RE:対魔忍世界転移憑依物語 ─綴木みこと─   作:楠崎 龍照

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あぁぁぁぁぁぁぁみこと可愛い……。
アンケート結果。
主人公の能力は、対魔忍世界由来の忍法に決まりました。


2話 ふうま小太郎と世界線

 

 

 

 

 

保健室の扉を閉めた瞬間、空気が変わった。

さっきまでの静けさが嘘みたいに、廊下のざわめきが耳に入ってくる。

生徒たちの話し声。

足音。

教室の中から漏れてくる教師の声。

パッと視界を動かしただけでも、対魔忍RPGで見た事のあるキャラクター……いや人物がチラホラといる。

 

「(本当に来たのか……)」

 

─こんな状態で来たくなかったよ─

 

「(いや、歩こう。その気持ちを糧として私の今やるべき事をやろう)」

 

私はそうして5年間の歩いてきた。

精神科やホットライン、両親にも相談できないくだらない苦しみ、果てには2つの衝動すらも生きる糧として歩いてきた。─もう疲れた─

この世界に来ても同様に生きればいいだけだ。

現実的な目的になった分、モチベーションも保たれるだろう。

 

─綴木みこととふうまのいちゃラブ回想を見れるよりもよっぽどな……─

「……あぁせやな人を無敵にする言葉を放つな殺すぞ。んなもん誰よりも私が1番わかってるわ殺すぞ」

 

誰にも聞こえないぐらいの小さい声で独り言を呟きつつ、私は廊下を歩きながら様々な事を考える。

 

「……ふうまに……うーん……」

 

学生たちの喧騒すらも聞こえなくなるほどに、私は考えていた。

そんな時、私はひとつの嫌な予感が脳裏を過ぎる。

 

「(そもそも、この世界線にふうま小太郎は存在するのか?)」

 

少し嫌な汗が私の額から一滴だけ流れ落ちる。

特に理由も根拠もない。

ただ、なんとなくそんな予感がしたのだ。

 

「……っ!」

 

その瞬間、私は彼に言うか言わないかはともかく、1回、存在するのかを確かめたい気持ちが強くなっていく。

 

「みことちゃん大丈夫!?」

 

後ろから、みことの名を呼ぶ声が聞こえてくる。

自分の名前で無いことに加え、考えることに必死だった私は声を掛けられていることに気がつけなかった。

 

「(……誰かにふうまさんの所在を聞くべきか)」

「みことちゃんってば!」

「っ!?」

 

肩を軽く叩かれ、私はようやく現実に引き戻された。

振り返ると、そこには卯奈がいた。

心配そうに眉を下げ、少し息を切らしている。

 

「急にどんどん歩いていくんだもん……。大丈夫?」

「う、うん……ごめん卯奈。ちょっと考え事してて……」

 

みことの口調を真似したい私ではあるが、いまそれを成せる余裕がない。

その私の死にかけている表情に望月さんは私の目を真っ直ぐみながら言った。

 

「みことちゃん、まだ顔色悪いよ? やっぱりまだ保健室で寝てた方がいいって」

 

「あー……いや、少し歩いたら頭が冴えるかなって思って。大丈夫だよ」

 

苦し紛れの言い訳だった。

私のその声に力が入っていないのは自分でも分かった。

無論、望月さんは納得していない。

眉を下げたまま、私の手をそっと握る。

 

「無理してるようにしか見えないよ? 今日のみことちゃん、ほんとに変だもん」

「……そう、見える?」

「見えるよ。今にも倒れそう」

 

そこまで言われると、私もなんとも言えずに沈黙する。

実際、倒れていないだけで中身はほとんど半壊している。

文遁みことのビジュアルチェンジ版が頭から離れず、襲い来る衝動に何とか抵抗をしている状況だ。

夢を持っていなければ、私はもうこの世にはいないだろう。

 

「……ごめん」

 

何も言えなくなった私は謝罪へと逃げた。

 

「だから謝らなくていいってば」

 

卯奈は困ったように笑った後、少しだけ首を傾げた。

 

「何か気になることでもあるの? さっきからずっと考え込んでるし……」

 

望月さんからそんな言葉が出た時、私は少し躊躇してからなるべく怪しまれずに質問をした。

 

「その……今日、センパイって見た? 図書室にいるかな?」

 

ふうま小太郎がいるかどうかを確認する方法は、これが一番無難だと感じた。

 

