僕のヒーローアカデミア:スパイダーウェブ   作:スパイダーキャット

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実は3月分の予約投稿は既に全部済んでたりします。つまりとりあえず3月中は毎日投稿が続きますのでほめてください



第21話 宣戦布告

 

「爆豪お前、体育祭の選手宣誓やれ」

 

 雄英の職員室。呼び出した爆豪の前で、相澤が口を開いた。

 

「ハッ、当然だろ」

「当然ではない」

 

 爆豪が鼻を鳴らしたが、相澤の声が低くなる。爆豪の目が細まった。

 

「…あ?」

「お前の素行が原因だぞ……今回は、例年通り主席のお前か、次席の者に任せるかで結構モメた」

 

 相澤が疲れたようにボヤく。爆豪は眉間にしわを寄せて黙り込んだ。

 

「入試は僅差だったしな。まあ最終的にお前に決まったが」

「……」

 

 少しの沈黙の後、爆豪が聞いた。

 

「……誰スか、次席」

「安良久根だ」

 

 

    *

 

 

 二周目のアスレチックレースは、やはり緑谷が最下位だった。

 

 思いつきたての個性全身発動が維持できない。全身に力を巡らせようとするあまり、身体のコントロールに集中しすぎてバランスを崩し、段差で躓き、壁で手を滑らせ、ネットで絡まった。

 

「ダメだ……全然上手くいかないや……」

「でも、さっきより全然速かったよ」

「一歩ずつよ、緑谷ちゃん」

 

 イトと蛙吹の励ましに、緑谷は悔しそうに、でも嬉しそうに頷いた。

 

 

 その後もイトは放課後の自主訓練を重ねた。雑木林のパルクールで、蛙吹の動きから取り入れた手足の使い方を洗練させていく。動きの精度は日に日に上がっていた。

 

(例年通りなら、最終種目は生徒同士の直接対決になる……対人戦の勉強もしておこうかな)

 

 ──体育祭まで、あと二日。

 

 

    *

 

 

 昼休み。

 

「安良久根ちゃんってさ、好きなヒーロー誰?」

 

 葉隠が唐突に聞いてきた。蛙吹と緑谷もこちらを見ている。

 

「好きなヒーロー? えっと……13号先生」

「やっぱり!」

「イトちゃんっぽいわ」

「そうかな…」

 

「緑谷くんは?」

「僕はオールマイト!」

「即答だ」

「あはは……子供の頃からずっと」

 

(出久くん本当にオールマイト好きなんだなあ)

 

「梅雨ちゃんは?」

「セルキーかしら。海の救助をしてる方なんだけど」

「あー、知ってる! アザラシの個性の」

「とてもかわいいの」

 

 こんな何でもない会話が、イトにはとても新鮮だった。入学前はいつも一人だった。友達とヒーローの話をするなんて、想像もしていなかった。

 

(こんな平和な時間がずっと続けばいいなあ)

 

 

「蜘蛛女ァ!!!」

「ギャアッ!!?」

 

 

 教室の扉が轟音と共に開かれ、平和が破られた。

 思わずイトの身体が跳ねる。床を蹴り飛ばし、天井に張り付いていた。

 爆豪だ。

 

「ギャアて」

「めっちゃ跳んだな……」

「猫かよ」

「くっそ見えねぇ!」

「爆豪くん! ドアを乱暴に開いてはいけない!!」

 

 クラスメイトの声が聞こえるが、イトはそちらに構う余裕はなかった。

 

「ば、爆豪くん……?」

「降りてこい」

 

 イトは恐る恐る天井から降りた。爆豪が正面に立っている。目が据わっている。

 

「テメェ……」

「……な、何かな」

 

(本当に何!? 私どうなるの!?)

 

「……俺は誰にも負けねえ。テメェにもだ。体育祭でブッ殺してやる」

「えっ」

「覚悟しとけやコラ」

 

 それだけ言い残して、爆豪は教室を出て行った。

 沈黙が訪れる。

 

「……なにあれ」

「果たし状」

「怒ってんのか気合入ってんのかわかんねえ感じだったな」

「ライバル宣言、熱いぜ!」

「殺害予告だったよ」

 

 クラスメイトが困惑している。イトにも何が何やらだった。

 

「わ、私なにかした……?」

「何もしてないと思うわ」

「爆豪くんだからね。気にしなくていいんじゃない?」

 

 蛙吹と葉隠が苦笑気味にフォローしてくれる。

 

「安良久根さん、えっと……かっちゃんだいたいいつもあんな感じだから、あんまり気にしないでいいと思うよ」

「……う、うん。ありがとう、緑谷くん」

 

(出久くん苦労してるんだろうなあ)

 

 一周回って、イトは緑谷の身を案じていた。

 

 

    *

 

 

「皆準備は出来てるか!? もうじき入場だぞ!!」

 

 体育祭当日。

 体操服に着替えたクラスメイトたちが、控室でそれぞれに緊張や興奮を抱えて過ごしている。

 

「コスチューム着たかったなー」

「サポートアイテムと一緒だろ。公正を期す為だよ」

 

(……いよいよだ)

 

 イトは手首を見た。いつもならウェブシューターが巻かれている場所。今日はそこに何もない。素の手首。素の自分。

 

(やれることはやった。あとは──)

 

「緑谷」

 

