最強ギルドマスターは十年前のゲーム世界に転生した 〜未来知識だけを武器に、見習い傭兵から王座を目指す〜   作:窮北の風

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第75話 試合

 口論から始まった一場の試合は、始まりと同じように、あっけなく、そして唐突に終わった。

 三人の先輩を同時に相手取ったにもかかわらず、レオナルドは予想どおり勝利した。

 

 彼が使ったのは、誰もが学ぶ基礎剣術ではない。

 訓練営で教えられている軍用剣術でもない。

 最近、彼がずっと鍛錬を続けている白獅子剣術だった。

 

 試合が始まったばかりの頃、相手の三人はまだ貴族としての体面を気にしていた。

 自分たちから先に攻めかかるのは気が引けたのだろう。

 ましてや、三人で囲んで攻めるつもりなどなかった。

 

 レオナルドはその隙を逃さなかった。

 彼は白獅子剣術第二式『突き』を繰り出し、中央に立つ先輩へ一直線に突っ込む。

 相手が反応するより早く、その手にあった木剣を跳ね上げた。

 

 木剣は回転しながら飛んでいき、ぱたん、と操場の砂地に落ちる。

 相手はその場に呆然と立ち尽くした。

 右手の虎口が痺れ、しばらく我に返ることすらできなかった。

 

 そこでようやく、残る二人は気づいた。

 レオナルドは、もはや彼らの記憶にある後輩ではない。

 そう理解した瞬間、彼らは貴族の礼儀など気にしていられなくなった。

 そのまま左右から攻め寄せる。

 

 左側の貴族学生が先に仕掛けた。

 彼は確かに、最初の一人よりは強かった。

 身長と腕の長さを生かし、力任せに押し潰そうとしてくる。

 

 だが、レオナルドの足運びは鰻《うなぎ》のように素早かった。

 わずか二度の横移動で相手の背後へ回り込む。

 そして『獅子尾撃』を放った。

 木剣が下から上へ斜めに跳ね上がり、相手の手首を正確に打つ。

 

 その学員は痛みに耐えきれず、思わず手を離した。

 木剣が、がらんと地面に落ちる。

 彼はよろめきながら数歩下がり、最後には顔を真っ赤にして比武場から退いた。

 

 二人が立て続けに素早く敗れたことで、周囲の学生たちもようやくこちらの異変に気づき始めた。

 人は次第に増えていく。

 果ては、遠くにいる難民たちまで、こちらを眺めるようになっていた。

 

 最後に残ったのは、先ほどアルベルトを嘲ったそばかす顔の少年だった。

 今の彼の表情は、先ほどとはまるで違っている。

 あの軽薄な余裕は、すでに跡形もなく消えていた。

 唇を固く結び、目はレオナルドの剣先をじっと睨んでいる。

 

「お前が使っている剣術は、訓練営で教えているものじゃないな」

 そばかす顔の少年が低い声で言った。

 

「当然だ。俺はもっといいものを学んだ」

 レオナルドは胸を張った。

 

 そばかす顔の少年は、それ以上何も言わなかった。

 剣を上げ、そのまま攻めかかる。

 

 先ほどの二人とは明らかに違っていた。

 そばかす顔の少年の基本功はかなり堅実だ。

 剣勢は落ち着いており、一撃一撃に、レオナルドの腕を痺れさせるだけの力が乗っている。

 

 二人の木剣は操場の上で何度もぶつかり合った。

 密集した音は、糸の切れた珠のように、ぱちぱちと途切れなく連なっていく。

 

 レオナルドは何度か白獅子剣術の歩法を使い、相手の側面へ回り込もうとした。

 だが、そのたびに相手は老練な読みで位置を塞いできた。

 二十度目の攻撃を受け止めた時、二人ともすでに息が上がっていた。

 

 汗の雫が、レオナルドの額を伝って落ちる。

 それが視界を遮った。

 彼は瞬きをした。

 視界がぼやけた一瞬、そばかす顔の少年の剣はすでに目の前まで迫っていた。

 

 本来なら、この一剣への最善手は、剣鍔で受け止めることだ。

 だがレオナルドには分かっていた。

 自分の体力はもう追いついていない。

 この剣を正面から受ければ、押し込まれ、そのまま相手の流れに呑まれる。

 

 そう考えた瞬間、彼の目に鋭い光が一瞬だけ走った——

 賭けるしかない!!

 

 半月にわたって生死の縁を転がり続けた経験は、彼に後退を教えなかった。

 教えたのは、ただ一つ。

 

 レオナルドは地面を蹴った。

 自ら剣へ向かって踏み込む。

 彼はわずかに身を傾け、あえて左肩を晒した。

 

 ドン――!