「(さぁ……どう出る?)」

 

望月さんはキョトンとした顔をして、「ふうまくん? 図書室にいるんじゃないかな?」と言った。

 

「っ……!! 」

 

私は歓喜したくなる気持ちをグッと堪えて、平静を装いながら小さく頷いた。

 

「そっか」

 

私は心の中で歓喜に打ち震える。

この世界にふうま小太郎がいる。

この事から、この世界線は対魔忍RPGかアクション対魔忍に準ずる世界である事が確定された。

なんというか、真っ暗だった視界に一本だけ細い道が出来た気がした。

五車学園の構内にいる時点で、『対魔忍ユキカゼ』系統の世界線ではないだろうとは思っていたが、その不安が取り除けたのは収穫と言える。

望月さんは、そんな私の様子を少し不思議そうに見ていた。

 

「みことちゃん、ふうまくんに何か用事あるの?」

「えっ……あ、いや……」

 

一瞬だけ言葉に詰まる。

だが、ここで不自然に黙り込む方が怪しい。

 

「えーと、ちょっと聞きたいことがあって……」

 

苦し紛れにそう答えると、望月さんは「ふぅん?」と首を傾げた。

疑うというより、少し意外そうな顔だった。

 

「ありがとう、卯奈。ちょっと図書室に行ってくるね」

「ううん。でも、ほんとに大丈夫? まだしんどそうだよ?」

「だ、大丈夫だよ。ありがとう」

「そっか。……じゃあ、みことちゃんはちゃんと休んでね?」

 

望月さんは最後にもう一度だけ心配そうな視線を向けてから、教室の方へ戻っていった。

その背中を見送りながら、私は小さく息を吐く。

 

「図書室か。行くだけ行こう」

 

あとは、この世界が対魔忍RPGかアクション対魔忍か……だな。

私は場所の分からぬ図書室へと向かった。

まだ不安が沢山ある。

ただ、それでも、私の足元にほんの少しだけ現実味のある希望が灯った。

 

 

 

「(身体がなれない……)」

 

他人の身体を動かすことに四苦八苦しながら、私は現状の事を考えていた。

この世界が2つに絞れた。

あとはふうまさんに会って、世界線を判明させる。

 

─大丈夫? 生きてるか?─

「この状態を見て、生きていると判断するのか……?」

 

……先程から文遁みことのビジュアルチェンジ版が視界を遮ってくる。

 

「……図書室に行こう……でなければどうにもならん……」

 

─殺すか? 死ぬか?─

「綴木みことの身体でそれを軽々行う気はない……」

 

あぁ、また声が聞こえる。

文遁みことのビジュアルチェンジ版が、視界を塞ぐように脳裏へちらつく。

 

「……」

 

私は1度、目を強く瞑り、首を上にあげた。

面倒くさいもんだよ。

生きるというのは……。

……涙が出てくるのを堪え、私は構内の案内図を見つけ、図書室の場所を確認する。

 

─世界情勢的に、文遁覚醒みことが最後だったのにな。怨憎を抱いたまま死ぬほか無くなった─

「……図書室は……ここか……」

 

─本当に……本当に……!!─

「……見たかったよ……!! 本当に見たかったよ……!!!」

 

私は案内図に記された場所へと歩みを再開した。

廊下を歩く。

五車学園を見て回れるなんて、私にとっては、これほど感動する出来事もない状況だ。

私の身に起こった事が無ければ、余裕で感動していただろう。

今の私に、その感情を出せる余力は残っていない。

 

「……ん?」

 

ふと廊下の掲示板が目に入った

任務日程。訓練予定。学園行事。

その中に、見覚えのある単語があった。

 

「(遊撃隊……)」

 

私はゆっくりと立ち止まり、貼り紙をジッと見つめた。

ふうま小太郎、相州蛇子、上原鹿之助の名前。

それに付随する任務連絡が記載されていた。

 

「……RPGの世界線か?」

 

黒鉄色の水底に沈みゆく気分がほんの少しだけ浮上していく。

 

「よし」

 

再び廊下を歩く。

張り詰めた感情が、少しだけ緩んでいたのかもしれない。

気がつけば私は、口の端から小さく音を漏らしていた。

 

「……〜~〜〜〜〜〜〜〜〜♪」

 

彼岸帰航〜 Riverside View。

 