 落ち着いた声が控室に響いた。静かだが、密度がある。

 轟焦凍が、緑谷の前に立っていた。

 

「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」

 

 控室の空気が変わった。何人かが動きを止める。

 

「へ!? うっうん」

「けど……おまえオールマイトに目ぇかけられてるよな」

「!」

 

 緑谷の顔が強張った。

 

「別にそこ詮索するつもりはねえが……お前には勝つぞ」

 

 轟は淡々と言い切った。

 控室がざわめく。

 

「クラス最強が宣戦布告かよ!」

「直前にケンカ腰はやめようぜ…?」

 

(……轟くん)

 

 イトは轟の背中を見ていた。あの目。強さへの純粋な確信と、その裏にある──何か別のもの。

 

(──どうしてあんな顔をするんだろう)

 

 いつもの感覚とは関係ない。ただの直感。轟の目には、闘志だけじゃない何かがある。気がする。

 

「なんで轟くんが僕に……ってのはわかんないけど」

 

 緑谷が口を開く。

 

「そりゃ君の方が上だよ…客観的に見て、僕の実力なんて大半の人に敵わないと思う」

 

(そんなことないよ!!!)

 

 思わず立ち上がりそうになったところを、葉隠に押さえられ、小声で耳打ちされた。

 

「なんか大事そうな話だし、邪魔しちゃだめじゃない?」

「う、うん…ごめん、ありがとう」

 

「でも…!!」

 

 緑谷の言葉が続く。

 

「皆…他の科の人も、本気でトップを狙ってるんだ」

「……」

 

 

「僕だって、遅れを取るわけにはいかないんだ。…僕も本気で獲りに行く!」

「……おぉ」

 

 

 緑谷が力強く宣言し、轟が応えた。

 

 

(……出久くん)

 

 イトは口を挟もうとした自分が少し恥ずかしくなった。

 彼が…緑谷出久が、ただ後ろ向きなことを言って終わるはずがないというのに。

 

 

「かっこいいねー緑谷くん」

「うん」

「惚れ直したんじゃないの?」

「うん」

「……あれ、素直?」

「いやこれ聞こえてないだけだね」

 

 

 

    *

 

 

 

『一年ステージ、生徒の入場だ!!』

 

『ヒーローの卵たちが、我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!』

 

『どうせてめーらアレだろこいつらだろ!!?』

 

『ヴィランの襲撃を受けたにも関わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の──新星!!!』

 

 

 

『ヒーロー科、一年!!! A組だろぉぉ!!!??』

 

 

 

 プレゼントマイクの声が、スタジアム中に響き渡る。

 

 光が目を突いた。巨大なスタジアム。満席の観客。テレビカメラ。日本中がこの場を見ている。

 

「わあああ……人がすんごい」

「この中でいかにパフォーマンスを発揮できるか……これもヒーローの素養を身につける一環なんだな」

 

 歓声の渦に呑まれそうになる。だが、足は止まらなかった。

 

「なんか緊張すんな…なァ爆豪!」

「しねえよただただアガるわ」

 

 ヒーロー科に続き、他の科も入場してくる。

 

「俺ら完全に引き立て役だな…」

「たるい…」

 

 そして、フィールドに全学科の一年生が揃った。

 

 

「では、選手宣誓! 代表──爆豪勝己!」

 

 ミッドナイトが爆豪の名を呼ぶ。

 

「え、かっちゃんなの!?」

「あいつ入試一位だったらしいしまあ順当じゃね」

「順当かな……」

 

 壇上に爆豪が上がる。マイクの前に立つ。

 

 イトは固唾を呑んだ。先日の教室での顔が頭をよぎる。何を言うのか。

 

「せんせー」

 

 爆豪がマイクを握り、口を開く。

 

 

 

「俺が一位になる」

 

 

 

「絶対やると思った!!」

 

 

 切島の声が響いた。

 一瞬の沈黙。そして──

 

 

「「「ふざけんなァ!!」」」

「調子のんなよA組オラァ!」

「ヘドロヤロー!!」

 

「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」

 

 他組の生徒ほぼ全員からブーイングにも全く動じず、爆豪は首を掻っ切るような動作とともに宣言する。

 

「お、おう……」

「爆豪くん……」

「あいつマジか」

「何故品位を貶めるようなことをするんだ!!」

 

 クラスメイトの面々も頭を抱えている。

 だがイトは、壇上の爆豪を見上げていた。

 

 ──俺が一位になる。

 

 あの男は、本気でそう思っている。自分が最強だと。誰よりも上に立つと。

 傲慢だ。だが──

 

(……笑ってない)

 

 いつもの爆豪なら、ああいうセリフは笑いながら言いそうなものだ。

 だが、今の彼の表情は真剣そのものだった。

 

「…!」

 

 ふと、壇上から降りる途中の爆豪と目が合う。

 爆豪は一瞬だけイトを睨みつけると、軽く舌打ちをしてすぐに別の方向を向いてしまった。

 

 

(私も…やれるだけ、やるよ。爆豪くん)

 

 

 体育祭が、始まった。

 

 





デュエル開始ィィィィ!!!

……なんか知らんけどどんどんイトが緑谷沼に嵌っていくんです

中学編、USJ編みたいな章区分あった方がいいですか?

  • あった方がいいかも
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