時空のおっさん(概念)になったので色々する   作:Revak

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第1話

 

 二千二十六年。日本の○○県○○市のとあるアパートにて。

 ある男が部屋から出てきた。

 野暮ったい男だ。

 黒髪黒目の日本人らしい容姿。顔つきは優れているでも悪いでもない。

 髭は剃っているのかない。

 筋肉はまるでついていないが足だけは少し太い。他の部分に贅肉はあまりない。

 どこにでもいる男、というのがこの男の……板倉透だ。

 

 板倉透はフリーターだ。

 高校卒業後就職活動をするもうまくいかず就職できなかったのでバイトをしている男だ。

 家族構成としては姉が一人と母が一人。父親は高校卒業と同時に離婚し縁を切った。

 母が正社員で働いている為今のところは問題なく暮らせている。

 

(通勤めんどくせぇ……瞬間移動でも出来ねぇかな)

 

 透はそう妄想する。

 もしも瞬間移動が出来れば通勤時間をゼロにしぎりぎりまでゴロゴロできるのに、なんて。

 

(こう、ぱぱーとさ)

 

 瞬間透は瞬間移動した。

 

「は?」

 

 目に映るはバイト先のスーパー。

 

「???」

 

 何が起こったかわからない。幻覚か、夢でも見ているのか。

 透は頬をつねる。普通に痛い。

 

 訳が分からない。だが、仕事はしなければならないとスーパーに入っていった。

 

 

 

 

 数日後の土曜日。透は近所の公園に来ていた。

 少子化のせいで公園で遊ぶ子供はいない。

 

 インドア派の透がここに来たのは己の検証のためだ。

 何故か瞬間移動を成したと仮定し、己に何が出来るのか知りに来たのだ。

 何気瞬間移動はマスターし通勤を瞬間移動でしているが。

 

 透は取りあえず、近くの滑り台を意識する。

 

 公園の入り口から滑り台の上まで瞬間移動した。

 次の瞬間公園の入り口に転移する。

 それを何度か繰り返す。

 

(疲れないな)

 

 何十回やっても疲労が襲ってこない。どうやら無制限に出来るらしいと透は把握する。

 

 ならば次だ、と透は滑り台の上で意識する。

 

 己の得た、あるいは覚醒した能力はこんなものではないという確信がある。

 

 そして次だ。ドキドキワクワクしながら透はポケットに入れていた石を取り出す。

 

 石を落とすと同時に別の、だけど根源は同じ力を使う。

 

 石が止まった。落下途中で止まったのだ。

 

 石だけではない。青空の元流れる雲も止まり、音も止まってなくなった。

 

「時間停止……まじか」

 

 石に触れると石の時間が戻り落下を再開した。

 時間停止を解除する。音が戻り雲も流れ出した。

 

 更に次だ、と透は自宅に帰った。

 

 

 自宅のテーブルの上にスマホを置く。

 スマホの充電は百パーセントにしておく。

 

 今日は三月十三日の金曜日。

 透はこの能力最大の力の一つを行使する。

 

「行くぞ」

 

 気合を入れるためにも声に出し、能力を使った。

 

 瞬間移動と同じで移動をした。

 目に映るのは先ほどまでと変わらない光景。

 机の上のスマホの電源を入れる。

 スマホも何も変わらないかと思われたが日付が違った。

 三月十四日になっている。

 

「時間移動……」

 

 出来ると確信を抱いていたが実際に出来ると興奮が冷めない。

 この能力があればなんだって出来るだろう。世界だって思いのままに動かせるかもしれない。

 取りあえず元の時間に戻る。

 

 興奮のまま、世界を征服なんてしようかと思い途端冷静になる。

 自分だけがこの力を得た保証はどこにある? 

 

 そんなものはどこにもない。誰も言ってないだけで全人類が手にした可能性だってあるし、そうでなくとも一割が手にした可能性だってある。

 何なら自分の能力、仮称時空操作以外にも重力操作やら暴風操作やらの謎能力を得た者がいたっておかしくない。

 下手をすれば超能力者大決戦になってしまうだろう。びっくり人間の万国びっくりショー開幕だ。

 

 そこまで考えた透は冷静になり、取りあえず宝くじ当てるだけにしよう、とスマホで宝くじの当選発表日を調べ未来に飛び、未来で宝くじの番号を調べた後元の時間に戻り宝くじを買いに行った。

 

 

 

 

 ■

 

 

「うーん。どうしよ」

 

