僕のヒーローアカデミア:スパイダーウェブ   作:スパイダーキャット

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第24話 騎馬戦

 

「爆豪くん、お願いがあるんだけど」

「あ?」

 

 騎馬戦開始前。チームでの最終確認の時間。

 

「従わなくてもいいから、私が何か警告したらちゃんと聞いて」

「……」

 

(コイツは戦闘訓練で半分野郎の意識外からの大規模凍結を避けた……USJん時もヴィランが来んの察知してたな)

 

「……フン」

 

 爆豪が短く鼻を鳴らした。

 

(了承…してくれたってことかな)

 

「よーし行くぜ!」

「がんばろうね!」

「うん、がんばろう」

「全員ブッ殺す」

 

 

    *

 

 

「騎馬戦──スタートォ!!!」

 

 

 ミッドナイトの号令と共に競技が始まる。

 

「っしゃ爆豪! まずはどこ行く?」

「当然──1000万だ!!」

「ですよね!」

 

 緑谷チームは、既に複数のチームに囲まれていた。

 B組のチームと葉隠チームが襲い掛かる。

 

「実質1000万(それ)の争奪戦だ!!」

「緑谷くん覚悟ーー!!」

 

(まあそりゃそうだ……!)

 

 誰かの個性によって足を取られている様子の緑谷チームは──突如飛び上がる。

 

「飛んだ!?」

「サポート科のやつか!!」

 

(あっ発目さん! 出久くんチームに入ったんだ!)

 

「チッ……クソデク」

「やるねえ緑谷」

「どうするよ爆豪、上にいられちゃ取れねえぜ」

 

 緑谷チームは一度着地し、敵を引き付けて再度飛び上がる。

 

(でもあのジェットパック一人用だったような……あ、麗日さんが浮かせてるのか)

 

「蜘蛛女」

「ん…ごめん、何?」

「落下点予測できんだろ」

「えっ」

「やれ」

 

 言うが早いか、爆豪が単独で跳躍する。

 

「えっちょっ爆豪くん!?」

「やっべえぞ追え追え追え!!」

 

 そして爆破を繰り返して加速し──空中の緑谷チームに迫った。

 

 

「調子乗ってんじゃねえぞクソが!」

「かっちゃん!?」

 

 

 そのまま攻撃を仕掛けるが、爆破は常闇によって防がれた。

 爆豪が落下する。

 

(私の感覚はそんな便利じゃないんだよもおおお…ええっと加速に爆破三回、これまでの感じ推進速度はだいたい…攻撃でも一回使ったからその分減速してるか、それと今の高度から落下の所要時間…横方向の慣性が残ってるから着地点は──)

 

「あと右斜め前13メートル!!」

「おう!!」

「オッケー!!」

 

 素早く位置を移動する。

 急いで体勢を整え、落下してくる爆豪をキャッチした。

 

「ナイス安良久根!」

「お願いだからもうやんないで!」

「あ? 上手くいったろうが」

「今の個性じゃないの落下地点めちゃくちゃ暗算しただけ! 超疲れるからもうナシで!!」

「…チッ」

 

爆豪が舌打ちする。だが、再度飛び上がる気はないようだ。

 

「安良久根今の計算かよ」

「頭いーんだ!」

「目測のざっくり概算だよ…ちょっとくらいズレても爆豪くんなら爆破で位置調整できただろうし──爆豪くん伏せて!!」

「ッ──」

 

 イトの声に、爆豪が反射的に頭を下げる。

 

 

「──はぁ!?」

 

 その上を、腕が通過した。

 

 

    *

 

 

「避けた? 今の、見えてなかったよね?」

「寄んな殺すぞ!!」

 

 爆豪が振り返り、爆破を放つ。相手のチームは素早く離脱した。

 

「なんだよ……第六感ってやつ? 不意打ちが台無しだ…」

「失敗したもんは仕方ないだろ! 物間、仕切り直しだ!!」

「……まぁ待ってくれよ、ポイントはもう十分足りてることだしさ」

 

 物間チームがこちらに向き直る。

 

「っぶねえ……」

「今のも計算?」

「いや、今のは個性……らしい」

「らしい? まあでも助かったぜ安良久根、なあ爆豪!」

「……チッ!!!」

 

 爆豪が激しく舌を打った。

 

(……助かったのは事実だけど、認めるのは癪ってことかな)

 

 少しだけ爆豪の生態が理解出来てきた気がする。

 

