東京都立呪術高等専門学校にて“百鬼夜行”という呪術テロ及び宣戦布告を突きつけた
「夏油様、呪霊操術を操る特級呪詛師。主従制約のない自然発生した呪いなどを取り込み、操ります。設立した宗教団体を呼び水に信者から呪いを集めていたようです。元々所持していた呪いもある筈ですし、ここ数年…呪いの報告数が減少傾向にあったことを考慮すると数2000の呪いを放つというのもハッタリではないかもしれません」
「だとしても統計的にはその殆どが2級以下の雑魚、呪詛師だってどんなに多く見積もっても50そこらだろう」
呪術高等専門学校補助監督である細身で頬が痩けているセンター分けの眼鏡の男、
「そこが逆に怖いところですね。アイツが素直に負け戦を仕掛けるとは思えない」
「ガッデム!OB、OG、それから御三家、アイヌの呪術連にも協力を要請しろ。総力戦だ!今度こそ夏油という呪いを完全に祓うッ!」
夏油と嘗て呪術高専で学生だった頃、友人だった
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夜蛾が息巻いているのは拠点で欠伸をする夏油にはお見通しだった。その上で夏油はすぐに真剣な面持ちで家族である幹部達に百鬼夜行の詳細について伝える。
「お互い本気で殺り合ったらこっちの勝率は3割ってとこかな。呪術連まで出てきたら2割にも満たないだろうね。だがそのなけなしの勝率を9割9分まで引き上げる手段が一つだけあるんだよ。特級被呪者である
皆よりも後に加入した
「学生時代の
さぁ、新時代の幕開けだ」
用意周到、夏油が百鬼夜行で犠牲にするのは呪術界が誇る貴重な戦力のみならず、乙骨の強大な力の一つである祈本里香の奪取を完遂すべく乙骨すらも手に掛けること。美音は既に手が震え、両足も崩れ落ちそうだった。彼女には未だ夏油らの計画に加担して呪術師を殺める「覚悟」など養えていない。大量虐殺に手を貸すという事実に平静を保つのだって精一杯なのだから。
「…美音、最後に君の気持ちを聞かせて欲しい。私が君と歳もそう変わらない乙骨の命を、同じ呪術師の命を葬ってでも祈本里香を得ようとしていることを」
「…………自分は正直反対…いや、自分の意見だけで反対はできないけど…きついし苦しい。言葉にするのが難しいけど、後戻りできない感覚がずっと頭の中を襲ってて…どうすれば…いいのかも……」
「私の家族は君以外、賛同している。私の望む世界、理想を共に追い求めてくれている。でもね、君にはまだ選択肢があると思うんだ。君のやりたいことは私たちと共に世界の常識を根本からひっくり返すことなのか、それとも…『家族』を取り戻したかったのか…誰にだって自分自身を見つめ直す時間は必要不可欠だ」
愛情で繋がっていた家族を壊したのは夏油、そんな元凶を野放しにすればいずれ非術師全員が殲滅される可能性だってある。美音は被害者、夏油には憎悪を抱いて過ごしていたが、彼を倒しても彼を慕う家族達は浮かばれず、美音自身が美音のような存在をまた量産してしまうマラソンゲームになる。鍛錬を積んでも夏油への勝算は皆無、とっくに気づいていた…復讐よりも今生きている肉親の心を取り戻すことが先決だと。
「私は私のしでかしたことを必要な犠牲だと考えている。それでも君の家族や君の立場を私の目的のために利用し、その果てには壊した。金城譲が呪術師ジョジョとして話題沸騰した時、彼に会おうとしたが君もそこにいた。君も呪術師としてこの世界へ飛び込んだと知った時、思い至ったんだ。未来ある呪術師の可能性を奪ったのも作り上げたのも私だと、とても申し訳ないと思っている」
「それは…自分が呪術師だから謝っているんでしょ。あなたの気持ちは本物だって今ならわかる。それでも自分が非術師のままならあなたは自分を迎え入れないし、謝罪もしなかった」
「そうだね、君の言う通りだ。私は君が呪術師だから目に掛けたんだ。呪術師の君だから私の行いを悔いたし、呪術師の君に少しでも可能性という『道』を示してあげたかった。ここでの滞在、君にとって無駄ではなかったはずだ。その上で聞こうか、君はどうしたい?」
「……自分は———」
夏油傑は美音の人生を呪術師というレールに脱線させた張本人、望んで呪術師になったわけでもない。呪術師に至った全ては家庭を、生活を、友人関係を崩壊させた元凶である夏油傑に復讐を果たすためだけの道具だった。生半可な答えを出すことはできないし、胸中は迷走している。今、彼女にとって呪術師とは…そして夏油傑とその家族は———
