「へぇ。時空魔法の使い手か。珍しいね」
大魔道院の塔、名をアルカナスパイアの最上階で聖とシエロが話していた。
シエロは赤い髪に瞳をも持つ美少女……に見える男だ。
外見だけはいたいけな美少女そのものだがよくよく見れば骨格が男の物であるとわかる。
だが来ているのは可愛らしい少女服の上に白衣を着ている為外見からぱっと判断するのは困難だ。
聖とシエロはソファに向かい合って座っている。
「はい。時間逆行も可能な魔法の使い手です」
「そのレベルが今の時代に生まれるとはね。僕も一度会ってみたいな」
「でしたら明日はどうでしょう? 明日も透は訓練しているはずなので」
「そうだね、会いに行くとしようか」
にっこりと笑顔でシエロはそういった。
■
大魔道院の大学の訓練場で透と一人の女が対峙していた。
長身の女だ。身長は百八十センチと非常に高い。
緑色のチャイナドレスを着た女であり、容姿も美しいと言える。
緑色の髪に赤い瞳の女だが、幻獣ではなく人間である。
胸は豊満だがケツは小さい。
「行きますよ!」
「はいっ!」
女──名を
透は両手を構え迎撃の構えをとる。
美鈴の徒手空拳を透は素手でどうにか弾く。相手が手加減しているから出来る事だ。
美鈴があえて見せた隙を突いて透は攻撃に転じる。
迷うことなくその胸を全力で殴った。
そこにエロイ目的は一切ない。
胸を、腹を殴るが美鈴は答えた様子が一切なかった。
ならばとばかりに蹴りを入れるがそれは素手で受け止められた。
そのまま真上に放り投げられた。
透は空中で姿勢を整え着地の体勢をとる。
だが美鈴が跳躍し透の上に来た。
そのままかかと落としを放ち透の頭に命中し、透は地面に急降下した。
落下し、透は意識を失った。
「あら、やりすぎました?」
美鈴はそう言いながら地面に着地した。
取りあえず回復するかと美鈴は
美鈴は呪符型の
「あ、頭いてぇ……」
意識を取り戻した透は頭を押さえながら立ち上がった。
「大丈夫です?」
「もう治ったんで大丈夫です……けどやっぱ強いっすね」
「これでも五百年は鍛錬積んでますからね!」
ふふんと美鈴は腕でマッスルポーズを見せた。
「やっぱ格闘戦はもう少し用鍛錬ですね……」
「言うて無敵防御あるしいいんじゃないです? 最近は二重に展開できるようになったんでしょう?」
「まぁ、消滅と遮断の二重展開してますけどそれ突破してくる奴に無力なので……」
龍の幻獣を討伐してから一か月半が経った。
その間透は時空間魔法を極めに極め、今のところ時間停止をすれば抗える者は誰もいないレベルまで上がっていた。
未来に行くも過去に行くも自由自在であり、探知魔法で探知されないレベルにまでなっている。
ただ今のところ実験検証以外で乱用はしていない。下手なことすると秩序の刃の討伐対象になるからだ。
空間消滅は斎藤には破られたが遮断は今のところ誰にも破られていない。
「お、いた居た。君が透君か」
そこにシエロがやってきた。
「貴方は……えっと、シエロ様、ですよね」
座学もこなしている透は魔法世界の偉人も知っている。
シエロは神話の時代から生きている四賢人の一人だ。
アルカナスパイアの主人でもある。
アルカナスパイアは魔法の研究の第一機関だ。
多数の魔法使いが所属し日夜魔法に関して研究開発を続けている。それの総長を務めているのだ。
当然戦闘力も高いが魔法開発能力の方が高い。
「そうだよ……うん。君凄いね。このレベルの時空魔法の使い手はお目にかかったことない」
シエロは四賢人に相応しく解析能力も高い。相手の能力全てを丸裸にするぐらいは訳ないのだ。
「ありがとうございます」
