5回の転生を経て元の世界に戻ることに成功した俺、脳を焼かれた奴全員登場して大変なことになった件。   作:黒芋炒め

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第5話 『ルビーの魔法少女』大倉愛理③

 あまりの衝撃に、私は口を開けなくなった。

 あれだけオロオロしてた由梨ちゃんが、ここまで重くカズくんのことを見ていたのか。

 

「??どうかされましたか?」

「いや、大丈夫。ありがとう」

 

 その日はその後カズくんが帰ってきてアイスを食べて、近況報告をして解散となった。

 私は由梨ちゃんから聞いた話を、ひたすら考え続けていた。

 

 

 半年が経った。

 私たち3人は魔法にほぼ順応し、ある程度強力な技も使えるようになってきていた。その結果、ルース団の幹部との戦いにも勝てるようになり、徐々に追い詰め始めていた。また、カズくんと由梨ちゃんとの報告も定期的に開催していた。

 

「次はこいつね」

 

 ピエロみたいな見た目の敵、カズくんからは「見た目の通り詐欺みたいなことばかりしてくる奴」、由梨ちゃんからは「敵にすると厄介」と紹介されていた奴だ。ただ、攻撃力はそこまで高くなく、魔法も属性攻撃は使えない。本当に扇動する事が得意な敵、らしい。

 

「行ってくる」

 

 2人に声をかけてから出る。

 肌に焼きつくような太陽な日差しが照りつける中、街全体を見下ろしていた。

 最近は市民への攻撃も減り、少しずつ、でも確かにルース団の奴らを追い詰めていた。

 

(いた)

 

 路地裏で何かから逃げようと必死に走り回ってるピエロみたいな男。誰がどう見ても敵はこいつだった。

 

(あいつはなんであんなに逃げ回っているんだろう?)

 

 まあいいか、どうせ敵だしと思い込みながら敵の逃げ道に回り込む。この時、もっとしっかりと考えていたらあんな事にはならずに済んでいたのに─

 

 

 

 

 

 ピエロの正面に立つ。ピエロは焦ったかのように喚いていた。

 

「観念して」

 

 ピエロは言葉とは捉えられないような叫びをあげる。半狂乱状態だ。迷惑な事この上ない。

(さっさと片付けるよ)

 

 愛理はいつものように炎をまとわせて殴り、足から炎の円のドームを築いて逃げられないようにした。ピエロは無言で立ち尽くし、絶望したかのように倒れる。

 

(終わったか…それにしても本当に呆気な…く……)

 

 ルース団の奴らは死ぬと血を流さずにただ消滅する。例外はカズくんと、カズくんが怪人化するのを断固拒否した由梨ちゃんだけだと聞いた。ほぼ腹の真ん中を自分の手で貫通させた。間違いなくピエロは消滅するはずだ。

 ただ、ピエロは消滅しなかった。今も貫通した腹を抑えながら血を吐いている。

 

(え??なんで?なんで?なんで??)

 愛理は頭が真っ白になった。

 

『見た目の通り詐欺みたいなことばかりしてくる奴だぞ、あのピエロは。まともに攻撃もできないのに、本当に扇動のことだけは超一流だ。騙されないようにしてくれ…って言われても難しいかもしれんが』

 

 カズくんが言っていた事を思い出した。

 冷静に考えて幹部級の強さを誇るやつがこんな簡単に倒れる訳がない。それに、出会った時も何かに怯えるように逃げていた。あれは、逃げるように仕向けられていたからで───

 

「た、たずげで、…」

 顔がピエロから変わった。ただの市民の顔になった。ただの一般市民は助けを懇願している。

 

(どうすればどうすればどうすればどうすれば)

 

 私には癒やす能力が何もない。

 

(そうだ、救急車───)

 

 ダメだ、魔法少女が市民を殺しかけたなんて報道が流れたら全員の地位が終わってしまう。私だけが終わるならいいが、幼馴染の2人まで批判されてしまうのはダメだ。

 どうすればいい、このままだと私は人殺しだ。

 息が荒い。私には何もできない。戦う事ができても、人を救うことはできない。挙げ句の果てに人を救う立場の人間が人殺し。

 

「あうえて」

 

 わたしは、なにもできない。

 

 

「──ナ!!こっちだ!」

 

 遠くから聞こえてくる声がどこか聞き馴染みある声だなと思いながら、私はただ居座っていた。

 

 

 

 

 

 

「目は覚めたか?」

「……………」

 

 知らない天井だ。

 ベットから起き上がると右手に私の最愛の人がいた。

(あれ…?私は……そっか)

 

 私はあの路地裏で何をしていたのかを徐々に思い出してきた。そうか、私は何もできず人に致命傷を負わせてスヤスヤと眠っていたのか。

 

「………カズくん」

「…どうした」

「……あの人はどうなったの?」

 

 カズくんはゆっくり口を開く。あの人は死んでしまったのだろうか。腹を貫通するほど奥まで殴ってしまったんだ。なんらおかしい事はない。

 

「一命はとりとめたよ」

「本当っ!?」

「ただ…。完治するかは分からないし、恐らく何かしらの障害は残るだろうとのことらしい」

「…………」

「あと、ピエロは葵が見つけて倒しといたから」

「…………」

 

 やはりやってしまっていた。魔法少女として1番やってはいけない事を。そして、由梨ちゃんの件であれだけ反省したはずの「思い込み」をまたやってしまった事を。

 

「…愛理」

「……何」

「これは決まった事なんだが」

 

 なんだろうか。魔法少女をやめさせる?それが普通だろう。医療費全て払えとかなら全然する。

 ただ、カズくんとの絶交だけは嫌だな、と思いながらカズくんの言葉を聞いた。

 

 

 

 

 

「今回の件は全てルース団の責任、もとい俺が実行犯としてしたことにしている」

 

 

 私は目を見開く。

 でも声が出なかった。

 そして理解する。

 ああ、私はまた、カズくんに業を背負わしたのか。

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