【TS】チートスキルで異世界転生無双できると思っていたのに   作:夕焼け小焼けの

14 / 14
こういう話を延々と書きたい


朝に見る夢

 

「スバル殿は、拙者の、理性と、良識に、感謝すべきだ」

 

 翌朝、ブチ切れたシロウとベッドの上に座って向かい合っていた。どうも寝不足らしく、目が据わっている。こんなシロウを見るのは初めてなので、少し面白い。

 

「確かに寝床に引き摺り込んだのは悪かったけど、オレにも言い分はあるぞ」

 

 泥酔した相手に言うだけ言ってハイさよなら、なんて不義理が過ぎるだろう。昨夜は会話できなかったから実力行使しかなかった。

 

「それは……そもそも、拙者が見守るのはスバル殿の独り立ちまでだった筈。鉄級への昇格はその基準として十分だろう」

 

 まさか反撃を受けるとは思わなかったのか、語気は衰える。

 

「そう言ってくれれば良かったんだ。わざわざ逃げるように別れる必要はなかったろ」

 

「……」

 

 むっすりと黙り込むシロウ。どうも歯切れが悪いな。というか。

 

 

「……シロウの目的は何なんだ? そんなに急ぐ旅なのか?」

 

 出会った頃に、彼は“武者修行”だと言っていた。だが、一箇所に留まらずに路銀を稼ぎ移動を繰り返す生活は、単なる“武者修行”以外の目的意識を感じる。

 

 オレは今までこれを訪ねなかった。旅路を中断させている身としては聞きにくかったし、話題に出せばシロウが旅立ちを急ぐかもと思ったからだ。

 

「……」

 

「ソロよりパーティの方がずっと稼ぎがいい。稼いで移動して、のサイクルも短縮できるはずだ」

 

 これはシロウも言っていた事だ。そもそもソロでは受注できる依頼も限られる。

 

 

「なんで、一緒に行こうって言ってくれない?」

 

 

 オレは、シロウを手伝いたい。

 

 恩返しというのもあるが、それ以前に──

 

 

「──友人を心配するのは、当たり前のことだろ」

 

「……!」

 

 

 この世界で最も長く共に過ごした相手。離れがたく思うのはそんなにおかしなことか?

 シロウの顔を正面から見つめ、あちこちに彷徨わせていた視線を捕まえる。目を逸らさせない。

 そのままじっと見つめていると、ついに観念したシロウが口を開いた。

 

 

「拙者の目的は……“天を舞う龍”を斬り墜とすことだ」

 

 龍? (ドラゴン)……とはニュアンスが違うな。

 

「つまり、龍の住処に向かっているってことか?」

 

 案外普通だな、と思いながら返せば、驚きの表情が目に入る。

 

「……笑わぬのか」

 

 え……うーん。正直笑うとか以前に、龍に対する解像度が低すぎてどう反応すべきかが分からない。

 

 オレの困惑が伝わったのか、シロウは頭を振って続ける。

 

「いやすまぬ。龍など、実在すら疑われるような伝説の魔物。挙句それを刀で斬って墜とすなど、まともな者が考えることではない」

 

 

 ──だが、拙者はやらねばならぬのだ。

 

 

 夢物語だと自ら吐き捨てながらも、灼けつくような熱を孕んだ言葉だった。

 

「目的は分かったよ。でも、そんな“まともじゃない”ことをやろうとする理由は?」

 

 シロウはわずかに視線を伏せ、言葉を選んでいるようだった。

 

「……昔、幼い時分に聞かされた寝物語。ありふれた子供だましだ。悪龍に虐げられる民と、龍を切り裂いて救う侍の話」

 

 古びた宝物を取り出して眺めるような語り口。ここではないどこかを想起して、柔らかく微笑んだ。

 

「拙者はそれに憧れた。故郷を飛び出し、こんなところまで来るほどに、だ」

 

 嘘を言っているようには聞こえなかった。大切な、大切な『たからもの』をオレにも見せてくれたのだと分かった。でも──

 

 

 ──【直感】

 

 

 でも、何か隠してる。

 

 

「憧れ、かぁ……」

 

 

 だけど、指摘すべきは今じゃない。シロウが自分にとって大切なものを教えてくれた。今はそれで十分だ。

 

 

「それなら、オレと一緒だ。オレは、シロウへの憧れで冒険者になったんだから」

 

 座ったまま距離を詰める。

 

 

「だから、その“憧れ”に本気になれよ」

 

 オレは本気だ。お前はどうだ?

