スクリュー攻撃などは受け止めれば済む話だがブレスだけは只管直進とはいかない。何かしら対策を立てるべきだ。

 

 

 第二に挙げられるのはあの時の肩の傷。それの大元を辿るとサキュバス、つまり魅了に問題がある。もう一度ドラゴンの元に戻るとなった時にこうした状態異常を持つモンスターと出会う可能性は否定はできない。そのままドラゴンに直行も出来なくもないがそれは何か嫌だ。

 

 課題はブレスの対策、状態異常に耐えきる精神力、そして体力だ。

 

「……ダンジョンに行くのがよいかもしれません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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