2017年10月26日、山梨県北杜市某遊園地での謎の大量失踪事件を調査するため依頼に駆り出された金城譲、鈴原美音の両名が現着。午前中に事件と関連するであろう手掛かりを依頼人の園長を含め、スタッフ、客、そして被害者家族に亘って収集した。過去にはピエロショーがあったが現在は廃止、理由も明確なものは無く園長は話を渋っていた。数ある怪奇現象の兆候として皆、口を揃えて言い放つ。
「『ピエロが笑いながら手招きをする』とね」
「ま、最後に笑うのは自分たちでしょ」
「それは前提条件だろう、笑って解決するくらいの余裕は見せてやろう」
そう啖呵は切ったものの失踪の原因であろうピエロの出現条件が厄介だった。そのピエロを目撃するのは決まって児童である。精神が未成熟で好奇心旺盛な子供、尚且つある程度の自己意思を持って行動できる年頃を狙うという見立てだ。それが児童に当てはまっている条件、被害者は7〜14歳程度までと幅広く、特に被害者数が多いのは8歳だった。
「あんたが纏めたピエロの出現条件、これが正解なら一生見つからないんじゃあない?昔のピエロショーが突然無くなったっていうのは気になるけど」
「必ず糸口はあるはずなんだ。一般人を巻き込まずに辿る方法を探そう。目に映る情報は氷山の一角に過ぎないんだ」
「最新の被害は3日前、意外と可能性はあるのか…視覚が信用できないなら自分の聴覚が出番ってことね!」
「ええ、そこは頼りにしてる。そして俺も
《残穢》とは呪力を使用した痕跡のこと。その原因として挙げられるのは術式の行使、長期間に及ぶ強力な呪物の鎮座によるもの。ごく微量な呪力のため非術師は疎か呪術師でも目を凝らして認識する必要がある。そこに美音の異常に発達した聴覚を複合することにより、捜索の精密さは遥かに引き上げられる。
「あった。薄葉紙のようにかなり希薄ではあるが残穢だ」
「………それっぽい音は聞こえないけど」
「美音ちゃん。念の為ですが呪力を練ったり、術式は使わないでいて欲しい」
「聴覚は術式の副次的効果ってだけだから使わなくてもいいけど、なんで?」
「きっと敵は欺き方が上手い。こちらの残穢や呪力を感知されると厄介だからだよ。俺のスタンドは残穢もないし、眼球にのみスタンドの視力を適用しているからバレるリスクは少ない」
「うわあ〜〜〜……なんでそんな器用な真似できるのよ」
驚愕の入り混じった人を見る目をしていない美音に譲はかなり心外ではあった。しかし、この対策によって辿る残穢は徐々に色濃くなっていく。実際は眼球にスタンドの目を薄く貼り付けているだけの譲はその変化を捉えていた。
「…近くなっている。機器やアプリの不具合でネットの動画が途切れるように残穢が消えていた。その手前は特に残穢の色が濃厚だ」
「敵はどこかに移動する手段を持っているの?」
「恐らく。そこに子供達を引き込んでいると俺は見ている。ピエロだから遊園地に執着しているのだから離れることはない。それでも影一つすら追えないのは遊園地自体に裏世界が存在するから、とかね」
途切れた残穢の手前が強い痕跡として残るのは術式の使用で譲の言及する裏世界に飛んでいるから。そして裏世界とは主にビデオゲームにおいて壁抜けを行った先に広がる世にも奇妙なエリアとされている。今ここでは譲の解釈として異世界として捉えられている。遊園地の裏側へ突入するにはまず張本人を誘き出す。
「ねえ…譲、笑い声……!」
「美音ちゃんがいてくれて良かった。そしてここには子供も多いから餌場としては優秀、呪力を使わない俺達のやり方によく引っ掛かってくれたな、ピエロッ!」
「やばい、子供達もアトラクションの裏側に誘い込まれてる!」
「なんとしてでも阻止する!子供達の命はジャグリングの玉のように弄んでいい代物じゃあないッ!!」
