西東京市・英集修道院、第二宿舎内で展開された特級呪霊の生得領域内から
「ふんどし一丁で動きやすくなりましたってか」
舐め腐って嘲る特級呪霊は下半身の布を引き千切り、覆い隠すものはふんどしだけとなった。虎杖は軽口を飛ばすものの、呪術のいろはすら学んでおらず、ただの打撃が通用する相手ではない。時間稼ぎに徹しようとしたが、圧倒的な呪力量と衝撃の波に押し出され、勢いよく壁にぶち当たる。壁面が凹むほどの破壊力、鼻血が垂れながら思考を回すが、目を見開いた時には漲る呪力を拳に宿して特級呪霊が切迫していた。呻くのと同時に特級呪霊の拳が減り込み、内臓が暴れながら壁に風穴を空けて別の部屋へと転がる。白目を剥いて意識を飛ばすが、穴から闊歩する特級呪霊は身を縮めて呪力を解き放そうとしている。
「ううッ!ぐううううッ"!!あぁ"!」
特級呪霊を中心に広がった呪力のバリアは両腕で抵抗しようとする虎杖のまだ機能していた右手の指を焦がし、肉の焼ける匂いが立ち込め、ボロボロと劣化した木屑のように焼灼する。涙を浮かべ、ひたすらに喘ぐ———痛い痛い痛い、辛い辛い辛い、なんで俺が!!あの時、俺が指なんて拾わなければ、喰わなければ!あの時、あの時!!やめろ、考えるな!嫌だ嫌だ、逃げたい逃げたい、死にたくない!ここで死んで、死んだとして、それは『正しい死』か!?
「ん…ぐうううウ"ッ!!考えるなァァ!!!」
『人を助けろ』
誤魔化しきれない今際の際の本音、人間たる所以の『死』に対する恨み辛み、それら全てを反芻しようとも虎杖は意を決して咆哮を上げる。祖父の遺言が身に染み、圧倒的な呪力を誇った衝撃波に吹き飛ばされる。「俺はこんなに弱かったのか」と自身の脆弱さに打ちひしがれ、現実は非情であると突き飛ばされる。背中を強打した壁は蜘蛛の巣状のヒビが入り、強さへの自信は既に擦り減っていた。
「俺は強いと思ってた。死に時を選べるくらいには強いと思ってたんだ。でも違った…俺は弱い……ッ!全っ然、弱すぎる……!!ああ"ーーッ、死にたくねえ!嫌だ!嫌だよ、でも…死ぬんだ……!!」
『特級』という位置付けの呪霊、虎杖はそのスタートラインに立つことすら許されない。眼前の敵は並の呪霊ではないのだから当然だ。通用していたはずの体術も常識も全てを覆すのが『特級』。憎悪、恐怖、後悔が音として込められる。しかし、彼は言の葉の裏で自身を罵倒、静かに密かに秘密裏に滾らせていた———『正しい死か?』じゃねえよ、甘えんな!『呪術師に悔いのない死はない』、それでもこの死が正しかったと言えるように。
『呪いは人間の負の感情から生まれる』
嘗て伏黒が語った言葉の意味———ならば憎悪も恐怖も後悔も全て出しきれ!拳に乗せろッ!———膂力に負の感情を源流とする呪力を足して床の破片が砕け散るまで足で強く踏み込み、拳を振るう。歯を見せて笑いながらその拳を止めた特級呪霊の前では意味を成さない。刹那、犬の遠吠えが鼓膜に触れる。伏黒の合図、全員が無事に脱出した合図だ。顔面に黒の紋様が浮かび上がり、気配が変化すると特級呪霊は若干後退る。
「つくづく忌々しい小僧だ。この俺を完全に舐めてやがる。少し待て、今考えてる。どうすれば
「おい。ガキ共を殺しに行くぞ、付いて来い」
「うう…アアアア"ーーッ!!」
「馬鹿が」
右手を再生してからさっさと出口を探そうと歩き出した時、特級呪霊は両手に呪力のエネルギーを溜め込んでそれを光線として発射する。宿儺は欠損していたはずの左手首から先を瞬時に再生し、その光線を弾き飛ばした。後方に余波が飛んで土埃が舞いながら壁を破壊する。特級呪霊は呆気に取られたようで、声を上げて口をあんぐりと開けていた。
