時空のおっさん(概念)になったので色々する   作:Revak

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第7話

 

 とある日。透は仕事としてアーカディアの街を巡回していた。

 

 透は仮面をつけてアーカディアの街を歩いている。

 T字の黒い切れ込みが入っており視界が阻害されそうだが魔道具なので阻害される事はなく、視界は良好である。

 何故仮面をつけているのかというと思ったよりつらが良くなかったのでせめて仮面でもつけて美少女の雰囲気は出しておこうと思ったのである。

 因みに胸は美乳程度であまりない。

 

 上下黒い服という仕事をなめている服だが舐めてはいけない。どちらとも魔道具だ。

 破損しても自動で修復しサイズ調整も自動でし、肌にフィットするので動きを一切阻害しない上自動で洗浄されるという高級服である。一着五万。

 

 だが秩序の刃の給料は高いので普段使いする分まで買ってある。

 

 共に歩いているのは加藤だ。加藤は変わらず全身鎧を着ている。

 

「平和だねぇ」

 

 三十年も経てば同僚とも仲が良くなるし、今の透は副隊長という地位なので敬語を使わなくてもいいと言われている。

 

「そうですねぇ。まぁ、この街で何かする馬鹿はまずいませんからね」

 

 この街アーカディアで何か悪さをしようとし場合まず最初に住民の魔法使いから反撃を食らう事になるのでこの街で悪さをする馬鹿は基本居ない。

 まぁどこの業界にも何考えてるかわからない馬鹿はいる者なので数十年に一度馬鹿をする奴は湧くが。

 

「しかし女の体になって一週間たちますけどどうです? 慣れてきました?」

「まだ下着をつける時とかは違和感ある。ただそれはそれで興奮するので問題ない」

「ひぇー変態っすね。率直な意見ってやつです」

「はははこやつめ」

 

 そうして雑談をしながら大通りを歩く。

 この街で車を使うやつはいないが念のために車道は作ってある。

 基本は物資を大量に運ぶ魔法使いが使うぐらいしかないが。

 歩いていると透の影からジルが顔を出した。

 

「主様! 今すぐに全力で防御を! 加藤さんは百メートル外へ転移させてください!」

「わかった!」

 

 使い魔の忠告に従い加藤を安全そうな場所に転移させ、己を全力で守る。

 空間消滅、空間ねじ切り、空間圧縮、空間遮断を追加で展開する。

 ドーム状に四つの層に分けて展開する。

 

 そして──それは来た。

 

 それは美少女のパンチ。構えも何もなっていない、ド素人同然の攻撃。

 だが、音速を優に超えた速度で放たれる攻撃は致死の一撃だ。

 膨大な魔力によって空間が歪められ展開している防御の空間が削られ壊される。

 一枚、二枚と次々と紙を破るかの如く破壊され──常に展開している二重の防壁も破られた。

 そして透の腹に命中。透は奥へ吹っ飛んだ。

 

 空中で体勢を治し時間逆行で受けたダメージを治す。肋骨が折れていた。

 

「何者だ?!」

 

 透は己の骨を折った犯人を見る。

 

 そこにいたのは透とは比べ物にならない美少女だ。

 黒髪黒目の女。非常に美しい容姿をしている。

 身長は百六十三センチほど。腰まで届く黒く艶めいた髪をしている。

 切れ目であり、顔つきは非常に美しいといえる。

 何故か女子高生のセーラー服を着ている。

 

「ほう。私の一撃を耐えたか。私は狐塚……じゃなかった、ヴィクトリア・フォン・シュタイエル。四賢人の一人だ」

「四賢人が何故通り魔を……?」

 

 この魔法世界で四賢人を名乗る馬鹿はいない為相手は本物だと思われる。

 だからこそ透は通り魔的に襲ってきた理由がわからず混乱した。

 

「今、四賢人の間でかけ事をしていてな。新しい四賢人……つまり五賢人として五人目を探している。そしてお前はそれに選ばれたのだ」

「なんじゃそりゃ。勝手に選ばれても困るが」

「悪いが拒否権はない。先の一撃を防いだのを見るに資格は相応にある。明日、本試験をするとしよう」

 

