【TS】チートスキルで異世界転生無双できると思っていたのに 作:夕焼け小焼けの
「やっと帰ってきた……」
森を抜け、ギルドまで帰り着いたオレの口から、安堵のため息が溢れる。
あの後、調子こいてパーティ戦を試みたら、酷い目にあった。一人で戦うのとパーティで戦うのに必要なスキルは、全く違うということが身に染みた。
端的に言って、お互いがお互いを邪魔し続けるだけだった。
「すまぬ……不慣れで」
「いやぁ、あれはオレが悪い……」
オレの【集中】が途切れたせいもあるが、なんと言うか、速度感覚が違った。
オレが見て、考えて、動くのに対し、シロウは全部並行して処理してる。
ずっとテンポが合わず、危うくシロウの背中を撃つところだった……というかシロウが避けてなければ当たってた。
シロウの【身体強化】なら大事には至らないだろうが、ぞっとしない話だ。
「もうしばらくは練習が必要だな……頑張ろう」
「ん……あぁ」
歯切れ悪いな……落ち込んでるのか? 悪いのはオレなんだから、気にしなくてもいいと言うのに。
「とにかくまずは換金だな。いくらになるかなぁ……あ、シロウは分かっても言うなよ。オレは初仕事の査定結果を見るのを楽しみにしてるんだ」
熟練の冒険者であるシロウなら、なんとなく今日の稼ぎは概算出来ているんだろう。だが、オレはちゃんと自分で聞きたかった。
「まぁ、木札の平均的な稼ぎは遥かに超えているだろうな」
「だからそういうのをやめろ! ネタバレ厳禁!」
「すまぬ……」
まぁね、そりゃね、当然平均は超えてるよね、知ってたけどね、オレはね。へへ、そんじょそこらの初心者と一緒にされたら困りますわ。
じゃあいっちょ、大量の素材と魔石でギルドを驚かせてやるとしますか。ふへへ!
「あとドイルも探そう。今日の成果を叩きつけて見せてやる」
「……パーティ戦の未熟さについては、全くもってドイル殿の言うとおりだったがな」
「……あーあー! 聞こえない!」
そっちはわざわざ教えてやる必要ないだろ。今日討伐したゴブリンの殆どをオレだけで仕留めたと知れば、ちょっとはオレを見直すはずだ。
ギルドの扉を押し開け、受付へと向かった。
…
……
………
「めちゃくちゃ怒られたな……」
「すまぬ……まさか木札は中層探索が禁じられていたとは……」
二人揃って肩を落とし、ギルドから退散する。
魔石の質やら素材の種類やらで、中層で狩りをしていた事がバレた。というか隠すつもりも無かったしな。
冒険者に成り立ての木札が中層に進む事がいかに危険なことか。自己責任とは言え、無為に冒険者を死なせぬようにギルドがどれだけ腐心しているか。それらについて長時間に渡り滔々と説教を受けた。
今日の討伐で中心的な働きをしたのはオレだと言っても聞いて貰えないし、オレを連れて行ったシロウにも飛び火したし……。
ずっとか弱い女の子扱いだ。腹立たしい。それを脱却する為だったのに、話も聞いてもらえないとは。なんというか……上手くいかないな。いや、今までが上手くいき過ぎていたのか。
取り敢えず、今回はなんとか買い取って貰えた。そうして得た金銭のオレの取り分から、シロウへ諸費用をいくらか返済できた。これだけでも十分な成果だろう。
完済とまでは行かないが、残りはギルドにオレの能力を認めさせつつ稼いでいくとしよう。
「今日は帰って寝るか……」
「『治療院』には寄らなくても大丈夫か?」
「平気だよ、自分でなんとかできる」
まぁ嘘だ。回復系の魔法は必要ポイントが高かったので未習得。【魔力体】がどこまで効果を発揮するか次第だが……あまり他人に身体を調べられたくないので仕方ない。
「シロウはどうする?」
「拙者も今日は疲れた。帰って休むつもりだ」
「じゃあどっかでご飯食べて行こうぜ、オススメの店って他にもある?」
前の店も良かったが、他の店も行ってみたい。オレはまだまだこの街に対して無知だ。
「うむ……いくつか心当たりがある。案内しよう」
「やった! そうだ、今日はオレが払うからな」
「勘弁してくれ、まだろくに蓄えもないだろう。拙者の分は拙者が払う」
真面目だなぁ。
そうやってわちゃわちゃと話しながら、オレたちはギルドを離れた。