「ようこそ。我が屋敷へ」
翌日。透はある屋敷に招待されていた。
東京の一等地に建てられている建物だ。
その建物は、広く、でかかった。
アニメによく出てくる豪華な家である。
というか豪華すぎてもはやわけわからないレベルの豪邸だ。
その門前で四賢人……五賢人は集まっていた。
透はほえーと顎を外して驚くしかない。
「さ、中に入ろうか」
門がひとりでに開いて行く。
透は遅れて門を潜って庭へと入る。
庭も広大すぎる。もはや運動場とかいうレベルではなく遊園地が入りそうなレベルだ。
恐ろしいのはこれは魔法で拡張した空間ではないという事。この敷地は元からこれだけ広大なのである。
庭を恐る恐る歩く。
「そう怯えるな。お前はもう四……じゃなかった、五賢人の一人なんだから堂々としろ」
ヴィクトリアが透の背中を叩いた。
「そう言われても庶民なんでこんな豪邸来るの初めてなんで……」
「はは、いずれ慣れるさ。それに今後は透にもこういった豪邸に住んでもらわないといけないからな」
シエロがそういった。
「はい? なんで?」
「なんでも何も、君は五賢人の一人になったからね。相応の格がいるだろう?」
「こんなでっかい家住もうとしても持て余す未来しか見えませんが」
「けど君の資産なら買えるレベルの家ではあるだろう? まぁ本当に嫌だと言うのならなしでもいいが、魔法世界でも偉人には立派な家に住んでもらいたいものだからねぇ」
「はぁ……考えておきます」
「おっと、敬語は要らないよ。今後僕たちは同僚になるんだからね」
そうして雑談しながら家の門に着くとまたも門が勝手に開く。
「お帰りなさいませ、ご主人様方」
門が開いた先の玄関ホールには多数のメイドが居た。
二十人ほどの美人のメイドだ。金髪から黒髪、赤い髪に青い髪の者さえいる。全員美人だ。
「出迎えごくろう。これから友たちと遊ぶので客間に軽食を持ってきてくれ」
「わかりました、ご主人様」
アオスが堂々とメイドと話す。それに金持ちすげぇと透は感心する。
さ、行こうかとアオスを先頭に二階に上がり、客間に入る。
恐る恐る透はソファに座る。
「そう緊張しなくていいのに。お、ほらクッキー来たぞ」
クッキーと紅茶を持ってメイドが部屋に入ってきた。
「い、いただきます」
透は緊張しながらクッキーを食べる。
美味い。うますぎて馬になったわなんていう馬鹿なギャグが思いつくぐらいには美味すぎた。
「で、そのなんで私は皆さんお呼ばれ……呼ばれたんだ?」
「そりゃまぁ新しい五賢人として親交を深めようと思ってな。ゲームでもするか?」
「……真面目な話はしないので?」
「でしたら一応一つだけありますね」
聖が手を挙げた。
「なんかあるのか?」
アオスが不思議そうな顔で尋ねた。骨なのに器用だなと透は感心した。
「はい。幻獣園の管理者に新しい五賢人として挨拶に行った方がいいのと、やはり大々的に五人目として宣伝した方がいいと思います。といっても宣伝する機会はバザーぐらいしかないので来年のバザーでアオス君のブースで宣伝してもらうのはどうですか?」
「いいぞ。まぁ、人が集まるイベントなんてバザーぐらいしかないからな……」
「わ、わかった……何か口上とか考えておいた方がいいです……いいか?」
「別に要らんだろう。自己紹介して終わりで問題ない」
「わかった。それで、幻獣園……確か幻獣たちが暮らす場所、でしたっけだったか」
「ああ。場所は……そうだな、秘密だ。自分で探す事を五賢人最初の課題としよう」
アオスがその場のノリで適当なことを言った。
その挑発に透は「わかった」と仮面の下で笑みを浮かべて返した。
「取りあえず桃鉄でもしようぜ」
アオスが最新のゲーム機を取り出し、ゲームすることになった。
この後めちゃくちゃ仲良くなった。ライン交換した。
■
数日後。
透は日本の群馬の山奥の上空に来ていた。
幻獣園の捜索は透には簡単な事だ。
幻獣園を囲う結界は空間系の魔法に分類される。時空間魔法、つまり空間魔法にも特化し他の追随を許さぬ透なら感知ぐらい訳はない。
幻獣園とは産業革命時、神秘が薄れ幻獣たちが己だけで自己維持できなくなった時代につくられた幻獣たちにとっての楽園だ。
日本の群馬の山奥に存在している。
悪魔や妖怪、天使や神が住んでいる。
神とは言っても宗教が生まれた後に生まれた神なのでヴィクトリア程トンチキな力を持っていないし、名ばかりの神だ。
山奥なので海はないが巨大な湖がある。
幻界結界という巨大な結界に覆われている。
空間を断絶することで一般人の侵入を封じ、幻獣たちが自己維持できる信仰を外の世界から吸収している。
まぁ、言い方は悪いが東方の幻想郷のようなものである。
「ここだな」
透は空間を弄る。
幻界結界の中に入った。
「ここが幻獣園か……」
