RE:対魔忍世界転移憑依物語 ─綴木みこと─   作:楠崎 龍照

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6話 決意

 

 

 

 

 

公的に、お前を殴る機会を与えてくれて!!!!!

本当にありがとう!!!!!!

 

 

 

心の中で叫びながら、私は拳を振り抜いた。

 

「ガッ……!?」

 

拳が炎条の顎を捉える。

鈍い感触が手の甲から腕へ伝わった。

炎条の身体がぐらりと揺れる。

そしてそのまま、糸が切れた人形のように膝から崩れ落ちる。

 

「……」

 

その場にいた学生対魔忍たちは固唾を飲んで、砂煙を見つめていた。

望月さんを含めた女子対魔忍たちは、目を瞑って祈るような仕草で彼女の勝利を願っている。

そして、砂煙が晴れた。

そこには地面に倒れ伏した炎条と、それを見下ろす私がいた。

 

「……」

 

運動場が、静まり返る。

 

「嘘だろ……?」

「炎条が、負けた……?」

「綴木が勝ったのか?」

「忍法なしで……?」

 

運動場で座って見ていた学生対魔忍たちが、次々とざわめき始める。

驚愕や困惑、疑念。

それらが私へ向けられていた。

しかし、私はそれを感じている余裕はなかった。

今まで人を殴ったことのない私にとって、この出来事がどれ程のものか……。

 

「……」

 

私は自分の拳を見下ろした。

炎条を殴った感触が、まだ残っている。

とても気持ちの悪い感覚だ。

 

「……っ」

「そこまで!」

 

八津先生の笛の音が、運動場に鋭く響いた。

 

「炎条の戦闘不能を確認。勝者、綴木!」

 

その宣言と共に、止まっていた空気が一気に動き出す。

 

「みことちゃん凄い!」

「あの炎条に勝つなんて、いつの間に強くなったんだよ!?」

「みことちゃんおめでとう!!」

「素晴らしいです! お見逸れしました!!」

「綴木おめでとう!!」

 

相州さんや上原さん、他の対魔忍達も、私の勝利を祝福してくれた。

私は必死に綴木みことになりきろうとしたものの、先程の殴った気持ち悪い感覚が残っており、そちらに意識が行ってしまっていた。

 

「あ、ありがとう」

 

その結果、かなり固い表情と言葉が出た。

対魔忍たちの祝福の言葉も遠く、何を言っているのか私には分からない。

 

「……」

 

少しだけ殴った方の手を見た。

 

「(人を殴るって……こんな感触なのか……)」

 

硬くて、重くて、生々しい嫌な感触だった。

気持ち悪い……。

なのに。

それだというのに……。

私は……ほんの一瞬だけ、救われたような気がした。

 

「……っ」

 

その事実に、私は吐き気にも似た嫌悪感を覚える。

最低だ。

本当に最低だ。

私は、綴木みことの身体で、人を殴って、その感触に少し救われてしまったのだ。

八津先生は地面に倒れている炎条の様子を確認し、自分が率いている部隊の対魔忍へ指示を飛ばした。

 

「炎条を保健室へ運べ。意識は飛んでいるが、呼吸はある。念のため保健の先生に診せろ」

「御意!」

 

数人の対魔忍が炎条へ駆け寄り、手際よく保健室へと運んでいく。

炎条は完全に気を失っていた。

つい先程まで勝ち誇ったような表情を浮かべていた男が、今は他の対魔忍たちに運ばれて、見る影もない。

 

「……」

 

私は、炎条が運ばれる様から目を逸らす。

いまアイツを見ると、先程の気持ちの悪い感覚が蘇ってくる。

 

「綴木」

 

八津先生の声が、すぐ近くで落ちた。

 

「……はい」

 

私は反射的に背筋を伸ばす。

八津先生はジッと私を見つめた。

 

「今の一撃は、演習としては成立している。炎条が戦闘不能になった以上、勝者はお前だ」

「……はい」

「だが」

 

八津先生の目が少しだけ細くなる。

その目と一言で、背中に冷たいものが走った。

演習の勝敗を見る教官の目ではない。

私が隠そうとしているものを、無理矢理覗き込んでくるような目だった。

正直、恐怖心すら覚えるほどだ。

 

