格闘家世界チャンピオン、敵なしだったので引退しサバンナに行きジャガーを狩る〜現代ダンジョンが発生したので帰還、美少女になって配信します〜 作:tetois
思いがけぬ提案をあきたんから受け、俺は手紙を凝視していた。
「はい!これくらいしか思いつかなかったけど多分お役に立てるかなって。やってみません?」
水晶のように透き通る瞳で私を見つめる。そこにはただ俺への純粋な好意の気持ちしかなかった。
だからこそ――俺は心を痛めた。俺は自分勝手に決めたルールであきたんの好意を断らなければならない。そうすればきっとあきたんは気を病むだろう。
だが最初に決めたルールをねじ曲げない。これは格闘家時代からやってきたことだ。
とはいえども正直に「私は一人でやります!」とは言うべきではない。それは俺のエゴであって、エゴであきたんを傷つくことなどあってはならない。無難な理由で済ませた。
「ごめんなさい。事務所の関係で……」
「あ――なら仕方ないですね……。なら他には……あ、そうだ純次グッズ色々ありますからそれあげましょうか?これとか激レアだよ!100人しか当たらない純次直筆サイン付き加湿器!家にあるので良かったら!」
あきたんはスマホを高速で動かして写メを私に見せた。
――そう来たかあ……。俺のサインを貰っても……。
「あきたんこれはその……」
「あ!別に遠慮しないで!まあ私にとっては宝物だけどこうして繋がれたファンに渡るなら――」
「なら持っとけ。宝物なんだろ?」
あきたんを遮り、声を挙げた。
「え……?」
「あ………」
つい素が出てしまった。今でさえファン扱いなのにこれはまずい。
「今話し方が……?あ……え……?」
「あ――プリンは別人格がいる設定にしてて……闇プリンが出ちゃったといいますか……、魔法だっていってんだろて配信で言ってたでしょう?あれも闇プリンで……。あ、勿論宝物は私も持っておくべきだと……」
流石に無理がある。心の中では終わったの声だらけだ。プルプルと身体も震えているしこれは……。
「……あ――!仕事外で設定でちゃうよね!分かる分かる!」
あきたんの察しの悪さに俺は安堵する。
――いくらファンだからといってリップサービスはこれ以降はなしだ。
「うう……お気遣いは嬉しいけど私このままじゃあ何も思いつかないよお……。あ……ならプリンティスさん!何でも私に命じてください!私あきたん何でもやります!」
あきたんは自身を再び奮起させ、俺に真っ直ぐな目を向けた。
――こりゃあ何か考えないとな。
でも何があるだろうか……。頭を俺は捻らせた。
そして一つ思いついた。
「あ!」
「お!なんですか?あきたんに言ってみてください!」
「良かったら……純次談義でもやりたいなって思いましてパンケーキを食べながら……」
パンケーキ。それは俺が試合に勝った後必ず食べていた好物だ。もういつから食べてないのだろうか。アキタンというファンに出会って少しだけ昔に戻りたくなった。
「パンケーキで純次談義!?いいじゃないですか!やりましょう!」
あきたんは目を輝かせながら俺を見た。そして話はまだ続く。
「それでそれでパンケーキを食べる前といえば試合だよね!!配信外でダンジョン攻略やりましょう!ええと……ほら最近はモンスターを素材にして料理する配信者がいるし!」
あきたんは俺に対しヤブキというダンジョン配信者のサムネを見せた。そこにはゴブリンステーキを食べる、スライムゼリーの作り方などがあり、俺は目を奪われた。
大抵のダンジョン配信者はダンジョン内のモンスターを狩れば狩っただけで終了する。取り高的にも構っている暇がないからだ。なのでモンスターの死体はシステムにより自然に風化する形が殆どで利用されない。
もしもパンケーキがモンスターでさらに美味しくなれば……?それはあの時より美味なのだろうか?
「いいですね。なら残りはダンジョン階層ですね。せっかくならばパンケーキをモンスター素材で調理したいです」
「うーん。パンケーキを美味しくできる素材を持っている……。あ、八階層とかどう?」
八階層。ある意味パンケーキを作るにはぴったりかもしれない。何故なら八階層にはロケットに似た姿をしたハチ型モンスター……ロケットビーがいる。
八階層にはハチだけになのかロケットビーの一番の生息域。巣も大量にある。そこから蜂蜜をもしも採れればパンケーキ作りに役立てる可能性が十二分にある。
直ぐ様俺は了承した。
「では八階層にしましょうか」
パンケーキ作りミッションが開始された。
最初はロケットビー殲滅作戦。初の共闘だ。