僕のヒーローアカデミア:スパイダーウェブ 作:スパイダーキャット
ステージ修復後、すぐに行われた第二試合は即座に終了した。
「塩崎さん場外! 飯田くん三回戦進出!」
「飯田くんはっや……」
試合開始と同時に飯田は恐ろしい速度で塩崎の背後をとり、あっという間に場外へ運び出してしまった。
(レシプロバーストだっけ……お茶子ちゃんが言ってた)
なんにせよとてつもないスピードだった。イトでも避けられるか分からないほど。
「飯田くん、お疲れ。さすがだね」
「おお、安良久根くん! そうか、次だったな君」
入場口に戻ってきた飯田に声をかける。
「常闇くんは手強いだろうが……しっかりな! 応援しているよ」
「うん、ありがとう」
短く言葉を交わし、イトは進みだした。
『二回戦第三試合! 安良久根
(
ステージの上には既に常闇が待機していた。腕を組み、じっとイトを観察している。
(とにかく、私は近づくしかない。なんとか隙を見つけなきゃだな)
『スタァァァァト!!!!』
「
「アイヨ!!」
常闇の声と同時に、黒い影が弾丸のように飛んできた。
「っ──!」
イトは横に跳んだ。ダークシャドウの爪がさっきまでイトがいた場所を抉る。
(速い……!)
「追え、
「アイヨ!」
ダークシャドウが即座に軌道を変え、横薙ぎに追撃してくる。
「あっぶ……!」
イトはブリッジで回避──直後に上からの叩きつけ。後方に転がって躱す。
「わッ──ちょ、ずるいずるい!」
間髪入れず次の攻撃。イトは感覚に従って体を捌き続けるが、反撃の余裕がない。
(攻撃を避けるので精一杯だ……近づけない!)
だが──
「……なかなかに厄介」
常闇が呟いた。
イトの体捌きは尋常ではなかった。攻撃が当たらない。首を傾け、体を捻り、時に地面に手をついて回転し、紙一重で全てを躱す。
近づけないイトと、当てられない常闇。
『膠着状態!! 安良久根は避けまくるも攻め手がない! 常闇は攻め続けるも一発が入らない!!』
『互いの長所が噛み合って拮抗してるな。どっちが先に崩すか……見物だ』
「せっかく2対1なんだしさ、常闇くんも参加してみない!?」
「近づいてほしいと顔に書いてあるぞ。悪いが乗るつもりはない」
「だよね、言ってみただけ!」
常闇は慎重だった。イトを決して侮らず、勝負を急がない。
(まあこのままだと先に限界が来るのはたぶん私だし……当然か)
(このままじゃジリ貧……どこかで仕掛けるしかない。だったら……)
イトは思考を巡らせながら、少しずつ──本当に少しずつ、ステージの端に寄っていった。
攻撃を避けるたびに、半歩ずつ後ろへ。自然に追い込まれているように見せながら。
(芦戸さんの時と同じ……追い詰められた体で、相手を誘い込む)
ステージの端まであと数歩。ダークシャドウが落としにかかってきた。大きく振りかぶった横薙ぎ──イトは真下にしゃがんで躱した。
ダークシャドウの腕が頭上を通過する。
(今──!)
イトが全速力で駆け出した。ダークシャドウの攻撃を躱した直後の一瞬。常闇までの直線距離を、一気に詰める。
だが──
「迂闊」
常闇の声は、冷静だった。
「その作戦は既に見ている」
(……っ! 読まれてた!?)
「同じ手を二度使うとは……勝負を
「アイヨ!!」
置き去りにしたつもりだった
「ぅひ……ッ!?」
イトは咄嗟に大きく上に跳んだ。ダークシャドウの爪がイトの遥か下を通過する──だが。
「空中では、避けようがないだろう」
常闇の声が、下から聞こえた。
「仕留めろ、
「アイヨ!!」
(来る──!)
「あぐッ!!!」
凄まじい衝撃。イトの体はステージの外に向かって吹き飛ばされた。
『ついに常闇の攻撃がヒットーーーー! これは決まったかァ!?』
イトの視界がぐるぐる回る。既にイトの体は場外の位置にあった。このまま地面に落ちれば──負ける。
(──ッ!)
イトは反射的に右手首を常闇の足元に向ける。
手首から──細い糸が射出された。
糸がステージの表面に張り付く。
「んぎッ!!」
イトはそれを強く引いた。
体が勢いよく軌道を変える。場外に落ちかけていたイトは、放たれた弾丸のようにステージ上に戻り、常闇の足元に着地した。
『安良久根新技で復帰ーーーー!!! 九死に一生ってやつだな!』
『今まで一度も使ったことがないからな。クラスメイトでも知らなかっただろう』
「なっ……!?」
常闇が目を見開いた。場外に飛んだはずのイトが、糸一本でステージに帰還した。
(──今しかない!!)
着地と同時にイトが駆ける。常闇の動揺が、一瞬だけ
「……ッ、
常闇が咄嗟に
そして──すり抜けるように常闇の背後に回った。
「しまっ──」
常闇が振り返ろうとした時には、もうイトの腕が首に巻きついていた。
裸絞め。
イトは常闇の首に両腕を回し、そのまま後ろに倒れ込んだ。常闇の体ごと仰向けに倒れ、脚を常闇の胴に絡めて固定する。
「ぐぎぎぎ……!!」
「ぐッ……!」
常闇がもがく。
「く……
常闇の声が掠れていく。イトの細い腕が、万力のように首を締め上げている。
(ここを逃したら終わりだ! 絶対離さない......!)
数秒の攻防。常闇の抵抗が弱まり──
ぽん、ぽん。
常闇の手が、イトの腕を叩いた。
「常闇くん降参!! 安良久根さん三回戦進出!!」
『決まったァ!!! まさかの関節技!! いや絞め技か!? 決着は唐突だったな!!!』
イトは常闇の首からゆっくり腕を緩めた。
「はぁ……はぁ……ごめんね常闇くん、平気?」
「……いや、見事だ。あの復帰は完全に想定外だった」
常闇が素直に賞賛を送る。
「いや咄嗟に……あそこまでは完全に常闇くんの術中だったよ」
「それでも勝利は勝利だろう。……ところで」
常闇が、珍しく気まずそうな様子で言い出しにくそうに続けた。
「すまないが……そろそろ離してくれないか」
「あっごめん! 力もう抜いてたつもりだったんだけど……苦しかった?」
「いやなんだ……その、そちらではなく」
常闇はしばらく目を泳がせると、やがて覚悟したように言った。
「……胸が」
「……えっ」
イトは常闇を絞め技で仕留めた。つまり体を強く密着させていた。
その結果……耳郎が『ヤオモモ級』と称した果実が、常闇の背中に押し付けられて平らに変形していた。
「えっあっあぁ!? ごごごごごごめんなさい!?」
「いや、こちらこそ……」
イトの顔が爆発したように赤くなり、爆速で常闇から離れた。
「くっそ常闇くっそ!!」
「安良久根あざといぞー!!」
「なあオイラあいつ許せねえよ、今からでも途中参加できねえかなあ!?」
A組の観客席からヤジが飛んでくる。
(死にたい死にたい死にたい……!!)
イトは顔を両手で覆いながら、足早にステージを降りた。
中学編、USJ編みたいな章区分あった方がいいですか?
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あった方がいいかも
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なくてもいいかも