時空のおっさん(概念)になったので色々する   作:Revak

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第3話

 

「ここが教室です」

 

 案内された先は大学の教室だ。

 といってもアニメのように扇状に広がっていない。長机が幾つかありホワイトボードが置かれた部屋だ。

 

 中に入ると注目を受ける。

 中にいたのは八人ほどの男女だ。

 高校生らしき者三人に五十代程のおっさん一人、中学生が四人だ。

 

 教卓には教師が立っている。

 

 三人は部屋の奥、壁側に立つ。

 

 教師、エルンストが講義室に入ってきた。

 白衣を着たけだるげな男だ。黒髪黒目、白い肌の男である。身長は百七十五センチ程度。

 

「えー、今日は見学者が居るが気にしないように。授業を始める」

 

 そうして授業が始まる。

 

「まず、君たちも入学して二週間が経つが、いつ魔法が使えるかと興味津々だと思う。先に言うと魔法を使えるようになるのは早くて一年後になる」

 

 その言葉に透はマジ? という顔をする。

 

「そこから研鑽に入り、一人前の魔法使いになるには二年がいるだろう。まぁ、中学校や高校と同じぐらいの時間がかかると思えばいい。もし、そんなのは嫌だ、というのならここから出て行ってもらっても構わない。自己流で研鑽し魔法使いになることも可能だからな。と言っても幾らかかるかわからないが……さて。一応だが三年より早く魔法使いになる方法はあるにはある。それは個人に弟子入りすることだ。そうすれば勉学の時間が増え、知識の量も増える。最も弟子をとる魔法使いは稀だがな。そうしたことがしたいのならば立ち上がって出ていくと良い」

 

 その言葉に立ち上がる者はいなかった。

 

「よろしい。では授業を始めよう」

 

 

 そうして授業が始まるが透には何が何だかわからなかった。

 魔力やら魔法やらの専門用語で訳がわからない。

 

 一応一授業分見学したものの、訳が分からないという顔で講義室を出た。

 

 

 

 

 ■

 

 

 大学の食堂に二人は来た。

 聖はさすがにこれ以上は付き合えないので部屋に戻った。

 

 適当なテーブル席に座る。

 

「ここ、色々料理あるし安いんですよ。ほら」

 

 斎藤がタブレットを渡してくる。

 タブレットにはメニューが載っている。全言語対応している。

 

「うわ。いろいろありますね。しかも本当に安い」

 

 どれも一般的な料理店の半額だ。

 

「これ、食材を魔法で作っているので材料費がほとんどただなんですよ」

「魔法ってすごいですね……他には何が出来るんです?」

「ん-、死者の蘇生とか運の上昇とか、乱数調整とか……空飛んだり飛ぶ斬撃出したり、肉体の変化とか、人によって変わってきますけどほんとに色々出来ますよ。まぁ私は斬るだけしかできませんが!」

 

 斎藤はどや顔でそう言った。どや顔で言う事ではないだろと透は思ったが黙っておいた。

 

 取りあえず適当な料理を頼む。

 透は刺身定食を。斎藤は牛丼を頼んだ。

 

「それで、私も暫くは授業に参加するんですか?」

「基本はそうですね。最初は既に進んでいる授業の遅れを無くすために個人授業を受けてもらいます。ただ、板倉さんは既に魔法を行使出来ているので魔法の研鑽もしてもらいます」

「わかりました……という事は今後も模擬戦などをすることに?」

「基本はそれと対ゴーレムで訓練してもらいます。幻獣との戦いもありますからね」

「幻獣……確か呪霊みたいな物って言ってましたね」

「人の思いから生まれる存在ですからね。といっても存在を維持するには魔道具への憑依や魔法使いといの契約が必要ですし、自分だけで存在を維持できてるのは一人だけですし……一応幻獣たちの楽園みたいな場所があってそこでなら契約とか憑依なしで自己維持できますが」

「へぇ。人の思いってことは天使とか悪魔、ドラゴンなんかもいるんです?」

「いますよ。といっても天使とか悪魔は今の宗教が出来た後に生まれたので宗教の方が先に生まれてるんですが」

「天使の方が先じゃないんですか」

「まぁ、大昔……神話の時代はまた違ったらしいですが、あ、料理来ましたよ」

 

 料理を運んできたのはメイドだ。

 金髪碧眼の美少女であった。

 それに透はぎょっとした。

 よく見ればほかにも完全に同じ顔をしたメイドが他のテーブルにも料理を運んでいるのだ。

 

「あの、この人たちは?」

「ああ、ゴーレムですよ。人格もない単純作業だけさせられるタイプです」

「ゴーレム……人格もないという言い方をするってことは人格を搭載したタイプもあるんですか?」

「ありますよー。なんならホムンクルスとかも作れますし……冷めちゃうし料理食べましょ」

「あ、はい」

 

 凄い世界に来たな、と透は少し遠い目をした。

 

 

 

 

