【TS】チートスキルで異世界転生無双できると思っていたのに 作:夕焼け小焼けの
「……スバル殿、拙者は少し浮かれておったようだ」
「初めてパーティを組んだんだから、もっと浮かれててもいいよ。オレもワクワクしてたし」
ギルドを出て、その足で森に向かう。門での手続きは、木札とは言え冒険者証のお陰でスムーズだった。
「だが、やはりドイル殿が言うように準備不足────」
「──それは! オレが足手纏いにしかならない場合の話だろ!」
言って、駆け出す!
地を蹴り、腕を振り、大気の隙間を縫う様に!
──【踏み込み】【疾走】
「なっ、スバル殿!?」
僅かな間にシロウが追いついてくる。シロウからは心配しか感じられない。
でも、オレは、できる筈だ。並走するシロウを見つめて──
──【魔力視】【魔力感知】【魔力操作】
……分かった、こうやるのか。
──【身体強化】
身体の中の歯車が噛み合うように、魔力が全身を緻密に巡る。
次の一歩で、オレの世界は確かに変わった。
──ドン!
地面を蹴るたびに、身体が前に弾ける。筋肉量に任せた荒っぽさもなく、柔らかな関節の駆動にも無駄がない──
「スバル殿!?」
声が遠い。
視線だけ後ろに遣ると、シロウが追いついてくる。
だが、その顔は心配ではなく──驚愕に満ちていた。
「ははっ! 手本が良かったんだよ!」
前世ではあり得ない速度に、思わず笑いが溢れる。
そのまま追いかけっこを続けると、あっという間に森の入り口に到着した。
「ふぅ……昨日はじっくり見る暇なかったけど、この辺はある程度整備されてるんだな」
多少切り開かれており、焚き火の跡なんかも目に入る。
「スバル殿、先程の速度は一体……」
「ふふ、オレが守られるだけじゃないのは分かったろ? スバルもドイルも、ずっとその前提で話すから、見せつけてやろうと思って」
庇護対象にされるたび、オレの魂がもっとやれると叫んでた。思い切り走ったお陰か、今はもの凄くスッキリしている。
「行こうぜ、そんでドイルの鼻を明かしてやろう」
オレが森の奥に向かって歩き出すと、シロウも慌てて着いてきた。
「今日は積極的に獲物は探さない筈では……せめて拙者に前を行かせてくだされ! 前衛として恥ずかしい!」
◆◇◆
道なき道を行くことしばし。濡れた土の匂いに混じって、腐った脂のような臭いが漂ってきた。
「ゲキャキャ! ギキギャキャキャ!」
「グギキャ!」
「ギャギャハ!!」
臭いの元を探してみると、汚らしい声で騒ぐ緑の小人。
「アレって……ゴブリン?」
「ああ、まだ気付かれていないようだ」
「まずオレが魔法で先制してみていいかな。距離を詰められたらシロウに頼みたい」
「うむ、拙者に任せよ。あれくらいなら拙者一人でも容易い故、スバル殿は落ち着いて魔法を準備されるとよい」
よし、オレは対
「──【
「ギ──ギャッ!!」
一番手前に居た1匹に命中し、倒れる。
「御見事! まだ息はあるが、喉が潰れたな」
「……狙ったのは頭なんだよ」
しかも当たったのは3発だけだ。喉に当たって無力化できたのはただの幸運だった。
ウサギ虐めに夢中になっていたゴブリンたちも、さすがにこちらに気がついた。
「ギャギャ!
「ギキキ!
え、こいつら……喋るのか……!? やりにくい……!
一瞬の躊躇。ゴブリンと目が合う。そこには確かに、知能の光が垣間見えた。
「──ギヒィ……」
嗤った。
「……ッ!」
背筋が粟立つ。今、オレはゴブリンに、獲物として認識された。
「──ギヒャア!!!」
倒れた同族を捨て置いて、ゴブリン二匹が駆けてくる。汚い牙を剥き出しに、ヨダレを垂らし、欲望に歪んだ顔で──……。
「スバル殿! 追撃を!」
「あ、うん、もう一度撃つ!」
大丈夫、足は大して速くないし、シロウも居る。落ち着いて──
「グギャギ!
……所詮言葉は通じても、話は通じない手合いだ。
オレは僅かな躊躇いを理性で押し潰し、再度指先に魔力を集中させる。今度はよく狙って──
──【魔力操作】
──指先から撃つのがダメなんじゃないか? 指先に収束した魔力を切り離す。イメージは……シャボン玉を宙に放つような感じで。
「……でき、た?」
魔力の弾丸を空中に
「【
「ガぎゃっ……」
宣言と同時に宙の弾丸がゴブリンに殺到し、目や耳に飛び込んで炸裂した。
扱いやすい……射線ではなく軌道をイメージして操れる。
「【
「ギャっげ……」
もう一匹。手を振るって弾丸を形成し、飛ばす。今度は口腔から喉奥に突き刺さり、頸を弾けさせた。
──【射撃】【魔力投射】【曲射】
「ス、スバル殿……今のは……」
「【
最後の一発は、逃げ出そうとしていた
「威力はまだ足りないな……」
鉛弾の殺傷力には程遠い。
「……何と…………いや、まったく見事な腕前、拙者の出番はなかったな」
「ふぅ……シロウが居たから安心して試せた。お陰でコツが掴めたよ」
肩の力が抜ける。結果だけ見れば圧勝だったが、身体は緊張で強張っていた。
戦闘が終われば剥ぎ取りの時間だ。最初の一匹に止めを刺したあとは、シロウに教わりながら、魔石を取り出し、討伐証明部位を切り取る。ゴブリンは右耳で……ウサギは角だったな。
「魔石は基本的に心臓付近にある。骨を切るのは面倒だから、踏み折った方が早いな。まずはそこから刃を入れて……」
──【解体】
「うむ、初めてにしては筋がいい。ついでだが、本来ウサギは魔石より毛皮の方が価値がある。次は毛皮を剥いでみるか」
「まぁ、この毛皮はゴブリンのせいでぼろぼろだからね」
魔石を取り出すだけでも結構体力を使うな。精神面は……案外平気だ。人型の死骸の心臓を抉り出したというのに。
何と言うか、熱中していたせいか作業感が強かった。これは良いのか悪いのか……。
「じゃ、進もうか」
「そうだな、今のスバル殿なら浅層は問題ないだろう。中層に向かいつつ、道中の魔物を狩るとしよう」
オレは初戦闘を無事に勝利で終えて、より森の奥地に踏み入るのだった。
ちょっと書き方を変えてみましたが、いかがでしょう。