「あの殺気は何だ?」

「……」

 

言葉が詰まる。

 

「相手を制圧するための気迫ではない。敵を倒すための闘志でもない。あれは、殺す側の気配だ」

「い、いえ……そんな、つもりは……」

 

自分でも驚くほど、弱い声が出た。

 

「なかったか?」

 

八津先生は静かに問い返す。

怒鳴ってはいない。

責めているわけでもない。

正直に答えろ。

そう言われているような気がしてならない。

 

「……」

 

なかった。

そう言いたかった。

けれど、言えなかった。

炎条を殴る直前。

私は確かに、殺すつもりだった。

少なくとも、そうなっても構わないと思っていた。

 

「……綴木」

 

八津先生は、少しだけ声を低くした。

 

「演習で勝ったことは評価する。忍法を使えない身で、相手の隙を見抜き、地形を利用し、勝機を掴んだ。それは間違いなく実戦的な判断だ」

 

「……」

 

「だが、自分の中にあるものを制御できなければ、それは強さではない。暴走だ」

 

その言葉が、鋭利な槍となって胸に突き刺さる。

暴走。

まさにその通りだった。

あの時の私は……私の世界にいた犯罪者と……。

 

「……すみません」

 

どうにか、それだけを口にする。

謝るしかなかった。

他に返せる言葉がなかった。

八津先生は私をしばらく見つめていた。

そして、ほんの僅かに目を細める。

 

「それと、綴木」

「……はい」

「お前、炎条に何て言った?」

「……っ!?」

 

八津先生の言葉に私の全身に鳥肌が走る。

心臓が激しく動き始め、脂汗が滲む。

 

「聞き間違いならいい。だが、私にはお前が、自分の名前ではないものを口にしたように聞こえた」

「……」

 

息が止まりかける。

聞かれていた。

あの瞬間に漏れた名前を。

古寺智樹という、本来この世界に存在しないはずの名前を。

 

「……何のこと、ですか?」

 

どうにか誤魔化そうとした。

けれど、自分でも分かるくらい声が硬かった。

もう……私は今にも泣きそうだった。

八津先生はすぐには何も言わなかった。

ただ、私の顔をじっと見ている。

 

「……そうか。それならいい。今回の演習はお前の勝利だ。戻って見学していろ」

「……わかりました」

 

私は気合いで泣くのを抑え込み、八津先生に一礼してから皆の座っている場所へと戻った。

この演習は綴木みことの勝利だ。

しかし、私の勝利を良しとしない存在がいた。

急に立ち上がり大声をあげて罵り始める。

 

「待て!! 忍法が覚醒してないコイツが炎条に勝つのは絶対におかしい!! 何かズルしたに違いねえよ!!」

「そうだ!! あの炎条に勝つなんて、卑怯な手を使ったに決まってる!!! このゴミコトが!!! 対魔忍の恥さらし!!!」

「お前そんな卑怯な事をして、対魔忍として恥ずかしくないのかよ!!!」

 

炎条の取り巻き達だ。

先程まで炎条の背後でニヤニヤと笑っていた奴らが、今度は顔を真っ赤にして私へ罵声を浴びせている。

炎条が負けた。

その現実を受け入れられず、どうにかして私の勝利そのものを否定しようとしているのだろう。

 

「酷い! なんてこと言うのよ!」

「お前ら、言っていいことと悪いことの区別もつかないのかよ!」

「卑怯なら、忍法が覚醒してないみことちゃんに演習を申し込む炎条の方が卑怯じゃないの!?」

 

望月さんや他の対魔忍たちが怒りの声を上げる。

そんな中……。

 

「……」

 

私の心境は穏やかではなかった。

あいつらは綴木みことをバカにした。

ゴミコト。

対魔忍の恥さらし。

卑怯者。

そのロバのクソ以下の言葉の一つ一つが、綴木みことへ向けられている。

私ではない。

この身体の本来の持ち主である彼女へ向けられている。

 

─殺そう。マジで殺そう。ガソリンでも撒いて殺そう─

 

「……」

 

