どーしたらいーのだ—!
かぐやは、あのゲーム配信をきっかけに、枷が外れたみたいに配信の幅を広げていった。
ヤチヨに
映画の同時視聴では、バッドエンドによって、今までは見れなかったかぐやの本性が現れ。
ROKA、まみまみとのコラボでは、かぐやの美しさと笑顔が溢れた。
みんなで集まって、歌の練習もやった。
ジャンルも、やり方も、正解も気にしないで。
かぐやは、思いつく限りの”やってみたい!”に手を伸ばしていった。
躊躇なんて言葉は存在しない。
なんでも挑戦した。
そんなかぐやを見ていると、なにかできることはないかと考えてしまう。
でも、芹奈としてなにか手伝おうとしても、やれることはあまりない。
だから、
「わざわざこっちまで来てくれて、ありがとね」
頑張り屋さんなかぐやの息抜きに、どっか遊びに行こうと提案した。
遊びに行く日もたまには必要だ。
集合場所は彩葉のアパート。
最近ここに来たばかりで、道がわからないかぐやに配慮した。
「最初はどこ行くー?」
「まずはカフェ!そしたら、服買いに行く予定」
みんなに要望を聞いて、予定を立てた。
カフェは真実。服は芦花だ。
彩葉はどこでもいいとのこと。
「じゃあ、さっそく行こー!」
かぐやの合図でカフェに向かって歩き出す。
夏の熱風がわたしを包み込んだ。
カフェは前に行ったパンケーキの店のあたりにある。
電車に揺られ、少し歩くと、目的地が見えてきた。
「あちー」
「はやく入っちゃお」
真夏日。みんな汗をかいて暑そうにしている。
到着したら間も空けず、すぐに入った。
涼しい風がわたし達を迎え入れる。
極楽だぁ~。
席に案内された。
木製のベンチと小さめの丸い机が2つ。
「疲れだ~!」
かぐやはおっさんのようにベンチに腰掛け、大きく仰け反った。
「かぐやちゃん最近、いっぱい配信してるもんね」
「いっぱい食べて、英気を養ってこー」
彩葉が少し不服そうな顔をした。
かぐやのための息抜きだから、注意しようにもできない、といったところだろう。
少しの休憩を挟んで、みんなが注文をしだした。
わたしは、アイスの乗っかったメロンソーダといちごのショートケーキをたのむ。
「ちょっとトイレ行って来る!」
「私も行こうかな」
注文した品の来るまでの時間でトイレに行く。
彩葉と一緒にだ。
別に、誘ったわけじゃないよ。
一緒に行ったからといって、なにか特別なことが起こるわけでもなく。
数分して、トイレから戻った。
で、戻った瞬間、ちょっとだけ状況を疑った。
ベンチに座る芦花。
その膝の上には、すやすやと寝息を立てて寝るかぐや。
完全に膝枕されていた。
トイレに行く前はなんてことなかったのに。
「しー。かぐや寝てるから静かにね」
人差し指を唇に持っていき、小さく笑う芦花。
さっきまでは、早くこないかなーと騒いでいたかぐやだったのに、いつの間にこんなことになったんだか。
ツッコミどころはあるけど、不思議と声に出す気にはならなかった。
起こすのが、もったいない。
芦花は、かぐやの頭を揺らさないように、ゆったりとした動きでアイスコーヒーを口につける。
氷がかすかに鳴る音さえ、どこか遠慮がちだ。
一方で真実は、そんな空気もどこ吹く風で。
サンドイッチと、ホイップたっぷりの抹茶ラテを、角度を変えながら何枚も撮っている。
静かにしてるけど、真実はいつも通りだな。
彩葉と顔を見合わせた。
少し苦笑い。
その後、音を立てないように、そっとベンチに腰を下ろした。
風が少しだけ吹いて、かぐやの髪が揺れる。
が、起きる気配はない。
「かぐやすごいお疲れだねー」
「ね。もっと休んで貰わないと」
小声で交わす会話も、どこか柔らかい。
予定はきっと崩れるな。
でも——まあ、いいか。
時間がゆっくり流れていく。
かぐやを起こそうとする人は誰も居ない。
静かな空間で、ゆっくりとした時間。
少し差し込む日の光も相まって、心がぽかぽかする。
心地良い。
気づけば、1時間くらいが経っていた。
かぐやのまつげがわずかに揺れて、ゆっくりと目が開く。
「うぉっ。……あれっ?」
まだ状況を掴みきれていない顔で、きょろきょろと周りを見回して。
「かぐや寝ちゃってた?」
「そりゃーもう、ぐっすり」
身体を起こし、少し眠そうな目をこする。
まだ状況を完全には理解していないみたいで、ぼんやりと周りを見回してから。
かぐやは、何事もなかったように、自分の頼んだものへと手を伸ばした。
ストロベリーラテを一口。
ブルーベリーケーキをひとくち。
そのまま食べ始めた!?
