最強ギルドマスターは十年前のゲーム世界に転生した 〜未来知識だけを武器に、見習い傭兵から王座を目指す〜 作:窮北の風
「あの、レオナルド……君。少しだけ教えてもらえないか。君のその師匠は、今いったいどの等級の戦士なんだ?」
そばかす顔の少年は、もはや胸の内の好奇心を抑えきれなかったらしい。
腰を屈めて近づき、声を潜めて尋ねた。
「どの等級か、ですって?」
その問いを聞いたレオナルドは、口に咥えていた草の茎をぷっと吐き捨てた。
そして、横目で相手を見る。
「そんなこと、見ず知らずの人間に軽々しく教えられるわけがないでしょう。失礼すぎますよ」
「た、大変申し訳ない!私の配慮が足りなかった!」
そばかす顔の少年は慌てて大声で謝り、何度も頭を下げた。
「ただ……俺の師匠は、普段はとても気さくな方です」
レオナルドは相手が恐縮しきっている様子を見て、口元をわずかに吊り上げた。
それから、いかにも秘密めいた様子で声を潜める。
「そうですね。教えてあげてもいいです。ただし、絶対に秘密にしてくださいよ。そこら中で言いふらしてはいけません」
「後輩、安心してくれ!俺は口が堅いことで有名なんだ!」
そばかす顔の少年は胸を叩いて保証した。
「前に親父の金貨を二枚盗んだことがあってな。見つかった後、親父に三日間ベルトで叩かれたんだ。ベルトを五本も駄目にしたのに、俺は最後までどこに隠したか白状しなかった!」
そこまで言ってから、彼は周囲を囲んでいる他の者たちを見て、少し眉をひそめた。
「ただ、こいつらはどうだか分からん」
「幸運の女神に誓う!後輩が教えてくれたことは、絶対に言いふらさない!」
「安心しろ!たとえ親父にベルトで叩かれても、俺は絶対に言わない!」
「そうだそうだ、俺も誓う!誰にも言わない!」
周囲の者たちが次々と、自分は必ず秘密を守ると保証する。
それを見届けてから、レオナルドはようやく重々しく頷いた。
「分かりました。あなたたちを信じます」
そして、ゆっくり口を開く。
「実は……俺の師匠は、すでに『銅級』戦士です」
もっとも、レオナルド自身も、コロン殿下が実際にどの等級なのかは知らない。
だが、一人でゴブリン軍をまるごと壊滅させたのだ。
しかも、その中には七体のゴブリン精鋭戦士までいた。
ならば、実力は絶対に相当なものに違いない。
それに、皆は秘密を守ると約束した。
少しくらい大げさに言っても、問題は起こらないはずだった。
案の定、彼が言い終えた瞬間、周囲から一斉に息を呑む音が上がった。
「どど……『銅級』……!?」
そばかす顔の少年は大きく口を開けたまま、その場で完全に固まった。
つい先ほどまで、レオナルドの口から、その師匠がここまで歩んできた経歴を聞かされていた。
相手は自分たちと同じくらいの年齢。
もしかすると、さらに少し若いかもしれない。
それなのに、その年で、すでにそこまで高い等級に達しているというのか。
彼は六歳の頃から、家の護衛について剣術を学んできた。
毎日、少なくとも八時間は鍛錬を続けている。
今では、もう丸十年だ。
時には少し怠けたこともある。
だが、それでも十分に努力してきたと言えるはずだった。
家では大金を払って、城内でも名のある剣術教師を雇ってくれている。
食事も、毎食のようにエメラルド草原から輸入した魔牛肉《まぎゅうにく》を食べていた。
それでも、家族が彼に期待しているのは、せいぜい二十歳になる前に鉄級戦士へ到達することだった。
だというのに、レオナルドの若き師匠は、すでに銅級を突破している。
そんな恐ろしい剣術の天賦は、ロニクス王国全体を見渡しても、そう多くはないはずだ!!
