転生したらミミロルになってた件   作:ダダダダダっ子

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筆者は創作活動が久しぶりなので修正点があったら感想で教えて頂けると嬉しいです
あとジョジョ7部面白いので見てください


母籠虫の狂愛

森の中。木々がうっそうと茂り、月明かりも地面に届かない。私とデデンネは落ち葉を踏みしめながら奥の方へと進んでいた。

 

「こっちでチュ……確かに見たのはこの辺なんでチュ……」

 

デデンネの尻尾が時折ぱちりと火花を散らし、薄暗い足元を照らす。やがて木の根元に、白い繭のような塊が現れた。

 

「……リナちゃん!」

 

私は駆け寄る。糸の塊の中には、小さな体が横たわっていた。手足は固く巻かれ、口元まで覆われている。けれどかすかに胸が上下しているのを見て、私は息をついた。

 

「よかった……まだ生きてる……」

 

私は必死に糸をほどこうと爪で引っかき始める。けれどハハコモリの糸は粘り強く、すぐには切れない。

 

「お、おい……」

 

「黙れ! このままじゃ窒息しちゃうだろ!」

 

「ち、ちが……うしろ……」

 

「後ろがなんだ!? ……え……」

 

必死に爪を動かし続ける私の視界に、動く影は映っていなかった。背後の闇から、鋭い鎌が月明かりを反射する。ハハコモリは、音もなく私たちのすぐ背後に迫っていた。

 

「……………………」

 

「は、ハハコモリ!」

 

森の空気がひやりと震えた。背後に立つ巨体をようやく察したとき、私は息を呑んだ。緑色の巨体が私の頭に向かって手を向ける。手の先は鎌のように尖っていた。急いで踵を返そうとするが恐怖で体が動かない。

 

(や、やばい! 攻撃される!)

 

しかしハハコモリがとった行動は私が予想もしてない事だった。なんと彼女は攻撃するのではなく私の頭を優しく撫でたのだ。まるで赤ん坊をあやす母親のような行動に困惑しているとハハコモリが口を開く。

 

「あらあらぁ……小さな子兎ちゃんに……小鼠ちゃんまで! アナタ達もママの子供になりたいのかしらぁ?」

 

鎌がすっと伸び、私の体を抱き上げる。鋭い刃のような腕なのに、仕草は驚くほど優しい。胸元へ引き寄せられ、耳を撫でられる。

 

「ふふ……いい子、いい子。安心して……ママがちゃんと守ってあげるからね」

 

その声は驚くほど柔らかく、甘ったるい猫撫で声だった。けれど、響きが返って不気味さを際立たせる。

 

「や、やめろ! 私は赤ん坊じゃない!」

 

必死に暴れる私を見下ろし、ハハコモリは慈愛めいた笑みを浮かべる。その赤い瞳には濁った光が宿っている。

 

「あーあー、暴れないの。もっとママに甘えても良いのよ? ……アナタもね」

 

ハハコモリの眼はデデンネの方を捉えた。逃げ出すタイミングを伺っていた彼は思わず立ち止まり、体を震わせる。

 

「ひ、ひぃぃぃっ! 近寄るなでチュ!」

 

デデンネは尻尾をぶんぶん振りながら後ずさる。だが、もう一方の鎌がそっと伸び……まるで抱きしめようとするかのように迫ってきた。

 

「逃げろデデンネ!!」

 

私は必死に耳をばたつかせ、ハハコモリの胸から抜け出す。その隙にデデンネが頬をぷくりと膨らませ……『電気ショック』!!!

 

「きゃあっ!?」

 

青白い稲妻が闇を裂き、ハハコモリの体を一瞬だけ硬直させた。彼女はそのまま地面に横たわる。

 

「デデンネ! よくやった! 一旦退くよ!」

 

「ボクもう帰っちゃダメでチュか?」

 

「まだダメ!」

 

私とデデンネは息を切らしながら、夢中で木の幹を駆け上がった。下ではハハコモリがのそりと動き、辺りを見渡す。鋭い鎌が月光に反射し、私たちを追っている。

 

「ひぃ……ど、どうするんでチュ!? あんなのと戦えるわけないでチュよ!」

 

「とにかく……ここは『見』だ!様子を伺おう!」

 

二匹で必死に枝の上へと飛び移り、葉に覆われた場所へ身を隠した。心臓が早鐘を打ち、耳がじんじんする。

 

(まて……落ち着け……一旦深呼吸だ。冷静になろう)

 

そう思った矢先、視界に異様な光景が飛び込んできた。

 

「……っ!」

 

