最強ギルドマスターは十年前のゲーム世界に転生した 〜未来知識だけを武器に、見習い傭兵から王座を目指す〜   作:窮北の風

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第77話 どんどん大げさになっていく

 十分後。

 ジャックはすっきりした顔で馬小屋から出てきた。

 その後ろには、険しい表情を浮かべた三人の友人が続いている。

 だが二歩も進まないうちに、ジャックはまた振り返り、三人へ念を押した。

 

「言っておくけど、この話は絶対に広めるなよ!もしレオナルドの師匠に追及されても、俺はお前たちに話したなんて認めないからな!」

「ジャック、安心しろ!絶対に言わない!」

「もう誓っただろ。俺たちを信じてくれ!」

「そうだそうだ!」

 

 三人が改めて目の前で約束するのを見て、ジャックはようやく満足げに頷いた。

 そして歩き出し、操場のほうへ戻っていった。

 

 半刻後――

 民兵訓練営の至るところで、ひそひそと囁く声が聞こえ始めた。

 

「お前たち、もう聞いたか?二十三期生のレオナルドが、剣の達人を新しい師匠にしたらしいぞ。しかも、その人は銅級戦士なんだってさ!」

「間違いない!この話は、ある貴族出身の生徒から直接聞いたんだ。絶対に他人へ言うなよ!」

「ああ、俺も聞いた。レオナルドはその人に教わって、たった三日で鉄級戦士並みの剣術を身につけたらしい。数日後には、冒険者ギルドで認定を受ける予定なんだと!」

「何だって!?そんなに教えるのが上手いのか!レオナルドの師匠は、まだ弟子を募集しているのかな?」

「極秘情報だ!極秘情報!さっき剣術教官の一人が自分の口で言っていた。レオナルドの師匠は、実は銀級戦士らしいぞ!」

「何だって?どうして剣術教官が知ってるのかって?きっと二人は友人なんだろ」

「それだけじゃないぞ。その銀級の強者は、すでにゴブリン大軍と戦ったことがあるらしい!たった一剣で、五百匹以上のゴブリン兵を斬り殺したんだってさ!恐ろしいな!」

「そんなに強い人が、どうして双流城《トゥー・リバーズ・シティ》へ来たんだ?」

「しっ!勝手に詮索するな!俺が聞いた話では、その人は難民に混じって双流城へ入り、わざと自分の行方を隠しているらしいぞ。もしかして、何か秘密の任務があるんじゃないか?」

「任務?皇室がゴブリン大軍を討伐するため、秘密裏に派遣した人物なのか?」

「いや、俺は違うと思う。もしかすると、狙いは城主なんじゃないか?城主が戦争の準備をきちんと進めているか、密かに調査しに来たとか」

「何だって!?つまりロニクス王家は、とっくに城主の働きに不満を持っていたのか!今回は城主を廃するために人を送ったんだな!」

「信じられないかもしれないが、レオナルドの師匠はロニクス王家の人間らしいぞ!」

 

 瞬く間に、営地全体がレオナルドの師匠に関する噂で埋め尽くされた。

 

 アルベルトはずっと人群れの外側に立ち、両腕を胸の前で組んでいた。

 聞けば聞くほど、眉間の皺が深くなっていく。

 

 自分が難民の一団に加わったのは途中からだ。

 だが、ここまで一緒に歩いてきた限り、コロンという青年がそこまで強いようには見えなかった。

 ましてや『王族の血筋』だの『銀級戦士』だのという話など、あり得るはずがない。

 だが、これほど多くの者が口にしている。

 もしかすると、自分は本当に彼を見誤っていたのだろうか。

 

 周囲の者たちが、さらに細かな話を口々に語り合っている隙に、アルベルトはそっと人群れを抜け出した。

 そして操場の反対側にある難民営へ向かう。

 

 営地では、ちょうど火を起こして食事の準備をしているところだった。

 粗末な天幕が何列か並ぶ間に、数人の難民が鉄鍋を囲んで座っている。

 彼らは乾粮を細かく割って鍋に入れながら、世間話をしていた。

 アルベルトには見覚えがあった。

 この者たちは確か、最初にコロンと共にチカ町から逃げ出した難民たちだ。

 

「おじさん、少し聞いてもいいですか?」

 アルベルトは鍋のそばにしゃがみ込み、なるべく何気ない口調を装った。

「さっきレオナルドが、コロンさんはチカ町で一人きりでゴブリン軍を壊滅させたと言っていたんですが、本当なんですか?」

 

 中年の難民は顔を上げ、アルベルトを見ると笑った。

「レオナルドの坊主が言ったのか?あの子は、すぐあちこちで話を大きくするからな」

 

 アルベルトは胸の内で安堵し、頷こうとした。

 だが、その男は続けて口を開いた。

「もっとも、全部が作り話というわけでもない。当時、俺たちは確かにゴブリン軍に追われていた。コロン旦那様は、俺たちを逃がすため、一人で敵を食い止めて、そのせいで重傷を負ったんだ」

 

「ゴブリンが何匹いたかまでは、俺たちも数えていないけどな。とにかく、ものすごい数だったのは確かだ」

 別の難民も口を挟んだ。

 

「では、コロンさんの実力は、本当にかなり高いんですか?」

 アルベルトは改めて確認した。

 

 難民たちは互いに顔を見合わせると、揃って笑いながら頷いた。

 

「では……コロンさんは、王族の貴族なんですか?」

「コロン旦那様が王族の貴族かどうかなんて、俺たちみたいな普通の民に分かるはずがない」

 中年の難民は答えた。

「だが、貴族が持つべき美徳を備えた方であることだけは、間違いない」

「レオナルドの坊主が言っていることも、そこまで間違ってはいないぞ。お前は知らないだろうが、俺たちがこうして双流城まで生きて辿り着けたのは、全部コロン旦那様のおかげなんだ」