 ■

 

 三か月後。七月十三日。

 この大魔道院内は空調の魔法がかかっているので熱くないし寒くない。

 

 三か月、特に何事もなかった。

 お偉いさんが会いに来ることは殆どないし、来ても聖しか来てない。

 能力は研鑽し今のところは殆どなんでも出来るようになってきた。といっても時空間に関する事だけだが。

 

 透は秩序の刃の三番隊に所属することになった。

 といっても今のところは内定確定しただけで所属している訳ではない。まだ戦闘能力に不安があるし、まだ本人が実務したいといっていないからだ。

 といってもあと二か月もしたら正式入隊となり給料も発生するようになるだろう。

 この三か月で魔法に関する常識や魔法世界の偉人なども知ってきた。

 

 そんな中大学の運動場で。透と斎藤は対峙していた。

 

「ではいっきますよー」

「どうぞ」

 

 斎藤が刀を抜いた。

 いつも使っている刀ではなく、そこらの数うちの刀だ。

 

 それを使って本人にとってはゆっくりと、一般人から見れば高速の居合を披露する。

 居合によって透の首を斬ろうとし──首に触れようとした瞬間刀が消滅した。

 

「お、成功ですね」

 

 この結果に透は満足したとうんうんと頷いた。

 

「これ、なにしたんです?」

 

 斎藤が綺麗に消えた刀を見ながら問いかけた。

 

「呪術廻戦の五条悟っているでしょう。それにみたいに自分に空間を纏ったんです。魔法で自分に害のある存在だけ消滅するように設定して、常時発動状態です。魔力消費は私は時空間系ならほとんどないので二十四時間だしっぱでも問題ないです」

「無敵のオートガードって訳ですか。強いですねー」

「いやぁ言うほど強くはないですね。所詮は魔法なので出力負けした場合普通にダメージ受けますから、まぁ格下専用の防御ですね。変なところで原作再現しなくてもいいのに」

 

(その格下専用の格下は大半の魔法使いが該当しますがねぇ……)

 

 まぁそれはいずれ自分で気づくだろうと斎藤は言わないで置いた。

 

「じゃあ次お願いします」

「はーい」

 

 斎藤は今度は普段使いの魔道具の刀を構えた。

 透は腕を差し出すように伸ばした。

 

「えい」

 

 次の瞬間透の右腕は斬り飛ばされた。

 肘から先が亡くなった。

 

「どうです? 痛いです?」

「痛覚遮断の魔法使ってるんでそこまでは……ただ自分の腕が無いの見ると変な気分です」

「最初の内はそんなもんですよ。さ、早く治さないと出血死しますよ」

「わかりました」

 

 次に透は時間回帰の魔法を使う。

 自分自身の時間を逆行、巻き戻す魔法だ。

 これにより時が戻り腕がもとに戻る。

 

「これも完璧、と。魔法使い三か月にしてはなかなかやりますよ。もう本格採用してもいいレベルです」

「まだ経験が足りないんで、そこはまぁ模擬戦あるのみですね」

「私とします?」

「隊長としたら何もわからず瞬殺されるんでなしです」

「ちぇ」

 

 そうして雑談に講じてると聖がやってきた。

 

「研鑽してますね。いいことです」

「聖様、何かありました?」

 

 代表して斎藤が話しかける。

 

「はい。中国のある山奥で龍の幻獣が暴れています。それに対処するために一と透さんに出てほしいのです」

 

 自分の名が出たことに透は目を見開いた。

 

「私はまだわかりますが、透さんもですか? まだ未入隊ですよ」

「それに関しては幻獣が暴れすぎまして、山が一つ無くなってしまい……そのレベルを直せる人だと今のところ透さんしかいなく、出てほしいのです」

 

 嘘だ。消えた山を直せるレベルの実力者は何人かいる。といっても片手の指で数えられる程度だが。

 それでも透を出したいのは何かわけがあるのだろうと斎藤は察し、頷いた。

 

「わかりました。では透さん、行きますよ」

「わかりました、行きます……えっと、どこから行けば?」

「私が転送しますので、受け入れてくださいね」

「はい?」

「では、行ってらっしゃい」

 

 

 そう言われた次の瞬間。透と斎藤は山奥の空の上にいた。

 

「ワッツ?!」

 

 混乱しつつ透は胸にかけた青い翼を模したネックレスを起動する。

 このネックレスは飛行の魔道具だ。

 

 魔道具とは、魔法使いなどが作り出した魔法の力を持つ道具の総称だ。

 基本は魔法使いが作るが時間経過や伝承などによって魔道具と化す道具もある。

 使えるのは魔法使いのみであり、魔法使い自身を原動力にしている為魔法使い以外が所持しても基本はガラクタにしかならない。

 ただ一部例外があり、お守り系の魔道具は魔法使いの才能がなくともある程度機能する。その分制作コストが高くなる傾向にあるが。

 

 透は空を飛び、地上を見る。

 