レオナルドは、相手の心中など知る由もなかった。
ただ、皆が震えるような顔で驚愕しているのを見て、先ほどまで胸の内に溜まっていた鬱屈が、潮が引くように消えていくのを感じた。
彼は自然と手を伸ばし、そばかす顔の少年の肩をぽんと叩く。
そして微笑んだ。
「先輩も、そう落ち込まないでください。俺の師匠はかつてこう言っていました。この世界は広い。自分より天賦が高く、能力のある者など、星の数ほどいる。だからこそ、戦士の道を選んだ以上、俺たちは常に謙虚な心を保ち、『昨日の自分を超えること』を目標にすべきだ、と。そうしてこそ、人は前へ進めるのです。分かりましたか?」
「は……はい!ご指導、ありがとうございます、後輩!」
そばかす顔の少年は、恐ろしく真剣な顔で答えた。
ただ、レオナルドの手が自分の肩に置かれているのが、どうにも落ち着かなかった。
思わず、自分の父親を思い出してしまう。
昔、父にベルトで叩かれた後も、確かこんなふうに諭された気がする。
とはいえ、先ほど聞かされた話があまりにも衝撃的だったため、そこまで深く考える余裕はなかった。
「さて、あなたたちの質問には答えました。そろそろ、それぞれやるべきことに戻ってください」
他の者たちも皆、何やら考え込むような顔になっている。
それを見て、レオナルドは満足げにゆっくり立ち上がった。
「俺も剣の稽古を続けなければ。怠けているところを師匠に見られたら、また叱られてしまいますからね。はあ、ああいう師匠を持つと、本当に大変です」
レオナルドはそばに置いていた木剣を手に取った。
そして、いかにも得意げに首を揺らしながら、広場の隅にある木人の前へ歩いていく。
ペトラの近くで、再び白獅子剣術の稽古を始めた。
一方、先ほどまで集まっていた少年たちは、ぽつぽつと散っていった。
その顔には、それぞれ違う色が浮かんでいる。
重く考え込む者。
疑わしげな者。
興奮を隠しきれない者。
そして、あのそばかす顔の少年だけは、しばらくその場にしゃがみ込んだままだった。
顔には深い物思いの色が浮かんでいる。
まるで、先ほど受けた心の衝撃から、まだ立ち直れていないようだった。
かなり長い時間が経ってから、彼はようやくゆっくりと立ち上がる。
そして俯いたまま、自分の隊伍のほうへ歩いていった。
「ラム!」
そばかす顔の少年は、聞き慣れた声に足を止めた。
顔を上げて見ると、自分と同じ赤髪の少年がこちらへ手を振っている。
「ラム、お前、昨夜またこっそり酒を飲んだだろ?さっきから何度も呼んでるのに、全然反応しなかったぞ」
そばかす顔の少年――ラムは眉をひそめた。
相手の名はジャック。
自分と同じ一族の出身だ。
ただ、ラムよりも天賦があり、剣の腕も上だったため、訓練営に来て以来、何かにつけてラムと張り合ってくる。
このタイミングでわざわざ声をかけてくるなど、絶対にろくなつもりではない。
しかも、ラムは先ほどレオナルドの師匠の話で、少なくない精神的打撃を受けたばかりだった。
機嫌は最悪と言っていい。
「勝手なことを言うな。何の用だ?」
「いや、別に。ただ、さっきお前たち三人がかりでも、あのレオナルドに勝てなかったのを見てな。ちょっと信じられないと思っただけだ」
「はっ、何が信じられないんだ?お前が三人いても、結果は同じだぞ」
ラムは皮肉を込めて言った。
「ははは!! 自分が腕で負けたからって、他人まで同じだと思うなよ」
ジャックは笑った。
「俺は天才なんて大それたものじゃないが、最近、基礎剣術はすべて身につけた。家で雇っている教師も言っていたぞ。来年には鉄級戦士の申請ができる実力になるだろうってな。その時、俺はこの一族でここ二十年、最年少の鉄級戦士になる」
ジャックは誇らしげに笑い、ラムを見た。
その目には、隠しきれない優越感が浮かんでいる。
「たかが鉄級戦士か。井の中の蛙だな」
ジャックの嘲りを受けても、ラムはただ冷笑した。
「誰が井の中の蛙だって?」
「もちろん、お前のことだ」
「何だ、不服か?来いよ。ちょうど教官もまだ来ていない。もう一度、俺と試合でもするか?」
「ふん。お前にできることなんて、それくらいだろ」
ラムは首を横に振り、不屑げに言った。
「俺はこの目で見たんだ。俺たちとそう変わらない年齢でありながら、剣術ではすでに鉄級戦士を超えている人物をな」
ジャックは一瞬ぽかんとした。
次の瞬間、声を上げて笑い出す。
「はははは!ラム、お前は何を寝ぼけたことを言ってるんだ?俺に勝てないなら素直に認めればいい。わざわざ出まかせの話を作る必要なんてないだろ」
だがラムは、まったく気にした様子がなかった。
彼はジャックを見た。
