さびしきもの 作:ひまんちゅ
朝、私は「流れ」を再度意識していた。
これまで、何度も流れについて考えてきた。
外から内へ。
内から外へ。
だが、今は少し違う。
――新たな流れが始まるのを感じた。
居間に出る。
彼女がいる。
距離は近い。
だが、何かが変わっている。
「おはようございます」
「おはよう」
短いやりとり。
そして、すぐに本題に入る。
「新しい流れを試します」
彼女は静かにうなずく。
「どういうことですか」
私は少し考えた。
「外に流れるものを、今度は内に戻すのではなく、別の流れとして加えます」
彼女は少しだけ目を見開く。
「外からの影響を取り込みつつ、内側を変えないようにするということですか」
私はうなずいた。
「そうです。今度は、流れを変えることで、内側が新しく作られる。」
午前。
私は外へ出る。
石段を下りる。
そして、町へ。
今日は、目的地を決めていない。
ただ歩く。
流れに身を任せる。
途中、自然に足が向かう場所があった。
それは、昔見かけた古い書店。
今までの流れでは決して立ち寄らなかった場所。
だが、今日は何となく足がその場所を選んだ。
店に入る。
中にいるのは年配の店主。
何気なく本棚を見ていると、目に留まる本があった。
それは、古びた手帳のような本。
タイトルもわからない。
ただ、強く引き寄せられるように手に取った。
不思議だ。
それを開くと、そこには知らない文字が書かれていた。
――それが、何かを感じさせる。
私はその本を持ち、外に戻る。
途中、足元が不安定になる。
でも、足を止めることはない。
流れを感じながら歩く。
その感覚が、自分を支えている。
午後。
境内に戻る。
彼女がいる。
その近くに立ち、手にした本を見せる。
「これを見てください」
彼女がそれを手に取る。
少し驚いたようにページをめくる。
「どこで見つけたのですか」
「外で。何か、引き寄せられるように感じた」
彼女は本の中身を読みながら、静かに言う。
「これは……不思議ですね」
「そう、私もそう感じました」
夕方。
縁側。
今日は風が穏やかだ。
この流れも、どこか新しく感じる。
「……あの」
彼女が言う。
「何ですか」
「新しい流れ、というのは」
「流れ自体が変わるわけではない」
私は答えた。
「それが内側に変化をもたらす」
彼女はじっと考えている。
「……外からの影響を受け入れつつ」
「はい」
「内側を変えるのではなく」
「そのままで、変わる」
彼女は小さくうなずいた。
「それが、新しい流れ」
夜。
布団に入る。
目を閉じる。
結び目は、安定している。
そのまま、何も変わらない。
でも、確かに感じるのは、新しい流れ。
流れは、外から内へ。
そして、内側に変化をもたらす。
「……」
私は小さく息を吐いた。
これまでとは違う。
流れの中で。
少しずつ新しい力が生まれている。
その感覚を、ゆっくりと受け入れながら。
私は眠りに落ちていった。