着いた先は空の上だ。
先ほどとあまり変わらないように見えるが遠くには人里が三つほど見える。
空間を弄ってみてみれば、街の作りは江戸時代のような物だ。古い建築様式である。
さて、どこに行こうかと透は頭を悩ませる。
既に幻獣園の管理者である神代美月に話は通っている。
そのため不法侵入にはなっていない。
すぐ管理者に会いに行くのは透には簡単だ。既にこの結果内にも異空間を検知している。この空間にいるだろうと察しはついている。
だが、先にある程度幻獣園を見てから管理人に会った方が印象はいいのではないかと思い、取りあえずとばかりに透は人里の前まで転移した。
少し歩く事で人里の門に着く。
門の前には二人の男が居た。両方とも鎧を纏い槍を手にしている。
門番二人は透を見ると槍を構えた。
「そこの女、止まれ! 何者だ!」
「外から来た魔法使いだ。幻獣園を観光しに来たんだ」
「なんだと?」
幻獣園に外から魔法使いや人間が来ることはまれにある。
幻界結界の神秘を入れる能力に自殺しようとした人間が引っかかって入ることもあれば魔法使いが正式な手続きを踏んではいってくることもある。
「お前、名は?」
「板倉透だ」
「……少し待て。上に聞いてくる」
片方の門番が走って去っていった。
待つ間暇だとは思い透は門番に話しかける。
「なぁ、この街……里? はどんな場所なんだ」
「……そんなのを聞いてどうする?」
「いや、まぁ観光もついでにしようと思って。観光名所とかあるか?」
「……魔法使いなら里の中なら魔道具店があるが、まぁそれぐらいだ。外に行けば湖があるぐらいだな」
「そうか……湖には何か住んでるのか?」
「湖の中には人魚の楽園があるのと……湖の麓には黒い館がある。噂では吸血鬼が居るらしいが、詳しくは知らん」
「そうか、ありがとう」
そうして話していると奥から先ほどの門番と一人の女性が走ってきた。
女性はおっとりとした雰囲気の女だ。和服を着ている。
女は透の前に来ると頭を下げた。
「お待たせして申し訳ありません。この里の代表者をしている佐野めぐみです」
「どうも、五賢人の板倉透です」
「話は神代様から聞いています。板倉様。我が里は貴女を歓迎します」
「どうも、ありがとうございます」
「どうぞこちらへ」
そうして透は佐野と一緒に里に中に入った。
里の中は外見は江戸時代風だ。
水路もあり、一応上下水道も通っている。といっても維持管理には魔法使いの手が要るが。
里を二人で歩くと注目を集める。
片方が里の代表であるのと、もう片方が仮面をつけた変な女だからだ。
注目を集めるのは仕方がないと透は諦める。というか今後五賢人として行動することになると注目は嫌でも集めるだろう。
歩いていると佐野は子供たちからよく挨拶を受ける。
その台詞は殆どが先生またね、などと行ったものだ。
「教師をしているので?」
気になった透が問いかけた。
「はい。代表者としての仕事もしていますが大半はこの里の寺子屋で先生をしています。子供が好きなもので」
照れながら佐野は答えた。
そうか、と透は答えた。
透は子供は苦手な方だ。意味もなく騒ぐしはしゃぐし。
ただ、自分が子を孕んだら産みたいとは思っている。といってもジルとほぼ毎日セックスしているが子供が出来る確率は低い。
幻獣には一応生殖能力があるが、それは同族相手には働かない。
幻獣同士で子が出来ることはなく、相手が人間の場合のみ子を作れる。
といってもその確率は低い上どちらが母でも生まれるのは基本人間だ。
ただしごくまれに幻獣のハーフが生まれる事がある。
ジルは子供が欲しいらしいので毎日透とセックスしている。最低二回は中だしされている。パイズリとかもしてる。
「と、ここです」
少し雑談をしていると目的地に着いた。
里の中でも大きな家だ。一番とは言わないが十本の指に入るレベルで大きい屋敷である。
中に入ると女中が居て靴を脱いで屋敷に上がる。
客間に入り、お茶を渡され飲む。
「こちら、貴女様に必要な物だと思いお渡しします」
渡されたのは巻物の書類だ。
「拝見させてもらう」
そう言い巻物を開く。
文字は現代の物と変わらなかった。
里の運営方針や人口数、家の建設予定などが事細かに書いてある。
面白いと思いつつ透は読み進める。
面白いのはアーカディア同様家の建設や水路の調整などに魔法使いが多くかかわっていることだろう。といってもこの幻獣園全体の魔法使いの数はそう多くないのでわずかだが。
街としては結構立派に機能しているらしいと透は読むことで把握した。
「ありがとうございます。お返しします」
そう言って透は巻物を返却した。
「もう少し里を見て回りたいと思う。外に行ってくる」
「わかりました。どうぞ心行くまで見て行ってください」
そうして透は屋敷を出た。