 さてどうしようか、と部屋のベッドでごろごろしながら透は考えた。

 あれから一ヵ月が経った。その間特に何もなかった。

 宝くじの一等で七億得た透は仕事を辞め、自堕落に過ごしていた。

 といっても就職時と同じ生活リズムで暮らしている上、ジムにも契約を結び体を鍛えている。

 

 母は仕事を続けている。家族の母にだけ当選を伝えたがだからと言って仕事を投げ出すようなことを母はしなかった。

 今働けるだけでもすごいんだから、と仕事を続けている。

 

 透はこの一ヵ月、能力を研鑽したり食べ歩いたり日本各地を刊行して回った。

 空の上に立ったり空間操作で対象を消滅させたり圧死させれるようになった。

 だが、透はこれといった相手……自分以外の超能力者や超常組織が関わってくる事が無くて暇だった。

 

 勿論実際に関わるのは御免被ると思ってはいるがそれはそれとして何の接触もないともの悲しい物がある。

 どうれここは一丁派手に能力つかってやろうかと思いつつ実際に組織とかにバレると怖いので踏み出せないでいるのが今の透だった。

 

 そこにピンポーンとチャイムが鳴った。

 平日なので母は仕事に出ているので仕方なく自身が出る。

 今の時代インターホンもモニターがあるので便利だなとモニターの通話をオンにする。

 

 玄関には奇妙な女と男らしき者が立っていた。

 改造した和服らしき服を着ている。スカートがついた着物だ。

 茶髪に黒目の美少女だ。腰には刀を差している。

 後ろに控えているのは白い全身鎧を纏ったガタイのよさそうな男だ。

 

(なんだこのコスプレ集団)

 

 透は突如現れた不審者に一歩引いた。

 

「すみませーん。この御宅に板倉透さんはいますか?」

 

 更に少女の可憐な声で己の名を呼ばれ更に混乱する。

 なぜこんなエキセントリック銃刀法違反者が己の名を知っているのだ、と。

 

「すみません。今はいません」

 

 取りあえずしらを切っとこうといないと嘘をつく。

 

「あ、嘘ですね。貴方のこの声は透さんの物です」

 

 なんでわかんねん。透は空を仰ぎたくなった。

 

「えー、では……うちになんのようですか?」

「魔法使いの組織への勧誘に来ました」

 

「やべーやつ来たな」

 

 透は思わずぽつりと言葉が漏れた。

 魔法使いとは、この科学信仰の時代に相応しくない事を言いだしてきた。

 だが、一瞬経って冷静になる。

 

 ──自身と同じ能力に目覚めた者の組織か? 

 

 そう思ったのだ。

 だが、すぐにそれはないのではとも思う。

 自分だったらこんな変な二人組を勧誘に出したりしない。

 やはりこの二人は薬中か何かだろうと透は決めつけた。

 

「うちにそんな組織に入る者はいないので、お帰りください」

 

 それだけ言うとガチャっと通話を切った。

 部屋に戻ってゲームの続きでもしようと玄関前の廊下を歩く。

 

 すぱっと、何かが斬れる音がした。

 

「は?」

 

 見ればそこには綺麗に斬られた玄関のドアがあった。

 

「俺のいえぇぇ?!」

 

 混乱し叫ぶ。

 ドアの残骸を乗り越えて女が入ってきた。

 

「少々強引ですが入らせてもらいました」

「ちょ、まずいですよ隊長この時代で不法侵入は不味いですよ!」

 

 鎧を着た男が必死に女を引き留めているが女は気にした素振りがない。

 

 そして透もすぐさま理解する。

 扉を斬るなんてどんな鋭利な刃物でもこの一瞬で斬るのは不可能。つまり相手は切断系の能力の持ち主だと。

 ならばと先手を打つしかないと透は時間停止をした。

 瞬間音が、世界が止まる。

 

 だが──女は変わらず動いた。

 

「はっ?!」

 

 時間が止まった世界で動いてきた事に透は思考が停止する。

 そして女の刀が透の首元にかかった。

 

「話、聞いてくれますね?」

 

 にっこりと、女は笑顔で言った。

 

「は、はい……」

 

 透はそう返すしかなかった。

 

 

 取りあえず時間停止を解除する。

 

「まったく、隊長。直すの時間かかるんですから無闇矢鱈に壊さないでくださいよ」

「す、すみません」

 

(隊長なのに謝るのか……)

 

 などと透が感心していると扉が直っていく。

 瞬く間に修復され壊される前の状態に戻った。

 

 男と女は靴を玄関で脱ぎ、部屋に上がってくる。

 

「あー、居間に案内しますね」

 

 取りあえず玄関や自身の部屋で話すことではないと思い居間に案内する。

 