 

 そばかす顔の少年の木剣が、レオナルドの左肩へ重く叩き込まれる。

 鈍い音が響いた。

 

 ほとんど同時に、レオナルドの右手の木剣は、相手の胸元に生じた隙間を抜けていた。

 その剣先が、そばかす顔の少年の喉元にぴたりと止まる。

 

 すべての動作は、刹那の間に終わっていた。

 二人は同時に動きを止める。

 比武場は、一瞬で静まり返った。

 

 そばかす顔の少年は顔を下げた。

 自分の喉元に突きつけられた剣先を見る。

 それから、自分が相手の肩に叩き込んだ木剣を見る。

 唇を強く引き結んだ。

 

 今の一撃は、ほとんど全力だった。

 普通の学生なら、とっくに痛みで手を離し、後ろへ下がっている。

 だが目の前の、自分よりさらに一期下の少年は、その一撃を肩で受け止めた。

 しかも手にした剣は、わずかにも揺らいでいない。

 ただ受け止めただけではない。

 負傷の危険を承知で、一瞬の隙を掴み、絶地から反撃を返したのだ。

 

「……狂人だ」

 そばかす顔の少年は、ぽつりと呟いた。

 そして自分の剣から手を離し、一歩下がる。

 降参の意思を示した。

 

 そこでようやく、レオナルドは右腕を下ろした。

 手にした木剣を、ゆっくりと腰へ差す。

 左腕全体は、すでに痺れてほとんど上がらなかった。

 それでも彼の顔は、何事もなかったかのように平静だった。

 

「お前が使ったのは、いったい何の剣法だ?」

 そばかす顔の少年はその姿を見つめ、長い沈黙のあと、ふいに尋ねた。

 

「白獅子剣術だ」

 レオナルドは答えた。

 

 その言葉が落ちた瞬間、そばにいた貴族学員たちの間から、驚愕の声が一斉に上がった。

「あり得ない!」

 すぐに誰かが叫んだ。

「白獅子剣術だと?あれは白獅子軍団専属の剣術だぞ!お前がどうして――」

 

「お前はこの世界を何も知らない」

 レオナルドは相手の言葉を遮った。

 その声は淡々としていた。

 だが、そこには疑いを許さない確信があった。

「俺の師匠がどれほどすごいかも、まるで分かっていない」

 

 誰も言い返さなかった。

 

 先ほど声を上げて疑ったそばかす顔の少年も、口を開きかけたが、結局その後の言葉を飲み込んだ。

 何しろ、レオナルドが今まさに三人を連続で倒した光景が、目の前に残っている。

 この状況で何を言っても、説得力はなかった。

 

 だが、周囲で見物していた民兵学生たちは、そんなことに構っていなかった。

 彼らは一斉にレオナルドの周囲へ押し寄せ、口々に質問を投げかけ始める。

「レオナルド、お前の言う師匠って、難民の隊伍にいるのか?」

「そうそう、さっき聞いたぞ。お前たちはチカ町のほうから逃げてきたって。本当なのか?」

「白獅子剣術は、その師匠に教わったのか?いったい何者なんだ?」

 

 レオナルドの左肩は、まだじくじくと痛んでいた。

 だがコロンの話になると、彼はたちまち元気を取り戻した。

 肩の痛みすら、少し和らいだように感じる。

「俺の師匠が誰かだって?教えてやる。あの方は、一人でゴブリン軍を丸ごと倒せるほどの強者だ!」

 

 人群れの中から、息を呑む音が上がった。

 

「信じてないな?」

 レオナルドは唇を舐めた。

 話せば話すほど調子が上がっていく。

「俺たちがチカ町を出た時、まるまる一隊のゴブリン軍と遭遇したんだ。何匹いたかなんて数えきれなかった。とにかく、見渡す限り真っ黒だった。そこで俺の師匠がどうしたと思う?」

 彼は声を落とし、周囲を見回した。

「あの方は俺たちを後ろに庇い、自分一人で山道の真ん中に立ったんだ。手にしていたのは、たった一本の剣だけ。白い光が一閃したと思った次の瞬間、先頭のゴブリン首領の首がそのまま飛んだ。血なんて、七、八メートルは吹き出したぞ!」

 

 彼がコロンの事跡を語るのは、これが初めてではない。

 ただ、語るたびに前回よりも少しずつ大げさになっていく。

 しかしレオナルド自身は、自分が嘘をついているとはまったく思っていなかった。

 彼はただ、自分が信じている真実を語っているだけなのだ。

 彼の心の中で、コロン旦那様はそれほどまでに強い存在だった。

 細かな食い違い?

 そんなものは重要ではない。

 きっとコロン旦那様も気にしないはずだ。

 

「これで終わりだと思うか?まだあるぞ!」

 レオナルドはますます得意げになった。

「俺たちが橡の森で亜空間に閉じ込められた時、何人もがわけも分からず消えていったんだ!そんな状況、ここにいる誰が耐えられる?でも結果はどうだったと思う?俺の師匠は、たった一人で剣を持ち、その件をあっさり解決してみせた。何?亜空間が何か分からない?なら帰って、ちゃんと本を読んで歴史を勉強してこい!」

 

 レオナルドはそうして人群れの中心に立ち、滔々と語り続けた。

 たっぷり半刻ほど話してから、ようやく口を閉じる。

 

「じゃあ、鉄級戦士の話は?」

 誰かが尋ねた。

「さっき、お前の師匠は十六歳で、もう鉄級戦士を倒せるって言っていただろ。あれは本当なのか?」

 

「もちろん本当だ!」

 レオナルドは迷いなく答えた。

「それは俺の目の前で起きたことだ。俺の師匠の実力は、鉄級戦士なんかよりずっと上だ!」

 

 これには、そばで面白半分に見ていた数人の貴族子弟たちも、完全に座っていられなくなった。

 十六歳で、鉄級を超える?!

 ロニクス王国全体を見渡しても、その級の天才など片手で数えられるほどしかいない。

 

 そんなことが、あり得るのか!!

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