 

「まずは見つけなきゃ始まらない。龍の居場所に当てはあるのか?」

 

「最後に目撃情報が残っているのは、大陸北端……『龍山脈』と呼ばれる場所だ」

 

「『龍山脈』……そのままだな」

 

 確かこの街は大陸の真ん中あたりだった筈。まだ道は長そうだ。

 

「で、そこまで辿り着くまで一々立ち止まって路銀を稼ぐのか? 山脈を一人で探し回るのか? 見つけた龍を斬れるのか?」

 

 さらにずいと近づいて、シロウの顔を見上げる。シロウが仰け反るようにして空けた距離も、容赦なく埋めていく。

 

「本気でやるなら、二人だ。稼ぐも探すも鍛えるも、ずっと効率的にやれる」

 

 鼻先が触れるような距離で向かい合う。

 

 

「……確かに、スバル殿の言う通りだ」

 

「──!」

 

「スバル殿──」

 

 

 シロウは姿勢を正し、口を開いた。

 

 

「──拙者が憧れを追うのを手伝って欲しい。どうか、拙者と共に来てくれないか」

 

 

 ガチガチに緊張しているシロウを見て、少しだけ笑ってしまう。

 

 

「ちょっと違うぞシロウ」

 

 

 えっ、という顔をした。耳がピンと立っている。本当に真面目なやつだ。損するタイプ。

 だからこそ……オレが見ててやらないとな。

 

 

「手伝いなんて他人行儀なこと言うなよ。オレも、シロウが“天を舞う龍を墜とす”ところを見てみたい。お前の憧れ、オレも一緒に追いかけさせてくれ」

 

 

 オレの思う最高の笑顔で応えてみせた。

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 と、ここまでは良かったのだが。

 

 

「だが、同行にあたって一つ条件がある」

 

「ん?」

 

 

 じゃあ実際のスケジュールを詰めるか、というところで待ったがかかる。

 

 

「拙者の旅路に同行するというのなら、昨夜のようなことは二度とないようにしてくれ」

 

「昨夜……? あぁ、これからは酒は控えるよ。昨日のは初めてで加減が分からなかったのが原因だし」

 

「……そうではない」

 

 シロウは頭をくしゃくしゃと掻き回し、ため息を吐く。

 

「もう少し慎みを持ってくれと言っているのだ。昨夜の……拙者を寝床に引き込むようなことは、決してしないと誓ってもらう」

 

「わかった、わかったよ、悪かったって。何度も蒸し返すなよ」

 

 起きた時のシロウのキレ具合を見れば、流石に反省もする。でもアレはシロウも悪いって結論が出ただろうに。

 

「朝飯持ってくるよ。シロウは二度寝してても──」

 

 お手上げのポーズを取ってベッドから降り、部屋から退散しようとして。

 

 

 がし。

 

 

 シロウに腕を握られる。

 

 

「──シロウ? 何の……」

 

 

 引っ張られ。

 

 

「──スバル殿は何も分かっておらぬ」

 

 

 ぼす、とベッドに倒された。両腕をそれぞれ掴まれる。

 ちょ、力……つよ。動けな……。

 

 

 

「それとも、拙者が丁寧に教えてやらねば分からぬか」

 

 

 シロウがオレに覆い被さる。湿った吐息がかかるほどに顔が近づく。口元に濡れた牙が覗く。

 シロウと目が合う。いつもの柔らかさを感じるものでなく、値踏みするように鋭く細められていた。

 

 ぐるる、とシロウの喉が鳴る。

 

 

「──ぇ……ぁ……」

 