美音は鼓膜で不気味な笑い声を聞き取り、その方向へ二人で人混みを掻き分けて走り抜ける。人気な遊園地故に人波に押され、散り散りになるくらいなら美音の手を握る。そのまま引いて寄せて美音の聴覚を頼りに追走すると人気のジェットコースターの裏側、人数が過疎化している場所に子供達が密集していた。そこに悪魔のような笑みで手招きをする者は呪力の塊、道化師の姿形をした呪霊である。
「連れてかれる、子供達が!譲!!」
「間に合ったさ、俺の《
道化師の呪霊、ピエロは背後の色褪せた空間に引き込むように子供達を誘引する。それよりも先に譲のスタンド、アルケミアが矢印が描かれた看板に触れて《錬金》した。看板が朽ち果てるのと同時に矢印のエネルギーへ再定義、巻き取るように子供達を後方へ強制移動。続いて矢印のエネルギーは譲と美音をピエロへ突進させ、そのまま別空間へと吸い込まれる。
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別空間、そこは譲の読み通り裏世界と呼称されるだけのことはあった。アトラクションもマップも店も配置は現実と同一、しかし荒廃している。ジェットコースターやメリーゴーランドは錆びつき、コーヒーカップは大きく欠けている。活気のあった店は蜘蛛の巣が張り、砂埃まみれで一部が崩れている。
「裏世界、か。本当にあるとは思わなんだ」
「これどうやって帰るの?さっきの入り口無くなっちゃった!」
「考えても無駄だ。今は…」
「ヨウ…コソ……オ越シ下サイマシタ…間モ無ク笑顔デ溢レル私ノ……演目デス」
ピエロはケラケラと戯けたように笑いながら関節を人形のようにカクカクと動かし、紳士のように振る舞ってお辞儀をした。白く塗りたくられた顔面に裂けるのではないかと思える程に釣り上がった口角、並びが良く不気味なほどに純白な歯、奇抜な彩色をした全身タイツのダボっとした服装のピエロはステップを踏んだ瞬間に壮大に転倒した。
「ぷッ……なにそれ…!なにかしようとしたみたいだけど拍子抜けね、口コミの良い映画を見たけど思ったよりも面白くなかった…そんな感覚ね!あははッ…!」
「美音ちゃん、気を抜かないで。この裏世界が仮に奴が作り出した空間なら向こうに利がある」
「だけど初っ端あれは…っ!駄目だ…なんか笑えてくるッ!あはははっ……!!くふっ…!」
「いつまで笑って———」
ツボが浅いのか美音はピエロのドジ具合に笑いが堪えきれていなかった。すっかり油断している様子に釘を刺した譲だが、ピエロがそのままびっくり箱を取り出して自分で開くと白い顔面にバネで飛び出た珍妙な顔が命中する。それで更に激しく笑い声を上げる美音と停滞した状況に譲は顔を引き攣らせた。
「時間の無駄だ、付き合っていられない。アルケミア!」
「君タチモ既ニ演目ノ一部デス」
『無駄ァッ!!』
痺れを切らした譲はアルケミアで直接拳の連打を叩き込むが手応えはなく、攻撃をしていたのはピエロが身代わりに据えた等身大の人形だった。ボーリングのピンのような物体、クラブを宙に投げてジャグリングを開始するが数秒後にそれらは全てピエロの頭部に落下した。けん玉を両手で始めようとも硬い球が赤っ鼻を押し潰してピエロは泣き喚いている。気を引き締めなければならない状況下で譲も笑いが込み上げてくる。
「う…はッ…くっ……ふふ……ッ!!……お、おかし…っ!これは………はははッ!!変だ…!」
「あははっ……!止まん……ないッ!!ははは…っ!!」
結局のところ笑ってしまった譲だが止めようにも止められない。笑いが止まらない。流石に妙だと自らの笑いのツボを疑い、美音ですらもう3分はこの調子だ。ピエロの大道芸はつまらないため、譲は自らの意思で笑い始めたつもりはない。既に涙が出るほど笑いが溢れて表情筋が痛い、何故こうも全力でつまらない演目に笑い続けられるのかが笑いながら理解できずにいた。自然に笑わせられたのだ。表情を変化させた時、強いて言うなら“顔を引き攣らせた”。
(まさか…ピエロが引き起こした事象に対して表情を変化させたことで“笑いを強制”されたとでも言うのか!?)
