格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜 作:tetois
紫に少し帯びた身体が銀色へと戻る。俺が熱線から逃走した間に白銀の龍は既に態勢を立て直していた。
気になるのは熱線が一体何処から飛んできたのか。
――以前の戦いではこの攻撃は受けていない。完全に初見の技だ。
威力も申し分ない。一つ当たっただけで柱が溶解するレベル。白銀のブレスも大概ではあるが、こっちはそれも超えている。
「……」
こんな攻撃をまだ隠し持っていたとは。
"紫ビームこっわ"
"インフレの極みみたいな攻撃やめーや"
"なんかかすっただけの床も焦げてませんか"
"難易度イカレてて草"
コメントは白銀の龍の攻撃に驚きを隠せない様子だった。彼らにとっては討伐したかと思えばまた一難。
白銀の龍による大立ち回り。歌舞伎の名悪役と言えるだろう。
――停滞は直ぐに終わりを迎えた。
白銀の龍は俺に対して火球を飛ばす。
何の小細工も無く、ただ直線を狙った牽制の火球。俺は警戒しながらも横にずれる。
横に移動した瞬間を見計らったかのように既に白銀の龍は手を用意している。今度はスクリュー攻撃。風を纏いながら自身の身体を回転させ、俺を回避狩りするつもりだ。
ビル風の様な音を出しながら突進してくる龍。だがその攻撃は前回に見ている。俺は最初と同じように姿勢を屈め、カウンターに備えた。
龍の下を潜り、蹴りの一撃。白銀の龍はそのカウンターに対し、風の中か何の反応も示さない。
「……?」
そして俺も違和感を持つ。蹴り上げた足の感覚。そこには風の切るような痛み以外にもう一つ。
――痺れ。微量ながらビリッとした感覚が足に伝わっていた。
そして変化は衣装にも出ていた。自らのニーハイ、きらびやかなスカートの先が焼け焦げていたのだ。
攻撃をきり抜け、俺が後方を向いた時、白銀の龍の身体は既に紫色を帯びていた。
【ヴギャアカアアァ!!!】
龍は咆哮した。咆哮はダンジョン内の空気を揺るがす。それと同時。紫に帯びた身体の汎ゆる部分から何十本もの熱線が出され、俺に襲い掛かる。
"紫=ビームか?"
"シューティングゲームじゃねえんだぞ!"
"クソ攻撃やめてね"
"追尾弾か"
"さっき柱溶解してなかった?そのビームやばない?
"プリンどうする!?"
白銀の龍の身体から放たれた何十本ものビームが追尾してくる。その追尾を俺は切り抜けまいと逃走を図る。
だが白銀の龍は俺を逃がす気はない。
組んだ逃走経路の先に火球を飛ばす。
追尾弾と火球のダブルコンボ。俺は逃走経路を変化させながら逃走を続ける。
あの柱の溶解を見ても分かる。あの追尾弾は当たればそれだけで相当なダメージは免れない。
追尾弾を何かしらの方法で無くす必要がある。
「ならっ――」
俺は追尾弾を消す方法を固めた。溶解した柱の例を見る限り何かしらの物体に当たれば、それでしまいの一発だけ。
俺は只管に逃走しながら熱線を消す方策に出ていた。柱を蹴り上げて宙を舞い、着地、壁に引きつけてギリギリで回避。それだけでも正直な一、二本は消す事はできた。
そして真の狙い。――白銀の龍の火球の供給が追い付かなくなった瞬間、俺はヤツの元に向かった。
"追尾弾を当てるつもりね"
"ドラゴンに効くのか、、、?"
"あ――そゆことか!"
"ドラゴンさん効いてくれ!"
"コレだけ走って体力の底見えないのは何?"
ライブコメントも察しの良い視聴者は気づいているようだ。俺は白銀の龍の反撃が追いつく前に、直ぐに駆けた。
身体のエンジンを全開にし、風を切る。短距離走の選手の如く。
白銀の龍の懐近く。俺は周回する逃走経路に変更した。火球を飛ばしながら応戦する白銀の龍。
だが懐というのもあり、狙いは悪い。そして背中側に来た時。俺は火球を飛ばす龍を正拳突き一発と蹴りで吹っ飛ばした。
俺を追っていた追尾弾は否応なしに龍に当たらざるを得ない。当たった瞬間に怯む龍。
勝負を決めるならば今――。
俺は怯む龍に対し、突っ込もうとした。
「ちいっ――……」
――回避は間に合わない。
左肩に焼けるような痛みが走り、目の前の地面が焦げる。殆ど全てを龍や壁、柱に当てたはずの追尾弾の二本目がまだ生きて、俺の身体を掠めた。
「くっ――」
掠めただけでも威力が段違いと分かるほどだった。肩の焼けは次第に腕、右鎖骨付近へと次々と痛みを伝達させる。
反射的に俺は肩を抑えた。静かに多量の血液が肩を染める。
白銀の龍は備えていた。追尾弾の大量のビームはフェイクとして、追わせる。真の狙いは別軌道の二本だった。
そう、自らを守護する盾としての弾を。しかも気づきにくいように横回転でなく縦回転として。
【ギュルルガガガ……】
追尾弾を多量にくらった龍はというと自身の攻撃だからだろうか、あまり決定打にはなっていない。
だが今までの背中への攻撃は確かに以前の古傷を抉っている。それを証明するかの如く背中は銀色を失いつつあった。
片方は肩、片方は背中と懐。古傷が勝負を分ける。