「散歩は嫌か。まあ元来、呪霊は生まれた場に留まるモノだしな。良い良い、それならここで死ねッ!」
「ガッ……ガハッ…アア…」
「おいどうした?もう終わりではないだろうな?ほら、頑張れ頑張れ」
笑顔を見せた宿儺は特級呪霊でも目で追えぬ速度で飛び上がり、特級呪霊の顔面を鷲掴むと地面へと叩き付けた。呻き声を上げながら上体を起こそうとする特級呪霊を踏み付け、橋が崩れてそのまま砕けた建材と共に落下する。途中、特級呪霊は宿儺の左足首を掴み、振り回そうとする。ぶん投げる直前でその右手は切断されて紫色の血液が飛び散った。
「呪霊といえど、腕は惜しいか?」
「ヒッ…」
「ケヒッ、ウッフッフッフッ!ハハハハッ!!」
落石の上に腰を掛けて切り取った特級呪霊の腕を見せつけながら、崩壊した橋と共に下に溜まる水中へと特級呪霊が沈み、大きな水飛沫を上げる様を腹の底から笑い声を出してやった。これが両面宿儺、特級とはいえど半端な呪霊では呪いの王に太刀打ちする術すら持ち合わせていなかった。狂気的な強さと笑みに畏怖の念を抱く他ない。
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特級呪霊の生得領域及び修道院から脱出した四人は合流し、補助監督の
「伏黒君と金城君は?」
「ここで虎杖が戻るのを待ちます」
「俺も残ります。野薔薇さんや美音ちゃんよりは幾分か気力が残っているのでね」
居残る二人より釘崎も美音も十分なパフォーマンスを持って継戦するのは困難と判断された。譲の術式《
「そうですか。私も釘崎さんと鈴原さんを病院へ届けたらなるべく早く戻ります」
「いや、伊地知さんは居てもあんまり意味ないので」
「随分な言い様だよ。もっとオブラートにいこう、恵君」
「…1級以上の術師を寄越してもらうように頼んでもらえますか?まあ、いないと思うけど」
「努力いたします。では」
伊地知さんは頼りになる補助監督だが、呪術師としての戦闘能力は限りなく皆無。それを理解した上での要求だったのだが、横から譲が首を突っ込むほどのデリカシーの無さだったので思わず指摘する。呪術師の人員不足、限られた時間内での派遣は極めて難しいので、他の術師の助力は諦めていた。窓を閉めてアクセルを踏んだことで発進した伊地知の車は段々と小さくなっていく。
「…もしもの時は……俺にはあいつを始末する責任がある」
「随分重たい責任だ。それって、一人で抱え込まなくちゃいけないのかい?」
「あいつを助けたのは俺の私情だ。もし宿儺が表に出ているのなら問答無用で殺すしかない」
「君って優しいな。太陽に寄り添える影のようで、鋭く見えるけど柔らかい人だ」
「褒め言葉には聞こえないな。それに俺はそんな立派な人間じゃねえよ」
「今は俺がいる。俺にも背負わせてくれよ」
宿儺から虎杖に戻るとして、そこには何らかの条件という名の縛りが課せられていてもおかしくはない。自らの情で
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瓦解した建材の上でポケットに手を突っ込みながら薄ら笑いを浮かべる宿儺は斜め上を見上げて、滴り落ちる紫色の液体が壁を伝う様を鼻で笑っていた。水面はひと揺れもせずに宿儺の周囲に波紋すら生じていない。
「おい、知ってるか?我々は共に“特級”という等級に分類されるそうだ。俺と…
宿儺の視線の先には四肢を分断され、壁に
「いいぞ、特級。頑張れがんばれ」
