格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜   作:tetois

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第五十話 お泊りしよう

 

「くくっ……さあ我々で始めようではないか……」

 

 ダークネスエンペラーはこのまま家まで付いてくる気満々なのは明らかだった。身体全体で俺を逃がさまいとばかりに縛ってくる。そしてなりよりも彼女の瞳。目を合わせるだけでも圧が、狂気にも似た激情が直接伝わる。

 

 はっきり言うと彼女はもはやただの厨二病患者というカテゴリには収まりきれない。明確に何かの一線を越えている。

 

 ただ幸いにも彼女は力は弱い。

 

 いざとなれば――。

 

「あ、良かったまだ――」

 

 ダークネスエンペラーの対応を思案する俺の耳に聞き覚えのある声が響く。ぐるぐるメガネを掛けたあきたんが戻ってきたのだ。

 

 だが戻ってきた彼女はダークネスエンペラーと俺の奇妙な光景を目にすることになる。その結果、彼女は言葉を詰まらせ、光景に対する疑問を口にした。

 

「な、何してるの?」

 

「小娘!貴様二度までにとどまらず、三度も邪魔するつもりか!」

 

 引き気味の声にダークネスエンペラーが絶叫した。俺にとってはあきたんの帰還は好都合だった。助けを呼びかけ何とか対処してもらうよう働きかける。

 

「あきたんヘルプ!この人私の家に泊まる気です!」

 

「あ――そういうこと。通りで――」

 

 あきたんは即座に理解した。恐らくダークネスエンペラーが連絡先を必要しない理由、それをすぐに察することができたからであろう。

 

 だが彼女に助けを求めたこと。それは俺にとって、全く予想打にしない方向に行くことになる。

 

「……私も行こうかなあ」

 

「……は?」

 

 思わず目を見開いた。ま、まさか。いや、それは流石にないだろう。

 

 ――頼む。あきたん、引っ剥がしてくれ。

 

 期待の眼差しをあきたんに向ける。

 

「確かに一緒に行ったほうが連絡いらないもんね。いいかも!」

 

「や……あの……」

 

「家で修行プランも考えられるし、なりよりプリンのおうちとても気になるし――」

 

 ――だめだ。あきたんも行く流れになりつつある。

 

「貴様っ――」

 

 勝手に一緒に行くと決めたあきたんに対し、ダークネスエンペラーは抗議の声を上げた。

 

 

「あ、エンペラーちゃん勿論急だからただでとは言わないよ」

 

 あきたんは何もなしでは反感を買われることなど既に承知しているようだった。

 

「一度殴っちゃったしチョコレイトアイスで手を打とうよ。闇儀式は邪魔しないからさ」

 

「ち、チョコレイトアイス……!?」

 

 目の色が明らかに変わる。ダークネスエンペラーの目の煌めきが増し、今にも食べたいという欲求が抑えられないようだった。

 

 

「……貴様っ。そ、そんな低俗なモノで闇の一族の末裔の私を懐柔できるなど……」

 

「今なら色違いぐるぐるメガネがついてくる!」

 

 決して屈せぬと、強固な意志を見せる彼女に次の一撃が襲い掛かる。ぐるぐるメガネの色違い。彼女を魅了したコスプレグッズ。

 

「し、仕方ない……。こ、これは……私が屈したわけでは……。あくまで同志への……」

 

 ダークネスエンペラーにとってはぐるぐるメガネ二本目は必要なモノだった。二本ならば同志である俺と共に着けることができる。それにプラスして女の子には堪らないチョコレイトアイス。

 

 彼女は分からされ、懐柔されたのだ。自分より経験の量が違い、年上のあきたんの策略にまんまとはまってしまった。

 

「よし!じゃあ家突撃前に買おう!」

 

「……いやいや私許可してませんけど!」

 

 二人の中でトントン拍子で進むお泊まり作戦に俺は異議を唱えた。二人の中で合意はしたが家主の俺はまだだ。

 

 確かにメリットはある。連絡を取る必要はなくなる。だが問題は俺の自宅がボロアパートだということ、そしてなりより今日は元の姿に戻ることができないということが確定してしまう。

 

 俺は素をこの一日見せることができなくなる。自宅なのにリラックスする時間がなくなるのはきつい。

 

「……そいやプリン、借りがあるよね」

 

 だが俺の反論を予測したかのようにあきたんは刺した。……救護室に送り、救出したのはあきたんなのである。こう言われると俺は弱い。

 

 エヴォラドオークの件はスマホの貸し出しによる復帰で帳消しになっているのだ。つまり今俺がまだ借りを返せていない状態になっている。

 

 そして――。いま気づいたが俺はダークネスエンペラーにも借りがあるのだ。理由はどうであれ、あきたんが救護室に連れて行く前までは彼女が気絶していた俺の管理をしていた。

 

 このまま断ることは容易ではある。だが、何と言うか、借りを借りたままにしておくのは何処か気持ちが悪い。

 

 

「……うっ。ま、まあそう言われると――」

 

「じゃあ大丈夫だね!やったあ」

 

 苦く了承した俺を見てあきたんは跳び上がった。もしも俺の正体を認識しているならば、憧れの私生活をみることが出来るのだ。そりゃあ嬉しいだろう。

 

「ところで何故戻ってきたんですか?」

 

「ん――何か言おうと思ったんだけど忘れた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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