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2017年4月初旬、鈴原美音…当時16歳。彼女は呪術師とは無縁の順風満帆な学生生活を送っていた。一人っ子の美音は両親からの愛情を一身に受け、近所ではとても素直で気配りの利く良い娘で通っていた。放課後は人気のカフェでアルバイトか常に友人に囲まれていたので、カラオケや映画、ショッピング、プリクラなどに没頭し、SNSに日常を投稿することが彼女の生活だった。輝かしい女子高生を謳歌していた。
「初めまして、私は夏油傑。お邪魔しているよ」
この袈裟の男、夏油傑が入り浸るようになってから全てがガラリと変わった。彼の貼り付けたような笑顔を見る度に美音の中で不信感と不快感が募り、彼の話に耳を傾けるのは母親だけだったのがその内に父親ごと取り込まれた。日常が彼の話題ばかりで彼に侵される。美音は危機感を覚え、不器用ながらも高校の出来事を夕食中に延々と語り出す。
「それでね、
「美音。そういえば夏油さんがね、あなたにお土産って———」
「美音。夏油さんが来てくれてよかったと思わないか?今の幸せな生活がずっと続くことを保証してくれるんだよ。あの人には先を見据える力がある。美音ももっと愛想を———」
嫌だ、嫌だ、嫌だ。部外者の夏油が生活の一部に入り込んで帰宅してリビングに座り込む場面が増えるのに吐き気を覚えた。美音の鼻を掠める彼の香りがリビングの大好きな匂いを塗り替え、軈て両親は夏油を教祖とする宗教に金を貢ぎ、これまでの生活を崩してまで心酔した。
「美音、話があるの。お金が足りなくて…あなたを学校に通わせられなくなった。もう滞納までしちゃってるのよ」
「……は?え…っ?ちょっと待ってよ、聞いてないよ、そんなこと。最近、食べるものも減ってたのってそういうことなの?」
「今後の生活も…消費者金融に金を借りるしか無くなったんだ。今も二箇所から借りようと…」
「ふざけないでよッ!なんで?どうして?今までの生活全部無くして何をしようとしてるのッ!?おかしいよ、パパもママもずっと!」
「家も売ることにした。もう賄えないんだ…夏油さんに力を借りよう、もっと」
「その為にはお金が必要なの。美音も協力してよ、ねえ。家族のためよ、これも『家族』のためなんだから。バイト代、ちょっとでいいから貸してくれると助かるの、お願い…」
夏油が訪れ、獲物として鈴原家を目に付けてから金だけを搾り取られて4ヶ月で家庭は崩壊した。それどころか高校には退学手続きを済ませる羽目になり、今時あり得ないと思い込んでいた消費者金融の取り立ても頻発した。美音の父はヤクザにも手を借りていたため、根回しされていた警察に相談しても意味を成さず、弁護士を雇う金もない。両親は狂い、出生した頃より住んでいた広々とした家、そこそこに裕福な生活も霧散した。高校生の美音は誰にも相談できずに塞ぎ込んだ。祖父母に頼る考えもあったが、「家族」を大切にしていた美音が両親から離れる決断を下すのは1ヶ月という時を要した。
「鈴原さんのお宅、もう見てられないわ…可哀想で…」
「美音ちゃんも気の毒よね…学校もやめちゃったのに家のことは全部一人でやってるみたい」
「借りてるお金の催促の対応もしてるとこ見ちゃったんだけど……元の幸せとは程遠い『ご家族』になっちゃったわよねえ」
可哀想、気の毒、不幸、だからなんだというのか。美音は二人を見捨てる決断はできない。救済する突破口は未だ見つからなかった。美音が故郷である街から旅立つ1ヶ月後より少し前、絶望の淵に一筋の希望が差す。部屋の整理をしている時に夏油の手掛かりを掴むチラシを発見した。それは信徒が一斉に集う会、美音は自身のようにいずれ苦しむ被害者が増えるのではないかと危惧した。両親の言葉を記憶から掘り起こし、「呪いを祓ってもらう」信徒の友人もいたことを思い出した。「呪い」それは「幽霊」のことだろうか、僅かだが美音には視えていた。
「………夏油の側にも…居た…気味が悪かった。見て見ぬふりをしていたけど、アイツに憑いていた幽霊もこの家に住み着いていたこともあった」
