洞窟の深くまで進んでいくと不思議と開けた空間に出た。大聖杯のもとに辿り着いたと、そう漠然と思えるほど異質な空間に出た。
「これが大聖杯……超抜級の魔術炉心じゃない……なんで極東の島国にこんなものがあるのよ……」
「資料によると、制作はアインツベルンという錬金術の大家だそうです。魔術協会に属さない、人造人間だけで構成された一族のようですが。」
「悪いな、お喋りはそこまでだ。奴さんに気づかれたぜ。」
「―――。」
「…なんて魔力放出……あれが、本当にあのアーサー王なのですか……?」
「あれ?わたしの知ってるセイバーはあんな真っ黒じゃないんだけど。」
「それはあのアーサー王が変質しているからだからだろう。彼女は正真正銘ブリテンの王、聖剣の使い手アーサーだ。伝説と性別が違うようだけど、当時の情勢からキャメロットでは性転換していたか男装していたのだろう。ほら、昔は男子じゃないと玉座につけないだろ?ブリテンの王になるために男のフリをさせられていたんだよ。宮廷魔術師の悪知恵だろうね。伝承の通りにマーリンは本当に趣味が悪い。」
「え……?あ、ホントです。女性ですね、あの方。男性かと。」
「見た目は華奢だが甘く見るなよ。アレは筋肉じゃなくて魔力放出でカッ飛ぶ化け物だからな。一撃一撃がバカみてぇに重い。気を抜くと上半身ごとぶっ飛ばされるぞ。」
「ヤツを倒せばこの街の異変は消える。それは、この聖杯戦争が終わるってことを意味する。つまり、オレもヤツも消えるということだ。その後のことに関してはおまえさんたちの仕事だ。何が起こるかはわからんが、できる範囲でしっかりやんな。」
「―――ほう。面白いサーヴァントがいるな。」
「面白い、ってじゃあアーチャーと戦う必要なかったじゃん!」
「アンタいつまでそんなこと言ってるの!?あんなの言葉の綾に決まっているじゃない!」
「な!?テメエ、しゃべれたクセにだんまり決め込んでいやがったのか!?」
「ああ。何を語っても見られている。故に案山子に徹していた。だが―――面白い。その宝具は面白い。盾を構えるがいい、名も知れぬ娘。その守りが真実かどうか、この剣で確かめてやろう!」
「やっぱり、そうなるよね。藤丸、速戦即決でいこう。」
「来ます―――マスター!」
「ああ、負けるものか。勝つぞ!」
「はい!マシュ・キリエライト、出陣します!」
アーサー王との戦いも結局はこれまでと一緒。ナナシビトが接敵して足止めをしてキャスターの詠唱の時間を稼ぐ。そして、マシュが相手の攻撃からこちらを護る。
これまでと大きく違うのは、ナナシビトが敵との勝負であまり有利を取れていないということ。アーサー王の剣の一振り一振りが必殺級の威力があって競り合いができていない。だから、キャスターの魔術もなかなか当たらない。
「キャスター!もうちょっとよく狙いなさい!」
「嬢ちゃん、無茶いうな!これでも狙っているんだ!あんなにビュンビュン飛び回れたんじゃ追跡できやしねえ!」
宝具 スターダストエース
「ふっ、宝具を使ったな。けれどその程度の宝具では私を殺せはしないぞ!」
「チッ。」
全勝・サヨナラ安打
ナナシビトの宝具は大きな音と衝撃を生み出し、一次的だけどアーサー王と競り合った。けどその一時でキャスターの詠唱が完了していた宝具が当たる。
宝具
「そんな!?宝具を二つ受けてもまだ立てるの!?」
「まだ足りねえか……やっぱりな、もう一回いくぞ。我が魔術は炎の……」
「そう何度もやられるものか!」
あんまりダメージが与えられていないように見えるけど、さっきほどよりは剣から出てくるビームがこちらに飛んでこない。少しはダメージが与えれたかな?どうだろうただキャスターの魔術、宝具をかわすためにあまり魔力を消費しないようにしているだけかも知れない。
マシュもかなり多くの攻撃を防いでくれている。疲れは後ろからはよくわからないけど、消耗はしているはず。このまま、攻めれば勝てる……はず……
「もう一回!」
宝具 スターダストエース 全勝・サヨナラ安打
「おんなじものを喰らうものか!」
宝具 スターダストエース 全勝・安息ホームラン
「くっ連続だと!」
当たった、クリーンヒット!今なら当たる!