 そこには二十メートル程の大きさを持つ龍が居た。

 緑色の鱗。蛇のように長いが太い体。四つの手足に龍の咢。

 まごう事無き龍がそこにはいた。

 龍、幻獣に分類される生物。

 

 幻獣とは人々の思いや信仰から生まれる生物だ。

 といっても神話の時代のように超級の力を持っている者はおらず、どうあがいても魔法使いの下位互換にしかならない。

 寿命の概念は基本ないが魔法使いと使い魔の契約を結んだ場合は魔法使いの死で使い魔も死ぬ。

 生まれた時点で能力が決まっておりそこから新たに能力を得ることは基本ない。

 信仰や願い、思いが存在維持のためのエネルギー源となっている為どうあがいても人間に依存するしかない劣等種だ。

 

 そんな中、この龍は土地と契約を結ぶことで自己維持をしてきた幻獣だ。

 契約とはいっても一方的に土地の魔力を吸い出すだけで土地側に豊饒などの加護はない。

 

 もともとはこの山にも村落があり、そこを通りがかったこの龍が神だ何だと言われ気をよくした結果土地と契約を結び居座った。

 だが近年になって土地から人々が消えた結果、龍が人が信仰を忘れただなんだと言いがかりをつけて暴れ始めたのが事の顛末になる。

 

 

 地上を見ればそこにはいつか見た魔法使い二人が地上で龍と戦っていた。

 門番をしていた魔法使いザフとその同僚カールだ。

 二人は全力で砕けた山を下って龍から逃げていた。

 

 その二人を龍は口に魔力を貯めて攻撃しようとする。あからさまなブレスの前兆だ。

 

 透は二人の前に転移し空間を分ける壁を生成した。

 龍のブレスが放たれる。

 超高温の炎のブレスは山を燃え上がらせる。

 だが、透が作った空間を遮断する壁に阻まれ透と二人には届かない。

 

「えーと、無事ですか?」

 

 透は取りあえず聞いておこうと二人に話しかけた。

 

「ぶ、無事ですけど! 前! 前!」

 

 カールが叫ぶ。

 透も視線を龍に戻せば素手で攻撃してきていた。

 

「大丈夫ですよ」

 

 既にドーム状に空間を遮断する壁を展開しているので龍の攻撃が通ることはなかった。

 

「無事みたいですね。えっと、私があの幻獣倒していいでしょうか?」

「倒せるもんなら倒してみな! はっ!」

 

 ザフの方が煽る様にそういった。

 

「なら遠慮なく」

 

 透は力を行使する。

 龍の下半身……はよくわからないので腕から下を空間事ねじ切った。

 

「じょかsdさkなbふえうg?!」

 

 龍が声にならない悲鳴を上げた。

 流石の幻獣でも体の半分以上を破損されれば存在の維持が難しくなる。

 無論再生能力ぐらいは持っているがそれでも体の半分以上というのは即死レベルだ。

 

「うん。じゃあ、さよなら」

 

 次に透は龍の残った上半身の空間を消滅させた。

 これにより龍はこの世界から消え去った。

 

 空間操作には難度と魔力消費の効率の差がある。

 上から順に空間消滅、空間ねじ切り、空間圧縮、空間遮断だ。

 

「いやー強いですね透さん!」

 

 空から斎藤が降りてきた。空間遮断は解除済みだ。

 褒めれて悪い気はしないのか透は顔をにやけさせた。

 

 それに対しザフとカールは開いた口がふさがらなかった。

 

(相手は推定五百年以上生きた幻獣だぞ?! それを苦も無く消滅させたとかマジかこいつ?! 媚び売っといた方がいいか?!)

 

 空間系の魔法は上記の順に上の方から難易度が高いし、相手との実力差でレジストもされやすくなる。

 つまり透は格下専用の能力構成をしている訳だ。

 その能力で幻獣を一方的に消滅させたとなれば相応の格があるという事。

 

「それじゃあ続いて透さん、この山も元に戻しましょう!」

「勝手に戻しちゃっていいんです?」

「いいですいいです。三番隊隊長として私が認めます」

「なら遠慮なく」

 

 透は上空に転移し足場を固定し空に立つ。

 

「ん-、まぁこの辺かな」

 

 透はざっと周囲を見渡し時を戻す範囲を決めた。

 そうして山と周辺の時が戻り、山が直っていく。

 流石に山の破壊で死んだ小動物の蘇生は出来ないが、植物ならば戻せるので戻していく。

 動物の場合は死の根幹にある魂に時空魔法では干渉できないので透は死者の蘇生は出来ない。

 勿論ザフとカール、斎藤は能力の対象外にして戻した。

 

 壊れ崩れかけていた山から一転、ただの山に戻った。

 

 透は斎藤の前に転移する。

 

「終わりましたー」

「ありがとうございます! それじゃあ大魔道院に戻りましょうか!」

 

 こうして透の初の実戦は終わった。

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