 

 腕に力を込める。動けない。足も同様。昨夜と上下が逆転している。関節技の技量も何もない、力尽くで押さえ込まれている。

 

 抵抗の手段がない。

 

 

「──、は……」

 

 

 呼吸が早い。目が乾く。滲む汗。指先の痙攣。頭が、回らない。

 

 

「……っシ……シロウ──」

 

 

 ──ぱ、と両手が解放され、シロウが立ち上がる。

 

 

「拙者は部屋で少し眠る。朝食の心配は無用だ」

 

 

 ──バタン。

 

 オレが唖然としているうちに、言うだけ言って出て行った。

 

 

「────は?」

 

 

 対するオレは、未だ混乱の最中。ベッドから起き上がる事もできずに、シロウが出ていった扉を見つめていた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

産廃スキル『性転換』で魔法少女になったら戻れなくなった(作者:ぷに凝)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

 スキルが一人につき一つしかない世界で、小林大翔が引き当てたのは『性転換』。▼ 性別を変えるだけの戦闘向きではない産廃スキル――のはずだった。▼ だが、女性専用装備『魔法少女のドレス』との組み合わせにより、その常識は覆る。▼ ドレスの力で圧倒的な戦闘能力を手に入れた大翔は、正体を隠したまま謎の魔法少女『プリムノヴァ』として活動を開始。▼ 少女の体と魔法少女の…


総合評価:677/評価:7.57/連載:37話/更新日時:2026年07月05日(日) 18:00 小説情報

ヒロイン矯正!【完結済】(作者:アールエー)(オリジナルファンタジー/コメディ)

乙女ゲームのモブ娘に転生したおっさんが、持ち前の拳法と知識を使い、平穏に生きようとしていた。しかし何の因果か同じくヒロインに転生した女の子と出会ってしまい、シナリオを知り尽くしたと思い上がったヒロインを叩き直す物語。▼ちなみに、おっさんは原作ゲームの知識ゼロ。▼性転換おっさんは作者の趣味で、必然ではない。作者の心の中では必然だが。▼精神的BLは念のため。そこ…


総合評価:809/評価:8.75/完結:64話/更新日時:2026年07月05日(日) 18:00 小説情報

TS元おじさん薬屋娘、常連の朴念仁騎士を後輩のつもりで餌付けしていたら、騎士団総出で外堀を埋められていた(作者:べ¥)(オリジナルファンタジー/恋愛)

過労死した営業課長・佐々木健一(42)は、辺境都市の薬屋の看板娘メリル(18)に転生していた。▼前世の癖で、ぼろぼろになって店に来る新米騎士ジークをつい「手のかかる後輩」として世話してしまうメリル。傷薬をおまけし、飯を食わせ、説教をする。ただそれだけの、俺にとってはそれだけの話だったのに。▼――なぜ騎士団の連中は俺を「若様の想い人」として扱うんだ?▼中身がお…


総合評価:505/評価:8/連載:9話/更新日時:2026年07月05日(日) 12:00 小説情報

転生者とTS聖女とTS悪役令嬢と追放系ハズレスキルが集まった結果。(作者:RGN)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

なんか結構バランスのいいパーティが出来た。▼死ぬほど色々な事に巻き込まれるけど。


総合評価:2473/評価:8.6/連載:11話/更新日時:2026年04月06日(月) 19:34 小説情報

TS魔法使いさんは師匠のために今日も戦う(作者:第616特別情報大隊)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

 転生した先は地獄だった。▼ 非力な少女の身体に、スラムの孤児という立場。▼ しかし、ある女性との出会いが私を変えた。▼ 魔法使いであるソフィア──彼女が私を弟子にし、希望をくれたのだ。▼ しかし、魔法使いとなった私は普通ではなかった。▼ 詠唱がいらない。▼ 魔法陣もいらない。▼ 魔導書もいらない。▼ それは世界に敵視されかねない危険因子──イレギュラー。▼…


総合評価:293/評価:7.36/連載:40話/更新日時:2026年07月01日(水) 12:01 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>