祓うことができるのなら夏油にだって幽霊は視えるはずだと仮定した美音は仕組まれたことだと確信する。全てを破壊したのは夏油、復讐すべき憎むべきは夏油だと炎を激らせた。その感情が彼女に呪力を付与し、術式を認識させる切っ掛けとなる。幼い頃から異常に聴覚が発達していたのも術式の副次的効果であることを今更知ることとなり、多幸感に溢れる生活の中では決して増幅することのなかった呪力に満ちて呪術師という存在を理解し、その道へ歩み始める。
「自分は……夏油傑を殺す」
待ってね、パパママ。それだけを告げて後は祖父母に連絡して任せた。身勝手かもしれないが嘗ての友人にすら別れを伝えずにスーツケースを片手に一筋の涙を流して美音は鈴を鳴らして街を出ていく。一歩、一歩と確実に大地を踏み締めて———これが彼女の呪術師を志す
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2017年、12月24日の日没。東京新宿、京都にてそれぞれ千の呪いが放たれる。一般人を避難させた後に五条悟、夜蛾正道を含んだ術師達が現場へ急行し、迎え討つ。その1時間前、百鬼夜行の夏油傑の戦力と知略を危惧した
「遂に夏油が動き出しましたか…彼は高専の謀反者であり、特級呪詛師。実際に危険な思想も説かれたのでわかる。いずれはこうなるとね」
『呪術界のありとあらゆる勢力が結託して新宿と京都を戦場に呪霊や呪詛師と乱闘を開始した。お前はどうする?五条悟が居る時点で負ける確率は限りなく低いが、あの男が無策で呪術界の全てを敵に回して戦うとは思えない』
「前々から思っていましたが、時雨さんって夏油と面識があるんですか?情報通とはいえあまりに詳しいですよね」
『夏油が高専を追放され、呪詛師になりたての頃に宗教団体を設立した。各支部長、代表役員、会長…金や権力の持つ太客を集めて演説しやすくしたのは俺のサポートだ』
「呪詛師に加担したんですか?節操のない人だ」
『うるせえよ。金さえ積まれりゃあ、なんだってやるんだよ』
夏油が自身の宗教団体を所有し、現在も教祖としての地位や金が潤っているのは明らかに孔時雨の肩入れがあったからだと思うと譲は呆れてしまった。もう10年も前の出来事ではあるらしいが、罪は勝手に帳消しにはならない。
「一つ聞きたい。新宿及び京都に美音ちゃんの姿はありますか?」
『やっぱ気になるか』
「勿体ぶらないで下さいよ、無駄な時間だ。無駄なことは嫌いなんだ」
『……縁のあるツテに聞いたが、それらしき姿はないな』
「それならいいです。少なくとも夏油と組んでいる線は無くなったんだ」
『どうして言い切れるんだ』
「彼女の姿がないからです。後は勘だ」
譲と美音がタッグを組んで依頼を熟し、呪いを祓うその期間で二人には「信頼」という絆が生まれている。夏油傑という呪詛師についていく決断をした美音でも人の道を踏み外すことはないと「信用」しているのだ。譲はジャケットの内ポケットから玩具のミニバイクを摘み、
「新宿ならすぐに急行できる。飛ばします」
ヘルメットを被り、車体に跨る譲はハンドルを捻ってエンジンを蒸す。駆動音を轟かせて発進させた直後、銃声が海道に波打つ細波の心地良い音を貫く。咄嗟にスタンド・
『なんだ!?今の、銃声か!』
「狙われているッ!兎に角今すぐにこの場を離れなければならない!!」
『まさかよ…お前に攻撃を仕掛けたのはチェルカじゃねえか?チェルカ・ヴィッラだよ、パッショーネのボスの息子であるお前を虎視眈々と付け狙っていたッ!』
「タイミングの悪い。今すぐにでも新宿へ俺はすっ飛んでかなくちゃあいけないんだッ!」
仮に遠方から射撃した張本人がチェルカ・ヴィッラだとするならば、暗殺者出身の凄腕
「目標対象…ユズル・カネシロ。私の一発目の弾丸は一発目じゃあない。開戦だ、その一発を以て殺し合いが開戦する。挨拶ってやつ。ユズル、君はどれだけ私を楽しませてくれる?」
エンジンの咆哮が海風に攫われ、どこか遠くへ運ばれる。コーナーに差し掛かったバイクに身を屈める譲の背後を取るように遙か高所の崖っぷちで這い蹲る黒い手袋を身に付けた赤髪でボブヘアの女、彼女の名はチェルカ・ヴィッラ。革の手袋で握り締める愛銃・バレットM82、世界40各国以上で使用される大型のセミオート式狙撃銃、12.7mm×99弾を込める。「対物ライフル」とされたこの狙撃銃は嘗ての戦車の装甲に傷をつける威力であった。対人戦で扱うのならばそこが血肉に塗れた惨状になることを覚悟しなければならないッ!