何十回、何百回、何千回と聴いてきた旋律。

別の世界に来てしまった今となっては、二度とその曲を聴けない可能性もある。

私は、この好きな曲を忘れないように、身体と心に刻まれた旋律をなぞる。

 

「……〜〜〜〜〜〜〜〜♪」

 

鼻歌というにはあまりにも弱々しいそれは、廊下の喧騒に溶けるように掻き消えていった。

 

どれだけ歌ったか定かではないが、大きな扉と見覚えのあるプレートが視界に入り、私はふと足を止める。

 

「ついた」

 

思わず小さく呟く。

ようやく辿り着いた。

そして、安堵や緊張といった感情がごちゃ混ぜになって、私の心臓の鼓動がより一層激しさを増していく。

 

「……っ」

 

無意識に、胸元を押さえた。

対魔忍スーツ越しに伝わる心音が驚く程に大きかった。

 

「……行くか」

 

私は1回だけ深呼吸をして、図書室の扉に手をかける。

手が震えている。

唇も震えている。

それでも私は、意を決して力強く扉を引いた。

 

「っっ!?」

 

私の視界に映る図書室は、それは大きいでは説明がつかないほどに大規模だった。

1階から3階まで続く立体的な図書室で、その想像を絶する大きさに、私は一瞬声が出そうになって、手で口を抑えた。

五車学園附属大図書館って名称を変更するべきでは?と考えに至るほど、この図書室は巨大だった。

何にせよ、1つの学校が持つべき規模じゃないことは確かだ。

 

対魔忍RPGで何度も見た、あの背景と同じ図書室が目の前に広がっている。

大学時代、文学部に所属していた私にはとてつもなく興奮する程だった。

 

「……この中からふうまを見つけるのか」

 

少し血の気の引くような考えが脳裏を過ぎり、私は少しため息をついた。

 

とはいえ、立ち尽くしていても仕方がない。

私はなるべく物音を立てないように扉を閉め、そっと図書室の中へ足を踏み入れた。

 

「……」

 

静かだった。

廊下の喧騒が嘘のようだ。

紙をめくる音、椅子の軋む音、誰かが本を棚へ戻す小さな音、誰かが咳き込む音。

その全てが、私の耳へと届いてくる。

 

「……」

 

私は少し、図書室へ入るのを躊躇した。

この場所では、大きな音を出すことそのものが罪みたいに感じられる。

……まぁ、実際に図書館で大きな音を出すのは罪寄りではあるのだが。

 

「(どこにおるんや……)」

 

視線を巡らせる。

高くそびえる本棚に何列にも並ぶ机は、まさにA型が作り出した迷路のようだ。

少し歩いただけで、自分がどこにいるのか分からなくなりそうなのが余裕で想像できた。

 

「(ふうま……ふうま……)」

 

私は心の中で壊れたラジオのように同じ名前を繰り返しながら、早歩きで辺りを探し回った。

 

「(このまま探しても埒が明かんな……。ふうまさんが居そうな場所を探るか……)」

 

私は脳細胞を全力で使用して思い浮かべる。

さて、まず考えられるのが読書スペースだな。

普通なら本棚から本を取ると、向かう先はまずそこだろう。

ただ、こういうタイプの図書館は本棚の近くにも座る場所がある。

ふうまさんの事を考えるに、多分本棚の近くに設置されている読書スペースで本を読みそうだと推測。

あと、ふうまさんが読む本のカテゴリーだ。

 

「(……ふうまさんって普段何を読むんだ……? シェイクスピアとか……ではないよな?)」

 

あの人……本なら何でも読みそうだな。

致し方ない、自身の勘を頼りに探す他なかった。

 

「とりあえず……歴史系から探すか」

 

ふうま小太郎の持つイメージから歴史系の場所から探すことにした。

 

「(えーと、歴史系は……ここか)」

 

私は歴史コーナーと書かれた場所に向かう。

場所は3階だ。

私は走ろうとしたが、流石に怒られると察知して早歩きで向かった。

 

「これは……本当に凄いな……」

 

心の声が出てきた。

歴史コーナーだけでもこれだけあるのか……。

私は歴史の本の背表紙を見つつ、周辺の読書スペースを探した。

当たり前だが、私のいた世界では見たこともない興味深い民俗の本なども存在し、見たい欲求に駆られつつも必死にふうま小太郎を探した。

そんな時だ。

 

「……っ!?」

 