「キャスター!今!」
「ああ!よくやった!いくぜぇ!」
宝具
「そのまま喰らうものか!」
宝具 エクスカリバー・モルガーン
「防いで見せます!宝具展開します!」
宝具 ロード・カルデアス
「ハァーーーー!」
黒いながらも極光の斬撃が飛んで来る。斬撃は地面をガリガリと削りながらこちらに向けて進んできた。それをマシュが宝具で迎えうち、完全に抑え込んだ。
アーサー王の攻撃を防いだという事は、キャスターの宝具がアーサー王に当たったということ。これで勝負は決した。
「―――フ。知らず、私も力が緩んでいたらしい。最後の最後で手を止めるとはな。聖杯を守り抜く気でいたが、乙が執着に傾き敗北するとはな。結局、私一人ではどのような運命でも同じ結末をたどるのだな。」
「あ?どういう意味だそりゃあ。テメエ、何を知っていやがる?」
「いずれ貴方も知る、アイルランドの光の御子よ。グランドオーダー―――聖杯を巡る戦いは、まだ始まったばかりという事をな。」
「オイ待て、それはどういう―――おぉお!?やべえ、ここで強制帰還かよ!?チッ、納得いかねえがしょうがねえ!坊主、あとは任せたぜ!次オレを喚ぶときはランサーとして喚んでくれ!」
セイバーを倒したことにより聖杯戦争が決着した。けど、この後はどうすればいいのかな?
「セイバー、キャスター、共に消滅を確認しました。」
「……わたしたちの勝利、なのでしょうか?」
「ああ、よくやってくれたマシュ、藤丸!所長もさぞ喜んでくれて……あれ所長は?」
「……冠位指定……アーサー王がどうしてその呼称を?」
「マリー所長、何か気になることでも?」
「え……?そ、そうね。よくやったわ、藤丸、マシュ。不明な点は多いですが、これでミッションは終了とします。まずはあの水晶体を回収しましょう。セイバーが異常をきたしていた理由も考えなくてはなりませんね……原因は、どう見てもアレのようですが。」
「はい、至急回収―――な!?」
「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。48人目のマスター適性者。まったく見込みのない子供だからと、善意で見逃してあげた私の失態だよ。」
「集合時間も場所も忘れちゃったの?レフ。」
「レフ―――!?レフ教授だって!?彼がそこにいるのか!?」
「うん?その声はロマニ君かな?君も生き残ってしまったのか。すぐに管制室に来てほしいと言ったのに、私の指示を聞かなかったんだね。まったく―――どいつもこいつも統率のとれていないクズばかりで吐き気が止まらないな。人間っていうのはどうしてこう、定められた運命の通り動こうとしないんだい?」
「―――!マスター、下がって……下がってください!あの人は危険です……あれはわたしたちの知っているレフ教授ではありません!」
「レフ……ああ、レフ、レフ、生きていたのねレフ!良かった、あなたがいてくれなかったらわたし、この先どうやってカルデアを守ればいいかわからなかっ」
「ふっ。安心しな、峰打ちだ。」
バタン
「……えっ……。何をしてるの?」
「いや、マリーがいかにもなレフに走り寄ってたから。」
「だからといってキミのバットで殴る必要はなかったんじゃないかなあ!?ああ……見なよ!所長がたんこぶ作ってるじゃないか。」
可哀想な所長。これも貴方が無防備にレフ教授のもとに行くために、ナナシビトさんの横を通り過ぎたためです。にしてもなんであんなに怪しい雰囲気プンプンな教授のもとに行ったのかな?
………もしかして、ナナシビトさんってバーサーカーだったりするのかな?