取りあえず褒められてるっぽいので透は感謝の言葉を返しておいた。
「君、大成するタイプの人間だね。僕が保証するよ。胸を張るといい」
「あ、ありがとうございます……?」
ここまで褒められることが無いので困惑しながら透は礼だけ言っておいた。
■
大魔道院にはいくつか施設がある。
アルカナスパイア。魔法研究の第一機関。
魔法大学。魔法を教える大学。
祈導殿。大魔道院最大の寺院。一応仏壇や仏の像があるが仏教徒はいないので宝の持ち腐れ。何気千年以上の歴史を持つが魔法で改造されまくってるので歴史的価値はあまりない。
アーカディアの街。魔法世界最大の魔法都市。世界には幻獣が住まう町や魔法使いが支配する街なども探せば少ないがある。主に暮らしているのは魔法使いと幻獣のみ。一応一般人も数人いるが大体が魔法使いや幻獣の配偶者。
秩序の刃と影密隊の隊舎。合計十一ある。
その最後、秩序の刃第三番隊の隊舎に透は来ていた。
作りは和風の屋敷その物だ。
一階建ての横に広い建物であり、作りとしては言っては何だがブリーチに出てきそうな感じである。
その執務室に透と隊員たちはいる。
斎藤と透が立って向かい合っている。
両者とも真面目な顔であり、透はどこか緊張した顔をしている。
「という訳で、今日から三番隊に所属することになった板倉透さんです」
「板倉透です。新人なのでまだわからない事が多いですが、精進してまいります。よろしくお願いします」
一応様儀式として拍手が起こるが少ない。
斎藤と透、そして加藤ともう一人しかいないのだ。
もう一人の名は田中と言い加藤と同じ鎧を着ている。
「よろしくネ透クン! ぜひともうちで活躍してくれタマエ!」
田中が鎧の下でにっこり笑顔を浮かべた。
「それじゃあ仕事を教えますので、まずは外に行きましょうか」
「はい! よろしくお願いします!」
二人は隊舎を出て外の世界へ出ていった。
斎藤と透は東京の渋谷を歩く。
斎藤は和服に刀を差した色物スタイルだが何も言われないし、警察に職質されることもない。
認識阻害という精神に干渉する魔法の力を持つ魔道具の力だ。これを基本斎藤は装備している。
といっても精神に干渉する魔法はとかく他者から干渉されやすいので対魔法使いや幻獣には意味が殆どないことが多い。その分一般人相手には強力に力を発揮するが。
「それで、仕事って何をするんです?」
透がワクワクを隠せないという感じで問いかけた。
訓練をこなし魔法能力は魔法世界でも二人といないレベルまで磨き上げた。
模擬戦もし現状斎藤とは三割の確率で勝てるようになっている。
いわば力を手にした子供の用に力を振るいたくてしょうがないのだ。
「基本は見回りですねぇ。要注意魔法使いが住んでる街とかを見て回って変なことが起きてないか見回ります」
「見回りは大事ですからね。他には?」
「……何かあったら暴力装置として出勤するぐらいで、基本街をぶらつくだけで終わりますね」
「……えぇ。もっと何かテロ組織と戦うとかは?」
「魔法世界でテロする組織なんていませんねぇ。魔法使いって自己中の人が多いので他人をどうにかしてやろうという気概を持つ集団はまずないですし……」
「そうですか……じゃあ街を見て回るだけなんです?」
「あとはまぁ隊舎に戻ったら一日のレポート書いて提出して、て感じです。魔法使いの才能を持っている人を見たり魔法使ってる人いたらレポートに書いてくださいね」
「わかりました。他に気を付けることは?」
「ん-、今のところはないですね。それじゃあ街の散策に行きましょう」
「はい!」
こうして一日渋谷と新宿を歩くだけで一日が終わった。
尚始業開始は午前八時、終了は午後五時とホワイト勤務であった。