格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜   作:tetois

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第七話 いざボスへ討ち入り!

 

 ゴブリンやケルベロスとの戦いの後も配信は順調に進み、目的地である五十階層まで来ていた。

 

 ダンジョンは五十階層毎にボスキャラ的なモンスターが置かれる設計となっている。当然ながら今までの階層にいたモンスターとは段違いの強さを誇る。五十階層を攻略できるかどうかが配信者の強さの基準とも言われる。

 

 辿り着いた五十階層は空気がまるで違う。他にいたゴブリンやスライムなどの大量のモンスターは一体もいない。広いエリアの中で自身が床を踏みしめる音と柱の松明がパチパチと鳴る音しか聞こえない。余りにも静かすぎる環境に俺は少し緊張感を抱く。そしてそれは視聴者も同様だ。

 

 "来たな……"

 "五十階層はいつ敵遭遇するか分からないのが好き"

 "はよはよはよはよはよはよ"

 

 

 視聴者のボルテージが上がる。配信の正念場はすぐそこにある。俺は拳をきゅっと握りながら前に進む。しかし、ボスは中々出てこない。

 

「いやあここまで静かだと……不気味ですね!こわいこわい……」

 

 

 "こわいのはお前"

 "ボス「こえー(KONAMI)」"

 "ゴブリン100体刈りが何言ってんの?"

 "逃げた説濃厚確定"

 

 

 コメントが盛り上がりを見せる中ついにボスが姿を現す。薄暗がりから見えた二体のモンスター。一体目は骨で組成された馬。動く度にカランコロンと軽い音が静寂に響き渡り、目は黒く滲み、蒼色の炎が身体の周囲を包んでいる。

 

 もう一体は地獄の使いの上に騎乗する鎧。頭は無く、代わりに紫色の炎が燃え盛り、自身の身体の二倍程の大剣を軽々しく振り回している。

 

 

 "デュラハンきったあああ!"

 "スケ馬引き当ててて草"

 "五十だと一番やばくないか?"

 "ボスガチすぎて草"

 "エヴォラドの仇討ちか?"

 "デュラ骨は普通にヤバい"

 "エヴォラドの次これ!?五十の裏ボスやん!"

 

 

 ――デュラハンとスケルトンホース。五十階層ではランダムに湧くボスの中でもレアキャラ扱いかつ一番強敵のモンスター。なるほど面白くなってきた。

 

「おー!ついに出会えましたね!では早速……バトって行きましょう!」

 

 

 その一言を漏らした後、すぐにボスに向かって駆ける。向こう側もいざ尋常にと言わんばかりに骨の馬をけたたましく鳴かせ、骨音を響かせる。

 

 

 正面から来る俺に対し、馬は円状に迂回し、騎士は淡く輝く白銀の剣を向けてくる。1秒1秒近づく度に大剣は大きさを増す。

 

 クルンと下を通り抜けようと身体を曲げる。

 

 違和感。身体に20キロの重りがあるみたいだ。

 

 ――これはっ……!

 

 

 剣先は俺の身体、右腕を捕らえ薙ぎ払った。

 

「いったあい!」

 

 黄色い悲鳴が静寂に響く。微量に右腕に朱色の液体が垂れ、服が破れ、右肩、鎖骨が露出した。重さ――。騎士はデバフ魔法を活用し俺に攻撃を当てたらしい。

 

 

 俺の……相手がどんな技を使うかを一切事前に調べないスタイルが影響したか。 

 

 ――やるじゃねえか……。

 

 俺は騎士へ不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 課題は……機動力だ。 

 

 騎士は馬を使い駆ける、そしてこちらの素早さを低下させる。ならばどうするか――。

 

 

 "デュラハンやっぱつええな"

 "デバフ解除解除!"

 "プリンいける!?"

 

 またもや骨の音が部屋に鳴り響く。後ろを向く。今度は右だ。素早さをデバフされている以上、初動で早く動く他ない。

 

 

 剣先が来るであろう位置。それを予測し、位置をとり、手を構える。

 

 ――俺がいる位置。それは骨馬が迫る正面。騎士は馬をムチで叩き、脚を上げた。

 

 ――そこだ。

 

 蹴り飛ばそうとする馬の脚。それを俺は両手で防御し、動きを止める。

 

「捕まえました!」

 

 素早さがダメならばパワーでねじ伏せればいい。地面に片手を置く。そして地面に置いた片手と脚力を軸に1回転し、後ろへ二匹のモンスターごと投げ飛ばした。

 

 そしてバランスを崩した刹那、俺は無数の骨に正拳突きを繰り出す。

 

 

「プリン式プリティパーンチ!」

 

 目の前の骨の集合体は秒数を刻む度に次々とバラバラになり、一本一本が砕けちる。

 

 そして最終的には馬は粉になっていた。

 

 "プリン鬼つぇえ!このままデュラハンも塵にしていこうぜ!"

