さびしきもの   作:ひまんちゅ

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第三十九話 流れの境界

 朝、目を覚ましたとき、私は新たに感じる違和感を覚えた。

 

 流れは続いている。

 

 それは外から内へ、内から外へと、今も変わらず繋がっている。

 

 だが、その感覚の中に、わずかな境界を感じ取っていた。

 

 境界は、はっきりとした線ではない。

 

 むしろ、ひとつの流れの中に、ひとつの「止まり場所」があるような、そんな気がしていた。

 

「……流れの境界か」

 

 私は小さく呟いてから、布団を抜け出し、居間に向かった。

 

 彼女がいる。

 

 距離は相変わらず近い。

 

「おはようございます」

「おはよう」

 

 短いやりとりの後、すぐに本題に入る。

 

「流れの境界を見つけたい」

「境界ですか」

 

 彼女は少し驚いたようにこちらを見る。

 

「はい」

「でも、流れに境界があるというのはどういうことですか」

 

 私は少し考えてから答えた。

 

「流れが続いているだけではない。途中で、何かが一時的に止まる場所がある。それが境界」

 

 彼女は静かにうなずく。

 

「なるほど」

 

 午前。

 

 私は境内を歩いた。

 

 流れが続く場所。

 

 そして、何かが止まっている場所。

 

 その境界が、どこにあるのかを探すために。

 

 石段を下り、林道を進んだ。

 

 ここでふと感じる。

 

 ――流れは続いている。

 

 だが、その先に、何かが止まっている。

 

 目を凝らしてみる。

 

 そこには、確かに「止まり場所」がある。

 

 ただ、流れの中でその場所は不自然に感じられない。

 

 ――むしろ、流れの一部として馴染んでいる。

 

「……なるほど」

 

 私は小さく呟いた。

 

 その瞬間、足元が軽くなる。

 

 その場所が「止まる場所」だと感じることで、流れが変わった。

 

 午後。

 

 私は境内に戻る。

 

 彼女が静かに座っている。

 

「どうでしたか」

 

 彼女が問いかける。

 

「流れの境界が、見つかりました」

 

 私は答える。

 

「それは、流れの中で止まっている場所。でも、それは本当の意味で「止まる」わけではない。むしろ、流れの一部として存在している」

 

 彼女はしばらく黙って考えるような顔をしていたが、すぐに小さくうなずいた。

 

「それが境界、ですか」

 

「はい。境界は、流れの一部として存在している。止まっているように見える場所でも、実際には流れが絶えず移動している。ただ、その場所に一時的に集まっているだけ」

 

 午後遅く。

 

 私は再び、昨日見つけた「止まる場所」へ足を向ける。

 

 流れは依然として続いているが、その先にある「境界」をもう一度確かめるために。

 

 その場所に足を踏み入れると、やはり何かが違う。

 

 流れの中にいて、しかしそこで「止まっている」ような、微妙な違和感。

 

 その境界は、完全に静止しているわけではない。

 

 ただ、何かが収束している。

 

「……これか」

 

 私は呟き、再び境内に戻った。

 

 石段を登りながら、その場所の感覚を心に刻む。

 

 結び目が反応する。

 

 その反応は強く、安定している。

 

 だが、何かが少しずつずれている。

 

 「ここも、流れの一部か」

 

 私は心の中で問いかけ、答えを待った。

 

 夕方。

 

 縁側に座って、風の音を聞きながら。

 

 風の流れを感じる。

 

 そして、同時にその流れの中にある「止まり場所」も感じる。

 

「……あの」

 

 彼女が言う。

 

「何ですか」

「流れの境界が、どこにあるのか」

 

 私は少し考えた。

 

 そして、少しだけ微笑みながら答える。

 

「流れの中にあります。止まっているわけではなく、移動しながら、集まる場所が境界です」

 

 彼女はしばらく黙っていたが、やがて小さくうなずく。

 

「なるほど」

 

 夜。

 

 布団に入る。

 

 目を閉じる。

 

 結び目は安定している。

 

 だが、また少しだけ、微細な変化がある。

 

 流れが続く中で。

 

 その中に、止まり場所が点在している。

 

 それが、流れの境界。

 

 それを、私は完全には理解していない。

 

 だが、感じている。

 

 その流れの中に、確かに位置していることを。

 

 その感覚を、私はゆっくりと眠りに落ちる中で、受け入れていった。

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