最強ギルドマスターは十年前のゲーム世界に転生した 〜未来知識だけを武器に、見習い傭兵から王座を目指す〜 作:窮北の風
月曜日。
二日間の休みを挟んだ民兵訓練営に、少しずつ人の気配が戻り始めた。
学生たちは三々五々、営地へ戻ってくる。
操場の一角を占める難民たちの天幕を見て、誰もが最初は少し驚いた顔をした。
だがすぐに、納得したような表情へ変わる。
無理もない。
この二日間、城外から流れ込んできた難民はあまりにも多かった。
城門の前など、すでに人で埋まっているらしい。
ゴブリン大軍が迫っているという知らせの影響を考えれば、大半の学生の顔からは、いつもの軽さが消えていた。
代わりに、どこか重苦しいものが滲んでいる。
しかし、中にはそうした不安とは無縁の者たちもいた。
双流城《トゥー・リバーズ・シティ》の貴族家に生まれた学生たちは、焦るどころか、以前よりもいっそう賑やかだった。
営地へ戻るなり、三人、五人と固まって集まり、この休みの間に見聞きした新鮮な話を、我先にと自慢し合っている。
家の護衛について城外へ出て、ゴブリンを狩ったという者。
城西郊外で天を衝く火球を目撃し、あれは少なくとも二環メイジの手によるものだと語る者。
さらには、自分の家が食糧を買い占めて大儲けし、その金で城東の鍛冶屋から高価な附魔長剣を買ったと見せびらかす者までいた。
中には、いかにも秘密めかした顔でこう話す者もいる。
「ゴブリン大軍の狙いは、そもそも双流城じゃないんだよ。うちの親戚が城主府で働いていてな。そいつが言うには、ゴブリンって種族は攻城が苦手らしい。今年もどうせ例年と同じで、冬が近いから人間の土地へ先に食糧を奪いに来ただけだ。何も心配する必要なんてない」
一方で、レオナルドのような平民学員たちは、たいてい二言三言相槌を打つだけだった。
だがその眉間には、深い憂いが刻まれている。
彼らがより心配しているのは、もともと余裕のない家計が、この勝敗も見えない戦争によって大打撃を受けることだった。
農地は城外にある。
たとえゴブリンが城を攻めなかったとしても、収穫への影響は計り知れない。
貴族の子弟たちが自信満々に語る言葉は、むしろレオナルドが一番思い出したくない記憶を刺激した。
彼の家は、半月前にすでに完全に失われている。
仮に今回、ゴブリン大軍が本当に退いたとしても、彼にはもう何も残らない。
そう考えると、耳に入ってくる笑い声は、ますます耳障りに聞こえた。
まるで蠅の群れが周囲で羽音を立てているようだった。
「毎日毎日、ろくに剣の稽古もしないで、そこで偉そうに講釈ばかりしている」
彼は目の前の木人に、強く一剣を叩き込んだ。
次の瞬間、手首を返す。
剣鋒は木人の反対側の脇下を滑るように抜けていった。
一連の動きは滑らかだった。
まさに、コロンが以前彼に教えた白獅子剣術である。
ここまでの道のりで、彼が経験したこと、そして目にしたものは、まるで鞭のように何度も背中を打ってきた。
ずっと城内にいた学生たちより、彼は外の残酷さを知っている。
だからこの剣術を学んでから、彼は一度も鍛錬を止めたことがない。
双流城に着いてからも、それは同じだった。
彼の目標は、すでに『双流城の兵士になること』から、『コロン旦那様のような戦士になること』へ変わっていた。
そして、彼は一つのことをよく理解している。
先の見えない未来を前に、家族を守り、自分自身を守れるものは、手にしたこの剣だけなのだ。
「おやおや、さっきから耳障りだと思ったら、レオナルドじゃないか。どうした? 二、三手の剣術を覚えただけで偉くなったつもりか?」
もしかすると、レオナルドは先ほどの声量を抑えきれていなかったのかもしれない。
あるいは、何度も死線を越えてきた今の彼には、もはやそんな連中への遠慮など残っていなかったのかもしれない。
とにかく、彼はまったく声を潜めていなかった。
少し離れたところで盛り上がっていた貴族の子弟たちは、その言葉をはっきり聞いていた。
「はは、相手にするなよ。操場の天幕が見えないのか? 全部、難民のものだ。レオナルドの家族も、たしかあそこにいるんだろ」
「なるほどな。つまり、我らが優秀な戦士殿は、すでに家なき子になったわけだ。剣が少し使えたところでどうなる? 結局、負け犬みたいに双流城へ逃げ込んできただけじゃないか」
「お前ら――」
レオナルドは怒りで血が上るのを感じ、口を開いて言い返そうとした。
だがその前に、隣にいたアルベルトが彼を止めた。
「おい! 彼は命懸けでゴブリンと戦いながら、ここまで来たんだ。手には何匹ものゴブリンの耳を持っている。君たちは一つも力を尽くしていないし、ゴブリンを一匹も殺したことがない。それで、何の資格があって彼を笑うんだ?」
アルベルトは、コロンたちと共にここまで歩いてきた。
そして、レオナルドがゴブリンを斬るところを実際に見ている。
この年齢で、彼の剣技は間違いなく優秀な部類に入る。
もちろん、アルベルトが口を挟んだ理由には私心もあった。
そばにいるペトラに、自分を少しでも見てもらいたかったのだ。
だがそれを抜きにしても、彼は本当にレオナルドの剣術を認めていた。