 それだけ言い残すとヴィクトリアは空の彼方へ飛んで行った。

 

「なんだったんだあれ……」

 

 取りあえず加藤さん戻して上司に報告するか、と透はやることをやった。

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 翌日の昼一時。祈導殿の訓練場にて。

 

 透とヴィクトリアは対峙していた。

 

 訓練場の端には観客席が簡易的に作られ百人近い魔法使いが観戦に来ていた。

 

 どうしてこんな目に……と透は空を仰ぎたくなった。

 だが仰いでも現実は変わらないので直視するしかない。

 

 ヴィクトリアは刀を手に持っていた。

 

「それじゃあ本試験の内容は……本気の私の攻撃を十分耐えたら合格ってことで。死んだり行動不能になっても不合格」

「死にたくないんですが」

「蘇生の準備はばっちりだから大丈夫よ」

「そういう問題じゃない……まぁ、この現実を受け入れるしかないから諦めますけど」

 

 一応あの後透は斎藤と聖に相談しに行ったがその結果は『諦めるしかない』というものだった。

 ヴィクトリアはある種の暴君だ。力こそすべてのパワーマンである。

 大人しくやられるしかないのだ。

 

 ふざけんなボケと透は息まいた。

 

 ならば逆に存在消滅させたるわと気合を入れた。

 

「それじゃあ……始め!」

 

 ヴィクトリアがそう宣言する。

 それと同時にヴィクトリアのスカートがぶわっと広がる。

 スカートの中から赤黒い触手が伸びてくる。

 丸太のように太く、ところどころ目がついている触手だ。合計十一本尻から生えている。

 

 極太の触手の攻撃を透は空間遮断で防御する。

 

 それと同時に透はヴィクトリアに対し消滅を使う。だがヴィクトリアの高い魔法耐性の力で防御され一パーセントしか消せなかった。

 

「面白い。私をわずかとはいえ消すか……!」

 

 ヴィクトリアは触手の一つから刀を取り出した。

 魔道具の妖刀だ。とある幻獣を材料に作り出した魔道具である。

 

 それを持って触手を使い超加速。刺突を放つ。

 それに対し透は空間転移で真上に移動し回避。

 それを読んでいたヴィクトリアは十一の触手を真上に伸ばして攻撃する。

 

「うざったらしいな!」

 

 透は消滅と圧縮の空間の壁を展開し触手の波を打ち消す。

 その隙を突いてヴィクトリアが上に飛行。背後から透に斬りかかる。

 それを空間把握の魔法で感知していた透が振り返り消滅とねじ切りの空間を纏い素手で刀を弾いた。

 

時間加速 四重(タイムヘイスト クアトロ)!)

 

 行使するのは自分の時間を加速する魔法だ。

 四の四乗、つまり二百五十六倍の速度で動けるようになる。

 この手の魔法にありがちな寿命がマッハで消えるようなことはない。仮にあったとしても既に不老なので意味はない。

 

 加速し、魔力で自己強化することで透はどうにかヴィクトリアの動きに着いて行った。

 

 ヴィクトリアが触手を自在に操り攻撃し、それを透はどうにか削除や捻じ曲げで対処する。

 それに興奮しヴィクトリアが刀片手に突撃し透は転移で避け、空間の押しつぶしで本気で殺そうとする。

 あっちに飛んだり転移したり忙しい戦いが続く。

 

 そうした攻防が五分続く。

 

 余波で訓練場がしっちゃかめっちゃかになっていく。

 地面が抉れ消滅し谷が生まれ、観戦者たちはこりゃ自分も死ぬと避難を始めた。

 残ったのは秩序の刃の各隊長とジル、四賢人だけだった。

 聖が気を聞かせて結界魔法を張ったので余波でジルが死ぬことはないだろう。

 

 戦局を変えたのは透だ。

 

 透の空間の捻じ曲げがヴィクトリアの右手を捻じ曲げひしゃげさせたのだ。

 

 それにヴィクトリアはあっけにとられ動きが一瞬止まる。

 その隙を見逃す透ではない。全力の時空間魔法で空間を消滅させようとする。

 

 ヴィクトリアもあわててレジストするがもう遅い。ヴィクトリアの下半身を消した。

 