譲の予想は概ね当たっている。ピエロの術式《
『美音ちゃん!まともに話せないから、今俺はスタンドで会話している!俺たちは既に奴の術中だ!呼吸もできないこの状況だと確実に死ぬ、ピエロを直接叩くしかないが一つ提案がある。美音ちゃん、呪力を練って自分を守ってくれ!それだけだ、後は…俺のアルケミアがなんとかしてみせるッ』
ピエロを祓うのは長期戦になると判断、術式に侵された二人では消耗して力尽きるため現実的ではない。過呼吸で頷く美音にアルケミアは手を翳し、スタンドパワーを注ぎ込む。ピエロの呪力のみを攻撃対象に絞りつつ、美音には「普段よりも弱めた《錬金》を試みる圧力干渉」が生じ、継続的な小さなダメージは負うが二つを併用することでピエロの術式効果を相殺。同様に譲は自身にもアルケミアの効果を付与し、最低限のダメージで事なきを得る。
「はぁ…っ!はぁっ!はぁ……やば、かった…ありがとう……譲…ッ」
「ふぅー……礼なら後に。アルケミアのダメージはそこそこ続くからそこは耐えて欲しい」
「いい……。アイツの術式に比べたら…マシ」
「ソロソロ君タチニモ本格的ニ参加シテモライマス」
ほぼ酸欠状態だった美音は視界も暗転しかけていたが、正常な呼吸で平常を取り戻す。ピエロがハットを取り出して中から飛び出すのは鳩ではなく、ナイフの大群。それらを美音の鈴の音が形となる弾幕、
「ピエロがッ!明確な『攻撃』を仕掛けてきたッ!!」
「演じてたってことね、ドジなピエロを」
「小賢しい。まさに道化師ッ!」
「楽シマセナイトイケマセン」
他の呪霊と比較して明らかに異なるのは譲が交戦してきた呪霊よりも抜きん出た知性と片言ながらも人語を操れること、今までの呪霊とは等級も変わっているはずなのだ。バルーンアートで膨らませた無数の風船を呪力で操り、ピエロがこちらへ差し向けてくる。縫うように風船と風船の間を掻い潜り、一つの風船のみにアルケミアのスタンドエネルギーを流して《錬金》する。
「もっと呪力を込めておくんだったな。アルケミアはこの風船を膨張力に錬金するッ!」
「後の風船は任せて。どうせ触れたら爆発する奴でしょ、あんたが目一杯離れてから同時に…割るッ!!」
一つの風船は空気が抜けて萎んだ後に灰のように崩れ落ちる。その力の拠り所はアルケミアの拳へ膨張力として還元、ピエロの胴体を殴り上げると体内から膨張し浮かび上がる。浮かぶピエロの両足をアルケミアで掴み、《錬金》による圧力干渉でダメージを与えつつ風船の渦中へ投げ入れる。その間に譲は離れ、美音が鈴を横一文字に振って風船を一気に音撃で割るとピエロは爆撃に巻き込まれる。
「……ワラエ…ワラエ…」
「しぶとい呪霊ね」
「『膨張』ではなく、決定打は奴の風船に仕込まれた爆撃…奴自身の呪力や術式による攻撃は奴自身が喰らっても効きが悪い。一層のこと破裂させるべきだったか…いや、もうお前は足掻いても無駄だ、無駄無駄」
「………君タチ…ニ…最高ノショーヲ…!」
それでもピエロは満身創痍、攻めて決着をつけるのなら確実に今だった。ボロボロの服装を脱ぎ捨てて紫と黒を基調とした新衣装に早着替えしたピエロは埃を払って立ち上がる。長い両腕を広げ、軽く窪めた片方の手の平に逆の手の揃えた指部分で鋭く打って即離すという
「なにそれ、手遊び…?」
「いいやッ!違う!!これはまさか———」
「“リョウイキ……テンカイ”……」
その挙動、拍手は合図だった。二人が地獄のショーへと誘われる片道のチケット。瞳が黒く染まったピエロを起点に赤と白で交互に色が差し込まれた円形テントが真上から広がり、円状の舞台の上にピエロ、譲、美音が演者として立たされる。見渡すだけで無限に広がる観客席には観客は顔を持たされず人型の影が絶え間ない拍手、笑い声、喧騒を舞台に降らせる。逃げ場は閉ざされ、完全に取り囲まれたこの場はただの生得領域の具現化には収まらない。
「———『
「美音ちゃん!!つべこべ言う時間は無くなった!今すぐに奴を叩くッ!!」
「待って、なんで焦ってるの!?」
「わからないのか!!前に説明したじゃあないかッ!!奴は言ったんだ、言ってしまったんだ…《領域展開》と!!」