胸の奥が、また黒く煮え立つ。

しかし、私は八津先生に言われた事を思い出してグッと黙り込む。

この泣き寝入りほど癪なことはないが、それでも彼女の身体でそれをしてはならない。

綴木みことの身体で、綴木みことの立場で、私は彼女の人生を壊すことになる。

そう必死に無敵の感情を抑え込む。

心の耳を塞ぎ、奥底から響く言葉を必死になって聞かないようにする。

 

「おい、何とか言えよ!」

「卑怯者!」

「炎条に勝った気になってんじゃねえぞゴミコト!!」

 

取り巻きたちの罵声が続く。

 

「……」

 

私はゆっくりと顔を上げた。

視界の奥で、取り巻きたちの顔が見える。

怒りと焦りと、少しの怯え。

炎条が負けたことへの動揺を隠すように、声だけを荒げている。

 

─……なら─

「……なら」

 

口が勝手に開いていた。

 

─なら、やりますか?─

「なら、やりますか?」

 

私は真顔の表情で、暴言を吐き連ねる彼らに向かって。

 

─私と、今ここで─

「私と、今ここで」

 

私は取り巻きたちを見据えたまま、静かに言葉を続ける。

 

─一戦交えますか?─

「一戦交えますか?」

 

運動場の空気が、ぴたりと止まった。

 

「……っ」

 

取り巻きたちの表情が僅かに強張る。

さっきまで大声で喚いていたくせに、私が真っ直ぐそう言った瞬間、その勢いがほんの少しだけ萎んだ。

 

「何なら、順番でもいいですよ」

 

自分でも驚くほど、声は冷えていた。

怒鳴っているわけではない。

挑発しているわけでもない。

ただ、淡々と事実を告げるような声だった。

 

「炎条さんの時と同じように、私が卑怯な手を使ったかどうか、身をもって確かめればいいじゃないですか」

「て、てめぇ……!」

 

取り巻きの一人が顔を真っ赤にする。

だが、足は前に出てこない。

 

「どうしました?」

 

私は、綴木みことらしい笑みを貼り付ける。

けれど、その内側で、黒いものが静かに渦巻いていた。

 

「やるんでしょう?」

 

その一言に、取り巻きたちが僅かに後ずさる。

5年間、本気でぶつける場所のない怨憎を、こいつらにぶつけようとしていた。

だが、その時だ。

笛を大きく鳴らして八津先生が大声をあげる。

 

「そこまで!!!」

 

八津先生の怒声が、運動場全体に響き渡った。

その一声で、炎条の取り巻き、私、周囲の学生対魔忍、その全員が一斉に動きを止める。

本当に空気が一瞬で凍った。

 

「……」

 

八津先生はゆっくりと私たちの方へ歩いてくる。

その足取りは静かだった。

けれど、近づいてくるだけで背筋が伸びるような威圧感があった。

 

「まず、お前たち」

 

八津先生の視線が、炎条の取り巻きたちへ向く。

 

「先ほどから聞いていれば、随分と好き勝手に言っているな」

「い、いや、でも先生! 綴木は目潰しなんて卑怯な──」

「……」

 

八津先生は何も言わず、ただ取り巻きたちを見つめていた。

その気迫を前に、取り巻きたちの声が止まった。

 

「……目潰しが卑怯だと? 戦場で敵が正々堂々と真正面から来てくれるとでも思っているのか?」

 

八津先生の声は低い。

怒鳴っているわけではないのに、確実に相手の心臓を掴みに行くような重さがあった。

 

「砂を使う。視界を奪う。相手の油断を突く。どれも実戦では当然の判断だ。寧ろ、炎条はそれを警戒できなかった時点で負けている」

 

「で、でも……!」

「でも、ではない」

 

八津先生は取り巻きたちを一人ずつ見据える。

 

「自分たちが気に入らない結果だったからといって、勝者を侮辱するな。ましてや、同じ生徒に向かって恥さらしだのゴミだのと口にするなど論外だ」

 

その言葉に、取り巻きたちは口を噤んだ。

先ほどまでの勢いは完全に消えている。

 

「それほど卑怯だと言うのなら、次の任務で敵に向かって言ってみるといい。正々堂々と戦ってくださいとな」

 

八津先生の声がさらに冷える。

 

「そんな甘い考えで戦場に出れば、死ぬのはお前たちだ」

「……っ」

 

