格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜 作:tetois
緊張感漂うダンジョン。次の攻撃はビームか、突進かそれともブレスか。俺は白銀の龍の出方を伺っていた。戦略としては懐もしくは背中に一点攻撃をするのが一番良いだろう。
近づくための懸念点であるビーム。判明しているのは二つ。追尾型であるということと、分離して動く弾が存在していること。
特に後者は威力もあり、油断は禁物だ。あの龍がどこに狙いを定めているのか……。見極わなければ。
"ビームくんさあ"
"まあまあ難所?"
"プリン頑張ってくれ!"
"気にする要素多くて草"
コメントも次第に熱気を帯びていく。熱気の中、俺は白銀の龍に突っ込んだ。
見慣れた白銀の尾が俺を襲う。俺は冷静に、次の攻撃に注意をはらいながら、尾を飛び込えた。
様子を窺い、右後方。微かな紫が見える。不吉の予兆かの如く。
「――来ますね」
俺はビームに追いつかれまいと速度を一段上げ、懐に迫る。虎穴に入らずんばなんとやら。懐に近づけば身体からのビームが直撃する可能性がより上がるだろう。だが、それをうまく撒けさえすれば後は攻撃に専念できる。
【グガアアア!】
咆哮が俺の耳を揺らす。瞬間、ビームは照射された。
「嘘!?いきなり!?」
偶然にも俺の真正面。龍の胸からビームが来る。空に落ちる流星に似た速度で。
動揺を誘われそうになるが、俺はあくまで冷静にくるんと宙返りをした後、頭スレスレまでビームが落ちるのを待つ。そして引きつけた所で俺は回避行動を取り、地面に当てた。
一本終わってもまだ来る。後方から遅れた追跡者。その数二十。
逃走の最中、道の真正面に紅い焔が噴き上がる。
「うわっ!」
――挟み撃ち。俺は懐への直進を辞め、迂回する。その間にも白銀の龍の咆哮は止まない。咆哮とともに更なるビームが身体から放出されていく。
"何本出るねん!"
"某逃走番組じゃねえんだぞ!"
"束縛系彼女ドラゴンくん"
"↑やめろ……"
"こうもなるとうっとおしい"
焔とビームのダブルコンボ。俺は策を取った。攻撃を少しでも当てる機会を増やすための策を。俺はビームから逃走し、まだ倒壊していない柱へと辿り着く。
「えーい!ふんぎゅ――!」
可愛げのある声を込めて、柱をぶん殴り、分離したそれを力を込めて持つ。
「来るなら全て撃ち返してやります!」
ビームが迫り、今にも身体を猛スピードで貫こうとするタイミング。俺は柱を投げた。
何十本のビームは柱に吸い込まれ、接触した瞬間、溶解が始まり、相殺された。
その隙に乗じ、俺は龍の古傷……、懐へと向かった。様子に気づいた龍がブレスで追おうとするが遅い。全速力で駆け出す。
攻撃できる機会はそこまでないだろう。離れた瞬間にまたもやビームや尾やらをされてはたまったものではない。今回偶々火のブレスという懐まで届かない選択肢を龍が取った。絶好のチャンスと言える。
この機会を最大限に活かす為には――連続攻撃でなく、力を込めて思いっきりの一撃を叩きつけるべきだ。
加速とともに最大級の攻撃を。まだ前回より余力は十分にある。
「頼みますよ……!」
血が流れる右肩を奮起させて、腕を構えた。そして――。
「どりゃあ――!」
全開フルパワーの右ストレート。一発の勝負。龍の皮膚と拳が擦れた瞬間、鈍い音が響く。
【ガッ!?】
紫のヴェールに包まれている銀色の皮膚は崩壊し始める。古傷の影響もあってか、鱗のヒビと変色は懐だけに留まらず、胸までも到達した。
"つっよ"
"ワンチャン行ける説"
"ドラゴンくん遂に悲鳴を上げたな"
"ここがお前の死に場所だ"
"やはり暴、暴が全てを解決する"
【ギュルルガガガガガ!!!】
だが、攻撃を許したのはそれまでだった。白銀の龍は紫のヴェールをさらに強く纏わせ、衝撃波で俺を吹き飛ばした。
「っ……」
再び懐まで行く流れのやり直し。
「――もう一度というわけですか」
白銀の龍は紫色を濃くしたままだ。これ以上傷を付けまいとあのビームをまた出すつもりだろう。防ぐ柱はもうない。後は今までの龍の暴れっぷりで全てボロボロに分解されている。
どうにかして次の一撃にもう一度繋げなければ。
俺は今までの戦闘を回帰した。――この白銀の龍の隙は一体どこか。
何か違和感がある。それを掴みさえすれば――。
だが白銀の龍は思考する隙すら与えない。再びビームを咆哮とともに打ってくる。俺は否応なしに対応せざるを得なくなり、再び相殺へと動く。
それを予測した龍。白銀のブレスを構える。
……ブレス?
俺はその光景を見た刹那、今までの記憶が繋がり始めた。ビーム攻撃をする時はどの時も決まってブレスとセットだ。
ビームは威力も申し分ないが一番の強みは機動力を制限させることにある、と俺なりには考えている。それを踏まえると龍にはビーム攻撃の後にスクリュー攻撃などの重たい一撃を食らわせたり、尾と挟み撃ちにして、外傷を増やしたりする選択肢もあったはず。
だがその選択を龍は紫のヴェールを纏ってからというもの、一切しない。まるで始めから出来なかったかのように。
――そこか?
賭けてみる価値はある。