超かぐや姫! ~ヤチヨの最古の親友~   作:モンブラン田中

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死ぬ気で書いたんですけど、死ぬ気で貯めたんですけど。
ぜーったい!(早く)投稿しないでよ!

だが、断る!

ということで、予定よりも早めに投稿を開始したため、ぜんぜん書き溜めがありません。
でも後悔はない!

誤字脱字教えていただけるとありがたいです。


1話 少しだけ未来の世界

 ――今は昔……。

 

 

 「うおっしゃぁ!」

 

 

 腹の底から飛び出した歓声。

 と、同時に突き上げた拳が空を切る。

 

 視界の中央に『K.O.』の文字が炸裂し、ブオンと低く重い効果音が鼓膜を震わせた。

 遅れて手元のコントローラが震え、勝利の余韻が腕を伝ってくる。

 

 

 ――では、なくて。

 

 

 額から吹き出す汗を右手で拭う。

 

 

「いやぁ~、危なかったぁ~」

 

 

 桜の花びらのエフェクトが舞う中、空中で静止していたレイピアが音もなく回転する。

 淡い光をまとった刀身が、まるで意思を持つかのように彼女の手元へ滑り込んだ。

 

 それを軽く受け止め、慣れた手つきで鞘へ収める。

 

 

『これがお嬢様かww』

『勝っちゃうのすごすぎる!』

『こんなお嬢様嫌すぎるw』

『お相手プロゲーマーのハズでは?』

『やっぱりセレナ様は最強!』

 

 

 高速で流れるコメントが視界の端を埋め尽くし、祝福とツッコミが入り乱れる。

 4年前の始めたばっかりではコメントなどほぼなかったが、今では流れない時間のほうが少ない。

 

 

「これで80連勝ですわぁ~!」

 

 

 わざとらしく気取った口調に、コメント欄の勢いがさらに加速する。

 

 

 ――超未来だったり。

 

 

「目標の80連勝できたことですし、これで終わりにしますわ!」

 

 

『とってつけたかのようなお嬢様口調w』

『あなた誰ですか?』

『さっきのほうが好きだった』

『おつセレナですわ~」

 

 

 画面の向こうの笑い声が聞こえてきそうな勢いのまま、配信は幕を閉じる。

 

 おつセレナ。

 そう言って、わたし――セレナは配信の枠を落とした。

 

 

 ――いやいや、大昔でも超未来でもなくて。

 ――今とあんまり変わらない、少しだけ未来の世界。

 

 *

 

 配信画面がフェードアウトし、視界の隅に浮かんでいたコメントログが一つ、また一つと消えていく。

 

 歓声も、効果音も、視聴者の気配もない。

 

 世界が静寂に包まれる。

 静かなのは嫌いだ。一人だった頃を思い出す。

 

 窓の向こうから目を突き刺す月明かりを放つ満月。

 わたしはそれを見て、しばらく動けなくなってしまった。

 

 

「うげっ!もう1時じゃん!やばばぁー」

 

 

 身体を動かせるようになったのは、数分が経過してからだった。

 

 人肌くらいまで熱せられたコンタクトレンズ型のスマートウェアラブル端末・スマートコンタクト、通称『スマコン』を素早く外す。

 配信を始めたのがだいたい18時だったから…、げっ!7時間もたってる!

 

 カーテンを閉め、電気を灯す。

 エアコンから吹き付ける風がわたしに籠もった熱を奪う。

 

 

 ゲームしてると時間を忘れちゃうのなんとかしないとなぁ~。

 と、考えつつも変えるつもりはない。

 

 汗かいちゃったし、もう一回お風呂入ってから寝るか。

 

 わたしは洗面所へ歩を進める。

 扉を開いた瞬間、静まり返った空間の中で――真っ先に自分と目が合った。

 

 オッドアイ。宇宙の如き深い青の右目と月明かりのような白の左目が鏡越しにこちらを見返す。

 次に特徴的な青髪が目に入り、そして、魅力的な口元のほくろ。

 顔立ちは整っており、クール系よりか、可愛い系寄り。

 そして笑うと覗く八重歯が、少しだけ幼さを残していた。

 髪はほどほどの長さで、普段はハーフアップにしている。

 

 今は無いが、ツクヨミでは更に猫耳と尻尾が付く。

 

 いつも変わらない私の姿。見慣れすぎて驚きはない。

 けれど、初めて見る人なら――この髪色だけで目を奪われることだろう。

 

 

「今日も配信楽しかったなぁ」

 

 

 そう呟き、浴室へ向かう。

 視界の端では、まだ桜の花びらが舞っているような気がした。

 

