超かぐや姫! ~ヤチヨの最古の親友~   作:モンブラン田中

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この投稿頻度が普通なのかもしれない。

どーしたらいーのだ—!


7話 アップしないでね

 かぐやは、あのゲーム配信をきっかけに、枷が外れたみたいに配信の幅を広げていった。

 

 ヤチヨに倣った(ならった)相談配信では、迷いごと全部まとめて吹き飛ばすような、まっすぐで痛快な答えを。

 映画の同時視聴では、バッドエンドによって、今までは見れなかったかぐやの本性が現れ。

 ROKA、まみまみとのコラボでは、かぐやの美しさと笑顔が溢れた。

 

 みんなで集まって、歌の練習もやった。

 

 ジャンルも、やり方も、正解も気にしないで。

 かぐやは、思いつく限りの”やってみたい!”に手を伸ばしていった。

 

 躊躇なんて言葉は存在しない。

 

 なんでも挑戦した。

 

 

 そんなかぐやを見ていると、なにかできることはないかと考えてしまう。

 でも、芹奈としてなにか手伝おうとしても、やれることはあまりない。

 

 だから、

 

 

「わざわざこっちまで来てくれて、ありがとね」

 

 

 頑張り屋さんなかぐやの息抜きに、どっか遊びに行こうと提案した。

 遊びに行く日もたまには必要だ。

 

 集合場所は彩葉のアパート。

 最近ここに来たばかりで、道がわからないかぐやに配慮した。

 

 

「最初はどこ行くー?」

 

「まずはカフェ!そしたら、服買いに行く予定」

 

 

 みんなに要望を聞いて、予定を立てた。

 カフェは真実。服は芦花だ。

 彩葉はどこでもいいとのこと。

 

 

「じゃあ、さっそく行こー!」

 

 

 かぐやの合図でカフェに向かって歩き出す。

 夏の熱風がわたしを包み込んだ。

 

 カフェは前に行ったパンケーキの店のあたりにある。

 

 電車に揺られ、少し歩くと、目的地が見えてきた。

 

 

「あちー」

 

「はやく入っちゃお」

 

 

 真夏日。みんな汗をかいて暑そうにしている。

 到着したら間も空けず、すぐに入った。

 

 涼しい風がわたし達を迎え入れる。

 

 極楽だぁ~。

 

 席に案内された。

 木製のベンチと小さめの丸い机が2つ。

 

 

「疲れだ~!」

 

 

 かぐやはおっさんのようにベンチに腰掛け、大きく仰け反った。

 

 

「かぐやちゃん最近、いっぱい配信してるもんね」

 

「いっぱい食べて、英気を養ってこー」

 

 

 彩葉が少し不服そうな顔をした。

 かぐやのための息抜きだから、注意しようにもできない、といったところだろう。

 

 

 少しの休憩を挟んで、みんなが注文をしだした。

 わたしは、アイスの乗っかったメロンソーダといちごのショートケーキをたのむ。

 

 

「ちょっとトイレ行って来る!」

 

「私も行こうかな」

 

 

 注文した品の来るまでの時間でトイレに行く。

 彩葉と一緒にだ。

 

 別に、誘ったわけじゃないよ。

 

 

 一緒に行ったからといって、なにか特別なことが起こるわけでもなく。

 数分して、トイレから戻った。

 

 で、戻った瞬間、ちょっとだけ状況を疑った。

 

 ベンチに座る芦花。

 その膝の上には、すやすやと寝息を立てて寝るかぐや。

 

 完全に膝枕されていた。

 

 トイレに行く前はなんてことなかったのに。

 

 

「しー。かぐや寝てるから静かにね」

 

 

 人差し指を唇に持っていき、小さく笑う芦花。

 

 さっきまでは、早くこないかなーと騒いでいたかぐやだったのに、いつの間にこんなことになったんだか。

 ツッコミどころはあるけど、不思議と声に出す気にはならなかった。

 

 起こすのが、もったいない。

 

 芦花は、かぐやの頭を揺らさないように、ゆったりとした動きでアイスコーヒーを口につける。

 氷がかすかに鳴る音さえ、どこか遠慮がちだ。

 

 一方で真実は、そんな空気もどこ吹く風で。

 サンドイッチと、ホイップたっぷりの抹茶ラテを、角度を変えながら何枚も撮っている。

 

 静かにしてるけど、真実はいつも通りだな。

 

 彩葉と顔を見合わせた。

 少し苦笑い。

 

 その後、音を立てないように、そっとベンチに腰を下ろした。

 

 風が少しだけ吹いて、かぐやの髪が揺れる。

 が、起きる気配はない。

 

 

「かぐやすごいお疲れだねー」

 

「ね。もっと休んで貰わないと」

 

 

 小声で交わす会話も、どこか柔らかい。

 

 予定はきっと崩れるな。

 でも——まあ、いいか。

 

 

 時間がゆっくり流れていく。

 かぐやを起こそうとする人は誰も居ない。

 

 静かな空間で、ゆっくりとした時間。

 少し差し込む日の光も相まって、心がぽかぽかする。

 

 心地良い。

 

 

 気づけば、1時間くらいが経っていた。

 

 かぐやのまつげがわずかに揺れて、ゆっくりと目が開く。

 

 

「うぉっ。……あれっ?」

 

 まだ状況を掴みきれていない顔で、きょろきょろと周りを見回して。

 

「かぐや寝ちゃってた?」

 

「そりゃーもう、ぐっすり」

 

 

 身体を起こし、少し眠そうな目をこする。

 まだ状況を完全には理解していないみたいで、ぼんやりと周りを見回してから。

 

 かぐやは、何事もなかったように、自分の頼んだものへと手を伸ばした。

 

 ストロベリーラテを一口。

 ブルーベリーケーキをひとくち。

 

 そのまま食べ始めた!?

