格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜   作:tetois

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第四十七話 妙なセンス

 

「ダンジョンかあ……やっぱりそこが適性だよね」

 

 あきたんも修行場所にダンジョンを思い描いていたようだ。彼女は俺に強い同意を示した。

 

「……リベンジする相手がモンスターなら、修行相手もモンスターという方がいいですよね」

 

「そうだね。ただ……」

 

 あきたんは一瞬言葉を詰まらせて、続けた。

 

「一旦一日は自宅でお休みしようよ。病み上がりじゃあ倒せないし、リフレッシュも」

 

 

 

 確かに、今の身体はいくら回復魔法で治療されたとはいえ、本調子ではない。そしてなりより前回傷だらけで行った結果、ドラゴンに敗北したというのが事実だ。

 

 次のリベンジに備えこの日はリフレッシュし、しっかり修行した上で再挑戦する。彼女は妥当な判断をしていると改めて認識した。

 

「確かにそうですね」

 

「無理せずベストを尽くす。割と大切だよ」

 

 言ってのけたあきたんの瞳の中には一人の配信者としての自信があった。

 

「――と決まれば行こう。まずは救護室から出よ」

 

 あきたんは何の予兆も無く、バッグからぐるぐるメガネとマスクを取り出し、おもむろに着け始めた。

 

「いやいや……なんですかそれ?」

 

「正体隠し用のコスチューム。待機所ならまだしも外に行くなら必需品だよ。人の数今の時間は多いしね」

 

 ぐるぐるメガネとマスクの組み合わせ。明らかにどこからどう見ても不審者と勘違いされるに違いない服装。俺は思わず疑いの視線を向け、二度見した。

 

「あ、いる?もいっこあるよ」

 

「いやいりません……」

 

 ぐるぐるメガネの着用を望んでいるのかと思われた。変人だともしや思われているのか?

 

「あれっ?消えた!?」

 

 あきたんの手元から突然ぐるぐるメガネが消えた。

 

「くくっ……」

 

 突如として部屋に響く笑い声。その方向に目を向けると椅子に乗ってぐるぐると回っていたダークネスエンペラーがいた。

 

 足を組みながら、座り、格好つけている。やがと床を強く踏みつけ、回転を止めた。

 

「……成る程。魔獣への献上物としては悪くは無い」

 

 ……不審者が2名に増えた。

 

「もしかして欲しかったの?センスを理解してくれたの初めて!」

 

 二人の間に流れ始める和やかな雰囲気を俺はただ横目で眺めるだけだった。

 暫く眺めているとあきたんが先着二名だから楽しめないのごめんねとか嬉しそうに宣っていたが、特に何の感情もわかなかった。

 

 なお、ダークネスエンペラーが時々同志の俺にあきたんのぐるぐるメガネを奪ってつけさせようとしていたのは言うまでもない。

 

 ★

 

 ダンジョンの救護室の受付の元に来ていた。まずは手続きを済まさなければならない。

 

「あっ、プリンさんお怪我は大丈夫でしたか?」

 

「大丈夫です!」

 

「あまり無理はしないでくださいね」

 

 目の前の受付の女性は業務のためということはあれども、ひまわりのような笑顔を向け、目を合わせ、対応してくれた。

 

「あっ……。後はお見舞いの――」

 

 だがそんな彼女でさえ、付き添いの二人を見た途端、怪訝な様子になった。

 

「……結構個性的でいい人だと思いますよ!」

 

 受付の人は無理なフォローをした。まあぐるぐるメガネを着用した変人が二人、しかも一人はマスクつきとかいう不審者なのだから仕方ない。

 

 

「はは……」

 

 俺は空元気で笑うしかなかった。

 

「じゃあお気をつけて」

 

「ありがとうございます」

 

 そうして労いの言葉を貰い、俺は救護室を後にした。

 

 救護室を出ていくとそこにはダンジョン待機所があった。成る程そう繋がっていたらしい。

 

 ダンジョン待機所には人は少なかった。恐らくドラゴン騒動を理由にあまり人が来ていないのだと、容易に予想できた。いても二、三人程度だった。

 

 にも関わらず、その場にいた全員の視点は俺たちの方にそれぞれ向き、ざわめき始めた。

 

「なんだあのメガネ……」

 

「お笑い芸人か何か……?」

 

「眼帯の上から……?」

 

 

 ざわめきが聞こえる中、俺はダンジョン待機所の外へ出ていった。……恐らく、この時の俺は顔が恥ずかしさのあまり、紅潮していたと思われる。

 

 

「……逆に何故か目立ってしまったね」

 

 外であきたんが疑問を呈した。要因が身につけてあるそれだとは一切自覚していないようだった。あきたんもあきたんで妙なセンスを持っていると嫌に痛感させられた。

 

「くくっ……。私とプリンティスが契約者だと気づき、恐れているのだろう。……やはり闇の波動は隠しきれないものか」

 

 ――それだけはない。絶対に。

 

 

「明日ダンジョン待機所でまた待ち合わせね。それで連絡するから」

 

「はい」

 

「そういやダークネスエンペラーちゃん?はどうするの?連絡先持ってないし」

 

 確かにダークネスエンペラーは付いてはくるとは言ったものの、連絡先は誰も持っていない。

 

 一体どうするのだろうか。

 

 

「……必要ない」

 

 彼女としては意外にもきっぱりと断った。てっきり俺のを欲しがると思ったがそうでもないらしい。追いメッセージでもされるかと思ったがその可能性は潰えたことに俺は胸をなで下ろした。

 

「じゃあ現地だね。さっき言った時間ね」

 

 そう言ってあきたんは手を振り、視界から消えた。

 

 

「……さあ行こうか」

 

「??……どこに?」

 

「決まっているだろう……?」

 

 瞬間、俺の腕をきゅっと力強く掴んだ。

 

 成る程。連絡先が要らない理由がわかった。こいつ、俺の家までストーキングするつもりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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