「ニフッ」
「嬉しそうだな、褒めてやろうか?だが呪力による治癒は人間とは違い、呪霊にとってそう難しいことではないぞ。お前も
完全に肉体が復活を遂げた特級呪霊は宿儺の前に着地して形成逆転と言わんばかりの調子づいた様子で威嚇する。しかし、宿儺は特級呪霊ですら呪術の全貌を知らないとまで豪語する。宿儺は手印を組む、それはとある呪術の掌印。運命と死と地獄の神閻魔天の印。
「領域展開———『
鈴の音が鼓動のように反響し、水面に一つの波紋が広がる。両面宿儺の生得領域を具現化した領域展開は伏魔御廚子、多種多様な生物の頭骨に象られた不気味な寺のお堂が背後に顕現。特級呪霊が瞬きする間もなく、胴体が五枚に分断、その他の両手足は細かく切り飛ばされた。
「三枚に下ろしたつもりだったんだが、やはり弱いなお前。そうそうそれからこれこれ、
微動だにしない特級呪霊の胸の穴に指を突っ込み、何かを捻り出すとそこからは特級呪物『宿儺の指』が姿を露わにする。特級呪霊は宿儺の指の呪力を依代に呪力を得ていたのだった。元の持ち主へと渡り、宿儺が背を向けてその場から離れると特級呪霊は炎に包まれて灰のように朽ちていく。
「終わったぞ!不愉快だ、代わるのならさっさと代われ!どうした?小僧………………………………ケヒッ」
言いなりになるのは心底不愉快であろう宿儺が虎杖の理想通りに特級呪霊を始末した。肉体のコントロールを可能とするのは虎杖本人、しかし宿儺が声を張り上げようともそこに応答はなく、暫く黙り込んだ後に状況を察してか宿儺は口角を上げて悍ましい笑みを浮かべた。
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雨水に全身を小刻みに打たれる中、修道院の方向から巨大な呪力の消失を感知する。それが意味することとは、生得領域が閉じたことによる特級呪霊の死亡。伏黒と譲は若干安堵し、虎杖の帰還を待ち望むのみ。
「残念だが、
二人は気取られる。背後で別人の声で語りかけるそれは原因不明ではあるものの、虎杖の肉体を支配下に収めた宿儺だ。起こり得る最悪のパターンに二人は遭遇した。特級呪霊を祓ったのは間違いなく、宿儺だ。その宿儺に背後を取られているのならば、もれなく二人の命の線は宿儺によって切られることとなるだろう。
「そう脅えるな。今は機嫌がいい、少し話そう。これなんの“縛り”もなく、俺を利用したツケだな。俺と代わるのに少々手こずっているようだ」
「相手が呪いの王ともなると…代償がでかかった。縛りとはいえ、俺達の最大の誤算だった」
「しかしまあ、それも時間の問題だろう。そこで俺に今できることを考えた」
虎杖との接触から宿儺の呪力に直接触れた譲は表面化した宿儺との対話に冷や汗が毛穴から噴き出てくるが、それは雨に紛れる。余裕綽々の宿儺は両手で高専の制服を引き裂き、破り捨てた。露わになるのは鍛え上げられた肉体に刻み込まれた紋様、黒く尖った爪を胸に突き刺し、鮮血が漏れ出た。
「なっ…命を繋ぐ……心臓を…ッ」
「クククッ…小僧を人質にする」
「人質…?」
「ああ。俺は
「……っ、悠仁君の中からでも俺のことは筒抜けか…ご明察の通りだ」
胸の中から引き抜いたのは虎杖の心臓、鼓動が弱まり、血濡れたそれを野原に投げ捨てる。呪いの王ともなると心臓無しでも生存する所業までやり遂げ、その上で譲の能力の条件や限界の大体を虎杖の中で把握されている。自身でもそこだけは不便な能力であることは自覚しているが、変えようがないのだ。
「そして更に、駄目押しだ」
((宿儺の指ッ!))