枝の影、葉にくるまれるようにして何かが木に吊るされている。それは小さなフードのような木の葉を被せられ、糸でぐるぐる巻きにされた小型ポケモンたち。チラーミィ、ピチュー、エネコ、そして何匹もの子ポケモン達。彼らは苦しげに身じろぎしている。

 

「な、なんでチュかぁ! これはぁ……」

 

「ま、まさか……これ全部、アイツがやったの!?」

 

私たちは凍りついた。けれど、ほんの一瞬の息遣いが枝を揺らす。次の瞬間……

 

「……みぃつけたぁ」

 

下から甘ったるい猫撫で声が響いた。闇の中で赤い瞳がギラリと光る。ハハコモリが首を傾げ、こちらを見上げていた。

 

「ふふふ……小兎ちゃんも、小鼠ちゃんも……そんな所にいちゃ危ないわよ? これはちょっとお仕置きが必要かしらねぇ?」

 

鎌が宙を切り裂くように振り上げられた。それと同時に立っていた足場だった木の枝が折れる。私たちはそのまま地面へと真っ逆さまだ。

 

「来るぞっ! デデンネ!!」

 

「ひぃぃぃーーっ!!!」

 

心臓がふわぁっと浮き上がるのを感じる。一方でハハコモリは落下地点に立って両手を広げていた。

 

「あら危ない! 子供たち! ママの胸に飛び込んで!」

 

「や、やだでチュ!!」

 

デデンネが頬袋をぱんぱんに膨らませ、全力で『電気ショック』を放つ!

青白い稲妻がハハコモリの体を直撃――しかし。

 

「ふふっ……どうしたの? ちょっとピリッとするわね?」

 

まるで蚊に刺されたかのように、ハハコモリは首を傾げて笑った。まるで痛みなど感じていないようだ。

 

「あっ……!?」

 

「うそでしょ……効いてないっ!」

 

私は空中でくるりと一回転し着地点をズラす、しかしデデンネはそのままハハコモリの胸の上へとダイブしてしまった。絶望するデデンネを気にかけつつ私はハハコモリと対峙する。

 

「あら? どうしたの? 小兎ちゃん? あなたもこっちに来なさい? ほら!」

 

ハハコモリがこちらに手を差しだす。私はとっさに耳をばたつかせ、全力で『はたく』を叩き込んだ。

 

「これでも食らえぇっ!!」

 

バチン、と乾いた音が森に響く。ハハコモリは少し後ろの方に下がった。

 

「効いたか? ……っ!?」

 

その時全身の毛が逆立つ。目の前のハハコモリは私の方を見て顔をひどく歪めていたのだ。それは痛みによるものではない。なぜなら彼女の体には傷一つついていないからだ。

 

「これは……少し『しつけ』が必要ね……」

 

「しまっ……!」

 

次の瞬間、銀色の糸が勢いよく吐き出される。私とデデンネは瞬く間に体を巻かれ、木に固定された。

 

「う、動けない……!」

 

「た、助けて……苦しいでチュ!」

 

ハハコモリはずんずんと私たちに近づき、私に向かって手を振り上げる。

 

「なんで……なんでっ! ママに反抗するの!」

 

「うぐっ!?」

 

ばしん。ばしん。バチン。ハハコモリの手が、私の頬を何度も打つ。衝撃が耳に響き、体がよろめく。硬い鎌の縁が当たるたびに、火花のように痛みが走る。私はそのたびに目を閉じ、でも決して畏げはしなかった。相手がどれほど大きな存在であろうと、リナちゃんがそこにいる限り退けない。

 

「ゲホッ! ゲホッ!」

 

「……ごめんなさいは?」

 

「……ぁ?」

 

「ご、め、ん、な、さ、い、は!?!?!?!?!?!?」

 

ハハコモリは声を荒げる。隣にいたデデンネはヒッと恐縮し耳をたたんだ。彼女は大きく手を振り上げる。それが当たろうとした瞬間、私は大きな声で叫んだ。

 

「ごめんなさい! ごめんなさいお母さん!」

 

それを聞いた瞬間、ハハコモリは叩く手を止めた。そして、にこりと笑うと片方の鎌を差し出してきた。思わず体を仰け反らせるがなんと彼女は赤く腫れた私の頬を優しく撫で出したのだ。

 

「……ハイ、よく出来ました! 流石わたしの子どもね。ママ嬉しいわ!」

 

ハハコモリは嬉しそうに私の頭を撫でる。先程までの鬼の形相は微塵も感じられなかった。デデンネは信じられないといった表情で私の方を見ている。

 

「ごめんね。ママもやりすぎちゃった。仲直りのキスをしてくれないかしら?」

 