 *

 

 風呂から上がると、肌に触れる空気がひんやりと感じさせる。

 火照った身体から湯気が逃げ、体温がゆっくり平熱へ戻っていく。

 

 スキンケアは一回やったし大丈夫かな。

 

 エアコンの風が頬を撫で、重くなったまぶたを優しく引き下ろす。

 やばっ……寝ちゃいそう…。

 

 動きの鈍った身体にムチを打ち、机の前へ向かう。

 早く課題を終わらせなくては。

 

 課題に向き合う…。

 …前に音楽を聞くためにイヤホンを耳にはめた。

 もちろん聞く曲はヤチヨの曲だ。

 

 『大切なメロディは流れてるよ♪~』

 

 これを聞くだけで頑張ろうと思えてしまう、魔法の曲である。

 昔から、ずっと聞いてきた。苦しい時はいつもこの曲。

 よし、頑張ろう!

 

 

 わたしはやっとの思いで課題を片付け、布団に入る。

 学校の準備は明日しよう。

 疲労感に押しつぶされ、ふにゃふにゃした頭で考える。

 そして、気づいたときには意識がシャットダウンしていた。

 

 

 * * *

 

 

 今何分だ?。!!あと5分!?。やばっ!また遅刻しちゃう!。急げっ!

 

 わたしの朝は速い。

 なぜなら、毎日が遅刻との勝負だからだ。

 

 電車を降りて走る。人の目なんて気にしない。

 改札に定期券をあて、学校に向かって更に全力ダッシュ!

 周りに生徒らしき人は誰もいない。

 だんだん焦りからか、走っているからか汗がポツポツと溢れる。

 もう少しっ!

 

 とにかく足を回しているうちに、学校がだんだん見えてきた。

 校舎についている時計を確認。

 

 あと1分!?

 

 入口までの階段を登り、やっとの思いでたどり着いた校舎に入る。

 そして、靴をくつばこに放り投げ、かかとを潰してうわばきをはく。

 そして、走る!

 S.H.R(ショート・ホーム・ルーム)を行っているクラスの横をダッシュで通過し自分のクラスを目指す。

 見えた!後少し!いける!

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 あ……。

 

 

「セーフ!!」

 

 少しの希望にかけ、セーフを主張するが、

 

「アウトです。職員室行ってきなさい」

 

「「「あ〜」」」

 

 

 アウトをもらってしまった。

 先生もわたしが遅刻しすぎてるせいか、呆れてしまっている。

 クラスメイトはやってしまったみたいな顔してるし。

 

 くっ!

 悔しい気持ちを抱えながら、わたしは職員室へと向かうのだった。

 

 *

 

 職員室から帰ってきてはじめにすること。

 それは、彩葉の席にいるいつもの3人のところへ行くことだった。

 

 バッグをわたしの机に放り投げ、彩葉の席の真正面に立つ。

 わたしからみて左から美容に詳しい芦花、超人の彩葉、ごはんに詳しい真実だ。

 

 

「ちくせう。もう少し早く出ていれば。とほほ」

 

「あれは、どんまいだね」

 

「彩葉はすごいなぁ~、寝てる時間わたしより短いんでしょ?」

 

「いやいや、そんなことないよ」

 

 

 彩葉は授業の準備を進めながらわたしの質問に答えてくれた。

 品行方正、成績優秀、文武両道、精励恪勤、彩葉はやっぱり超人だ。

 

 

「彩葉は今日、バイトある?」

 

「今日は、たしか入ってたh…」

 

「やたー!彩葉、今日もフォローよろしく!」

 

 彩葉にVサインを出しながら、笑ってみせる。

 

「たしか、彩葉と芹奈は同じバ先なんよね?」

 

 

 そうそう。

 頷きながらそう言う。

 住宅街の隠れ家カフェ、『BAMBOO cafe』。

 わたしが彩葉と友達になったきっかけのカフェだ。

 

 初めて彩葉と会ったとき、なぜだかわからないが、とにかく友達にならなきゃと考えていたことを覚えている。

 なんでだろう。

 なにか特別な感じがしたのかな。

 

 でも、その考えのお陰で彩葉と友だちになることができた。

 大人しくそのことを幸運だったとでも思っておこう。

 

 

「あんたは、私のフォローなしでもできるように頑張ってよね」

 

 

 呆れ顔で言われてしまった。

 しょうがないじゃん、なぜかできないんだもん。

 

 

「ゲームはできるんだけどね~」

 

「芹奈ゲームに関してはプロだよねー」

 

「ね~」

 

 

 ふふん!