取り巻きたちは何も言い返せない。

ただ、悔しそうに唇を噛み、私を睨みつけている。

 

「それから、綴木」

「……はい」

 

今度は八津先生の視線が私へ向いた。

その瞬間、胸の奥が冷える。

 

「お前もだ」

「……」

「挑発に乗るな。売られた喧嘩を全て買っていたら、命がいくつあっても足りん。まして、今のお前は冷静ではない」

「はい……すみません」

 

私は素直に頭を下げた。

ぐうの音も出ない。

 

「勝ったことは評価する。だが、勝った後の感情を御せないなら、それは次の危険に繋がる」

「……はい。すみません……」

 

何一つ間違っていない正論に、私は謝罪以外の言葉が出てこなかった。

そして、八津先生は炎条の取り巻きたち全員に宣告をする。

 

「この授業が終わったら残れ。今回の発言について話がある」

「……はい」

 

取り巻きたちは小さく返事をした。

その顔には不満が残っている。

だが、八津先生の前でそれを表に出すほどの度胸はもうないらしい。

 

「以上だ。演習を再開する」

 

八津先生の一言で、演習が再開される。

だが、運動場の空気は明らかに変わっていた。

先ほどまでの合同演習特有の緊張とは違う。

誰もが私を見ている。

忍法の使えない落ちこぼれ。

そう思われていた存在が、炎条焔を倒した。

その事実が、周囲の認識を嫌でも揺らしているのだろう。

 

「……」

 

私は何も言わず、見学する生徒たちの列へ戻った。

 

「みことちゃん……」

 

望月さんが小さく声をかけてくる。

その顔は、祝福したいのか、心配したいのか、怒りたいのか、分からないような表情だった。

 

「……卯奈」

 

私はどう返すべきか迷った。

普通なら、喜んでもいい場面なのかもしれない。

しかし、望月さんの顔を見た瞬間、胸の奥がまた重くなる。

 

「すごかったよ。すごかったけど……」

 

望月さんはそこで言葉を詰まらせたように、一瞬だけ間が空いてから口を開いた。

 

「ちょっと、怖かった」

「……」

 

望月さんから発した、その一言が私の心に刺さった。

 

「……ごめん」

 

反射的に謝る。

すると、望月さんは困ったように眉を下げた。

 

「怒ってるわけじゃないよ。ただ、みことちゃんが……なんか、すごく苦しそうだったから」

「そうかな? ……ちょっと、熱くなりすぎたかも」

 

どうにか綴木みことらしい軽さを混ぜようとする。

だが、声は上手く弾まなかった。

 

「ちょっとじゃないと思うけど……」

 

望月さんはそう言ってから、少しだけ口を尖らせる。

 

「でも、無事でよかった。ほんとに」

「……うん」

 

その言葉に、私は小さく頷くことしか出来なかった。

 

「正直、びっくりしたよ。みことちゃん、あんな動き出来たんだね」

「俺も。炎条の火遁をあそこまで避けるとは思わなかった」

 

相州さんと上原さんも感心したように言う。

その声に悪意はなく、純粋に驚いているだけだ。

 

「いやぁ……必死だっただけだよ。もう二度とやりたくないかなぁ……」

 

私は苦笑いを作る。

その言葉自体は本音だった。

少なくとも、あんな感情で誰かを殴るのは二度とごめんだ。

 

「……本当に、それだけか?」

 

ふうまさんの声がした。

 

「……」

 

私はそちらを見る。

ふうまさんは、他の皆と少し違う目をしていた。

ただ心配しているだけではない。

何かを見極めようとしている目だった。

 

「センパイ?」

「いや……」

 

ふうまさんは一度言葉を切る。

それから、少し声を落とした。

 

「さっきのお前、いつものみこととは違って見えた」

「……」

 

心臓が嫌な音を立てる。

 

「え、えー、そんなに変でした?」

「変だった」

 

即答だった。

 

「……」

 

思わず言葉に詰まる。

ふうまさんは、こちらから目を逸らさない。

 

「動きもそうだが、それ以上に……雰囲気がな」

「……そ、そうですかねぇ」

 

私は無理矢理笑う。

だが、多分誤魔化せていない。

 