「このチェルカ・ヴィッラに撃てない者は誰一人としていない。他の奴らほど甘い思考回路は持ち合わせていないから誤射して体がバラバラになったって私は構いやしない。万に一つも私が誤射をすることはないけれど」
頬当てに顔を預け、スコープを覗く。わざと揺れ動いて射撃を封じようと運転する譲にスコープの十字線を揺らしながら揃える。吸って、止めて、吐いて酸素を適度に脳へ補給しながら風、距離、速度を頭の中で組み立てて引き金を引く。ヴォンッとバイクが一段ギアを上げ、一直線に風を切り裂く。瞬間、ドンッという重く乾いた衝撃が空気を震わせた。太い漆黒の車輪、タイヤに弾丸を破裂させる。
「なにィ!?撃たれた…!スタンドですらない攻撃ッ!!しかも狙ったのはタイヤだ、移動の肝になるバイクの足を撃たれたッ!」
「………さあ、スタンドを見せな。ユズル」
後輪は跡形もなく散ってその反動から宙へ放り投げられた譲、スタンドであればたかが弾丸など受けるのも造作はない。スタンドで受ければ本体へのダメージは0。しかし、譲は滞空する最中で全身を大きく広げながら短い空の旅を悠々と謳歌する。アルケミアはバイクのタイヤの破片を錬金し、元のタイヤの形状へと戻す。その間、薬莢が横へ跳ねるチェルカの闘気を頼りに遙か先で監視するその人影を捉えたかのように睥睨する。
「……見たのか?気のせいだろう(フィリオの戦闘から得たルタレのスタンド能力でユズル・カネシロのスタンド・アルケミアの能力は《錬金》だと割れている。2000mという距離を視認する能力はない……が、警戒はしておくか)」
元の調子に戻ったバイクに身を捩って飛び乗り、スピードを上げる譲にチェルカは微かに戦慄する。チェイスに誘って罠にでも掛けようとしているとしか思えない挙動、追うはずのチェルカは久々の追われる感覚に皮膚が粟立つ。再び狙撃銃を構え、引き金に手を掛けながらスコープ越しにバイクで走行する譲に照準を合わせ、少し先の前方へ撃ってアスファルトの破片を舞わせる。自滅を願ったが車体を横にずらして僅かに傾けて避けられた。一筋縄でいく相手ではないとチェルカは譲を見下ろす。
「まだまだ狙撃の射程範囲内、勿体ぶらずに君の肩を貰おうとするかな。スタンドで君の位置も丸わかり、持ち前の運だけじゃあ後はないぞ。悪く思わないでくれよ、肩周りの筋肉や血管はズタズタになるけどねェッ!!」
チェルカ・ヴィッラが狙撃手として躍起になる。潮の匂いが風に混じる海沿いの直線道路、白い飛沫が岩に砕ける。息を整えて挑み、眉は一つとて動かさない。十字線が譲の肩に刻まれたまま長大な銃身から煙を噴き出し、沈んだ指先によって生じるドンッという衝撃が肩を叩き、照準が僅かに跳ね上がる。弾丸は橙に染まる火花をアスファルトから散らす。チェルカ・ヴィッラが暗殺家業として雇われ始めてから生涯に於いて“初めて”射外す。
「………外した…あんなガキ相手に?初めて的を撃ち抜いたあの頃から一度たりとも味わうことのなかったはずの『失敗』の感触…この気高いプライドを裏切る温情なんかじゃあないッ、私が私の実力で外したとでもいうのかッ!!」
激情、血管内が押し広げられてはち切れんばかりに血が頭に上る。チェルカが満を持して攻めに至ったのには金城譲という男の行動原理、特徴、癖、スタンド能力がルタレ・アスコルの報告と同一か精査する必要があったからである。チームを組んだ他の仲間のような悲惨な敗北、悲惨な死に方を選ぶのではなく完全なる勝利を収めるためであった。彼のバイク捌き、目の運び、スタンド能力に至るまで知り尽くしていた———はずだった。少なくともチェルカが襲撃を決起したこの日、12月24日は最適解だった。