 鼻を鳴らしてドヤ顔を披露する。

 

 

「黒鬼にも勝てる実力見せて進ぜよぅー」

 

「はぇー。すっごーい」

 

 

 実は勝率的には2割くらいなのだがそれは言わないお約束だ。

 いつか5割まで持っていく予定だし。

 別に悔しいって訳じゃないんだからね!

 

 

「そろそろ時間だし、席戻ろうか」

 

「そうだね~」

 

 

 授業の時間になってしまった。

 わたしは特徴的な青髪をなびかせながら小走りで席につく。

 前に、バッグをクラスの後ろにあるロッカーに詰め込んで、教科書をさっと取り出す。

 

 はやく学校終わってくれ―!

 

 わたしは切実にそう願うのだった。

 

 

 * * *

 

 

「それじゃあ、お先ですー」

 

「おつでーす!」

 

「はーい!」

 

 

 学校とバイトがついに終わった。

 時刻は、22:30。彩葉と一緒の終了時間だ。

 明るかった空は暗くなり、満月だけが目立っている。

 

 わたしと彩葉の家は真逆。

 そのため、すぐにバイバイになってしまう。

 わたしとしては、彩葉と帰りたいが場所が場所だ。しょうがない。

 

 静かだなぁ。

 

 夜一人での帰宅ほど静かで寂しいものはない。

 わたしは、寂しい気持ちを抑えるために、スマホに手を伸ばす。

 

 曲を聞こう。

 名案を思いついたわたしはイヤホンをつけ、曲を流す。

 曲は相変わらずヤチヨの曲だ。

 

『あなたのハートに♪~』

 

 これこれ!

 

 寂しさが一気に吹き飛んだ。

 やはりヤチヨは神だったか…。

 

 寂しさがなくなったことで、回り始めた頭で3連休のことを考える。

 

 配信をすることは確定だけど、どんな配信にしようかな?

 ヤチヨとコラボ配信でもしようかな?

 

 そんなことを考えていると…。

 

 

「んおっ!?流れ星っ!」

 

 

 満月を背景に七色(なないろ)の線が現れた。

 神秘的で、幻想的で、そして懐かしい感じ。

 

 願い事…。願い事は何にしよう…。

 

 それはまるで希望の光のようで…。

 

 そうだっ!これに決めた!

 わたしは両手を合わせる。

 そして、

 

 

()()()が、幸せに暮らせますように!」

 

 

 微笑みながらわたしは親友の幸せを願った。

 今日は配信せずにヤチヨに会いに行こ!

 計画を決めたわたしはダッシュで家に向うのだった。

 

 

 * * *

 

 

 家に帰り、わたしは速攻で家事を終わらせた。

 時刻は23:51。

 

 部屋の真ん中に椅子を用意した。

 そして、手に持っていたスマコンを開け、目に装着する。

 

 続いて目を閉じると、宇宙が広がった。

 流れ星の視点を見ているかのような映像が続き、視界が光に包まれる。

 気がつくと無数の灯籠が鈍く光る部屋にいた。

 風の音が心地よく、寂しい部屋。

 

 

「ヤチヨ、おひさ!」

 

「おひさってほどでもないでしょ~に」

 

 

 わたしの挨拶にヤチヨは笑顔で返してくれた。

 

 普通は湖にエントリーするはずなのだが、わたしだけはヤチヨの部屋に直接行くことができる。

 昔からの親友であるわたしだけの特権だ。

 それと、アパートが隣の部屋なのも関係していると思う。

 

 

「ヤチヨ、今日流れ星がふったんだ!」

 

 学校から帰った小学生のように、今日あったことを報告する。

 

「……ここから、始まるんだね」

 

 なんだか嬉しそうな、悲しそうな言い方でヤチヨは呟いた。

 芹奈にも聞こえないほど小さく。

 

「流れ星といえば、ヤチヨとの出会いを思い出すなぁ」

 

「そうだね~。あの時のヤッチョは芹奈がいなかったら悲しすぎて死んじゃってたかも。いつも感謝してるよ♪」

 

 少し笑いの込められた言い方だった。

 それが本心なのかは本人にしか分からない。

 

「ふふん。もっと褒めてもいいんだよ~。わたしがヤチヨの約束守ってるってこと!」

 

 

 わたしはドヤ顔を惜しげもなく披露しながら、さらに褒めることを要求する。

 実際、そのくらいの約束は守っているのだ。

 ムカつくことはないだろう。というか、ヤチヨがムカついているところは見たことがない。

 なので、安心してドヤることができる。

 ヤチヨは包容力も神級なのだ。

 

 

 その後も、夜空にうかぶミラーボールを眺めながら昔話を続けていた。




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