 "悲報 スケ馬出番終了"

 "はっや" 

 "草" 

 

 

 そして行場を無くし、地に落ちるだけの騎士も見逃さない。そのまま俺は騎士に強襲する。騎士は落馬しながらも右手で漆黒の玉を発射しようとしていた。

 

 "おいデュラハンは物理無効が……"

 "魔法使わん気じゃないだろうな!?"

 "魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法"

 "プリンー!コメント見ろ!" 

 "はよ気づいて――!"

 

 

 

 ――無駄だ。

 

 俺は騎士の懐に潜り込み両太腿を使い、右手を力強く締め上げる。太腿からは騎士の力が徐々に無くなることが伝わり、耳からは鎧だけの存在から骨が砕けるような音が聞こえる。漆黒の玉は徐々に色を失い始め、騎士の手は微小に震えていた。

 

 

 "デュラハンだよな……?変な音が"

 "何何何何こわいこわいこわい"

 "物理無効迷子になってて草"

 

 

 弱まっていく騎士。それでも俺は攻撃をやめない。関節技で縛り付けたまま、自分ごと地面を後転し、壁に一直線に投げ飛ばした。

 

 仰向けに寝転がる騎士。

 

 

 ――決め技でフィニッシュだ。  

 

 俺は全力で空へと跳び上がった。 

 

 

 今から行うは格闘家時代の技の一つ。頭の上で腕をピンと伸ばし手のひらを合わせるポーズを取りながらキックする決め技。

 

 ――ファルコンフライングキック……。いや今は……!

 

「プリンキック!」

 

 みぞおちにキックが炸裂し、再び騎士は堕ちる。騎士とともに地面に帰還するとキックで騎士は限界を迎えたのかさらさらと塵になった。

 

 "は?"

 "デュラ骨討伐きたああああ!"

 "さっきから物理無効どこいったよ!?"

 "バグですか?"

 "やべえな今の攻撃!"

 

 

「と、いうわけで……五十階層クリア★ですっ!」

 

 カメラに向けて片目ウインクをかまし、勝利のダブルピースを繰り出した。 

 

 "待て待て待て!?"

 "説明くれ"

 "何当たり前のように振る舞ってるんですか?"

 

 

 コメント欄の疑問に俺は気がつく。俺は得意げに鼻を鳴らし笑みを浮かべ言った。

 

 

「ふふふのうふふ……皆物理無効はね実は貫通できるんですよ!無効の耐久値をパワーで粉砕すれば!パワーイズベスト!やってみてね!……あ、ちなみにさっきまで気づいてなかったのはナイショ」

 

 "頭ゴリラ?" 

 "表情に反して言ってること怖すぎんか?"

 "やってみてね!←できるかwww"

 "あのさぁ……"

 "お前なんなんだよ!"

 "物理無効を無効とか前代未聞"

 "悲報 ダンジョン配信、インフレの極みみたいな時代

 に突入"

 

 

「それでは……帰還します!」

 

 

 そうしてダンジョンから帰還する間でもコメ欄は賑わいを見せ、同接は三千と千人増加した状態で終わった。 

 

 

 

 ★

 

 初配信が無事終わり、待機所で右腕を包帯で巻いた後俺は家への帰路についていた。個人的にはたくさんの人がLIVEに来てくれ、自分も戦いを楽しめたと思う。成功したかはわからないがとりあえず楽しかった。楽しさこそが1番なのだ。

 

 一応アーカイブを確認したいのは山々だが、Wi-Fiがない。俺の今月の3ギガは使い切ってしまったのでクソ遅回線を利用することになる。ダンジョンや家のようにWi-Fiを置いてくれたらありがたいのだが。

 

 そんなこんなでようやくボロアパートについた。俺は直ぐに玄関に入り、スマホを開く。まずはLIVEの反響を……。配信サイトを開き、アーカイブを開く。しかし、動画は再生されることはなかった。

 

 

「「不適切なコンテンツのため削除されました」」という文字列が目に映る。不適切?そんなものが一体どこにあるというのか。詳しく詳細を見てみると思いもよらぬ形で消されていた。

 

 

 理由は単純。動画サイトのポンコツAIにポルノ、性的なコンテンツ認定をされたのである。収益も今回の配信ではゼロだ。

 

 

「まじか……。せっかくの初配信だったのに!少女めんどくさい……。鎖骨と肩がまずかったな……。今後はなるべく露出しないようにしないと……。あと運営にも問い合わせメール送らないと……」

 

 

 怒りの余り部屋の机をこついだ。……軽くのはずなのに割れた。

 バズってからの俺の初配信……。それはまさかの動画削除というオチで終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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