「………四発目…ッ!!五発目ッ!!六発目ェ!!七発目ーーッ!!どうしてだ、まるで一挙手一投足をじろりと見られているかのように鰻のようにぬるりと回避されていくッ!君には!君には一体何が視えているんだッ!!」
弾丸を連発しようと譲を掠めることは二度となかった。そのまま弾数を無駄にして九発を宣言した後にマガジン内は寂しくも空虚となる。狙撃者ともあろう者が足をジッとしていられなくなり、息が乱れて十字線があちこちに揺れる。次のマガジンと入れ替えようとした時、チェルカの動作がピタリと止まって日が地平線へ沈もうとしていた。その頭部には硬い銃口が突きつけられていた。
「………完全に捕捉していたんじゃあないか…ちょっぴりでも疑えば良かったよ、ユズル・カネシロ」
「お気の毒に。アイツの位置は特定できても俺のことは眼中になかったみたいだな」
「私の位置を探るだけのスタンド、《アイ・イン・ザ・スカイ》で協力者まで探ったとて脅威じゃあないと思い込んでいた。私の背後に立てる時点で君も中々の手練れだった。どうやら爪が甘かったのは私も同類らしい」
「チェルカ・ヴィッラ、あんたには敵わない。俺は雲隠れが得意なだけさ。勝利はアイツにくれてやれ」
背後で拳銃を片手にチェルカを気取ったのは孔時雨だった。譲はチェルカが射出した弾道の全てを計算し、位置を特定した上で孔時雨に後処理を任せたのだ。チェルカがいつどこで襲撃を仕掛けてくるかわからない状況下で遠距離攻撃に対応するべく編み出した策は「望遠鏡」。譲は望遠鏡を常備し、それを錬金することで超視力を一時的に得たことでチェルカの蹲る影を直視していた。両手を挙げて観念したチェルカは拳銃を突き立てられたまま両手、両足、胴体をロープで縛り上げられる。
「呪術界が百鬼夜行を起こした夏油傑と対決するこの日を選んだお前は賢明だった。他の術師が邪魔するリスクを限りなく0にしたんだろ」
「ああ…最後に一つ、聞かせてくれ。彼はどうやって私の射撃を読んでいたのか」
「そんなもん俺が知るかって言いてえけど…『スゴ味』ってヤツだろ」
「それはなんて暴論だろうか」
完全に日が海へ飲み込まれ、闇が近辺を包み込む。ライトを焚いたバイクで潮風に突っ込みながら譲は一切振り返ることなく新宿を目指す。譲でさえ、チェルカの動作や射撃のタイミングを読めたのは疑問であった。何よりも遠方の彼女の感情によって昂る呪力の乱れを共振したかのように強く感知していたが、彼がその『力』に気付くのはまだ先の出来事である。
「チェルカ・ヴィッラ、あんたは強い。一発目の弾丸を頭部に撃ち込んでいたなら俺は死んでいた。そうしなかったあんたを『敗色』が濃くなる方へ潮風が運んだ、ただそれだけなんだ」
伸びるエンジン音、新宿へ———!!
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《パラメータ》
【STAND NAME】
アイ・イン・ザ・スカイ
【STAND MASTER】
チェルカ・ヴィッラ
破壊力-E スピード-E 射程距離-A 持続力-A 精密動作性-追跡次第 成長性-E