呪術戦の頂点、生得術式の最終段階にして極地———《領域展開》とは術者の中にある生得領域を「結界」という形で体外に創造、敵を閉じ込め、その結界に術者本人の術式を付与する事で術式に基づく攻撃を“必中”とする結界術の一種。例外は存在するが、発動時には指や腕で印相が必要になる。その分だけリターンが見込める大技。
「美音ちゃんは前にスタンド使いはズルいって言ってたけど、呪術を扱うメリットはここにあるッ!!術式と向き合った術者が領域展開を可能とした時、領域に対する術を持たない殆どのスタンド使いは絶対に狩られる!!蛇に睨まれた蛙に等しいんだッ!!」
領域展開のメリットの一つ目は「環境要因による術者のステータス上昇」、これは宮城県の国立病院の地下にて譲と美音が対峙した卵生呪霊も展開した生得領域の具現化が近似した再現である。二つ目は「領域内で発動した術者の術式の絶対命中」、それには術式というルールを強制する必中効果のみの領域、必中必殺の領域も存在する。今それを探り当てるのは失策、早期に術者であるピエロを祓う他に方法はない。
「ねえ、デメリットは!こんな大技、絶対リスクあるでしょ!!」
「膨大な呪力消費と領域解除または崩壊後の術式の焼き切れ!だけどそれを狙うのはあまりにも途方もないッ!!」
焦燥が譲の心臓の鼓動を速くする。冷や汗を流してピエロに向かって突っ込む譲の様相とその煩い心音に事の重大さを理解した美音は鈴を複数回鳴らして呪力消費を考えずに術式を発動する。しかし、悪い予感は的中した。美音は術式がピエロから逸れて上方へ吹き飛んだ…床からは突然棒が四本突き出ていた。譲は息ができずに長方形の水槽に閉じ込められており、手足には鎖が繋がれた。ピエロの領域は必中必殺、後者であった。
(領域の効果が笑いの強制ではない。術式が術者の解釈によって変わるなら…ピエロの領域内での必中効果は“演目の強制参加”!!)
アルケミアによって水槽内に満たされた水を自身の武器として扱うように効果を上書きして錬金、質量を四方八方へ発散させて水槽を破壊。水を操って床に激突する寸前の美音を掬い上げ、衝撃を少なく着地させる。手枷足枷となった鎖を拘束のエネルギーへと錬金し、ピエロを遠隔で締め付ける。
「あはっ……うふ…はははっ!!」
「笑イガ広ガリ、ショーハ君タチにヨッテ完成シマス」
「必中効果の攻撃を受けた途端に“笑いの強制”!?アルケミア!!」
ピエロの領域展開『
(領域によってより術式が強力に、より攻撃的なものへと変わった。体の自由も効きにくいし、何より……観客だッ!領域内の観客の視線が執拗に気になって仕方がないッ!)
即座にアルケミアの錬金効果とスタンドエネルギーで譲自身に流れるピエロの術式効果を消し飛ばす。しかし、それでも尚変わらないのは観客の視線や野次。譲は特別人の視線に敏感ではないが、これも領域に付与された効果と言える。観客のリアクションによる錯乱効果、それが動揺を生んで悪循環に働くだろうと譲は眉間に皺を寄せる。
「観客ノ皆々様ニ、ゴ満足頂カナケレバナラナイ」
「………美音ちゃん。奴の領域のある程度の効果とルールがわかった」
「はぁ…はぁっ……あんたを『信頼』してる。反撃開始…ね」
「ギロチン、ソシテ…ライオンニゴザイマス」
「まずは死ぬ気で奴の必中を防ぐッ!抵抗が無駄でも勝利の活路はあるッ!!」
肋骨に痛みを覚えて押さえる美音をアルケミアの効果で正気に戻すと床や天井から追走するように突然ギロチンが切迫する。被弾する前に譲はそれらを錬金、美音は音波で跳ね返す。火の輪を潜った燃え盛るライオンが同時に二人に噛みつこうとするが、譲は錬金して生み出した切断のエネルギーでライオンの首を刎ねる。
「絶え間ない攻撃、それでも奴の領域は『笑い』を必中とはしなかったッ!奴にどんな壮絶な過去があろうとなかろうと知ったこっちゃあないが、『演目』…つまりは観客を喜ばせ、笑わせることにこだわった…!!狙うは———」
「うざったい観客ってことか!!」
ピエロは未だ身動きは取れないが、領域の必中効果がある以上は向こうに分があるのは相違ない。しかし、ピエロの打破に拘るのではなく二人で飛んで観客席へ移ると即座にスタンドと術式を二人で発動し、観客を潰して回る。観客の軟弱さとピエロの明らかな動揺、これこそがこの領域の意味と弱点なのだと把握した。
「ナ……ナンテコトヲヲヲ!!」
