僕のヒーローアカデミア:スパイダーウェブ   作:スパイダーキャット

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第22話 障害物競走

 

「さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう!」

 

 ミッドナイトが鞭を鳴らす。

 

「いわゆる予選よ! 毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!!」

 

 ミッドナイトの背後にホログラムが表示され、ドラムロールが流れ始めた。

 

「今年は……コレ!!」

 

 

 ──障害物競走。

 

(……きた!)

 

 いきなり訓練の成果が発揮できそうな種目だ。

 ミッドナイトから種目の詳細が説明される。

 

 11クラスによる総当たりのレース。

 コースはスタジアム外周約4km。

 そして……。

 

「我が校は自由が売り文句! ウフフ…コースさえ守れば何をしたって構わないわ!」

 

(妨害ありってことか……)

 

 障害物だけでなく、周囲の生徒も警戒する必要がある。

 イトは気合を入れた。

 

「さあ位置につきまくりなさい……」

 

 生徒たちがゲート付近にぞろぞろと集合する。イトも集団のやや後方についた。

 

(集中しろ……何が来ても対応できるように)

 

 イトは深呼吸した。ウェブシューターはない。使えるのは自分の体のみ。

 全身に力を込める。訓練での動きを反芻する。

 

(……いくぞっ)

 

「スターーーーーート!!!」

 

 

 一斉に走り出す。大量の足音がスタジアムに轟いた。

 

「ぐえっ!!」

「おいどけって!!」

「ゲート狭すぎだろォ!?」

 

 すぐにゲートは大渋滞になった。

 だが──

 

「私には関係ない!!」

 

 イトはゲート内の天井に飛び上がり、逆さまに立った。

 そのまま天井を走って抜けていく。

 

「お先!」

 

「あ!! なんだアイツ!?」

「ずりぃぞ!!」

「あ、あの子知ってる! 食堂でパンツ丸見えになってた!!」

 

「それは忘れて!?」

 

 黒歴史を掘り返され顔が熱くなるが、イトは止まらなかった。

 そしてゲートの出口に到達した時──

 

 

 ぞくん。

 

 

(──来る!!)

 

 イトは反射的に跳んだ。ゲート出口の壁を蹴り、空中に身を投げ出す。

 

 直後──先頭の景色が一瞬で変わった。

 

 轟の氷結。ゲートを抜けたところで後続を凍らせ、一気に封じる。多くの生徒が氷で地面に足を縫い付けられ、避けた生徒も氷に足を取られ次々と転倒していく。

 

「うっわ!」

「足が……!」

「こんなのアリかよ!」

 

 イトは氷の上に着地した。同時に足の吸着を発動し、そのまま走る。

 

(轟くんの氷結……)

 

「それもう避けたことあるから! 食らってあげないよ!!」

「まあおまえはそうだろうな」

 

 やや前方の轟に声をかける。イトが生き残ることは轟も想定済みだったようだ。

 周囲を見ると──

 

「甘いわ轟さん!」

「そう上手くいかせねえよ半分野郎!!」

 

 八百万に爆豪……ほとんどのヒーロー科生徒は回避に成功しているようだ。

 

「みんなやるね!」

「るっせエ! 俺の前を走んじゃねえ蜘蛛女コラ!!」

「やだよこれ競争だもん!」

 

 

『さーて実況してくぜ! 解説アーユーレディ!?』

『うるせぇ…なんで俺だ』

『さァー早速ヒーロー科轟による大規模妨害が入ってるぜ!!』

『無視かよ』

 

 

「クラスの連中は当然として……思ったより避けられたな」

 

(今の先頭は轟くん…だけど、身体能力は私の方が上! 轟くんの妨害を捌ければ一位を狙える!)

 

 氷の上を吸着走行で駆け抜ける。スピードは通常の走行に劣るが、滑って転倒する恐れはなくなる。安定した足運びで轟との距離を縮めていく。

 すると──

 

 

『さぁいきなり障害物だ! まずは手始め……第一関門──ロボ・インフェルノ!!!』

 

 

 入試で使われた仮想ヴィランが行く手を塞いでいた。あの巨大ロボットまでいる。

 

「でっか!」

「入試の時のゼロポイントヴィランじゃねえか!」

「マジかよヒーロー科あんなんと戦ったの!?」

「てか多すぎだろ通れねえぞ!!」

 

「一般入試用の仮想ヴィランってやつか」

 

 多くの生徒が足を止める中、轟は地面に手をついた。

 

 

「せっかくならもっとすげぇの用意してもらいてえもんだな」

 

 

 瞬間、正面の巨大ロボットが一気に凍結する。

 

 

「すっご……でも」

 

(これじゃ後ろも通れちゃう……いや違う!)

