5回の転生を経て元の世界に戻ることに成功した俺、脳を焼かれた奴全員登場して大変なことになった件。 作:黒芋炒め
結局、私はまともな反論ができなかった。
何を言っても、どんな反論をしてもここまでの騒動に引き起こして迷惑をかけたのは自分のせいだったからだ。あの時カズくんが幼馴染の2人を連れてきていなければ、間違いなくあの市民は死んでいた。そして、私は市民を殺した魔法少女として間違いなく非難されていただろう。
一命を取り留めて、これからも魔法少女として活動出来るようにしてくれているのはカズくんのおかげなのだ。今になっても、カズくんに恩を返すどころか仇しか返せていない。
この時から、私は殴ろうとしても無意識に手が止まってしまうようになった。おそらく無意識にトラウマになっているのだろう。市民を守るときも、市民には触れないようにしていた。『人殺し』と言われるのが怖いからだ。
結局、ルース団最終討伐作戦をする最後の時まで炎をまとわせて殴る事が出来なくなっていた。
さらに半年が経った。
冬の寒い時期、本来なら乾燥して炎が1番活躍できる時である。
ルース団はボスと幹部1人を残してほぼ全滅。残る幹部1人も魔法少女側に寝返っているため、実質残る敵はルース団のボスだけになっていた。
そんな中で私は、私以外の魔法少女2人の足を引っ張る事が多くなっていった。今まで2人の前で先陣切って攻撃していたが、そんな事を見る事は次第になくなっていった。
「これから、最終討伐を開始する」
最後の決戦が始まる。
最終討伐も、特に作戦という作戦もなく私たち3人と裏からの支援2人(カズくん、由梨ちゃん)の5人でボス1人を倒すだけの正面突破、という私たちがよくすること。最後まである意味私たちらしい。
決戦前、私は不安で仕方なかった。言葉では言われなかったが、明らかに今1番活躍できていない魔法少女。半年前に比べて唯一弱体化していると言っても過言ではない魔法少女だから、足を引っ張って邪魔をしないかと考えていた。
「愛理」
その考えを、最愛の人が気づかないはずもなかった。
「自分が邪魔なんて考えるな。ここまでやってこれたのは間違いなく愛理のおかげだ」
ああ、カズくんは本当に優しい。1番欲しい言葉を、1番欲しい時にくれる。
(だから私は好きになったんだろうな)
「だから、最後の決戦でも愛理の力を大いに頼らせてもらう」
「カズくん」
「どうした?」
「私に、任せて」
彼はその言葉に驚いたかと思えば、年相応にニコッとした笑顔で迎えてくれる。
「ああ、任せたぞ」
3人がボスの扉の前に並んで立つ。全員で息を呑み、顔を合わせる。見慣れた景色、見慣れた舞台。でも、不思議と力が入ってきているのを私は感じた。
ドアを開ける。とても広い部屋だ。
見たことのない大きさの机、何も装飾されていない真っ白な壁、確かにいる異物。
そこには2mくらいの大男が、椅子に足を組みながら座っていた。
「これまではよくもやってくれたね。紅茶でも呑むかい?」
「結構よ」
「連れないねえ」
大男はニタニタと笑う。間違いない、こいつがルース団のボスだろう。
「観念なさい」
最終討伐が始まった。