「よく言うわ、あんたはなんの罪もない子供達を連れ去った…純粋な心を弄んだッ!『期待』を裏切ったんだッ!!」
「演者ガ観客ニ危害ヲ加エルナドアッテハナラナイ…御法度ダァ!!」
美音が普段以上に感情的になって観客を殲滅している様子に譲は深く触れることはしない。逆上したピエロは天井から紐を出現させ、譲達を吊り上げようと手首を縛る。それらを能力で引き千切って回避した上で観客の数を容赦なく激減させる。限りなく必中に近い攻撃だが、必中であるのは「演目に参加させる概念」のため今二人はそれを踏まえ、観客を虐殺する行為をしながら活動できている。そして、観客の数は0へ———
「ア……ア…ソンナ…観客タチガ…一人モ…!」
「病院の時は自分が倒しちゃったから今度は譲にあげる」
「嬉しい話だが今回ばかりは二人で再起不能にした方がスッキリすると思うよ。どう?」
「へえ、じゃあ…そうね…お言葉に甘えてッ!」
「私ハミナサンヲ…楽シマセタクテ……ッ!!」
「俺たちの『演目』に黙って参加すればいいんだ。では安らかに」
「ナ…ナンテ無茶苦茶ッ!!」
「《鈴鳴生成》ッ!!」
『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!無駄ーーーーッ!!』
「ワ………ラ……」
仮名・道化師、ピエロの呪霊、術式名—「哄笑侵蝕」———譲と美音が繰り広げた無茶苦茶な「演目」によって領域ごと
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被害者の親達には懇切丁寧に
『私の息子が道化師として5年前までここでショーをしていたんですよ、皆さんを楽しませたいとね。ある時に息子の芸に古臭いやら面白味がないなんてケチをつける人が居まして…ネットで誹謗中傷が拡散して心無い言葉を投稿する人たちが増えて———』
命を落とした、死因は首吊りだった。それがピエロという呪霊として生まれ変わる原因だったとするのならば無念だったろうと譲は同情した。譲、美音、孔時雨は園長の息子の墓にお参りをして今回の話は幕を閉じる。人の手によって殺されたも同然の園長の息子は死して尚も人を恨まず、笑わせようとしていただけだった。
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裏世界、譲達が迷い込んだピエロとの戦場は消滅したと思われていたがその空間から特徴的な前髪に長髪、大きめの耳朶に丸く黒いピアスを付けている袈裟の男が現実世界へと舞い戻った。裏世界を作り出した原因であろう呪霊はピエロとは別に在り、その男が手先から広げた闇に渦のような呪霊が吸い込まれた途端に裏世界への入り口は閉ざされた。
「高専にも呪詛師にも属さない逸れ者の呪術師ジョジョ、呪術界をあれだけ騒ぎ立てた者が少年だったとは…優秀な術式を持ち、冷静でいて勇敢な戦法、素晴らしいね。私の呪霊を使って
裏世界はピエロの術式に含まれておらず、袈裟の男が従属していた呪霊の術式由来のものだった。そんなことを知る由もない譲と譲のスタンドを高く評価した男は静かに笑い、山道から遠くにポツンと映る遊園地を眺望していた。
「是非取り込みたかったが、背に腹は変えられない。それに…鈴原美音も魅せてくれた。彼らの連携には光るものがあった」
男はピエロに利用価値を見出していたが、譲達の活躍を傍観して満足していた。男にとっては術師の連携、術師の術式が何よりも重要視しているようなそんな物言いだった。袈裟の中でスマホが震え、男はすぐに耳元にあてがう。
『“夏油様”調査はお済みになりましたか?信者の集合時刻がもうすぐです』
「すぐに向かうよ。ちょっと面白いものが見れてね、特級とまでは行かなくても才能溢れる子供達だ」
『乙骨……とはまた別の存在でしょうか?』
「彼には“まだ”及ばない。波長が合うのなら是非とも『可能性』はこちらへ引き込みたい。『百鬼夜行』の幕開けも刻一刻と迫っている。新しい家族が増えるといいね」
袈裟の男、夏油が語る百鬼夜行とは———!!
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《パラメータ》
【術式名】 【術者】
哄笑侵蝕 ピエロの呪霊
等級-1級呪霊