僕のヒーローアカデミア:スパイダーウェブ   作:スパイダーキャット

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自分で書いてるはずなのに自分の思い通りにならないという現実を実感しています。



第11話 五人目の席

「マスコミやばかったねえ」

「うん…………」

 

 げんなりした表情で廊下を歩く。

 

「オールマイト人気ってすごいや。分かってたことだけど」

「だからって校門前で出待ちはやめてほしい……」

「ね!」

 

 疲れきった声でつぶやくイトに、葉隠が同意する。

 

「でさー、昨日は緑谷くんとどうだったのさ!」

「……またその話?」

「いいじゃん! こちとら花の女子高生だよ? なんでもかんでも恋愛に結び付けたいの!」

 

 楽しそうな様子の葉隠に、イトはため息を吐く。

 

「好きなヒーローの話してただけだよ」

「共通の趣味ってやつだ!」

「まあ、そうかな……」

「共通の趣味から始まる恋だ!」

「それは違うかな……」

 

 微妙な表情になりながら、教室の扉を開く。

 中に入ると、緑谷がこちらに気づいた。

 

「あ、安良久根さんおはよう!」

「おはよう、緑谷くん」

「あのさ、今朝のニュース見た?」

「ギャングオルカ?」

「そう! 海難事故の救助で…救助の仕方がすごくって!」

「見た! あの船を丸ごと持ち上げたやつだよね!」

「そうそう! シャチの個性だからこそできる水中機動で──」

 

 昨日の廊下の続きのように、二人は自然と話し始める。

 

「要救助者を先に確保してから船体を安定させる判断が──」

「うん、普通は船体が先って考えがちだけど沈没速度を計算すると──」

「分かる! あの判断力が本当に──」

 

「うおぉ……すげぇな緑谷と安良久根」

「仲良しね」

「魂の共鳴」

「朝からうるっせェ」

「もうすぐHRだぞ二人とも! 席に着きたまえ!」

 

「……やっぱり違わないんじゃない?」

 

 二人の雪崩のような会話は、相澤がやってくるまで続いた。

 

 

    *

 

 

「さて急で悪いが、今日は君らに……学級委員長を決めてもらう」

 

「「「「「学校っぽいの来たーーー!!!」」」」」

 

 相澤の宣言に、クラスが一気に盛り上がった。

 

「委員長!! やりたいですソレ俺!!」

「ウチもやりたいス」

「俺も!!」

「リーダー!! やるやるー!!!」

「あの、僕も……」

「俺にやらせろ!!!」

 

(ひえぇ、やる気マックスだ! 出久くんまで立候補してる……みんなすごい)

 

 一斉に手を挙げアピールし始めたクラスメイトたちに気圧され、イトは小さくなった。

 

 

「静粛にしたまえ!!」

 

 

 飯田の力強い声が響く。

 

「これはクラスをけん引する責任重大な仕事……ならば立候補で決めるべきではない」

 

 真剣な面持ちで、飯田は続ける。

 

「周囲からの信頼あってこその役割ならば……これは投票によって決めるべきだろう!!!」

 

 そんな飯田の手は、誰よりも高く突き上げられていた。

 

「そびえ立ってんじゃねーか!! 何故発案した!!!」

「日も浅いのに信頼もクソもないわ飯田ちゃん」

「そんなん皆自分に入れらぁな」

「だからこそ! ここで複数票を取るものがいれば、それが真にふさわしい人間ということになるはずだ! どうでしょうか先生!」

「時間内に決まりゃなんでも良いよ」

 

(……自分がやりたいのに投票を提案するの、真面目すぎる……)

 

 

 投票が実施されることになった。一人一票。

 イトはペンを持ったまま、少し考えた。

 

 学級委員長。クラスをまとめる役割。分析力があって、状況を見て判断ができて、仲間のために動ける人。

 イトは迷わず「緑谷出久」と書いて、紙を折った。

 

 結果。

 

「えええええ僕4票!?」

「悔しいですが……精一杯務めさせていただきますわ」

 

 委員長──緑谷出久、4票。

 副委員長──八百万百、2票。

 

「んでデクに4票も……クソが……!!」

「0票……わかっていたさ! さすが聖職……」

「飯田他に入れたのかよ」

 

(やった……がんばれ、出久くん)

 

 イトは心の中でだけ応援した。

 

 

    *

 

 

 昼休み。

 イトは食堂で葉隠と並んでいた。

 

「ねえ安良久根ちゃん、緑谷くんたちあそこにいるよ。一緒に食べない?」

 