私は、とある人物に視線が入って心臓が飛び上がった。

白銀の髪を持つ少女が、一冊の本へ静かに視線を落としていた。

黒と白を基調とした対魔忍スーツに黒い上着を羽織ったその姿は、儚げで、目を引く美しさがある。

個人的に衝撃が強く、思わず口を開いてしまった。

 

「天宮……紫水……」

 

決戦アリーナに登場した、個人的には最強に近い対魔忍だ。

波遁を持っていて、ガーディアンを顕現させて戦う戦闘スタイル。

あと、彼女自身も肉弾戦に強い。

好きなキャラクターだ。

 

「……」

 

決戦アリーナではフェリシアの攻撃からふうま小太郎を庇って……。

 

「……私にも見えているのか」

 

自然と口から言葉が零れる。

その声に気づいたのだろう。

天宮さんはゆっくりと顔を上げ、こちらへ視線を向けた。

一瞬だけ目が合う。

彼女はわずかに口元を緩めると、何も言わず、本を閉じて静かに席を立った。

 

「……」

 

そしてそのまま、彼女は音もなく本棚の向こうへ消えていった。

 

「……」

 

私はしばらく、その場から動けなかった。

あの人はただ静かに本を読んでいただけなのに、私の全てを見透かされたような気がした。

 

「……」

 

私は彼女に引き寄せられるように、本棚の奥へと足を向けた。

高く並ぶ本棚の陰に入ると、周囲の気配がふっと遠のく。

その静けさの中で、不意に別の人影が視界へ入った。

 

「(んっ!? あの青髪の男性は……!)」

 

既視感のある男性を見た私は、ゆっくりと近づく。

左眼は開いておらず、右眼から覗く金色の瞳は、まさに私がいま探していた人物だった。

ふうま小太郎。

説明不要の人物がそこに居た。

 

「(天宮さんに導かれたのか……?)」

 

そんな考えが脳裏を過ぎる。

今の私の状況を彼女は察知したのか?

……文遁を覚醒へと至らせたのも彼女だ。

……有り得るのか……?

 

「(いや、その事は後々考えればいい。まずは……)」

 

ふうま小太郎に、この世界線がどちらかを聞かなければならない。

私は小さく深呼吸をした。

喉の震えを押さえ込み、どうにか綴木みことらしく振る舞おうとする。

そして、声を絞り出した。

 

「センパイ……」

 

私はふうま小太郎へと近づく。

綴木みこと(わたし)の姿を見た彼は「お、みことか。どうした?」と読んでいた本を畳んでこちらの方を見た。

さて、どうなるか。

私は、とある話をした。

 

「センパイって、"特務中隊隊長"の話どうなりましたか?」

 

さて、どうでる?

ここはどちらの世界線だ……?

対魔忍RPGの世界だと、ふうま小太郎は特務中隊隊長ではない。

穂稀なおさんから隊長の話は聞かれていたはずだけど、特務中隊隊長にはなっていない。

もっと言えば、アクション対魔忍世界では穂稀なおと、ふうま小太郎はとあるイベントまで面識がなかった。

さて……この世界はどっちだ……?

 

「ん? 特務中隊? 何の話だ?」

「……っ! あ、あれ? 穂稀なお先輩がそんな事を言ってたような気がしたんですが、私の気の所為のようですね」

「なお先輩から、新設される隊長の話は言ってたが、そんな話は聞かれてないぞ」

「そ、そうですか。ありがとうございました! 少し気になったので、聞いてみただけです! 読書中大変失礼しました!」

 

ぺこりとお辞儀をする私。

あーしまった、いつもの癖でやってしまった。

こんな礼儀正しい動き、綴木みことはやらないよな……。

怪しまれたか……?

ここは、即座に撤退しよう。

私は、彼の顔を見ずに全力で図書館を後にした。

 

「……なんかヤケに礼儀正しいな……」

 

取り残された彼は唖然としつつ、そんな言葉を吐いて再び読書を再開する。

 

「お館くん、ちょっといい?」

 

しかし、ふうまの後ろに1人の女性が立っていた。

 

 

 

 

あぁぁぁぁぁぁぁ続くのかこれ……。

RE:対魔忍世界転移憑依物語X ─綴木みこと─を作った方がいい?

  • 是非見たい。
  • 旧みことでいい。
  • 旧みことを残したまま、新みことX見たい。
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