「やってやったぞこの野郎!」

 

 可憐な女の声で透は叫んだ。

 

 それに対し、ヴィクトリアは笑い始めた。

 大声で笑い始め、急に笑ったことに透は引いた。

 

「あーっはっはっはっはっははは! 私の体をここまで消すとはやるじゃないか人間! もう少し本気を出そう!」

 

 瞬間ヴィクトリアの下半身が元に戻る。セーラー服事再生した。

 

「ふざんなクソボス!」

 

 透は両手で中指を立てた。

 ならば仕方がないと適当に野生の獣を数十匹転移で持ってきて精神操作の魔法でヴィクトリアに襲い掛かる様に仕向ける。

 転移で持ってきたのはサーベルタイガーや虎に像などサバンナに住む動物だ。

 

「雑魚を用意しても無駄だ!」

 

 だがヴィクトリアは触手で獣全てぷちっと潰した。

 しかし透は一瞬の隙を作りたかったのでこれで良い。獣には悪いが。

 

 上から空間を弄って押しつぶすように空間を動かす。

 それに対しヴィクトリアは触手の波で空間を押し返すという力技でやり返す。

 更に追加で触手を生やし押しつぶす空間の横から触手で攻撃しようとする。

 それに対し透はワームホール……通るだけで空間を移動できる穴を生成し触手の攻撃をヴィクトリアに返す。

 

「やるな!」

 

 ヴィクトリアは興奮し目を輝かせた。

 

 ヴィクトリアは全ての触手の先から魔力砲撃を放った。

 それにより透が圧縮していた空間が崩壊する。

 

 触手の波が透を襲う。だが、既に予測出来ていた事。

 透はワームホールを開いた。繋げる先は──太陽。

 

 太陽の百万度を超える炎がヴィクトリアと訓練場を襲った。

 あまりの熱に空間が揺らめく。透は自分に四重の空間バリアを纏ったことで防いだ。

 

 炎によってヴィクトリアが焼かれていくが再生の方がギリ勝る。だが、触手を出す余裕はない。

 

 全身が焼かれ炭のようになりながらもヴィクトリアは刀を握って突撃した。

 

 

 透は空間を転移し圧縮し逆行させ捻じ曲げ消滅させ戦う。

 人知を超えた戦いに秩序の刃の各隊長たちは唖然としていた。

 斎藤に至っては「私よりつえー」と呆然としている。

 

 

 そうして更に七分が経過した。

 

「流石に止めますね。これ以上やられると大魔道院が消し飛びます」

 

 聖がそういった。

 透とヴィクトリア両方ヒートアップし周囲の被害もくそも考えず暴れている。このままいくとヴィクトリアの魔力砲撃で大魔道院の半分は消し飛ぶだろう。

 

 聖もまた音速を超えた速度で飛翔。二人の間に浮いた。

 

「せいっ!」

 

 拳から衝撃波を放ち、二人の動きを一瞬止めた。

 

「そこまでです。既に十三分経過しています。試験は終わりにしましょう」

 

 その台詞に透はやった、という顔をする。

 こんな命を懸けた戦いなど御免被るのである。

 だがヴィクトリアは残念そうな顔をした。

 

「む、そうか……なら、まぁ、終わるとしようか……」

 

 ヴィクトリアは触手をしまい、地上へと降りる。

 透も地上に転移した。

 

 三人そろって地上に降りるとそこには残っていた観戦者組が居た。

 一歩アオスが前に出た。

 

「では、四賢人を代表して私が宣言しよう。これより板倉透は新しい賢人として認め、我らは五賢人となろう」

「えぇ……そんな簡単に認めていいんです?」

 

 透はあっさりと認められたことに不満を抱く。

 というかそもそも認められたくない。何が悲しくて偉人になんてならなければいけないのか。

 

「そうは言うが、本気のヴィクと十分以上戦える者は我々四……五賢人以外いない。正当な評価だ」

「はぁ……まぁ、拒否権なさそうなんで受け入れます。嫌ですけど。嫌ですけど」

 

 大事なことなので二回言った。

 

 こうして透は五賢人として認められた。

 

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