「さてと、晴れて自由の身だ。もう脅えていいぞ、殺す。特に理由はない」
「あの時と…立場が逆転したな」
吐血していた口内へ運ぶように宿儺は取り出した宿儺の指を迎え舌で取り込む。やはり特級呪霊が宿儺の指を糧に呪力を得ていたことの証明、宿儺の気紛れはこれにて閉幕するらしい。これからは一方的な殺戮が起きかねない。ビキビキと音を鳴らしながら鋭利な爪を光らせる宿儺の前で俺たちは臨戦体制に入る。伏黒だけはポツリと独りごちてから目付きを強いものへと変える。伏黒は想起する、『不平等な現実のみが平等に与えられている』という自身の考え方の一つを。
「分かってないんだな。アイツは…虎杖は戻ってくる。その結果、自分が死んでもな。そういう奴だ」
「買い被りすぎだ。コイツは他の人間より多少頑丈で鈍いだけだ。先刻もな、今際の際で脅えに脅え、ゴチャゴチャと御託を並べていたぞ。断言する、奴に自死する度胸はない!」
「勝手に言い切ればいい。宿儺、お前が内側で見た悠仁君よりもこの目で見てきた悠仁君を俺達は『信頼』する。こちらも言い切らせてもらおうか、呪いの王にわかるはずもないが、『死』は誰であろうと怖いものだ。それでも死に迫ろうと立ち向かう『覚悟』ってのが、悠仁君の中にも眠っていることを俺達は願うし、『信頼』するんだ」
「よく喋る。お前もこの俺に畏怖の念を抱いているだろうに。虚勢を張るのに全力、手足が震えているぞ?」
宿儺がどんなに虎杖の生にしがみつく惨めな姿をその目に焼き付けていようとこの場において二人だけは彼を『信頼』する。以前、虎杖を介して触れた宿儺の呪力からその張本人と接敵し、生まれて初めて譲はその『死』への恐怖からトラウマというものに鉢合わせることとなる。それでも虎杖を『信頼』する上で、口だけではないことを『証明』するため、譲自らも宿儺に立ち向かってやる気でいた。否、立ち向かうのだッ!
(特級にやられた腕が治ってる。治癒…反転術式が使えるんだ。宿儺は受肉してる。心臓無しで生きられるとはいえ、ダメージはあるはずだ。虎杖が戻る前に心臓を治させる。心臓を欠いた体では俺達に勝てないと思わせるんだ!できるか?俺達に…特級の前ですら動けなかった俺に………できるかじゃねえ、やるんだよッ!)
「必ず君に繋ぐから、君は俺に繋いでくれッ!決して無駄にはしないッ!!」
「折角外に出たんだ。広く使おう」
意気込んだ二人、伏黒が先制して両手を交差させて翼を表現し、親指をくちばしに見立てる影絵から髑髏のような仮面をつけた巨鳥の式神・『
「ほう、面白い。式神使いのくせに術師本人が向かってくるか」
「アルケミアッ!遠慮はいらない、宿儺を叩けッ!!」
(こっちの餓鬼も式神使い…だが、見たところ術師本人からはそう離れられんらしい。錬金云々の術式は式神由来のモノか………いや、これは——)
『無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!』
「この俺の目は誤魔化せん。お前が主軸に扱っているのは呪力とは似て非なる力、性質的には反転術式に近いが、直接的に治癒する力とは程遠い。少数ではあるが、1000年前にも存在はしていた。呪術師とは言えんがなッ!もっと呪いを込めて打ってみろ!!フッ、ハハハッ」
宿儺の前ではスタンドすらも呪力によって発動する術式とは異なるものだと看破される。伏黒と鵺による攻撃に合わせ、アルケミアもラッシュを繰り出していくが全て回避され、宿儺に二人の腕を掴まれる。瞬時に頭部を鷲掴まれ、そのまま互いの頭部同士を宿儺に衝突させられ、その振動に目眩が起きる。すぐに顎先を殴り飛ばされ、宿儺からまるで玩具を乱暴に扱うかのように恐怖に漬け込まれるような笑みをかけられる。
「『
人差し指と中指で輪っか、作り目を表現、親指を下顎として見立てる影絵により宿儺の足元から白い大蛇の式神を昇らせる。宿儺に噛みついたまま上空へ拘束し、鵺が羽撃きながら電撃を幾度となく浴びせる。不適な笑みを浮かべる宿儺は大蛇を頭部から尻尾まで次々に内部から破壊し、姿を眩ます。しかし、譲は決して活かすタイミングを見逃さず、破壊される前の大蛇の尻尾にアルケミアで触れていた。アルケミアは式神である大蛇も破壊された側から完全に復元させる。