「はい……お母さん」

 

「ママって呼んで?」

 

「……っ! ま、ママ……」

 

するとハハコモリは自分の頬を差し出す。ここに接物しろという事だろうか? 私はゆっくりと目を閉じて唇を差し出す。これが生まれ変わった後のファーストキッスだ。隣にいるデデンネはもう諦めたのか、死んだ目で星が浮かぶ夜空を眺めていた。

 

「ん……」

 

唇が頬に触れる。ハハコモリは目を閉じ、唇を噛み締めながら嬉しそうにしている。頬から唇を離すと私の体をギュウっと強く抱きしめた。

 

「あ〜もう好き好き好き好き! 大好き! なんて可愛い子なのかしら! この子は!」

 

何度も何度も何度も彼女は言い続ける。よほど嬉しかったのか頭の触覚もピコピコと動いていた。私はそれに何も反応しない。無表情。ノーリアクションを貫く。デデンネは顔を青白くしていたがハハコモリの顔を見てハッと何かに気づいたような顔をした。

 

「私もキスしてあげるからねぇ〜? 今からいくわよ? 3、2、い……ん?  これは……?」

 

ハハコモリは何かに気づく。彼女は自分の頬に何か違和感を感じていた。何度も頬をさするが彼女自身ではそれに気づかないであろう。

 

「…………これは流石に効くだろ」

 

桃色の光がハハコモリの頬にじんわりと染みていく。それは優しい羽根のように広がり、彼女の全身を包みこんだ。これは今の私が使える技の中でも最強の技だ。自負がある。

 

「て、天使の……キッス……」

 

デデンネが呟いた。そのとーり。

 

「あ、あぁぁ……うぁぁぁあああ……」

 

ハハコモリの赤い瞳がぐらりと揺れる。刃のような鋭さが失われ、足取りがふらつき、狂気の笑みが歪む。目の焦点を必死に合わそうとしながら彼女はよろめきだした。

 

「た、助かったでチュ……今のうちに何とかしないと……あれ? ミミロルちゃん?」

 

「うおおおおおお!!! リナちゃん! 待ってろ!」

 

「あ、あぁ。そういえばそうでチュね。僕も手伝いまチュよ」

 

私は必死に糸を噛む、引っ掻く、千切る。デデンネの助けもあってか、リナちゃんに巻き付く糸はどんどん緩まっていき……ものの数分で彼女は自由の身となった。

 

「やったでチュ!」

 

「リナちゃん! リナちゃん! 大丈夫!? 返事して!」

 

「う……うぅん……」

 

「リナちゃん!?」

 

「お……お好み焼き(?)」

 

「……うん! 無事そうだ!」

 

ほっと一息つく。私はデデンネとハイタッチした。後はリナちゃんを家まで持って帰ればミッションコンプリート。ママさん達もこれで安心だろう。リナちゃんの肩を2匹で持ち上げ、さぁ運び出そうと一歩を踏み出す。

 

しかしそう現実は甘くないものだ。

 

「あ……あぁぁ……」

 

後ろからハハコモリの声がした。私たちの心臓は飛び跳ねた。もしもキッスの効果が切れて、ハハコモリが再び起き上がったらこの決死の思いも行動も全てが無に帰る。

 

「……クル……ミル……? ……クルミル?」

 

あらやばいもう切れてた。マジでどうしよう。悪魔が起き上がってしまった。ハハコモリは頭を抱えながら私たちを見下ろす。私たちは絶望して思わず頭を抱える。

 

「あーあ。もう死んだっチュね。僕たち」

 

デデンネの声は震えていた。私も震えていた。もうなす術はない。ハハコモリに捕まって、私たちは拘束されてしまうんだ。しかしハハコモリの起こしたアクションは私たちが想像していたのとはまるで異なるものだった。

 

「あ、あぁぁ……あぁ! わ、わたし……なんて事をしてしまったの!」

 

ハハコモリは地面に膝をついた。ポツリ、ポツリと地面に小さな水たまりが生成されていく。想定外のことに私たちが困惑していると彼女は嗚咽しながら口を開いた。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……ほんとうに……あぁぁぁぁぁ……」

 

1匹の泣き声が森に木霊する。デデンネは困惑しながら後退りをはじめたが……あまりにも悲しそうな姿を見て少し不憫に思った私は彼女に向かって歩み寄った。

 

「あ……あの……」

 

「うぅっ……うぅぅぅ……」

 

ハハコモリは顔を上げる。涙でぐしゃぐしゃに歪んでいた。

 

「話を……聞かせて貰えませんか?」

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