さらに、自分は貴族でありながら、もともと平民と付き合うことのほうが多い。
この連中の傲慢で怠惰な態度は、どうにも我慢ならなかった。
「俺たちが話しているだけだろ。お前に何の関係がある?」
言い返された雀斑の少年が、たちまち不機嫌そうな顔になった。
彼は立ち上がり、まっすぐアルベルトの前へ歩いてくる。
「誰かと思えば、アルベルト少爷じゃないか。俺たちの剣術が駄目だって笑うのか? なら聞きたいな。あなた様の剣術は、どれほどのものなんだ?」
「ははは、双流城の誰が知らないっていうんだ。ロレンツォ教官の息子は『剣術の天才』だってな。聞くところによると、五歳の子どもですら、その名を聞けば寝小便をするほど怖がるらしいぞ」
「え、どうして五歳なんだ?」
隣の少年が、わざとらしく大げさに驚いた顔をしてみせた。
「六歳になると、うちのアルベルト少爷はもう勝てなくなるからだよ」
どっと笑い声が上がった。
貴族の子弟たちは、遠慮というものを知らなかった。
どうせ皆、貴族の出身である。
誰もアルベルトを恐れてはいない。
アルベルトの顔は、一気に耳まで真っ赤になった。
言い返したかった。
だが、相手の言っていることは、残念ながら事実だった。
彼には本当に、剣術修練の才能がまったくなかった。
父は幼い頃から自ら彼に剣を教えてくれた。
だが三年間、どれほど苦しんで鍛錬しても、まったく進歩しなかった。
最後には父でさえ、諦めてしまった。
そこまで考えると、アルベルトの胸の奥がふいに冷たくなった。
自分の未来は、一体どこにあるのだろう。
まさかこのまま一生、家で何もせずに暮らす役立たずの若旦那になるしかないのか。
「その言い方だと、お前たちの剣法はよほど強いらしいな?」
レオナルドが話を引き取った。
彼は嘲るような目で、数人の学員を見た。
「なら、俺と試合をする度胸はあるか?」
「は? お前が俺たちとやるって?」
その貴族学員は、意外そうにレオナルドを見た。
「俺の記憶が正しければ、お前は二十三期生だろ? 俺たちはお前より丸二期上だ。これは剣術水準だけの差じゃない。力量、速度、どちらを取っても、お前たちの期の一位ですら俺たちには敵わないぞ」
「井の中の蛙どもが」
レオナルドは冷たく言った。
「俺は、自分とそう変わらない年齢でありながら、剣術ではすでに鉄級戦士を超えた人を、この目で見ている」
「はははは! 俺たちが吹いてるだって? お前のほうがよほど大口じゃないか! 俺たちと同じくらいの年で、教官より強い? いっそ、空を飛ぶゴブリンを見たとでも言ったらどうだ!」
「信じないなら、一度やってみれば分かる」
レオナルドは静かに言った。
「ちょうど俺は、その旦那様から数手を学んだところだ。あとは、お前たちの中に、それを受ける度胸のある者がいるかどうかだ」
「レオナルド、もういい。こんな馬鹿どもに付き合う必要はない」
アルベルトは慌てて止めた。
彼はコロンの剣術を直接見たことがない。
レオナルドの口にする『その旦那様』が、自分にとっての恋敵だとも知らない。
実際、たとえレオナルドがその名前を口にしたとしても、彼はほかの貴族学員と同じく、信じはしなかっただろう。
十六歳で鉄級戦士?
冗談ではない。
まさか母親の腹の中にいる時から剣を振っていたとでもいうのか。
あり得ない。
もし本当にそんな天才がいるなら、とっくに各地の剣術大師たちが奪い合うように弟子にしている。
こんな辺境の小さな場所に埋もれているはずがない。
「構わない」
レオナルドは低い声で言った。
「それに、奴らは俺の師を侮辱した。その一言だけで、俺には戦う理由がある」
「いいぜ! 殴られたいなら、望みどおりにしてやるよ」
数人の貴族子弟たちは互いに顔を見合わせ、一斉に笑い出した。
彼らの自信は、まったく根拠のないものではない。
普通の平民の子どもは、訓練営で毎日どれほど頑張っても、半日ほど剣術を学ぶのが精一杯だ。
だが貴族の子弟には、家の護衛が一対一で稽古をつける。
さらに、各種の薬剤や魔獣の血肉を長年摂取し、身体を強化することもできる。
一年、二年の差なら、まだはっきりとは見えないかもしれない。
だが五年以上の差になれば、同じ資質の戦士でも、完全に引き離される。
「お前が負けても納得できるように、特別に優待してやる。俺たちの中から、好きな相手を一人選べ。年上が年下をいじめたとか、貴族精神に欠けるとか言われたくないからな」
「どうする? 誰を選ぶ?」
「俺にしろよ。ここにいる中じゃ一番弱いぜ!」
「俺を選べ、俺を選べ。三日も飯を食ってないから、剣すらまともに握れないんだ」
相手がまったく自分を眼中に入れていない様子を見て、レオナルドは鼻で笑った。
そして、適当に手を上げ、指でそのうちの一人を指す。
指された相手は、興奮してその場で飛び上がった。
だが彼が喜びきる前に、レオナルドの指は下ろされなかった。
そのまま横へ滑る。
そして、隣にいた別の一人を指した。
「おいおい、お前は結局誰を選んでるんだ? 指をあちこち動かすなよ」
レオナルドは彼を無視した。
さらに指を動かし、三人目を指す。
相手が呆気に取られる中、彼は平静な声で言った。
「お前たち程度なら、三人まとめて相手にできる!」