「恵君ッ!大蛇を戻せ!!全貌はわからないが、宿儺は術式を使用して大蛇を一度破壊したッ!次は………っ」
「なあ、言ったろう?広く使おうッ!!」
譲が言い終わる前に視界は曇天で包まれる。続いて伏黒も服を掴まれ、投げ飛ばされる。二人は林の中で幹を砕きながら傷を負い、伏黒は宿儺から蹴りをもらい、譲はスタンドで防御をしたものの顔面に拳が減り込んだまま団地の屋上に転がり込む。二人とも肉体を呪力で強化しているが、全く歯が立たない。規格外、四方八方に打撃を浴びるだけで内臓や四肢が千切れそうになる威力で天へ投げ出され、建造物を突き抜けてまた宙へ放り込まれる。伏黒は鵺に拾われ、譲はどさくさに紛れて拾い上げた紙飛行機を錬金することで紙飛行機型のエネルギーに変換し、飛行能力を得たままその場を離れる。
(呪術云々じゃない。
「良い術式だッ!!」
一瞬を掻い潜るだけで精一杯どころか必ず何処かで数発貰う。その数発が生死を分けるほどの強大な威力を誇り、宿儺の片手で弾かれただけで二人は地面に捩じ伏せられた。伏黒は団地を突き抜けて一階に辿り着き、瀕死の鵺に羽で守護されている。一方の譲は20m先の木の枝を折ってそれごとタイルに衝突し、頭から血を流して気絶していた。
(どうする…?金城はもう動けない。アイツも万全とはいえない状態で宿儺と戦って、余力なんて微塵もないはずだ。俺は生得領域を抜けるのに式神を一通り使っちまった。金城のお陰で大蛇は無事だが、玉犬・白は破壊され、その上…鵺も限界だ。壊される前に解いた方がいいな)
「なるほど。お前の式神、影を媒体にしているのか。錬金の餓鬼が使役する式神とは違う」
「なら、なんだ?」
譲は先の
(どちらも呪符を扱うありきたりな術式ではないが、式神だけを見るならば
譲のアルケミアはスタンドであり、術式ではない。その点に於いても宿儺は術式とはっきり区別しており、伏黒の術式の優位性を理解していた。伏黒の術式《
「分からんな。お前あの時、何故逃げた?ふっ、宝の持ち腐れだな」
「ん…?」
「まあいい。どのみちその程度では
(バレバレか…)
「この小僧にそれほどの価値はないというのに」
宿儺の質問の意図はわからない。ふらふらと蹌踉めきながら立ち上がる伏黒は虎杖からの「じゃあなんで俺は助けたんだよ」という叫びが脳裏にこびりついていた。『不平等な現実のみが平等に与えられている』という伏黒の思想、それの基盤は彼の姉である
伏黒の性別を知らずに“恵”という名前をつけた父親は今も何処かでのうのうと生きており、因果応報は全自動ではないと疑わなかった。悪人は法の下で初めて裁かれる。呪術師はそんな“報い”の歯車の一つ、ただ伏黒は少しでも多くの善人が平等を享受できるように———津美紀が呪われたのを切っ掛けに彼は『俺は不平等に人を助ける』と心に誓っていた。両手を突き出して先程よりも膨れ上がった呪力を練り上げる伏黒、その『覚悟』が決まった鋭い目付きに宿儺はビリビリと全身でその闘志を受ける。
「良い、良いぞ。お前が命を燃やすのはこれからだったわけだ。なるほど、そうか、それなら…魅せてみろ!!伏黒恵ッ!!」
「
宿儺の期待に応えてやるつもりはないが、自死を覚悟してでも倒し切ろうとしていた。練り上げた呪力を
「だからお前を助けたことを一度だって後悔したことはない」
「…そっか。やっぱ伏黒は頭がいいからな、俺より色々考えてんだろ。お前の真実は正しいと思う。でも俺が間違ってるとも思わん。あー、悪い…そろそろだわ…伏黒も釘崎も金城も鈴原先輩も……五条先生…は心配いらねえか。長生き、しろよ」
降る雨強く、虎杖死亡———!!
******
《パラメータ》
【術式名】 【術者】
不明 少年院の呪霊
等級-特級呪霊
【術式名】 【術者】
不明 両面宿儺
等級-特級呪物(特級呪術師相当)