格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜   作:tetois

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第五十八話 切り札

 

ほぼ同時に動いた。俺は前のように前進、白銀はそれを待ち構えるかのように臨戦態勢へと入る。

 

 襲い掛かったのは尾と翼から発せられた風の波動。二つの入念に研がれた懐刀が俺を捉えようとする。左右からの横薙ぎ。俺は身体を捻らせ、双刃を飛び越える。

 

 一戦目とは違い、ダメージを負ってないというのもあってか身体が自然に動く。羽が生えたかのようだ。

 

 そのままの勢いで白銀の懐に潜り込み、以前ダメージを与えた前脚へターゲットを定めた。

 ローキックに、正拳突き、連鎖攻撃を銀龍へと食らわせる。

 

「おっと!?」

 

 銀龍は直ぐに反撃したのを見計らい、俺はバックステップで距離を取る。喉元から反撃の焔を自身の足元に照射しようとしていたのだ。

 焔に包まれようとも白銀の龍は平然としている。

 自身の毒にはやられないというやつだろう。

 

 だが俺には確かな手応えがあった。拳や脚の擦れる感覚。そして視界にはっきり映った白銀の龍の皮膚。始め、以前ダメージを与えた皮膚は銀色を取り戻していた。しかし、俺が刺激を与えた瞬間、銀の組成は僅かながら、確実に崩れ始め、少しだけ鈍い紅色が見える。

 

 完全に傷は癒えきってはいない。それがこの龍を倒す糸口の一つになりそうだ。

 

 俺に休まる暇はない。次に来たるは体力の限界に追い込んだ突進攻撃。焔に包まれた身体のおまけ付きだ。

 

 ――これも対応できる。

 

 龍と俺との距離が目と鼻の先になった瞬間、俺は地面ギリギリに滑り込んだ。龍の首と俺の心臓が交差する。刹那、俺は腹部に潜り込ませた右脚を跳ね上げた。

 

 宙を舞う龍。そこに拳を一発。

 

 ――正面から受けるのではなく、身体で流し、カウンターを決める。体力の温存と攻撃を両立させた方法だ。

 

 "キレが良いし勝てるか?"

 "最初は良さそうで草"

 "前回の攻撃はいけてるな"

 "初見やけど中々やるじゃない"

 

 龍が不時着する。舞い上がる粉塵。その中で一歩一歩と近付く。恐らくあのドラゴンはまだフルパワーではない。尾に焔、風、反撃の方法など幾つもある。十分に注意しなければと確実に足を踏みしめた。

 

 霧が晴れた。白銀の龍は意外にも反撃をすることもなく、咆哮も上げることなく、ただ態勢を立て直し佇んでいた。

 

「……?」

 

 嫌な予感がした。静寂は何かの前兆とも呼ぶ。

 この白銀の龍の様子からただ自身の実力の無さに立ち尽くしているとは到底思えない。明確な敵対心を秘めている。

 

 俺は白銀の龍の元にただ駆けた。

 

 ――……!

 

 足元の違和感。頭上を見上げる。

 龍は佇んだまま俺を見下ろしていた。龍が上に行ったのではない。俺が下降していたのだ。

 

 尾の一閃により数多も切り刻まれた線。それにより地割れが起こった。またたく間に俺の立っていた場所は崩れ去る。

 俺は分断された地面の欠片を利用し、闇に飲み込まれぬように地上に帰還しようとする。

 

 地割れの影響により倒壊する二本の柱が障壁として立ち塞がる。拳による粉砕。

 だが、俺は気づけなかった。この瞬間こそが白銀の龍の狙いだったことに。

 

 破壊した瞬間、柱により視界の塞がった俺に待っていたのは白銀に輝く焔だった。

 

 ★

 

 白銀の焔。それは俺の身体の至る所を焼き尽くした。

 

「……」 

 

 だが俺は地上に帰還した。崩壊する地面の欠片を道標に。龍の立っていた地面に片手で掴み、身体を跳ね上げたのだ。

 

 ――動く。白銀の焔は確かに俺を燃やし尽くした。が、それが勝負を決する一撃にはなり得なかった。

 

 白銀の龍は誤算していた。以前の深手を負わせた一撃。それを狡猾に食らわせさえすれば大丈夫だろうと。以前との余力の差。そして前回の戦いから学んだ痛みの予測が誤算の要因だ。

 

 すかさず銀龍は息を吸い込む動作を行おうとする。瞬間、俺は龍に向かって足を跳ね上げ、飛んだ。身体を伝い行き着くは龍の喉元。

 

「ブレスを吐き出させない魔法を喰らえ!」

 

 全身で首を絞める。白銀の龍から鳴る鈍い音とともに喉元から色が徐々に霞み始める。

 それを見た後、俺は力の方向を下へ動かし、地面に龍を倒れ込ませた。

 

 "ブレス封じ!?"

 "対策きったああああ"

 "結構良い感じじゃね?"

 "それは魔法じゃなくてただの脳筋"

 "この人前から思ってたけど魔法要素どこなん?"

 

 龍は地面に背中から衝突する。途端響く悲鳴。

 

 ――まだいける。

 

 首を絞め続けこのまま有利な状況に抑え込めば勝機があると思考し、只管龍の動きを止めることだけに集中しようとした。

 

「……!?」

 

 無意識に身体が動く。離れた瞬間にどこからか熱線のような物が首元向けて照射されたのだ。一本ではなく、何十本も。

 

 熱線の一本が柱に偶然にも流れ弾として照射される。触れてすぐ、柱は夏場に放置したチョコの如く、いとも簡単に溶けていた。

 

 龍を見つめると銀色だった身体全体が少し紫を帯びている。切り札がついに姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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