 

 轟の真意を探るまでもなくいつもの感覚が来る。

 

「おいあいつ止めたぞ!」

「あそこ通れる!」

「やめとけ」

 

 轟が呟く。それに呼応するように──

 

 

「不安定な体勢ん時に凍らしたから…倒れるぞ」

 

 

 凍った巨大ロボットがバランスを崩し、轟に続こうとした生徒たちに向かって倒れ込んだ。

 

 

『1-A轟、攻略と妨害を一度に!! こいつぁシヴィー!!! すげえな一抜けだ! アレだなもうなんか…ズリィな!!』

『……いや』

 

 

「つめった!?」

 

 

『少なくとも一人回避してる』

『おぉっと!? ありゃあ…同じく1-A安良久根!! 凍ったロボットを這いあがっているぅ!! なんで避けれてんだァ!!?』

『あいつの個性だな』

 

 

 咄嗟に横っ飛びで倒れるロボットを回避し、そのまま側面に張り付いた。凍った面についた手をかじかませながら、ロボを登頂して先に進む。

 

(引き離されない…!)

 

 轟との差は確実に縮まっている。このままいければ──

 

 

『オイオイ第一関門チョロイってよ!! んじゃ第二はどうさ!?』

 

 

 目の前に巨大な崖が現れた。谷底が見えないほど深い。渡る手段は──細いロープだけ。

 

 

『落ちればアウト!! それが嫌なら這いずりな!! ザ・フォーーーール!!!』

 

 

 轟はすでに途中まで渡り切っている。どころかロープの終点を通るごとに凍らせて妨害まで行っていた。

 

「マメだなあもう!」

 

 ──だが、イトにとっては。

 

「さっきも言ったけど……私には関係ない!!」

 

 足裏をロープに吸着させ、走った。ロープの上を、地面と同じように。

 

 

『オイオイ命知らずだ安良久根!! ロープの上を全力疾走!!! 見てるこっちがコエー!!』

『自分の個性をよく理解した合理的な判断だな』

 

 

 風が強い。体が揺れる。だがロープに張り付いた足は絶対に離れない。蜘蛛の本領。ウェブがなくても、吸着能力だけで十分だ。この障害は問題にならない。

 

 一気に第二関門を駆け抜け、対岸に飛び移った。

 前方に轟。差が詰まっている。

 

 

『さァ先頭二名が一足抜けて下はダンゴ状態! 上位何名が通過するかは公表してねえから安心せずに突き進め!!』

 

 

(轟くん以外は前にいない、私が二番手……! いける!)

 

 

『そして早くも最終関門!! かくしてその実態はァーーー……』

 

 

 ぞく。ぞくぞくぞく。

 

 

「……うっわ」

 

 感覚が全身を貫く。足元の地面から、無数の警告が押し寄せてくる。

 

 

『一面地雷原!! 怒りのアフガンだァ!!! 地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!!!』

 

 

(……見える。いや、"感じる"。地雷の位置が解る)

 

 埋まっている場所が……正確には「そこを踏んだら危ない」という感覚が、足元から這い上がってくる。

 

(これなら──)

 

 走った。地雷と地雷の間を縫うように。最小限の回避。一歩一歩が針の穴を通すような精度。だが感覚が導くままに足を置けば、一度も踏み抜かない。

 

 

『安良久根がすんごいペースで地雷原を突破していくぞ!! そんなに分かりやすいっけか!!?』

 

 

「轟くんみっけ!!」

「……くそ」

 

 ついにイトが轟を捉える。轟が氷結を繰り出そうと構え──

 

 

「はっはぁ俺は──関係ねーーーー!!!!」

 

 

 激しい爆発と共に、爆豪が二人に襲い掛かった。

 

「半分野郎てめェ宣戦布告する相手間違えてんじゃねえよ!!」

「私もいるんだけど!」

「二人まとめて死ねやぁ!!!」

 

 次々に爆破が襲い掛かり、イトは回避で手一杯になってしまう。

 

「くっ……」

「目ぇめっちゃチカチカする! 花火には早いんじゃないかな爆豪くん!!」

「っせえ殺すぞ!!」

 

 

『先頭三つ巴ーー!! 喜べマスメディア、おまえら好みの展開だああ!!! 後続もスパートかけてんぜ!!!』

 

 

(後ろに追いつかれる……!)

 

 だが、その時──

 

 背後から、とてつもない気配が迫った。

 感覚が、今日一番の警告を叩きつける。

 

(──!? 後ろ!!)

 

 振り返った。

 すると──

 

 

 爆発。

 

 

 凄まじい爆風とともに、一つの影が空を飛んだ。

 イトは目を見開いた。

 

(……出久くん!?)

 

 緑谷出久が、地雷の爆発を推進力に変えて、空を駆けていた。

 





イトの個性が障害物競走向き過ぎるんですよね。
最前列スタートだったらぶっちぎりで一位になる気がする…。

中学編、USJ編みたいな章区分あった方がいいですか?

  • あった方がいいかも
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