「センパイ、私だって怒る時は怒りますよぉ。あそこまで言われたら、流石にちょっとくらい本気にもなりますって」

「……そうか」

 

ふうまさんはそれ以上追及しなかった。

けれど、納得していないことだけは分かった。

 

「……」

 

私はそれ以上、何も言えなかった。

ふうまさんの視線、望月さんの心配そうな顔、相州さんと上原さんの驚き混じりの視線、全部が痛かった。

それでも、演習は再開された。

 

「トォールハンマァァァアアアーーーー!!!」

「紙気、展開……!!」

 

雷が弾ける。

紙が盾となり、壁となり、まるで結界のように相手の攻撃を受け止める。

私は他の学生対魔忍達の戦いを眺めた。

正直、次元が違いすぎる。

マジな話を言うと……なんでこれだけのスペックを持っていて、回想では敵に捕まるのか謎でしかない。

そう思わざるを得ない程の激戦が、私の目の前で繰り広げられていた。

 

「行くよ! タコ足インファイト!」

「くらいませんよ! 土遁・穴熊囲い!」

 

別の組では、変則的な近接攻撃と土遁による防御がぶつかり合っていた。

速度、反応、忍法の扱い。

どれを取っても、私の知っている体育の授業とは比べ物にならない。

 

「(……これは……勝てないな……)」

 

呆然と見つめる。

炎条には勝った。

だが、それは別に私が強いという意味ではない。

相手が私を舐めて、直線的な攻撃ばかりして、なおかつ砂煙という条件が整ったからだ。

 

「(もしこの中に混ざれ言われたら間違いなく死ぬな)」

 

そう思った。

今の私は、ただ綴木みことの身体を借りているだけの素人だ。

忍法は……まぁお察しの通りで、なんならハッキングすら使えるか分からない状況。

この先の事を考えると、心が壊れそうだ。

 

「みことちゃん?」

 

望月さんの声に、私はハッとする。

 

「……あ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた」

「やっぱりまだ休んだ方がよかったんじゃない?」

「大丈夫だよ。今は見学してるだけだし」

 

そう言うと、望月さんは納得しきれていない顔で「そっか……」と呟いた。

その横で、ふうまさんはまだ黙っていた。

何かを考えているような顔だった。

 

「……」

 

その視線から逃げるように、私は再び運動場へ目を向けた。

やがて、五時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。

 

「む? よし、本日の合同演習はここまで。各自、今日の動きと反省点を確認しておけ」

 

八津先生の声に、学生対魔忍たちが返事をする。

その後、各々が更衣室や校舎の方へ戻り始めた。

私も立ち上がる。

一瞬、足元がふらついたが、倒れるほどではなかった。

 

「みことちゃん、ほんとに大丈夫?」

「うん。大丈夫」

 

何度目か分からない返事をする。

望月さんはまだ心配そうだったが、これ以上は何も言わなかった。

ふうまさんも、上原さん、相州さんと一緒に教室へと戻ろうとした。

 

「ふうま、少し聞きたいことがある」

 

八津先生に呼び止められ、ふうまさんは足を止めた。

 

「俺ですか?」

「そうだ」

 

ふうまさんと八津先生は何やら話をしている。

少し嫌な予感がした。

しかし、ここまで立ち止まって2人の方を見つめていれば、尚のこと怪しさを増すと危惧した私は、他の対魔忍と共に運動場を去ろうとする。

更衣室へ向かう人もいれば、そのまま校舎へ入る人もいた。

私は元々対魔忍スーツで運動場に来たため、そのまま校舎へと入っていき、下駄箱のところで望月さんが来るのを待っていた。

 

「……」

 

私一人。

……これからの事を考えて、ボロボロの精神が崩壊の一途を辿る。

 

「……」

 

どうしようもない……形容し難い感情に涙が溢れそうになる。

 

「これは無理だな……」

 

心の中で呟いたはずの言葉が、口から出ていた。

私は決心する。

ふうまさんに、今の私のことを伝えよう。

 

 

 

綴く気がしないよマジで……。

どうすりゃいいんだ……。

 

RE:対魔忍世界転移憑依物語X ─綴木みこと─を作った方がいい?

  • 是非見たい。
  • 旧みことでいい。
  • 旧みことを残したまま、新みことX見たい。
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