「なあ騎手の君、有名人だろ?」

「あァ?」

「ほら、アレだよ『ヘドロ事件』の被害者!」

「……」

 

 ヘドロ事件。中学時代に爆豪が巻き込まれたという事件だ。

 

「今度参考までに聞かせてくれないかな、年に一度ヴィランに襲われる気持ちってのをさァ」

「…………」

 

 明らかな挑発だった。冷静さを欠かせて鉢巻を奪う算段だろう。

 

「爆豪くん、相手する必要ないよ」

「……………………」

 

「……? 爆豪く「予定変更だ」ぁえ…?」

 

 そこで初めて、イトは爆豪の顔を見上げた。

 

 

「デクの前にこいつら全員殺すぞ……!!!」

 

 

(バチギレじゃんもう!!!)

 

 物間がにやりと笑う。

 

「単純だなあ…」

「ちょっと煽るのやめてよ! 苦手なんだってこっち!」

「おい爆豪冷静になれって!!」

「俺はすこぶる冷静だァ……!!!」

「嘘じゃん絶対!!」

 

「冷静だッつってんだろが」

「!」

 

 予想外に理性的な声に、イトは少し驚いた。

 

「デクん時にこいつが邪魔してきたらダリぃだろが」

「たしかに」

「なるほどそりゃそうだ!」

「爆豪意外と考えてんな」

「殺すぞ」

 

 ギロリと睨まれ、口を閉じる。爆豪が小声になって続けた。

 

「黒目」

「芦戸だって」

「この辺全部に弱めの酸撒け」

「え? めっちゃ滑るよ」

「いンだよ。蜘蛛女の個性で止まれるだろ」

「…なるほど」

「私ブレーキ役かぁ」

「うるせェ。俺が頭触ったら止まれ」

「オッケー」

 

 爆豪が指の骨を鳴らしながら細かい爆発を起こして言う。

 

「時間ねえんだ……ザコ共さっさとブッ殺してデクんとこ行くぞァ!!」

「極めて了解!」

「シャオラ!」

「よいしょー!!」

 

 まずは芦戸が周囲に酸を撒き散らす。

 

「行くぞ切島ァ!!」

「っしゃこい!!」

 

 即座に爆豪が後方に掌を向け爆発を起こした。

 爆破の推進力で酸の上を滑り、猛スピードで物間チームに突撃する。

 

「なっ──」

 

 突然のロケットスタートに物間が驚愕する。

 

「円場防壁(ガード)!!」

「おうよ!」

 

 だがすぐに対応する。物間チーム前騎馬の男、円場の『空気凝固』により、前方に透明な壁を形成する。

 だが……。

 

「オラァ!!」

 

 切島が硬化した頭突きで空気の壁を突き破る。

 そして──

 

 

「寄越せェ!!」

「ぐあっ!!?」

 

 

 爆豪が爆破と共に物間の首元に溜まった鉢巻を根こそぎ奪い去る。

 

「やったぁ!!」

「すごいよ爆豪くん!」

「まだだ!! デクんとこ行くぞ早くしろ!!」

 

 

    *

 

 

『残り1分切ったぞ!! 焦ってけェ!!』

 

 

 緑谷が轟の鉢巻に手を伸ばし──掴む。

 

「とった! とったああ!!」

「待ってくださいその鉢巻…」

 

 緑谷が吠えるが、発目が待ったをかけた。

 

「違いませんか!?」

「えっ!?」

 

 ……緑谷の手にあった鉢巻は、70ポイント。

 

「轟くんしっかりしたまえ! 危なかったぞ!」

「鉢巻の位置は変えてありましたの、甘いですわ緑谷さん!」

 

「くそ……もう一回……!」

 

 緑谷チームが再び轟に向かおうとする。だが──

 

 

「行くぞァ!!!」

 

 

 轟が自分と緑谷チームを囲うように作った氷の壁が爆音と共に破壊される。

 そこから現れたのは──爆豪チーム。

 

 

「芦戸!」

「はいはーい!」

 

 芦戸が弱い酸をフィールドに撒き散らした。

 

「芦戸さん!?」

「デクくんやばい、これ滑る!」

 

「轟さん!」

「動かなくていい、この場で守るぞ」

「ウェェエエイ…」

 

 緑谷チームも轟チームも足を取られ、動きが鈍る。

 イトが緑谷の額を確認した。

 

(……出久くん、鉢巻してない!!)

