格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜 作:tetois
翌日、俺達はついにアドミックドラゴンの待つダンジョンへと駆け出していた。
「いやあいざ百階層に来てみたら、ちょっと……」
ダンジョン内に入ってからあきたんは不安になりつつあった。修行についていくといったといえども五十階層のエヴォラドオークに奇襲されたことがあるのだ。
あきたんも逃走用の魔法を襲撃後、身に着けたらしいが、どうしても拭えないらしい。
「もしもやばそうなら置いていっても構いませんからね」
「わかった。ただほんとにヤバい時だけね」
安心させるべく、一言かけた。あきたんは了承はしたが、その声には覚悟があった。自分が言い出したことには責任を持つという意識を秘めていた。
「そういやエンペラーちゃんはどこまで攻略したことあるの?」
あきたんは疑問を呈した。この中で彼女だけはダークネスエンペラーの強さを知らない。
ダンジョン内と現実で必ずしも実力がイコールという訳では無い。ダンジョン内では身体能力以外にも魔法も評価の一つ。
あきたんからして見ればダークネスエンペラーは魔法が強い可能性もありうるのだ。いくら彼女が肘打ち一発で倒れる身体だったとしても得意な魔法で全て賄うことも可能なのがダンジョンの世界だ。
そして彼女の期待を後押ししているのが今までのダークネスエンペラーの行動である。何だかんだ彼女はあのドラゴンの周囲を駆け、俺の耳を噛んでいたのだ。その事実は強い。
「百なんぞ塵。この闇の魔法を持ちさえすればな」
「おー!なら私も安心!もしもの時はお願いね!」
「くくっ……」
両目を閉じながら強気に応答したダークネスエンペラーの声は若干震えており、汗をかいていた。
……俺だけは真実を知っている。
――後々が少し不安だ。
"ヴギャギャギャギャ"
談笑しているとモンスターが現れた。前回の配信では現れていないモンスター。焔を思わせるような朱い体表、人と同じくらいに発達した手足に、両手に剣と盾を構えている。
「り、リザードマン!?」
あきたんが驚きの声をあげた。彼女が驚いた理由は、このリザードマン、要所要所の特徴こそ変化はしていないものの、従来のそれとは明らかに様子が異なっていた。
本来のリザードマンより二回りも巨大、かつ口元には強靱な牙がはっきりと見えるほどに大きく、そして鋭く発達し、焔に身体全体が包まれていた。
明らかに様子が違う。
――アドミックドラゴンと同じだ。
そう察することができた。アドミックドラゴンが中ボス部屋に居座り始め、リザードマンも見たことのない進化を遂げている。
あのドラゴンがダンジョン攻略者たちが近寄らない間に随分と自分が暮らしやすいように改造したらしい。
"ヴペァ!"
"ヴペエ!"
一匹の鳴き声に反応し、二体、三体が来る。彼らはヨダレを床に垂らしていた。
「うえ……きたなっ!」
あきたんがヨダレを見た瞬間、拒絶反応を示し、火球を飛ばす。以前ロケットビーに飛ばした火球。
しかし、ここは百階層。待っていたのは無傷の状態のリザードマンだった。
”ゴガガガカァ!"
カウンターと言わんばかりに二回り大きい火球が俺達の前に飛んだ。
「よっ」
俺は即座に火球の前に立ち、拳で受け止め、火の玉をかき消した。
瞬間、火の玉で視界を奪われた俺を襲い掛かるリザードマン三体。三体とも剣を振り上げ、今にも攻撃しようと構えている。
俺は足をかけた。バランスが崩れる三体。隙を見計らい、俺は端の二体の顔を手で抑え、そのまま真ん中に叩きつけた。リザードマンのサンドイッチ。意識が狩られるリザードマンに向けて追撃の蹴り。
三体は壁へと叩きつけられた。
「……さすがだ」
「ありがとう」
二人の声が耳に届く。あのドラゴンと戦うための修行なのだ。この程度は突破しなければ夢もまた夢であろう。
★
それからも変わりなくダンジョンを攻略し、歩みを進めた。幾ら変化しているとは言えども俺にとっては元々に一、二本毛が生えた程度だった。
とは言え、今回であのドラゴンはやはり計り知れない力を持っていることを改めて理解させられた。ただ強いだけでなく、周囲のモンスターに変異を起こすことが出来る。数々のボスを過去に倒してきたがやつはその中の大物であると自分なりに結論づけた。
今来ているのは百二十五階層。つまりアドミックドラゴンが待ち構える場所。ここで対ドラゴンに慣れておく、それこそが俺の修行の本筋だ。
暫く階層中を歩き、ついに出会う。
視界には明らかにアドミックドラゴンと思われるモンスターが捉えていた。