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「雪だーー!!」
「ピカピー!!」
季節は冬。
クチバの街は真っ白に染まり、まるで別の世界のように静まり返っている。音さえも、雪に吸い込まれてしまったかのようだった。
うすチュウは、降り積もった雪の上を楽しそうに走り回り、小さな足跡をいくつもいくつも残していく。
昔は、雪が降っても外に出て遊ぶことはなかった。
暖かい部屋の窓辺から、同い年の子供達が無邪気に駆け回る様子を、ただ眺めていることしかできなかったのだ。
けれど、今は違う。
あの頃のように外で遊ぶ人の姿はもうない。
それでも僕は屋敷を飛び出し、この真っ白な世界の中心に立っている。
前に踏み出すたび、サクサクと雪を踏みしめる感触が足元から伝わり、胸の奥がじんわりと高鳴った。
「ピカピ♪ ピカピ♪」
うすチュウも、僕と同じように雪の感触を楽しんでいるらしい。
その様子を見ていると、ふと心の中にいたずらごころが芽生えた。
僕はそっと雪をすくい、手の中で丸めて雪玉を作る。そして、うすチュウに声をかけた。
「おーい、うすチュウ!」
「ピカ〜? ……ピカッ!?」
こちらを振り向いたその瞬間。
僕は雪玉を、うすチュウに向かって放った。
雪玉はふわりと弧を描き、見事にうすチュウの顔へ命中する。淡い黄色の毛並みが、一瞬で真っ白に染まった。
「あっはっはっは! 引っかかったー!」
「ピカピ……ピッカチュウ♪!!」
「ぶぺっ!? つ、冷たい!!」
うすチュウは仕返しとばかりに、尻尾で雪をすくい上げ、勢いよく僕に向かって飛ばしてきた。
頬に当たった雪は、身体の芯まで凍らせるように冷たい。
———けれど、不思議と暖かかった。
「やったな……! くらえっ!」
「ピカピ♪」
僕は再び雪玉を作り、うすチュウへと投げる。
けれど、うすチュウは軽やかにそれを避け、楽しそうに走り回る。
「この〜、逃がすもんか!」
「ピッカピッカピ〜♪」
夢中になって、うすチュウを追いかける。
身体を覆っていた倦怠感も。
頭の奥にこびりついていたモヤモヤも。
すべて忘れて。
ただ、白い世界の中を駆けていく。
僕とうすチュウの足跡が、白い世界に刻まれていく。
僕たちがここにいる証を残すように。
「つかまえたっ!!」
「チャア〜♪♪」
目の前を駆ける小さな背中に飛びつくように、僕は思いきり雪の中へダイブした。
雪をかき分け、全身が一気に冷え切る。
けれど、腕の中のぬくもりだけは、決して奪われなかった。
仰向けになり、僕はうすチュウをそっと空へ掲げる。
白い雪が静かに降り続く中、淡い黄色のその姿だけが、やけに鮮やかに見えた。
世界はこんなにも白いのに。
うすチュウはまるで、小さな太陽のように輝いている。
「ピカピ♪ ピッカ♪」
うすチュウが、小さな手をこちらへ伸ばす。
その仕草に応えるように、僕はそっと抱き寄せ、胸の中へ包み込んだ。
「あったかい……」
「ピッカァ……」
確かにここにある温もり。
凍りついていた僕の心を、ゆっくりと溶かしていく。
あかいほっぺ。きいろのシャツ。
ギザギザもようの、ぼくのベストフレンド。
真っ白だった僕のキャンバスに、色鮮やかな軌跡を描いてくれる。
決して忘れることはない。
キミとのエピソード。
両手いっぱいにあふれる『ありがとう』。
———ああ、この子に出会えて、本当によかった。
心の底から、そう思えた。
雪の降る静かな世界の中で、僕は改めて、うすチュウと出会えた奇跡に感謝した。
「大好きだよ、うすチュウ」
『ゆうやみにそまる おおぞらをごらん』
『ピカピカあたたかい ほしがわらうよ』
『あたらしいかぜが よんでいるから』
『きみとあるいていきたい』
『どこまでもつづくみちを』
みなさま、感想・高評価・お気に入り登録ありがとうございます!
特に、感想を書いていただいている皆様。
めちゃくちゃモチベに繋がっております!
返信はできておらず申し訳ないのですが、全て読ませていただいております!!
完結まで残り2話、今日中に投稿しますので、もうしばらくお付き合いいただければ幸いです!!