みなさんありがとうございます!
やる気がめちゃあるので、今日一日中小説書きます。
ちょろは~
太陽は、今日も遠慮がない。
真上から放たれるその光線は、海を宝石に、砂浜を黄金に変えていく。
波が揺れるたびに、宝石は融合と分裂を繰り返し、また別の形を生む。
その輝きは、一瞬たりとも同じ姿を保たない。
日光と海面からの反射光。
その両方が、ビーチチェアで足を組むわたしに降り注ぐ。
カットアウトデザインの水着は、光を受けて一層輝きを増す。
胸元と腹にあしらわれた金色のリングは、鋭く光をはね返すことで輝く。
布に寄せられた細かなギャザーは柔らかな影を作り、体のラインに奥行きを与えていた。
手元のジュースは、氷が静かに溶けていく。
そのかすかな音は、周りの音に溶け込む。
ストローに口をつけ、ひとくち。
冷たい甘さが喉を滑り落ち、身体の奥にこもった熱を少しずつ奪っていく。
風が吹いた。
青い髪が暴れる。
それはまるで、波打つ海のよう。
水着の淡い白と髪の青は、瞳の色も相まって、まるで空と海。
心地良い……。
「海水浴なのに、なに黄昏ちゃってるのよ」
スポーツサングラスを片手で外しながら、彩葉が呆れたように言う。
その一言は、わたしは一気に現実へ引き戻された。
「チッチッチッ、こういう時間もたまには必要なんですよ」
わたし達は現在、海に来ている。
夏休みが始まる前から決めていたことだ。
一つ予定と違うことといえば、かぐやが参戦しているということ。
しかし、それを咎める人は誰も居ない。
かぐやチャンネルはあの息抜き以降、更にギアが上がった。
二回目の路上ライブをしたり、ツクヨミ巡り配信をしたり。
他にも、『激辛チャレンジ』や『恵方巻喋ったら即終了』、『ペットボトルロケット』など、昔流行った企画をやってみたりなど。
一日に1~2本の配信か動画がデフォルトになった。
ちなみに、わたしが一番好きな動画は、『初心者がコーチングしてみた!』というやつだ。
彩葉は諦めたかのようにビーチチェアに座る。
スポーツサングラスを掛け直し、オレンジジュースに手を出す。
「まだまだ足りない!どうすればいいのだー!」
かぐやが悔しそうに、レジャーシートの上で転げ回った。
スマホには『かぐや 168位』の文字。
ファン数は316,874。
もうすでにROKAとまみまみのファン数を超えたというのに、優勝にはまだまだ届かない。
……え?わたしのファン数は超えたかって?
そんなの無理に決まっとるじゃろ。
4桁万人いるセレナチャンネルを超えられたら余裕で優勝できるわ!
「かぐや、暴れない」
彩葉の声掛けでかぐやの暴走が止まる。
まるでお母さんみたいだ。
「こないだの歌配信、めっちゃよかったけど~」
「ね~。かぐやちゃんゲームも歌もうまいよね」
真実芦花が褒める。
それに応えるように、かぐやは、
「まあね。天っ才、歌姫ですから」
と、鼻を伸ばしながら言う。
しかし、2人は褒めるのをやめない。
「オリジナル曲もよかったしさ~」
「わかるー。あれ彩葉が作ったやつなの?」
オリ曲を彩葉が作ったという情報は少し前に、かぐやが言っていた。
「彩葉、可愛い上に天才すぎ~」
芦花は、彩葉の方は向かずに褒める。
それが少し照れているように感じた。
あと、満足しているようにも。
ただ単に、真実の髪の毛を編んであげていたからなのかもしれないが。
「あ、あれは昔に作ったやつだから……。かぐや余計なこと言わないで」
隣の彩葉が照れ隠しなのか、ジュースで顔を隠す。
隠しきれてませんよ、彩葉さん。
「ぐわあー。でも、やっぱり優勝したい!こんなんじゃまだ足りないよー!」
だんだんとヤチヨカップ終了に近づいてきているから、かぐやも焦っているのだろう。
「芦花~なにかアイデアない~?」
かぐやがアイデアを貰おうと質問する。
しかし、
「うーん、もう結構色々やってるみたいだしなー」
さすがの芦花さんもお手上げみたいだ。
もうさすがに、残ってないか。
そう思っていたが、すかさず真実が、提案をする。
「はいはーい!いろP初登場配信っていうのは?これまで正体を隠していた彩葉が着ぐるみを脱ぐことで新たな需要を——」
「はい、却下」
しかし、最後まで言い切る前に断られてしまった。
真実、どんまい。
わたしは良いと思ったんだけどなぁ。
みんなお手上げのようだ。
「芹奈はー?芹奈はなんかアイデアないー?」
「芹奈~どうにかして~!」
全員の視線が、こっちに向く。
仕方ない。
一人まったりしていたわたしは重い腰をあげ、ビーチチェアから立ち上がる。
風が髪を揺らした。
少し贔屓すぎるかなって躊躇してたけど、かぐやのためだしな。
今までは、話を出していただけでしっかりとした関わりはなかった。
だからこそ、話題性がある!