「キミたち何をしているのかね?にしてもどうしてオルガは生きているんだい?爆弾は彼女の足元に設置したのにな。」
「なっ……。どういう事ですか!?レフ教授!」
「どうもこうもないよ。マシュ・キリエライト、管制室に爆弾を設置したのは私だと言っているんだ。けど、前言は撤回しよう。オルガはもう死んでいる。肉体はとっくに、そこにいるのはトリスメギストスが丁寧に、残留思念となったオルガをこの地に転移させていたようだ。ロマニ、オルガは生前、レイシフトの適性がなかっただろう?肉体があったままでは転移できない。わからなかったかい?彼女は死んだ事で初めて渇望していた適性を手に入れたんだ。だからカルデアには戻れない。だってカルデアに戻った時点で、彼女の意識は消滅するんだから。」
「しょっ、消滅?所長が?」
「そんなことは私がさせないよ。」
「キミに何ができるというんだい?ナナシビト。さて、私はこんな事を言うために、ここに来たわけではないんだよ。改めて自己紹介をしよう。私はレフ・ライノール・フラウロス。貴様たち人類を処理するために遣わされた、2015年担当だ。最後の忠告だ、ドクター・ロマニ。カルデアはもう用済みだ。お前たち人類は、この時点で滅んでいる。」
「……レフ教授。いや、レフ・ライノール。それはどういう意味ですか。2017年が見えない事に関係があると?」
「関係ではないよ、ロマニ。もう終わったということだ。未来が観測できなくなり、お前たちは❝未来が消失した❞などとほざいていたな。まさに希望的観測だな。未来は消失したのではない。消却されたのだ。カルデアスが深紅に染まった時点でな。結末は確定した。貴様たちの時代はもう存在しない。カルデアスの磁場でカルデアは守られるだろうが、外はこの特異点と同じ末路を迎えていることだろう。」
「……そうでしたか。外部と連絡がとれないのは通信機器の破損ではなく、そもそも受け取る相手が消え去っていたのですね。」
「ふん、貴様はやはり賢しいな。管制室で始末しておけなかったのは残念だ。だが貴様たちには何もできまい。カルデア内の時間が2016年を過ぎれば、そこもこの宇宙から消滅する。もはや誰にもこの結末は変えられない。なぜならこれは人類史による人類の否定だからだ。おまえたちは進化の行き止まりで衰退するのでも、異種族との交戦の末に滅びるのではない。」
「自らの無意味さに!自らの無能さに故に!我らが王の寵愛を失ったが故に!何の価値もない紙クズのように、跡形もなく燃え尽きるのさ!」
「おっと。この特異点もそろそろ限界のようだ。」
「…セイバーめ、おとなしく従っていれば生き残らせてやったものを。聖杯を与えられていながらこの時代を維持しようとは。余計な手間をかけさせられたな。」
「では、さらばだロマニ。そしてマシュ、48人目の適性者。こう見えても私には次の仕事があるのでね。君たちの末路を愉しむのはここまでにしておこう。このまま時空の歪みに飲み込まれるがいい。私も鬼じゃあない。最後の祈りくらいは許容しよう。」
「話は長くせに、自分のしたい話ばっかりだったね。ほら、マリーいつまで寝てるの?早く起きなよ。カルデアに帰るよ。」
「地下空洞が崩れます……!いえ、それ以前に空間が安定していません!ドクター!至急レイシフトを!このままではサーヴァントではない先輩が!」
「マリー?あれ?どうしよう何か駄目なところ叩いちゃったかな?」
「頭の時点で駄目に決まっているでしょう!?」
「わかってる、もう実行しているとも!でもゴメン、そっちの崩壊が早いかもだ!その時は諦めてそっちで何とかしてほしい!ほら、宇宙空間でも数十秒なら平気らしいよ?」
「すみません、黙ってくださいドクター!怒りで冷静さを失いそうです!」
「揺らしてみても起きないし。えー?」
「藤丸君!意識を強く保っていてくれ!そうしたらサルベージは―――」
「っ、間に合いません!」
「マシュ、こっちに!」
「先輩、手を……!」