 葉隠が指差した先に、緑谷、麗日、飯田の三人がテーブルについていた。

 

「え……いいのかな」

「いいでしょ別に! 行こ行こ!」

 

 葉隠に腕を引かれ、イトは半ば強引に連れて行かれた。

 

「おっすー! 隣いい?」

「あ、葉隠ちゃん! 安良久根ちゃんも! どうぞどうぞ!」

 

 麗日が笑顔で席を詰めてくれた。

 

「ありがとう、麗日さん」

 

 イトは葉隠の隣に座った。テーブルには緑谷、麗日、飯田、そしてイトと葉隠。五人。こんな大人数で食事をするのは──家族以外では、たぶん初めてだ。

 

「食堂の人数すごいよねー、さすが雄英……あ、お米うまい!」

「わかる! 私よく足踏まれちゃうんだ」

「透明だから?」

「人が多いのは当然だ。食堂(ここ)はヒーロー科以外の生徒も一堂に会するからな」

 

 飯田が背筋を伸ばしたまま話す。

 

「僕は不安だよ……いざ委員長やるとなると本当に務まるのか……」

 

「務まるよ」

「ツトマル」

「大丈夫さ」

 

 イト、麗日、飯田の声が重なる。

 

「緑谷くんなら安心だよ」

「そうとも。君のここぞという時の判断力に胆力……皆をけん引するにふさわしい」

「もしかして飯田くんも緑谷くんに?」

「当然投票したさ。その言い方は安良久根くんも」

「うん、緑谷くんに入れたよ」

「えぇ!?」

 

 慌てる緑谷を、口いっぱいに食事を頬張った麗日がニコニコと眺めている。

 

「モテモテだねー緑谷くん」

「そ、そんな……」

 

 魚の身を取りながら、からかうように葉隠が言った。宙に浮いた魚が突然消える不思議な光景が広がっている。

 

「でも飯田くんも委員長やりたかったんじゃないの?」

 

 食事を飲み込んだらしい麗日が言う。

 

「それと相応しいかどうかは別の話……僕は僕が相応しいと思う人に投票したんだ」

 

「「「僕……」」」

 

 緑谷、麗日、葉隠が反応する。飯田が固まった。

 

「ちょっと思ってたけど…」

「飯田くんて坊ちゃん?」

「……そう言われるのが嫌で一人称を変えてたんだが」

 

 飯田はカレーをかき込んでから続ける。

 

「俺の家は、代々ヒーロー一家なんだ。俺はその次男…ターボヒーローインゲニウムを知ってるかい」

 

「「インゲニウム!?」」

 

 イトと緑谷が勢いよく立ち上がる。

 

「もちろん知ってる! 東京が本拠地の──」

相棒(サイドキック)を65人も雇った大規模な事務所を抱えてる大人気ヒーローじゃないか!! まさか……」

「俺の兄さ」

 

 飯田は鼻高々とばかりに言った。

 

「俺は偉大な兄に憧れ、ヒーローを志したんだ。だが俺には兄のような"多"を導くリーダーは早かった。緑谷くんが相応しいよ」

 

 飯田はふっと笑って席に座りなおす。

 

(……そっか。私にとっての13号が、飯田くんにとってはお兄さんなんだ)

 

 少しだけ飯田を近くに感じ、イトは微笑んだ。

 

「なんか飯田くん笑ったの初めてみたかも」

「そうだったか?」

「うん、意外とカワイイ!」

「かわいい? いや、笑うぞ俺は!!」

 

 ──にぎやかだ。

 

 イトは自分の白米を口に運びながら、この空間を不思議な気持ちで眺めていた。ほんの少し前まで、昼食はいつも一人だった。中学の時も、その前も。

 

(……悪くないな、これ)

 

「安良久根ちゃんも笑ってるよ」

 

 葉隠に指摘されて、イトは慌てて表情を戻した。

 

「……笑ってないよ?」

「笑ってた笑ってた」

「むぅ」

 

 ──突然、警報が鳴った。

 

 けたたましいサイレンが食堂全体に響き渡る。

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難してください』

 

 食堂が、一瞬で混乱に飲まれた。

 




イトの中での緑谷は既に「クラスメイトの異性」から「アクセルベタ踏みで喋っても同レベルで返してくれるヒーローマニア仲間」にランクアップしてしまったので、評価の高さも相まって緑谷のそばにいるとギアが上がりがちになってます。

中学編、USJ編みたいな章区分あった方がいいですか?

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