 居間のテーブルに案内し座ってもらい、透は取りあえず茶を用意するかと隣接したキッチンに移動する。

 

「麦茶とコーヒーどっちがいいですか?」

「麦茶でお願いします」

「俺も麦茶で」

「わかりました」

 

 という事で麦茶を三人分用意しテーブルに持って行き、配置する。

 透も椅子に座りテーブルで女と対面する。

 

「で、まず何者ですか貴女たち」

 

 透は気になってしょうがないことを訪ねた。

 

「私は斎藤一(さいとうはじめ)。秩序の刃の三番隊隊長です」

「その隊員の加藤です」

「はぁ……礼儀にのっとって名乗ると板倉透です。それで、秩序の刃とは?」

「それを説明するにはまず最初から。この世界には魔法使いと呼ばれる者たちがいます。まぁ、私や貴方みたいな能力を持っている人たちの総称ですね。その者たちが所属する組織の名が魔法教会と言いまして……大丈夫ですか?」

「……まだ大丈夫です」

「それで、魔法使い全体の秩序を守るのが秩序の刃です。全十番隊まであって私はそこの三番隊隊長という訳です」

「……わざわざ隊長様が私に何の用で?」

「時空移動すら使いこなす一般出身の魔法使いなので、念のための武力として私が来ました」

 

(つまりそれは選択間違えればその場で首ちょんぱもあるのでは?)

 

 何気命の危機にさらされていると透は冷や汗を流す。

 

「時空移動とは?」

 

 取りあえずすっとぼける。

 

「文字通り時間を移動する魔法の事です。貴方未来に飛んで宝くじ見てあてたでしょ。うちの影密隊……諜報部隊が情報系の魔法ですごい魔力を何度も感じたので調べたのですよ」

「へー」

 

(あの移動探知魔法とかで調べられたんかい……次から気をつけないとな)

 

 全然反省しておらず次から気を付けよう程度で透は済ませた。

 

「それで、貴方を魔法協会の魔法使いの登録と……秩序の刃の勧誘に来ました」

 

 にっこりと笑顔で一は言った。

 

「勧誘……具体的に何をする組織なので?」

「貴方のような未登録の魔法使いの勧誘や、幻獣……今の言葉で言うと呪霊みたいなやつの処理や悪さする魔法使いの処罰をする仕事です。給料もいいですよ」

「具体的にいくらなんです?」

「平隊員で月四十万手取りです。魔法教会に税はないので丸々手に入ります。隊長だと手当なしで六十万ぐらいになりますね」

「たっか」

 

 透は給料の高さに面食らう。

 四十万など一握りの者しか手にできない金額である。

 

「貴方の場合は技能手当もつくので……四十五万から五十万ぐらいですかね」

「ごじゅうまん」

 

 その大金を前に透は唖然とするしかない。

 

「……命の危機は?」

「そりゃまぁ多少はありますが……最初に最低限の実力をつけて貰って、それから労働に入るので基本はないと思って大丈夫ですよ。斎藤さんが保証します」

「そうですか……もし秩序の刃に所属しないと言った場合は?」

「その場合は魔法教会に登録だけしてもらうことになりますね。一応破ったらいけないルール一覧を乗せた書類を渡すのでそれ読んでサインしてもらう形になります……これですね」

 

 斎藤は懐からファイルを取り出し透に渡す。

 

「拝見します」

 

 そう言って透は中身を見る。

 

 中にはいくつか破ってはいけないルールが書いてあった。

 大量殺人。街の強制的な支配。大量破壊。金や宝石の大量生産による市場破壊の禁止などだ。

 どれもが現代社会を壊さないためのルールばかりだ。

 

(これ"大量殺人"は禁止されてるけどただの殺人は禁止されてないっぽいな)

 

 おーこわと確認を進める。

 

「なるほど……では、職場見学はしてもよろしいでしょうか?」

「もちろん大丈夫です。歓迎しますよ。いつします? 今から行きます?」

 

 ワクワクと斎藤は笑顔で言う。

 

「……明後日、行きたいと思います。日付は大丈夫ですか?」

「大丈夫です。来るときは大魔道院に行く、と思って移動してください。それだけで着くので」

「……何かの魔法で?」

「大魔道院にかけられた結界魔法です。侵入者が来ないようにするための物ですね」

「へぇ……」

 

 そんな魔法もあるのか、と透は感心する。

 

「それじゃ、私たちはこれで。ぜひともうちに来てくださいね!」

 

 そういうと斎藤と加藤は去っていった。

 

「……さて、どうしたものかな」

 

 突如来たファンタジーに透はどうしたものかと頭を悩ませ始めた。

 

 

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