 

 さっきまで膝枕で爆睡してた人の挙動じゃない。

 

 わたし達は顔を見合わせる。

 

 

「あははっ!」

 

 

 誰かが笑い出したのをきっかけに、みんなに笑いの波が広がった。

 

 こらえていたものが一気にほどけたみたいに。

 さっきまでの静かだった空気はどこへやら。

 

 

 その間もかぐやは何事もなかったみたいに食べ進め、結局そのまま、次の場所へ行くことに。

 

 *

 

 デパートにやってきた。

 目的はその中にある服屋だ。

 

 新しい服をみんなで買う予定。

 

 さっきまでのゆったりした空気とは打って変わった。

 店内は明るくて、人も多くて、どこか賑やかだ。

 

 

「これとかはー?」

 

「かぐやこれがいいっ!」

 

 

 ラックに並ぶ服を前に、あれこれ手にとっては見比べる。

 時には芦花に意見を聞いたり、実際に着てみたり。

 

 

「どう!?似合う!?」

 

 

 試着室のカーテンが勢いよく開いて、かぐやが自信満々に姿を見せた。

 

 芦花の的確なアドバイスによって選ばれた服は、かぐやの可愛さを十全に発揮させる。

 

 

「かぐやかわいい!」

 

「すごい似合ってるね」

 

「かわいー。ちょっと写真とってもいいー?」

 

 

 その後も、各々服を選んでいく。

 

 わたしに服の知識はあまりないので、ほとんど芦花に選んでもらった。

 芦花の選ぶ服はどれも良くて、さすが芦花と言いたくなる出来栄え。

 

 

 そのまま買って、勢いで着替えることになった。

 

 ——数分後。

 

 それぞれ新しい服に着替えて、試着室から出てくる。

 元の服は袋の中。

 

 1日中一緒に居たのに、今日初めて会ったみたいな感覚。

 みんないつもと違った雰囲気だ。

 

 

「どっかで写真撮りたい!」

 

 

 勢いよく手を挙げて、かぐやが言う。

 息抜きのはずだが、こんなときでもライバー活動はやるらしい。

 

 さすかぐ(さすがかぐや)

 

 目的は一応達成したし、時間も少し押してこともあって、今日は、そのまま写真を撮って解散することになった。

 

 

 デパートを抜けて、外へ出る。

 暑さが再びわたし達に襲いかかるがそのまま歩く。

 

 近くにいい写真撮影スポットがあるのだ。

 

 人工物と自然がちょうどよく混ざりあった場所。

 

 緑が増えたからか、少し涼しく感じる。

 

 

 荷物をまとめて置いて、写真撮影に移った。

 みんなでポーズを決めて撮ったり、一人ひとりで撮ったり。

 

 

「あっ!やっぱ動画も撮って良い?」

 

 

 かぐやが懇願する。

 わたしとしては全然OKなんだけど、彩葉がすごいしぶそうな顔をしていた。

 

 

「さっき写真だけって……」

 

「お願~い。動画撮るだけだからさ~」

 

「うぅ」

 

「まあまあ、撮っても減るもんじゃないしさ!」

 

 

 かぐやが何やら彩葉にお願いをしていたので、わたしも加勢する。

 芦花や真実も加わり、気づけば1対4の構図になっていた。

 

 

「はぁ……撮るだけだからね!」

 

 

 彩葉はしぶしぶOKを出した。

 

 

「よっしゃ!」

 

 

 その後は順調に撮影が進んでいく。

 最初は乗り気じゃなかった彩葉も、だんだん調子が良くなって、しっかりとポーズを決めるようになった。

 

 

「うおぉー!みんなかわいいー!よし、アップしちゃおー」

 

 

 かぐやが、さっき取った写真と動画をアップしようとする。

 が、

 

 

「アップしないでね」

 

 

 彩葉から待ったがかかった。

 

 

「えー。なんでー?」

 

「なんでって、個人情報!そういうのあげると、すぐ特定されるんだから!」

 

 

 彩葉の希望で、彩葉以外の写真と動画だけアップという形に落ち着いた。

 かぐやはすごい不服そうだが。

 

 

「彩葉かわいいのにー!」

 

「そんなこと言っても、ダメです」

 

「ちぇー」

 

 

 かぐやは不満そうに口を尖らせながらも、スマホを操作していく。

 

 

「はい、これでよしっと!」

 

 

 満足げにうなずくかぐや。

 その横で、彩葉はまだ少しだけ警戒した目を向けている。

 

 それでも大きなトラブルもなく、自然と解散の流れになった。

 

 電車まではみんなで歩いて、そこから各々の場所へ分かれる。

 

 

「じゃあ、またね!」

 

「ばいばーい!」

 

 

 手を振って、みんなとは違う方向の電車に乗る。

 

 楽しかったな。

 

 カフェでのひとときやみんなとの写真撮影。

 その全部が、ちゃんと形として残っている。

 

 こうして見返せる今の時代は、やっぱりすごいと思う。

 

 ヤチヨの言う通りなら、この時間は長くは続かない。

 

 だからこそ。

 

 この一瞬を、最高の時間にしよう。




投稿が何故かできてませんでした。
すみません。

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