「昨日までの俺なら、同じく信じなかっただろうな。だが、さっき俺たちとレオナルドの試合を、お前も見ていただろう?あいつは三手だけで、俺たち全員を倒したんだ。たった三手だぞ!それが何を意味するか分かるか?」
それを聞いたジャックの顔色が変わった。
彼は確かに貴族だ。
だが、貴族が皆馬鹿というわけではない。
先ほどは深く考えていなかった。
しかし今、改めて思い返してみると、すぐにそこにある問題に気づく。
「ん?レオナルドか?俺もあいつのことは聞いたことがある。印象では、確かに悪くない腕だったが、そこまで強かったか?三手でお前たちを倒したというなら……俺でも勝てないということになるぞ」
「ふん。分かればいい」
「どういうことだ?ちゃんと説明しろよ」
ジャックは、その裏に何か事情があると感じたらしい。
すぐに問いただしてきた。
ラムは焦れた様子のジャックを見て、長くため息をついた。
それから声を潜める。
「教えてもいい。だが、絶対に人に言うな。もし本当に何か起きても、俺は自分が話したとは認めないからな」
ジャックはラムの神秘めいた様子を見るなり、好奇心《こうきしん》を一気に膨らませた。
何度も頷きながら、慎重に周囲を見回す。
誰もこちらに注意を払っていないことを確認してから、ようやく身を寄せた。
ラムは満足げに相手の肩を叩き、真剣な顔で言った。
「同じ一族のよしみで教えてやる。レオナルドは、とんでもなく強い師匠についたらしい。その人に教わったことで、たった半月で、あそこまで剣術が伸びたそうだ」
「何だって!?」
ジャックは思わず声を上げた。
「そんなことあり得ない!どんな教師なら、そこまでできるんだ!?」
「あり得ない?」
ラムは相手が信じないことを最初から予想していたようだった。
ただ冷笑する。
「では、その師匠が、とてつもない剣の達人だと言ったらどうだ?」
「剣の達人?うちの護衛隊長よりも強いのか?」
「護衛隊長?たかが鉄級戦士が、どうしてレオナルドの師匠と比べられるんだ?」
「何だと!?まさか、その師匠は銅級戦士なのか!?」
「ふん。銅級など何だというんだ。あの人は、堂々たる『銀級』戦士だ!!!」
「えっっっ!? 『銀級』戦士!?」
ジャックは目を見開いた。
しばらく呆然とした後、また眉をひそめる。
「本当に銀級戦士なのか?そんな強者が、どうして俺たちのような辺境の街に来るんだ?しかも、レオナルドを弟子に取るなんて」
「実はな、レオナルドの師匠の故郷は、俺たち南境にあるんだ」
ラムは声をさらに低くした。
「あの人は今回、もともと里帰りのために戻ってきただけだった。ところが、ちょうどゴブリン大軍の侵攻に遭遇したんだ。そこで一人でゴブリン大軍を丸ごと斬り伏せただけじゃない。心優しくも、難民たちをずっと双流城まで護送してきた。これは周囲の難民に聞けば、すぐ分かることだ」
そして、彼はさらに真剣な顔で続ける。
「もっとすごいのは、その人の年齢が俺たちとほとんど変わらないことだ。しかも使う剣術は、白獅子軍団専属の白獅子剣術だぞ」
「レオナルドを弟子に取った理由?それは本人に聞け。俺が知るわけないだろ。ただし、言っておくが、俺から聞いたとは絶対に言うなよ!」
ラムはきわめて真面目に言った。
最後の一言には、はっきりと警告の響きが混じっていた。
ジャックはラムの厳粛な表情を見つめ、ゆっくりと頷いた。
そして遠くで一人剣を振っているレオナルドを見る。
その瞬間、彼は少しだけ、本当に信じてしまった。
ただ――ラム。
話すのはいい。
でも、なぜさっきからずっと俺の肩を叩いているんだ?
「よし、俺もそろそろ授業へ戻る。最後にもう一度だけ言っておく。絶対に、絶対に人へ言うなよ」
そう何度か念を押してから、ラムは立ち上がり、その場を離れた。
だが、先ほどジャックが見せた驚愕の表情を思い出すと、ラムの口元は自然と吊り上がった。
最高だ。
普段から俺を見下してばかりいるからだ。
ふふん。
今回はお前も、見事に打ちのめされただろう。
十分後——
ジャックは普段仲のいい三人の友人を引っ張り、営地の裏手にある馬小屋まで連れてきていた。
彼は神妙な顔で、同じく貴族身分の三人を見回す。
そして声を潜めて言った。
「重大な秘密がある。ただし、話す前に、必ず、必ず、必ず秘密を守ると誓ってくれ」
向かいの三人は互いに顔を見合わせた。
それから次々に頷く。
「ジャック、安心しろ!俺は絶対に秘密を守る!」
「ジャック!俺のことは分かっているだろ。俺は口がめちゃくちゃ堅い!」
「そうだ。早く教えてくれ」
「うん」
ジャックは満足げに頷いた。
「お前たち、レオナルドの師匠がどの等級か知っているか?」