セレナとしてコラボするときが来たか!
「やはりここは、わたしが一皮脱いて本性を表す時がきたか!」
「なに言ってんだか」
決めポーズをきめてかっこよく言ったはずだが、ツッコミ一つですぐにスルーされてしまった。
まあ?わたしがセレナチャンネルやっているというのはみんな知らないことだし?
なにかできると思われないのが普通だよね?
……スベったのが恥ずかしいとか思ってないからね!
「やっぱ歌!オタクもみんな喜んでたし」
かぐやが挙手しながら、勢いよく立ち上がった。
わたしのことは完全無視ですか……。なるほど。
「オタク言うな」
「彩葉~、一緒に配信出て~。新曲も作って~。伴奏もして~」
要求がどんどん増えていく。
さすがかぐや、遠慮がない。
「これ以上勉強とバイトの時間は減らせません!」
しかし、彩葉はきっぱりと断った。
「でも海来てんじゃん!」
「そうだよ!」
軽い意趣返しのつもりでかぐやに加勢。
もちろん本気ではないよ。
わたしは彩葉が海来てくれて嬉しいと思ってるし。
それに、こういう時間は必要だと思ってる派の人間だしね。
でも負けず嫌いだから、かぐやが勝ってほしいと思っていた。
しかし、
「フッ。マジなエリートは遊びもおろそかにしないはず。睡眠時間削ってでも遊ぶ!」
”お母さん語録”で簡単に乗り切られてしまった。
ズルいと思います。お母さん語録強すぎるんですよ。
しかし、かぐやは諦める気配なんてない。
「ねえ、彩葉。このままじゃ、優勝できない……。かぐやのこと助けて……。彩葉に、演奏してほしい……」
泣き落とし作戦が炸裂。
彩葉は押しに弱いし、これは決まったか?
彩葉は頑張って耐えようとしているが、
「ま、まあ、時間が、空いてたら……」
やはり彩葉には断れまい。
「よしゃー!もっともっと配信するぞー!」
拳を突き上げるかぐや。
そして、悔しそうに砂を叩く彩葉。
勝者と敗者がわかりやすいな。
「ちょろは~!」
「ちょろはー」
「ちょろはだねえ」
可哀想なことに、そんな彩葉に追い打ちがかかる。
かぐやはなにやらでっかい岩に向かって走っていった。
「うっ何!?かにっ!?」
「岩場にいた。いっぱい集めて軍隊作る!」
かにが襲いかかった。
その大群は、何やら使命があるかのように、彩葉を海へ追いやる。
「彩葉、更に明るくなったねー」
「わたしでもあんなに笑わせられなかったのに」
「あんなに毎日が楽しそうな彩葉、初めてだもんね」
「「「どんな魔法、使ったの?」」」
3人でかぐやに質問。
当の本人は困惑しているのか、あまり言葉が出ていない様子。
「はぁ~、ひどい目にあった。かにに襲われるって、ゲームじゃないんだから」
そんなことをしている間に、彩葉が帰ってきた。
足はびしょ濡れで、水着もところどころ斑点が付いている。
幸い、どこにも怪我はないみたいだ。
「ん?みんなどうしたの?」
わたし達がかぐやに抱きついたり、肩に手を置いたりしていたからか、彩葉は疑問を投げかけてくる。
「なんでも~?」
何もなかったかのように、みんな一斉に解散。
さっきまでの定位置に戻った。
悔しいなぁ。
移動する際、芦花の方からとても小さくそう聞こえた。
* * *
海水浴の日の翌日。
わたしは考え事をしていた。
それは、どうやってセレナとしてかぐやと関わりを持ち、コラボにつなげるかという問題。
やろうとしても、やっぱり突然だとおかしい。
あっ!クイヨミがあるじゃん!
近々行われるクイヨミは、ツクヨミ公式で配信される大人気の番組だ。
新進気鋭の新人や、有名なライバーを呼び、クイズや大喜利などをする。
クイヨミの参加者にかぐやがいるという情報は、すでに公式から告知済みだ。
今回わたしは呼ばれていないが、無理を言って急遽参加させてもらおう。
そこで、いい感じに関係を築いて、いい感じにコラボに持ってけば……。
よしっ!
作戦は決まった。
これからやるべきことは、クイヨミ参加のために、ヤチヨに話を通すこと。
ヤチヨならきっとOKと言ってくれるばず!
さっそくヤチヨのところへ直行や!
最後のところ少し変更しました。
「オタク言うな」ってセリフがめっちゃ好きです。
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