さっきまで膝枕で爆睡してた人の挙動じゃない。
わたし達は顔を見合わせる。
「あははっ!」
誰かが笑い出したのをきっかけに、みんなに笑いの波が広がった。
こらえていたものが一気にほどけたみたいに。
さっきまでの静かだった空気はどこへやら。
その間もかぐやは何事もなかったみたいに食べ進め、結局そのまま、次の場所へ行くことに。
*
デパートにやってきた。
目的はその中にある服屋だ。
新しい服をみんなで買う予定。
さっきまでのゆったりした空気とは打って変わった。
店内は明るくて、人も多くて、どこか賑やかだ。
「これとかはー?」
「かぐやこれがいいっ!」
ラックに並ぶ服を前に、あれこれ手にとっては見比べる。
時には芦花に意見を聞いたり、実際に着てみたり。
「どう!?似合う!?」
試着室のカーテンが勢いよく開いて、かぐやが自信満々に姿を見せた。
芦花の的確なアドバイスによって選ばれた服は、かぐやの可愛さを十全に発揮させる。
「かぐやかわいい!」
「すごい似合ってるね」
「かわいー。ちょっと写真とってもいいー?」
その後も、各々服を選んでいく。
わたしに服の知識はあまりないので、ほとんど芦花に選んでもらった。
芦花の選ぶ服はどれも良くて、さすが芦花と言いたくなる出来栄え。
そのまま買って、勢いで着替えることになった。
——数分後。
それぞれ新しい服に着替えて、試着室から出てくる。
元の服は袋の中。
1日中一緒に居たのに、今日初めて会ったみたいな感覚。
みんないつもと違った雰囲気だ。
「どっかで写真撮りたい!」
勢いよく手を挙げて、かぐやが言う。
息抜きのはずだが、こんなときでもライバー活動はやるらしい。
目的は一応達成したし、時間も少し押してこともあって、今日は、そのまま写真を撮って解散することになった。
デパートを抜けて、外へ出る。
暑さが再びわたし達に襲いかかるがそのまま歩く。
近くにいい写真撮影スポットがあるのだ。
人工物と自然がちょうどよく混ざりあった場所。
緑が増えたからか、少し涼しく感じる。
荷物をまとめて置いて、写真撮影に移った。
みんなでポーズを決めて撮ったり、一人ひとりで撮ったり。
「あっ!やっぱ動画も撮って良い?」
かぐやが懇願する。
わたしとしては全然OKなんだけど、彩葉がすごいしぶそうな顔をしていた。
「さっき写真だけって……」
「お願~い。動画撮るだけだからさ~」
「うぅ」
「まあまあ、撮っても減るもんじゃないしさ!」
かぐやが何やら彩葉にお願いをしていたので、わたしも加勢する。
芦花や真実も加わり、気づけば1対4の構図になっていた。
「はぁ……撮るだけだからね!」
彩葉はしぶしぶOKを出した。
「よっしゃ!」
その後は順調に撮影が進んでいく。
最初は乗り気じゃなかった彩葉も、だんだん調子が良くなって、しっかりとポーズを決めるようになった。
「うおぉー!みんなかわいいー!よし、アップしちゃおー」
かぐやが、さっき取った写真と動画をアップしようとする。
が、
「アップしないでね」
彩葉から待ったがかかった。
「えー。なんでー?」
「なんでって、個人情報!そういうのあげると、すぐ特定されるんだから!」
彩葉の希望で、彩葉以外の写真と動画だけアップという形に落ち着いた。
かぐやはすごい不服そうだが。
「彩葉かわいいのにー!」
「そんなこと言っても、ダメです」
「ちぇー」
かぐやは不満そうに口を尖らせながらも、スマホを操作していく。
「はい、これでよしっと!」
満足げにうなずくかぐや。
その横で、彩葉はまだ少しだけ警戒した目を向けている。
それでも大きなトラブルもなく、自然と解散の流れになった。
電車まではみんなで歩いて、そこから各々の場所へ分かれる。
「じゃあ、またね!」
「ばいばーい!」
手を振って、みんなとは違う方向の電車に乗る。
楽しかったな。
カフェでのひとときやみんなとの写真撮影。
その全部が、ちゃんと形として残っている。
こうして見返せる今の時代は、やっぱりすごいと思う。
ヤチヨの言う通りなら、この時間は長くは続かない。
だからこそ。
この一瞬を、最高の時間にしよう。
投稿が何故かできてませんでした。
すみません。
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