 

「爆豪くん、1000万轟くんだ!」

「分かってらァ!」

 

 爆豪チームが轟に突撃する。

 

 

『残り10秒!! 爆豪チームが轟チームに突っ込んだああああ!!!』

 

 

(わり)ぃ飯田!」

 

 轟が反応した。飯田を通して地面に氷を這わせ、前方に巨大な氷壁を展開する。

 

「平気か!?」

「俺は大丈夫だ! 気を抜くな、破ってくるぞ!!」

 

 飯田の言葉に被せるように、爆破音が聞こえる。

 

 氷壁が──破壊されない。

 

(あめ)ンだよ半分野郎!!」

「なに!?」

 

 爆豪チームが氷壁の側面から現れ──急停止する。

 

(安良久根くんか!!!)

 

「ふンぎぎぎ……ッ!!」

 

 イトが全力で吸着を発動していた。両足を地面に固定し、芦戸と切島を己の筋力で支えて騎馬全体の慣性を殺す。

 そして──爆豪が後方に爆破。再度酸の上を滑走して突撃し、轟チームに迫る。

 

「なっ……!」

 

 轟が目を見開いた。

 

「もらったァ!!!」

 

 爆豪の手が轟の首元に伸びる。巻かれた鉢巻を掴み──引き千切った。

 

 

「1000万ッ!!!」

 

 

『爆豪チーム1000万奪取ーーーーー!!!!!! 氷壁を回り込んでの奇襲だァ!!!!』

『いいコンビネーションだ』

 

 

「やったあ!!」

「爆豪すげえ!!」

「やったよ爆豪くん!!」

 

「うるせえまだ終わってねえ!! 警戒緩めんじゃ────」

 

 

 

『タイムアーーーーーーーーップ!!!!』

 

 

 

「……あ?」

 

「競技終了!! 早速上位チーム見てみよっか!!」

 

 ミッドナイトが宣言する。

 

「一位、爆豪チーム!」

 

 同時、会場中から歓声が湧きあがる。

 

「一位だ……!!」

「爆豪やったじゃんよ!!」

「すっごーい!!」

「……」

「……爆豪くん?」

 

「……う」

「う?」

 

 

「うぉぉおおおあああああアアアアアア!!!!!!!」

 

 

 爆豪が力の限り吠えた。

 

「見たかコラァ!!! 俺が一位だザコ共!!!」

「俺たちな」

「忘れてもらっちゃ困るよ」

「よっぽど嬉しかったんだね…私も嬉しいけど」

「ハッハァーーーーッ!!!」

 

(一周回ってちょっと可愛いな?)

 

 

「二位、心操チーム! 三位、緑谷チーム!」

 

「心操?」

「ヒーロー科じゃないね」

「デク!?」

「……えーっと」

 

 一瞬で喜びが鎮火したらしい爆豪に、イトは言いづらそうに切り出す。

 

「爆豪くん、あのね……」

 

 イトが頭を指さした。爆豪が自分の頭を触ると……

 

「……()ぇ!!!」

「さっき轟くんの氷を避けた時、常闇くんの黒影(ダークシャドウ)が掠めとってった」

 

 言いながら横目で確認すると、緑谷は噴水のような涙を流しながら膝をついていた。

 

(出久くんも残れてよかった…)

 

「ンで言わねえんだよ!!!」

「だってそんな場合じゃなかったし…1000万の方が大事だし、言っても避けてる暇なかったでしょ?」

「………………」

 

 一理あるようで、爆豪は名状しがたい表情のまま固まってしまう。

 

「ぐ……が……ッ」

「顔すんごいよ爆豪」

「ピカソみてぇ」

「ごめんって」

 

 

「四位、轟チーム!」

 

「……くそっ」

 

 轟が、珍しく感情の乗った声で短く呟いた。

 

 

『発表の通りだ! 以上四組が、最終種目へ進出だああああああ!!!!』

 





鉢巻とられなかった分冷静だった爆豪、念願の一位(第二種目)ゲット!
でも緑谷チームに鉢巻とられちゃって釈然としねえ!
かわいいね

一応点数のざっくり内訳ですが

爆豪チーム:1000万 + 物間轟から奪った端数
心操チーム:原作通りの稼ぎで1000ちょい
緑谷チーム:轟チームから取ったダミー + 爆豪チームの素ポイントで700くらい
轟チーム :素ポイントのみで600くらい

です

中学編、USJ編みたいな章区分あった方がいいですか?

  • あった方がいいかも
  • なくてもいいかも
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