 

 しばらくして。

 アルベルトが難民営から出てきた時、その顔からは、入る前にあった戸惑いが少し消えていた。

 彼はまず、遠くで剣術の鍛錬をしているレオナルドとペトラを見た。

 それから、自分の手にある長剣へ視線を落とす。

 その目は、少しずつ確かな決意を帯びていった……

 

 教官のダタンが民兵訓練営の操場へ足を踏み入れた時、ちょうど教会の鐘が空いっぱいに鳴り響いた。

 

「今さら鐘かよ!」

 ダタンは懐中時計を取り出して一瞥し、眉をひそめて吐き捨てた。

 

 その直後、さらに途切れることのない鐘の音が続く。

 カン、カン、カン――

 

「くそっ。どうせライチェの狂人が、また発作を起こしてやがるんだ。後で城主に報告して、さっさと追い出してもらわないとな」

 彼は衣服の裾を引っ張って整え、操場へ入っていった。

 

 学生たちは三人、五人と集まり、何やら騒がしく話し込んでいる。

 

「整列しろ!今日の訓練を始める!」

 ダタンが低く怒鳴った。

 

 教官の機嫌が悪そうなのを見て、学生たちは一斉に口を閉ざし、素早く隊列を組んだ。

 

「いつもどおり二人一組だ。これまでに学んだ軍用剣術を、最初から一通り繰り返せ。この数日の休みで、動きを忘れていないか見てやる」

 

 号令が下ると、学員たちはそれぞれ相手を見つけ、操場で型の練習を始めた。

 もちろん、レオナルドもその中にいる。

 

 このままずっと訓練が続いていれば、その日は何事もなく過ぎていたはずだった。

 だが午後の自由訓練になった時、ダタンはふと異変に気づいた。

 

 何人かの学員が、自分からレオナルドのもとへ集まり、剣術の指導を頼んでいるのだ。

 そしてレオナルドも断ることなく、白獅子剣術の技を使いながら、それらしく指導を始めていた。

 

 その光景を目にしたダタンは、最初こそ呆気に取られた。

 だが次の瞬間には、怒りが一気にこみ上げてくる。

 

 教官である自分がここにいるというのに、誰も自分には聞きに来ない。

 そのくせ、一人の学生に教えを請うとは。

 これは明らかに、自分を眼中に入れていないということではないか。

 

「お前たち、どうしてきちんと剣術を練習せず、レオナルドの周りに集まっている?」

「そ、それは……」

「もたもたするな。早く答えろ!」

「はい、教官!俺たちは……レオナルドから白獅子剣術を教わっています!」

「何だと?白獅子剣術?」

「教官は、この剣術をご存じですか?どうも軍用剣術より、こちらのほうが強そうに見えるんですが」

 

 その言葉を聞いたダタンの顔色は、青くなったり白くなったりした。

 だが、人前で怒りを爆発させるわけにもいかない。

 彼は鼻を鳴らし、厳しい顔で叱りつけた。

「まともに歩けもしないうちから、空を飛ぶつもりか?基礎もろくに固まっていないくせに、もう他所の剣術に目移りしているのか!」

 

 そう言うと、ダタンはレオナルドへ視線を向けた。

 声はさらに厳しくなる。

「レオナルド。俺は今まで、お前には期待していた。だが、剣術の修練で大切なのは、一つの道に専念することだ。心を浮つかせていては、何も成し遂げられん」

 そこで、彼は一度言葉を区切った。

「それに、俺が見る限り、お前が先ほど使っていた白獅子剣術は、技も歩法もひどく浅い。あんなものは偽物だ!どこかの詐欺師に騙されるんじゃないぞ!」

 

 レオナルドは、それまで俯いたまま耐えていた。

 だが『騙された』という言葉を聞いた瞬間、勢いよく顔を上げる。

 

「ダタン教官、ご心配には及びません」

 彼はまっすぐに相手を見た。

「俺に白獅子剣術を教えてくださった方は、正真正銘の貴族です。剣術も極めて優れており、俺たち難民の一団をここ双流城まで導いてくださった方でもあります。詐欺師などであるはずがありません」

 

 普段はいつも大人しいレオナルドが、今日に限って皆の前で自分に言い返してきた。

 ダタンの怒りは、たちまちさらに膨れ上がった。

「貴族だと?なら、ちょうどいい」

 彼は冷たく言った。

「その人物も難民の一団にいるのだろう?今すぐここへ呼んでこい。俺が直々に見極めてやる。その者が、いったいどんな貴族なのかをな」

 

 レオナルドは、その場で固まった。

 

 朝から今まで、コロンの姿を一度も見ていない。

 恐らく、また誰にも告げずにどこかへ出かけているのだろう。

 だが、そのことを他人に知られるわけにはいかない。

 余計なことを話せば、師匠に無用な面倒をかけるだけだ。

 しかし今、教官は一歩も引こうとしない。

 周囲の学生たちも、期待に満ちた目でこちらを見つめている。

 どうすればいい?

 

 レオナルドが板挟みになり、額に細かな汗を浮かべ始めた、その時――

 俺は営地の外にある木陰にしゃがみ込み、どうやってハリンとライチェ主教を営地へ入れるか悩んでいた。

 

 すると突然、目の前が明るくなった。

 システム画面が、何の前触れもなく勝手に現れたのだ。

 

【騎士職業認定任務】

【二、轟く名声】

【少なくとも百人に、自らの騎士精神を語り継がせること】

【現在進度:104/100】

【任務達成!】

「えええっっっ……?どういうことですか!?」

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